評価 ★★★☆☆(50点) 全12話
あらすじ 3年前、勇者シオン・ブレイダンが聖剣の力により地獄の門を封印したことで、人と悪魔との闘いが終結した。しかし時は経ち、再び地獄の門が開いてしまい、世界各地に悪魔が現れ人々を襲撃するようになった。引用- Wikipedia
体は勇者、頭脳は変態
原作は裏サンデー・マンガワンの漫画作品。
監督は久城りおん、制作はライデンフィルム
懐かしさ
見出して感じるのはどこか懐かしい雰囲気だろう。
「勇者」という言葉からファンタジーを想像し、
昨今流行りの「なろう系」のように感じてしまうが、
この作品はいわゆるなろう系ではない。
主人公は別に異世界に唐突に転移したわけでも、
現世で事故にあって転生してチート能力を手に入れたわけでもない。
ファンタジーな世界で主人公は「農夫」だ。
これがRPGなら固定セリフしかないようなモブでしかない。
農夫として農作物を育て、大根のフォルムに欲情している(笑)
幼馴染の太ももにほれ、幼馴染もそんな彼にツッケドンな態度をとっているが
彼に対しての愛情を感じさせる。
この世界の勇者は「地獄の門」を封印したものの、
封印が解けたせいで、まだ悪魔ははびこっている。
そんな中で主人公がすむ村に悪魔がやって来る。戦うすべは彼にはない。
豚肉を焼いた匂いで惹きつけることくらいしか出来ない(笑)
冒頭からコメディタッチあふれるテイストや、
良い意味でも悪い意味でもバタ臭さを感じるキャラクターデザインは
最近のアニメっぽさは感じず、かつての夕方アニメのような雰囲気だ。
原作は2014年から2020年まで連載している漫画ではあるものの、
この作品がスレイヤーズやゴクドーくん漫遊記が発売されていた
「90年代」と同じ年代の作品と言われても何の違和感もない。
令和に蘇る平成初期のファンタジーアニメ、
そんな雰囲気をこの作品は醸し出している。
勇者
主人公の村が襲われてピンチの時に「勇者」がやってくる。
主人公の幼馴染はかつて勇者に助けてもらった過去がある。
だが、そんな勇者が「主人公が仕掛けた罠」にはまって死んでしまう(笑)
勇者を殺した存在になってしまった主人公、
彼は「勇者」の死体を隠したものはいいが、
目が覚めると彼はなぜか「勇者」の体に乗り移っているという
ところから物語が始まる。
あくまで彼は乗り移ってしまったのは「勇者の死体」だ。
常に腐っている匂いを周囲に解き放ち、簡単に目も外れてしまう。
「ネクロマンサー」の少女によって魂だけ死体に乗り移った主人公、
彼を殺してしまったがゆえに、勇者の使命を彼は受け継ぐ運命にある。
自身の本当の肉体を人質にやる気のない主人公が勇者としての
使命を果たさなければならない。
清廉潔白な勇者の体に、太もも大好きな変態クズが乗り移る。
体は勇者、頭脳は変態な状況だ。
しかし体は勇者ではあるものの、彼は「聖剣」をうまく使えない。
彼を本当の勇者か疑うものや、勇者の「体」をねらうものもあらわれる始末だ。
戦闘シーン
戦闘シーン自体はかなり簡略化されて描かれている。
作品全体の作画のクォリティがそこまで高くないせいもあるが、
基本的にこの作品は「ギャグ」なため、
戦闘シーン自体もサクサクと描かれるがゆえの簡略化だ。
戦闘中でもヒロインが敵である悪魔によって裸にされたり、
「死体」な主人公の体だからこそ、心臓があっさり貫かれたり、
手が溶けることも多い。
そういった設定を生かしたギャグシーンも多く、
悪魔自体も「裸ニーソがみたい!」と迫ってくる始末だ(笑)
基本的にはコメディではあるものの、この世界はシリアスな世界だ。
悪魔が進行している世界、そんな世界で唯一ののぞみが勇者だ。
かつての勇者の仲間は勇者に嫉妬し、勇者の立ち位置をのぞみ、
勇者になりたい存在も居る。
そんな相手に主人公はなすすべがない。
魔力は幼児なみ、志も正義を貫くわけでもない。
だが、傭兵の息子である主人公はこの世界で「生き抜いてきた」術がある。
この世界での一般人、この世界の主人公ではなかった彼が
「主人公」としての責務を負わされる。
彼は「生き抜く」ことだけは勇者以上だ。
勇者を殺そうと思って殺したわけでもない、
勇者になりたくてなったわけでもない、
勇者の使命も果たしたいわけではない。
だが「生き抜く」ために彼は責務を果たそうとする。
彼はクズだ、だが、クズにもクズの道理がある。
たとえ魔力がなくとも、たとえ戦う力がなくとも、
この世界で彼は生き抜いてきた。
それゆえの「悪知恵」がときに勇者を殺し、ときに窮地を脱する。
それがギャグになりつつ主人公らしさにも繋がっている。
クズではある、肉体も腐っている、だが魂までは腐っていない。
勇者として
多くのものが彼を勇者として認めていない。
ろくに聖剣も使えず、ろくに魔力もない。あるのは悪知恵だけだ。
だが魂までは腐っていないからこそ、
色々な人達が彼に魅了されていく。
そんな状況だからこそ「幼馴染」も彼への思いに悩む。
勇者への憧れ、勇者への思いはあれど、
同時に幼馴染である主人公への思いもある。
そういった古き良きラノベ的なラブコメ要素もありつつ、
基本は主人公は太もも大好きな変態だ(笑)
基本的に1話ないし2話くらいで物語に区切りをつけつつ、
次の目的地に行く流れができており、
サクサクとストーリーが進んでいく。
本来は勇者にしか使えないはずの聖剣も、
「魂」から彼を勇者として認めている。
そんな中でもう一人の勇者、そしてヒロインの「父」まで登場する。
話が進めば進むほど状況が「混沌」としていき、
先の読めない展開になっていく。
悪魔だけでなく、かつて地獄に閉じ込められた人間である
「ネクロマンサー」もこの世界には存在し、
彼らは人類から迫害されてきた歴史がある。
それゆえに彼らの多くは悪魔と繋がり、
人間を滅ぼそうとしている。
守りたい
そんなゲスで太もも好きな変態の主人公ではあるものの、
「ヒロイン」への思いは本物だ。
彼がかつて離れた場所で両親がなくなったときも、
ヒロインを救うために街に戻るために必死だった。
そんな想い人であるヒロインが「魔人化」の危機に陥る。
彼の行動原理は基本的に欲望に従ったものだが、
その欲望に従っているからこそ、「守りたい」ものもいる。
そんな守りたいもののために敵に立ち向かう。
シンプルなストーリーではあるものの、一本芯の通った
ストーリーを展開しており、きちんとした面白さがある。
彼は変態だ、だが、男でもある。
想い人のために、自分が死にかけていた時に心を救ってくれた
ヒロインへの思いは本物だ。
だからこそ、多くのものが彼を慕ってくれる。
悪いことばかり考えていた街の町長や、かつて主人公の前に立ちふさがった敵、
一部の「悪魔」でさえも彼の味方だ。
魔力の少ない彼が負担の大きい薬を使ってまでも、
ヒロインのために戦う姿は王道であり、主人公であり、勇者だ。
勇者が死んだ!
そんな主人公が終盤、生死をさまよう。
死んだ勇者が訪れる世界には勇者の使命にたいする褒美があり、
「太ももニーソ」の世界が待ち受けている。
彼にとっての理想郷だ。
だが、彼はそんな理想郷よりも現実を選ぶ。
ヒロインを救うために、ヒロインの太ももを守るために。
「二人の勇者」による戦闘シーンはシンプルに熱い展開であり、
かつての仲間であり、敵とともに、二人の勇者で
強敵に勝つ展開は王道だ。
ストーリー的にはヒロインを救った段階で終わっており、
地獄の門の問題などはまだ解決しておらず、
「俺たちの戦いはこれからだ!」でおわるものの、
すっきりとした1クールのストーリーを展開している作品だった。
総評:嗚呼、懐かしき90年代ラノベ風アニメ
全体的にみて主人公の安易な罠によって「勇者が死ぬ」という展開や、
主人公のゲスっぷりなど1話はかなりぶっ飛んだ展開で始まる作品だが、
主人公の「太ももニーソ」好きという変態性をいかしながらも、
勇者に捺せられてしまった主人公が、徐々に勇者らしく、
主人公らしくなっていく物語だ。
1話自体はぶっとんでいるものの、2話以降はストーリー自体は
かなり真面目に描いており、
ネクロマンサーの問題や、悪魔の問題などを描きつつ、
ギャグや下ネタ、主人公の変態性を活かしながら、
王道のストーリーを展開していた。
作画に関してはあまりクォリティは高くない。
ヒロインたちのセクシーシーンなどは頑張っているものの、
戦闘シーンなどは簡略化されてる部分もあり、
最近のアニメと比べると見劣りする部分もある。
だが、それが帰ってどこか懐かしい90年代の
ラノベファンタジー的な面白さを醸し出しており、
キャラクターデザインもそうだが、
この王道なストーリーも相まって、懐かしさが
作品全体でにじみ渡っている。
サクサクとしたテンポ感もあいまって非常に見やすい作品だ。
作画やキャラデザの癖、主人公のクズっぷり、
やや古臭いとも言える要素やストーリーなど、
見る人によって気になる人はいるかも知れないが、
この古き良きラノベファンタジー風のアニメは染み渡る面白さが
ある作品だった。
個人的な感想:2クール
個人的にこの雰囲気がすきな作品だった。
原作は漫画ではあるものの、90年代のラノベ感がすさまじく、
作画のクォリティやキャラクターなど
色々な要素が「なつかしさ」が詰まっていた。
残念なことは1クールのアニメだということだ。
2クールくらいあれば、このテンポでいけば
原作も完結していることもあり、
アニメで完結まで描けたかもしれない。
最近は「作画の良い」アニメが増えたからこそ、
この作画のクォリティだと「見る」選択肢に
入らない人もいるかも知れないが、
あの頃のアニメの雰囲気を感じられる本作品の魅力を
ぜひ味わってほしいところだ。
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