評価 ★★☆☆☆(28点) 全6話
あらすじ 舞台はメカと魔法の入り交じる群雄割拠の戦国時代。戦いの日々を経て一度は隠居の身となった史上最強の浪人ヤスケだったが、身を寄せていた村が血に飢えた武将たちの争いの場となる。ヤスケは、謎の力を持つ少女・咲希を闇の力から守るため、再び刀を手に取り立ちあがる。
引用- Wikipedia
これが弥助だ!黒人侍だ!魔法だ(?)ロボットだ!?
本作品はNetflixオリジナル作品。
監督や脚本は海外の方ではあるものの、制作はMAPPAが手掛けている。
戦国時代
この作品の舞台は戦国時代だ。タイトルにもなっている
「弥助」は戦国時代に実在したと言われているアフリカ出身の
黒人の侍であり、昨今色々と注目されており、
海外のゲームでも起用されていたりもする。
史実においては信長が初めてみた黒人であり、
彼をたいそう気に入り武士として取り立て、身近においていたようだが、
織田信長が殺される本能寺の変では、明智光秀の襲来を知らせるために
外に出ており、結果的に捕縛されるものの、明智光秀に
「黒奴は動物で何も知らず、また日本人でもない故、これを殺さず」
と言われ処刑を間逃れている。とんでもない差別である(笑)
その後、彼は南蛮寺に身をおいたものの、その後、
彼がどうなったのかは史実に残されていない。
そんな弥助を題材にしたのがこの作品だ。
Netflixという海外の方が多く加入しているサービスだからこそ、
そんな海外の方に向けた作品が多く、この作品もそのニュアンスは強い。
海外の方のイメージではあるものの、日本の戦国時代に存在した
侍や忍者が大好きだ、そこに黒人という要素を足せばより
感情移入もしやすくなるのかもしれない。
題材自体は面白いものの、1話冒頭からぶっ飛んでいる。
戦国時代の合戦シーンがMAPPAらしい綿密な作画で描かれるのに
目を奪われていたかと思えば、そこに「ロボット」が出てくる(笑)
出る作品を間違えたのでは?と思うほどの異物感のあるロボットが
戦場をかき乱したかと思えば、つぎは陰陽師のような存在が
「魔法」を使いだす(笑)
そうかと思えば普通の侍も魔法を使いロボットを撃破する始末だ。
あまりにもカオスな戦闘シーンに大爆笑してしまう、
この作品は戦国時代を舞台にしてはいるものの、
ロボットも存在し、魔法も存在する世界だ。
しかし彼らがまとう衣装は戦国時代の甲冑そのものなのに、
現代の日本でも存在しないようなロボットが多数存在し、
魔法も飛び交っている。とんでもない世界観だ。
ちなみに陰陽師だけでなく、霊能者も降り、獣人もいる。
もうなんでもありだ、宇宙人や未来人が出ても不思議ではない。
あまりにもカオスすぎる状況に先が全く読めない面白さがそこにはある。
史実のその先へ
弥助が色々な創作物で現在使われ始めているのは
史実において謎が多いところだろう。
戦国時代に海外に日本人が訪れた際に出会った一人のようだが、
彼が奴隷だったのか、自由人だったのかもよくわからず、
本能寺の変以降の彼の消息も不明だ。
だからこそ、その後をいくらでも描けてしまう。
この作品も「本能寺の変」から物語が始まる。
織田信長は本能寺の変にて明智光秀に攻め込まれた結果、自害し、
弥助に「介錯」を頼む。
信頼し慕っていた主君、そんな主君を自らの手で解釈してしまう。
それが彼のためであることはわかっているものの、
その光景は彼の心に深く刻み込まれてしまう。
それからあっという間に20年の月日が経っている。
戦国の世は終わり、江戸へと時代は移り変わろうとしているものの、
闇の大名という恐るべき大名が日本で恐怖をばらまいている。
そんな世界でいくら年月が経っても弥助にの心はいえず、酒浸りだ。
そんな彼が身をおいている村には事情を抱えた母子が住んでいる、
子供は病弱であり、そんな病弱な子供を
医者がいる村まで連れて行くところから物語が動き出す
敵
親子はなにか事情を抱えてるらしく狙われている。
弥助はろくに事情も知らぬまま、彼女たちを守るために戦う。
1度は失った武士のほまれ、しかし、侍として弱者を守ろうとしている。
そんな弥助の戦闘シーンはシンプルにかっこいい。
1話から、いきなり3対2だ。
相手は霊能師、獣人、ロボットである(笑)
そんな強敵に対し、味方である母はあっさりと腕を貫かれるものの
弥助は縦横無尽に動き回りながら敵に対処しようとする。
だが、そんな最中で「姉」の謎の能力が発動する。
序盤はメインのストーリーを進めながら、過去回想として
弥助と織田信長の出会い、
織田信長の家来になってからの物語が挟まれている。
ここは史実に沿った部分も多く、弥助という人物の歴史を知ることができる。
同時にこの作品で描きたいことの側面も見えてくる。
弥助という「黒人」の侍は戦国時代の日本において差別される存在だ、
奴隷という立場もまた同じだ、そんな差別をこの作品では隠すことはない。
同時に「女性」というものも描いている。
女性でありながら侍である「夏丸」も侍としてのほまれは持ちえているが、
戦国時代では特異な存在だ。
織田信長という男は属性で人は見ない、技量こそすべてだ。
だからこそ弥助を家来にし、夏丸も家来にしている。
しかし、そんな技量よりも見た目や性別で人を見るものは大勢いる。
現代ですらそういう側面があるゆえに、戦国時代ならなおさらだ。
いわゆるポリコレ的なニュアンスも含まれている。
ちなみに織田信長は両刀だ、これもまたポリコレなのかもしれない(笑)
織田信長は天下統一のために男も女も子供もなく殺している。
戦国時代の世を収めるためには必要な行為ではあったものの、
そこに反感も生まれる。「夏丸」でさえもそうだ。
「古いやり方はもう捨てるべきなのでは?」
弥助自身がそう進言してしまうほど、戦国時代には差別が横行している。
教会
敵の目的は病弱な娘だ、彼女「咲希」の力は予言に記されていたものらしく、
教会の目的のために狙っている。
咲希の力は日に日に大きくなり、自らでも制御できないほどだ。
1話や過去回想では弥助が無双しているシーンが多いのだが、
20年という月日のせいか、多勢に無勢もあってか、
弥助があっさりとやられるシーンも多い。
魔法もロボットも獣人も、なんでもありな世界で
弥助は黒人というだけでただの侍であり、特別な力を持ちえない。
ちょっと主人公としては約不足な感じが序盤を過ぎると
感じてしまう部分だ。
序盤でもあっさりと負けて捕まり、神父から拷問を受けてしまう。
ちなみに神父はミュータントである、
教えはどうなってんだ教えはと思わずいいたくなる(笑)
そんな状態からどうするかと思えば
咲希が覚醒して弥助とともに戦い、トドメは咲希による
十字架アタックである、キリスト教徒が怒らないか
ちょっと心配になるようなシーンであり、
序盤のとんでもさに慣れてしまうと、色々と気になる部分も増えてくる。
旅
咲希に命を救われた弥助は恩義を感じ、
咲希を医者のもとに届けようとする。
1度は捨てた刀、そんな刀を再び手にし、武士のほまれを、
武士としての生き様を再び彼は歩みだす。
そんな彼の前に闇の軍勢も再び立ちふさがる。
全6話ということもあるが、世界観が壮大な割には
話自体は時代劇並にあっさりしている。
これが1クールや2クールの作品ならロードムービーが始まり、
もっと弥助という主人公を掘り下げられたかもしれないが、
全6話という都合上、そのあたりも掘り下げきれていない感じだ。
史実も序盤から中盤までは過去回想という形で描かれるが、
3話以降はそういった史実部分の描写はほとんどなく、
オリジナルの女侍などを付け足すことで
弥助というキャラのバックボーンとポリコレ的なニュアンスを足しているが
それが作品の面白さになってるとは言えない。
4話になると特別な力を持った咲希と同じような力を持ち、
弥助と同じく織田信長につかえていた「守助」といういものが現れる。
彼は闇の大名に立ち向かうために弟子を集めている状況だ。
だが、そこに闇の大名の軍勢も襲いかかってくる。
話自体はわかりやすいが、シンプルすぎて盛り上がりに欠ける。
1話の冒頭のあのトンデモナさ、ぶっ飛び具合が
話を追うごとになくなっていくような感覚だ。
闇光秀
そんなぶっ飛び具合は減っていくのにストーリーは詰め込まれている。
「守助」のところに行ったかと思えば闇の大名の軍勢が現れ、
特別な力を持った彼女は闇の大名から遠隔攻撃を受けて
生死をさまよったかと思えば、明智光秀も現れて闇落ちしている。
もうめちゃくちゃだ(苦笑)
明智光秀は保守的な考えを持っている。
だからこそ黒人の侍である弥助を受け入れず、
破天荒な織田信長と相容れなかった。
そんな古いステレオタイプな人間を弥助が斬り伏せるなら
まだいいのだが、咲希がまたまた覚醒し、
光秀の闇パワーを取り除き、弥助が勝利を掴む。
この咲希がヒロインとしての魅力があるならばともかく、
余り魅力的ではない。演じている方もプロの声優さんではないがゆえに、
かなり演技力も厳しい部分があり、戦闘シーンになるたびに
しゃしゃりでてきて弥助よりも活躍してしまう。
終盤になるとロボットなども出てきて派手な戦闘シーンになるのだが、
結局、弥助は人間であるがゆえに人間以外に勝てない。
ロボットに魔法、霊能力に陰陽師に獣人と特殊な存在が多くいるのに
主人公が少し力が強いだけの人間であるがゆえに
負けてばかりで戦闘シーンが盛り上がらなくなってしまっている。
せっかく面白い世界観なのに、その世界観を主人公と
ヒロインのせいで活かしきれていない。
いっそのこと弥助が魔法の力を使ってロボットに乗って戦ってくれたら
この作品の世界観を活かせたかもしれないが、
あくまで弥助は普通の黒人の侍のままだ。
弥助という存在がこの作品の世界に見合っていない。
闇大名
最終話で闇大名の正体が明らかになる。
まさかの「北条政子」である(笑)
弥助が史実で存在していた戦国時代よりも前の人物だ。
闇の力で平安時代から生き続けていた彼女は
闇の大名として君臨し、咲希の力をも奪おうとしている。
やりたいことはわかるものの、唐突な北条政子に笑うしかなく、
海外の方が作ったとんでも時代劇アニメとしての面白さが
終盤になって出てきた感じはあるものの、
最後は咲希の力で北条政子を倒して終わりだ。
作品として面白い部分はあるものの、
それを活かしきれなかった感の強い作品だった。
総評:これが弥助だ!実在した黒人侍のリアルを見よ!
全体的に見て色々と惜しい作品だ。
「弥助」という実在した戦国時代の黒人の侍を主人公にし、
ロボットも獣人も、魔法も霊能力も何でもアリな戦国時代を
舞台にした序盤は面白さを感じる部分がある。
しかし、中盤になるとそんなぶっ飛び具合も影に潜んでしまい、
ロボットや獣人、魔法や霊能力といった要素を活かしきれず、
主人公の弥助も負けてばかりで、咲希の力で逆転という展開ばかりだ。
そんな咲希の力も凄い力を持っていて、
平安時代から生きつづけ闇の大名になった北条政子が狙っており、
弥助が守り、北条政子を倒すというシンプルすぎるストーリーは
盛り上がりに欠ける部分があり、弥助という存在を活かしきれていない。
特に終盤の「ご都合主義」全開の弥助の復活は首を傾げる部分であり、
Steamなどで1500円くらいで売られてそうな
SEKIROのパクリのようなゲームのストーリーを見せられているような感覚だった。
序盤こそ戦闘シーンの作画はよく、特に1話の冒頭のシーンは
「とんでもない作品が始まりそうだ!」という期待感があったが、
終わってみればそこが1番面白かったシーンだった。
要素としては面白い要素が多かっただけに活かしきれていないのが
本当にもったいない作品だ。
しかし、1話の冒頭は期待感あふれるシーンなだけに、
Netflixに加入してる方はぜひ1話の冒頭だけでも見ていただきたい。
私と同じように大爆笑してしまうはずだ
個人的な感想:弥助
最近、弥助が注目されている話題を目にして
この作品をみてみたが、史実を描いている部分もあるため
気になる方がみてみると弥助という人物を知れるかもしれない。
もっとも史実にはロボットも魔法も存在しなかったが、
だが史実は記録だ、現代人が目にしたわけでも映像が残ってるわけではない。
文字の記録が残ってるのにすぎず、もしかしたら、
この作品のように戦国時代にはロボットが大地を踏みしめ、
魔法が飛び交う戦場だったのかもしれない…
想像は無限大だ(笑)
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