評価 ★★★★☆(65点) 全13話
あらすじ 女子大生の茜は、彼氏からほかに好きな子ができたと言われフラれる。ストレス解消のために元彼・たくまに勧められて始めたゲームにログインするが、同じギルドの仲間の山田のせいでますますストレスをためる引用- Wikipedia
命短し恋せよ、プロゲーマー
原作は「GANMA」などで連載している漫画作品。
監督は浅香守生、制作はマッドハウス
別れ
1話冒頭、主人公が彼氏から別れを切り出されるところから始まる。
彼氏を「ネトゲ」で出会った女に取られた彼女に残されたのは
彼氏と一緒にやったゲームのデータくらいだ。
うさばらしがてらに、そんなゲームを楽しんでいる所、
彼女は同じギルドの「山田」にであう。
あくまでも彼女は彼氏に付き合ってオンラインゲームを楽しんでいただけだ。
廃人プレイをしているわけでもなく、レア装備を求めているわけでもない。
彼氏に付き合ってゲームをしていた彼女に、
山田はどこか冷たい。
「これだからゲームをする男なんて!」
彼女のいらだちはいつの間にか山田へと向いている。
そんな彼女のモノローグ、心理描写が非常に丁寧であり、
原作は別に少女漫画ではないものの、
どこか少女漫画原作のアニメのようなテイストを感じる。
最近は少女漫画のアニメ化自体が少ないがゆえに、
この感覚は久しぶりだ。
彼氏に振られた女性が主人公、この時点で男性オタクウケはしない(笑)
未だに残る男性オタクの処女信仰をガン無視した主人公を
1話は丁寧に掘り下げている。
彼氏への未練を捨てきれない彼女は、
わざわざ元彼氏と会う可能性があるイベントに足を運び、
そこで「リアルの山田」に出会うところから物語が動きだす。
まるでドラマのような展開だ。
元彼氏を追いかけて転んでしまった彼女はハイヒールがぬげて落としてしまい、
そんなハイヒールを山田が拾ってくれる。
「シンデレラ」が出会った冷たい王子様、そんな王子様を
元彼氏へのあてつけに使う(笑)
茜という主人公のどこかみっともないともいえるキャラ描写が
ギャグになり、ベタでは有るものの、
このベタな少女漫画的な展開が染み渡る。
山田
山田は恋愛や人間関係というものに興味がない、生粋のゲーマーだ。
プロゲーマーとしてそこそこ有名な彼は、
主人公である「茜」に最初は一切興味がない感じだ。
ここから二人の恋愛がはじまりそうにもない、
運命的な出会いをしてるのに、主人公は元彼を引きずり、
山田は山田で彼女に興味もなく、恋愛にも興味がない。
だが、そのはずなのに、ふとした彼の行動が茜の心を癒やし始める。
彼女が転んで擦りむいたことに気づけば、絆創膏を買ってきて、彼女に貼ってくれる。
たいしたことをしたわけではない、だが、そんな絆創膏が
彼女の心の傷をも塞いでくれる。
ベタベタな少女漫画的なシーンでは有るものの、
主人公の恋愛脳的な行動やセリフと、山田のクールな態度が
ギャグになっており、ベタなシチュエーションの中でも
しっかりとギャグになっている。
彼女の心を癒やしてくれるものの、彼女への態度は冷たい。
そんな山田と果たして、恋愛関係になるのか?
丁寧に描かれているキャラクター描写が、
自然と二人の恋の行く末を気にならせてくれる。
少しずつ、少しずつ。
元彼に未練の有る主人公と、恋愛に興味のない山田の距離が近づいていく。
主人公は未練を捨て今の自分を向き合い、
山田は少しずつ彼女が気になってくる。
このなんとも言えない距離感が近づいていく感覚が
少女漫画的な「ニヤニヤ」とした面白さを感じさせてくれる。
主人公自身が自分の気持ちに気づいていない、
山田への気持ちを自分の中で整理しきれておらず、
そんな中でギルドマスターの女性との関係性が気になってくる。
「ネトゲ」という本来はプレイヤーの顔が見えないものを
うまくいかしつつ、ベタな少女漫画的ストーリーを
丁寧に描いている印象だ。
ネトゲというオンラインゲームだからこそ、プレイヤーの本当の顔も、
性別も年齢もわからない。
プレイヤー同士のリアルな関係性でさえわからない。
もしかしたら同じギルド内で付き合ってる人がいるのかもしれない、
オフラインで、リアルの世界で初めて彼女たちが出会う瞬間は
「オフ会」のドキドキそのものだ。
当たり前のようにおじさんもいる、
当たり前のように「ネカマ」もいる(笑)
ストーカーじみたやばいやつも存在する。
それがネトゲの世界の面白さであり怖さでも有る。
オタサーの姫
主人公と山田が所属するギルドには女性が
主人公ともう一人しか居ない。
彼女はギルドマスターの「妹」であり、
長いこと彼らとともに平和に、仲良く過ごしてきた。
そんな中で現れた主人公が自分のエリアを犯す的だ。
いわゆる「オタサーの姫」的なポジションに彼女は居る。
自分の兄を、好意をもっている山田を狙っているのかもしれない。
主人公の存在が彼女にとっては邪魔でしか無い。
そんな彼女にも主人公は優しく接する。
自分が今楽しんでいるゲーム、そんなゲームの中の居場所である
「ギルド」の同じメンバーだからこそ、
同じ女の子だからこそ、彼女とも仲良くなりたいと真摯に向き合っている。
たとえ彼女に嫌がらせされようとも、主人公は態度を変えない。
主人公は恋愛脳で恋愛が下手ではあるものの、優しい女性だ。
そんな主人公の姿を、笑顔を見るたびに、
徐々に山田の心も動いていく。
高嶺の花
そんな山田も過去の出来事のせいで恋愛に対して臆病になっている。
だが、同時に彼女にひかれている自分もいる。
年上の大学生のお姉さん、美人で優しく、料理もうまい。
他人に冷たい彼にも彼女は優しく接してくれる。
そんな彼にとって彼女は高嶺の花だ。
自分のようなつまらない人間に恋愛感情など抱かない、
自己肯定感の低い彼だからこそ、
彼女の思いにも、周囲の思いにも気づかない。
徐々に「主人公」も山田への恋心を自覚していき、
二人の仲がどんどんと深まっていく。
主人公も山田も「どうしたいのか」がわからない。
二人はお互いに相思相愛なことはみている側には伝わる、
だが、二人はそれぞれもう一歩が踏み出せず、
今の関係性に甘えている。
一歩踏み出してしまえば今が壊れてしまうかもしれない。
そんな不安を互いに抱えている。
恋のライバル
終盤に現れるのが「恋のライバル」だ。
山田と同じクラスのゲーマーで真面目で少し暗い女の子。
そんな彼女はずっと山田への思いを抱えている。
山田の過去をしり、山田がどんな男かも知っている。
だからこそ彼女もまた一歩踏み出せない。
彼への思いはありつつも、彼に告白することは
彼にとって迷惑だとわかっているからこそ、彼女は黙っている。
山田の過去を知っているからこそ、踏み出せない。
だが、自分の中に閉じ込めてた思いがつい、漏れてしまう。
今まで抱え込んでいた、抑え込んでいた、
だからこそ、こぼれてしまう告白。
「困らせてごめんなさい、
でも、今日だけは私のこと考えてみてほしい
今日だけでいいから」
なんとも健気な彼女の告白。
彼女の出番自体は終盤からではあるものの、
強烈なインパクトを残してくれる。
世界で1番、自分が山田のことをすきだった。
そう思えるほどの「恋愛」を彼女は経験し、
断られるとわかっていても思いを抑えきれなかった。
山田くんもまた、彼女に告白されたからこそ、
誰かを傷つけること、誰かの好意を意識できるようになる。
それは主人公ではなく、恋のライバルが
彼に残した傷跡のようなものだ。
告白
最終話の二人には思わずニヤニヤしてしまう。
主人公は踏み出そうとする。
自分の思いを自覚し、自分の過去と決別する。
そんな彼女の告白は告白とは少し違う。
「山田って私のこと好きなの?」
酔った勢いで彼女が口走った言葉に
彼も素直に答える
「バレたか」
ずるいの一言だ(笑)
少女漫画的なナルシズムすら感じるシーンでは有るものの、
主人公と山田、二人のキャラクターの魅力を最大限に感じさせる
きらびやかな演出と恋の結末が忘れかけていた乙女心を
キュンキュンとさせてくれた。
総評:恋愛脳VSプロゲーマー
全体的にみてどストレートな恋愛模様が描かれている作品だった。
少女漫画的な都合のいい設定は多い、
イケメンなプロゲーマーと失恋直後に現実で出会って、
最後は二人が結ばれる。
ご都合主義感はあるものの、このご都合主義を含めて
少女漫画的なラブストーリーに思わずニヤニヤさせられてしまう。
恋に臆病になってしまった女子大生と、
恋に億劫になってしまったプロゲーマー。
そんな二人が結ばれるまでを丁寧に描いている。
作画面でも、全体的に高いクォリティで安定しており、
主人公の可愛さや、山田のかっこよさを際立たせる演出と、
表情の描写が見る側に刺さってしまう。
ベタではある、だが、このベタさが良い!と叫んでしまいたくなる作品だ。
声優さんの演技力も流石の一言だ。
主人公を演ずる水瀬いのりさんは、いつもの演技とは少し違い
大人びた女性の演技を見せる一方で
主人公の無邪気で素直な可愛らしさを感じさせる後押しをしている。
山田を演ずる内山昂輝さんの演技も素晴らしく、
クールで無表情で他人に興味がない山田という男の
どこかにくたらしさすら感じるセリフを彼の声と演技がのっかることで
「山田」のかっこよさを後押ししており、
最後の彼の告白にはニヤニヤさせられてしまった。
サブキャラクターにも魅力的なキャラも多く、
そんなキャラクターとともにまっすぐに1クールで
完結している作品だ。
1クールで完成された少女漫画的ラブストーリーを描ききっており、
1本の作品をみ終わった満足感をしっかりと感じさせてくれる作品だった。
個人的な感想:久しぶりに
ベタな少女漫画的ラブストーリーを久しぶりに味わった印象だ。
ネトゲという特殊さはあるものの、
王道やベタともいえるストーリーやシーンが多く、
それがうまく噛み合っており、作品全体が非常によくまとまっている。
1クールの中で起承転結がスッキリしており、
1クールで完結する。
多くのTVアニメが放送される中で、
1クールで完結する作品のほうが少ない今だからこそ、
このどストレートなラブストーリーが刺さる作品だった。
アニメは原作3巻あたりまでのようだが、
逆にここから4巻分もどうやって話が進んでいるのか
ちょっと気になるところだ。
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