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「劇場版 幼女戦記」レビュー

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評価 ★★★★★(89点) 全101分

あらすじ 其れは、幼女の皮をかぶった化物ーー引用- Wikipedia

親愛なる同胞よ、集え!

本作品は幼女戦記の劇場版。
総集編ではなく完全な続編となっており、
1期を見ていること前提の作品となっている。
監督は上村泰、制作はNUT

素晴らしい音の圧

見出して感じるのは圧倒的な「音の圧」だ。
上映開始早々に描かれる空中戦は腹の奥底まで響くような銃撃音、
空を掛ける彼女たちの空気の音、魔法を放つ際の音、
全てが「ズン!」と腹に響くような重低音とともに流れ魅了される。

これは普通の家のスピーカーや普通のヘッドホンでは絶対に味わえない圧だ。
劇場という大きな音を出していい場所で、大きなスピーカーで、
「音響設備」があるからこそ響かせることのできる音の圧を、
この作品は最大限に生かしている。

見終わった後にシーンやストーリー、キャラの表情は思い起こすことができるが、
あの「音」だけは頭の中では再現できない。
劇場版だからこそ、劇場だからこそ味わえる「音の圧」は本当に凄まじい。
「ガールズパンツァー」も劇場版では音にかなりこだわりがあったが、
この作品も負けず劣らずだ。
映画館だからこそ味わえる「重低音」の良さを久しぶりに味わえる。

どうしてこうなった!

そんな中で描かれるのはある意味「いつもどおりの幼女戦記」だ(笑)
徹底的な合理的主義の男が逆恨みで殺され、
存在Xのせいでに魔法の存在する戦争状態の異世界に幼女として
転生したというのが、この作品のわかりやすいあらすじだが、
1期を見ていないとまるでついていけないストーリー展開だ。

戦争は激化していく中で依然として、最前線に居る彼、いや、彼女は
命令に日々従い、強烈な魔法で敵を殲滅し、
自らの「後方でゆっくりと過ごしたい」という願望とは裏腹に、
優秀であるがゆえに優秀なコマとして戦場へと駆り出されている。

どうしてこうなった。
このセリフは彼女の十八番だ(笑)
合理的な彼が思慮を巡らせて答えた何気ない言葉が彼女をさらなる戦場へ運び、
少しだけ調子に乗って敵地で国歌を歌ってしまったがゆえに
敵に邪な感情を向けられてしまう。

彼女は後方でゆっくりしたいだけなのにうまくは行かない。
それが存在X、神によるいたずらなのかは定かではない。
そして同じように神の加護を受けた少女がいる。

1期で彼女が戦闘の最中で殺した男の娘である
「メアリー・スー」は本作におけるもう一人の主人公と言っていいのかもしれない。
父を殺された恨みで自ら志願し軍に入っている。
彼女は熱心な信者であり、父への復讐を誓うとともに神の加護を受けている。

一方は神を信じず合理的に生き任務につく少女、
一方は神を信じ信心深く、復讐をはたさんとする少女、
この映画はこの二人の少女の対比が見事に描かれている。

大人の男たち

描かれるのは少女たちだけではない。
特に目立つのは「政治家」や「軍上層部」の大人の男たちだ。
彼らは紫煙をくゆらせながら政治を語り、時折、人生観すらも混ぜる
セリフを行き交わせながら「戦況」を見定め、政治をなす。

それが常に正しいとは限らない。
帝国は人的資源が不足しているが優秀な個人のおかげで勝利を収めている、
一方で連邦側は豊富な人的資源に物を言わせてはいるものの、
政治的な「忖度」による連絡ミスも多く負けが続く。

大御所の男性声優たちによる癖のあるキャラクターたちのセリフは、
少ないセリフにもかかわらず圧倒的な存在感を醸し出す。
稲垣隆史、チョー、大塚芳忠、玄田哲章etc…
彼らだけで往年の名作洋画のような雰囲気さえ出ていいるのは流石の貫禄だ。
出番の少ないキャラだからこそベテランの声優を配役している。

戦場に立つ少女たちと、戦場に立たない男たち。
この対比もまた味わい深いものがある。

笑ってしまうほどの戦闘シーン

戦闘シーンは圧巻の一言だ。
101分尺の中でなんと戦闘は5回も繰り広げられる。
序盤こそ余裕に勝利を収めている彼女たちだが、
その勝利が彼女たちを「激戦」へと赴かせる。

一人の政治家が彼女の姿に夢中になっただけに過ぎない、自分のものにしたいと。
そんな欲望が過剰なほどの戦力投入へと繋がり、
そんな邪な感情など知らない彼女は予想外の苦戦を強いられる。

この作品は「俺ツエー」的な要素のある作品だ。だが、所詮は一人だ。
戦争とは一人でするものではない。彼女は部下と共に苦戦を打開しようとあがく。
TVアニメでは「サブキャラ」でしかなく下手したらモブキャラくらいの
存在感くらいしか無い彼女たちの部下が、映画では圧倒的存在感を放っている。

それは圧倒的な上司への信頼、帝国への忠誠、少女の姿をしている
彼女に負けじと「男」を見せようとしているのかもしれない。
これまで名前すら覚えていなかったキャラクターが
銃剣で戦闘機を切り裂くシーンなど魔法のあるこの世界だからこそなせる技であり、
基本的に撃ち合いの多いこの作品の戦闘シーンにおいて異例ではあるが、
異例だからこそ強烈な印象が残るシーンだ。

幼女と少女

そして、幼女の前に少女が立ちはだかる。
幼女への恨みから理性を失いケモノのごとく遅いかかかってくる姿は
幼女に「恐怖」すら感じさせる。
自分とは違い真っ直ぐにただ純粋に神への忠誠を誓ってる少女は強い。

終盤の戦闘シーンは圧巻としか言いようがない。
私はすごい戦闘シーンを表現するときに
「舐め回すようなカメラワーク」と表現する時がある。
360度キャラクターを映すような、アニメという平面上の媒体を
「立体的」に魅せるようなカメラワークは作画枚数があってこそなせる技だ。

この作品の場合はそんな表現では収まらない。
キャラクターを「しゃぶり尽くす」ようなカメラワークはちょっと
すごすぎて笑ってしまう(笑)

人が魔法の力で空を飛び市街地で撃ち合っている。
言葉にすれば1行にしか満たないシーンだが、
この作品はそんな1行にしか満たないシーンをこれでもかと描いてる。
これほど自分の語彙力を嘆くことはない。
あのシーンの面白さを見ていない人に文章で伝える語彙力が私にはない。
もうただただ「すごい」としか言えない。

結末は単純だ。予想できると言ってもいい。
理性を失った獣と理性的な軍人、勝利は明白だ。
最後まであがく獣の姿は見てる側にも続々とした恐怖を感じさせるものの、
神への祈りが、神への信仰が勝敗を決する。

互いがボロボロになるような戦闘、
幼女と少女の戦いは是非劇場でご覧頂きたい。

総評:幼女の活躍を劇場で刮目せよ

全体的に見て素晴らしい作品だった。
1期を見てる前提のストーリーになっており、あくまでも続編ではあるものの、
「幼女戦記」という作品を好きならば文句の付け所のないストーリー、
ただただ感嘆するしかない戦闘シーン、ニヤニヤしてしまうキャラ描写、
最後の「どうしてこうなった」というお約束的なオチまでふくめて、
幼女戦記という作品の魅力を最大限に引き出している作品だ。

主人公が小さい少女であるがゆえに時折、背が足りなくて届かないシーンが有る。
だが、そんなときに彼女はさりげなく「箱馬」に乗り、
彼女が動けば部下がさりげねく箱馬を動かす。
こんな些細なシーンが差し込まれるだけでニヤニヤしてしまう。
この作品が細かいシーンまでこだわってるからこその箱馬だ。

ストーリー的には完結してはいない。
「どうしてこうなった」という彼女の嘆きは未だ続き、
戦争はまだまだ続き激化している。
本来なら「俺たちの戦いはこれからだ」で中途半端な所で終わってるはずなのに
この作品を見終わった後の満足感は凄まじい。

圧倒的な戦闘シーン、起承転結のスッキリとしたストーリー展開、
愛すべきキャラクターたちを1時間40分、たっぷりと味わえる作品だ。
ぜひ「音の圧」を味わうためにも劇場に運んでほしい。

個人的な感想:満足感

行くかどうか少し迷っていたのだが気分転換を兼ねて久しぶりに
劇場に足を運んだら、まさかの名作だ(笑)
特に強い期待をしていなかっただけにギャップでやられてしまったのかもしれない、
あの「音」の魅力は劇場でしか味わえない良さだ。
気分転換ところか興奮が未だに冷めない。

余談だが、わりと観客に女性が多いのが驚いた。
私が行ったときは8割くらい埋まっていたのだが、女性は2割~3割位。
カップルで来てる愚か者もいたが、
この作品は何故か女性に受ける要素があるのかもしれない。

タバコの似合うオジサマキャラクターが多いからだろうか?
それとも幼女を愛するのは男女ともに変わらないということなのだろうか?
このレビューを読んでる女性ファンが居ましたら、
ぜひお好きなところを教えていただけると嬉しいです。
どのあたりが女性ウケしてるのか…

私はこの表現が本当に嫌いなのだが、あえて使いたい。
この作品は劇場で見ないと「損」をする作品だ。
家であの音を再現するのは多大な投資が必要だろう(苦笑)

「」は面白い?つまらない?

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