評価 ★★☆☆☆(30点) 全12話
あらすじ 廃屋内の扉から〈裏世界〉を発見した紙越空魚は、くねくねを目撃し命を失う危機に陥り、仁科鳥子に助け出される。引用- Wikipedia
中途半端
原作は小説な本作品。
監督は佐藤卓哉、制作はライデンフィルム × FelixFilm
ここはどこ?
画像引用元:裏世界ピクニック 1話より
©宮澤伊織・早川書房/DS研
1話冒頭、不思議な空間で遭難している主人公が描かれる。
この世界がなんなのか、彼女はどうしてここに迷い込んだのか、
彼女が怯える「白いなにか」はなんなのか。
状況説明がなにもない中でもうひとりの主人公が
彼女を助けることで物語が動き出す。
「白いなにか」を見続けてはいけない。
見続ければおかしくなり、立ってることさえできなくなる。
塩で追い払うことのできるなにか「くねくね」
この作品はいわゆる「オカルト」な作品だ。
出てくる「なにか」はすべて元ネタがあり、
1話ででてくるのは「くねくね」だ。
どこからともなく現れ、
誰が作者かもわからない「都市伝説」。
そんな怪談に出てくる「なにか」は裏世界に存在している。
そんな世界でボーイミーツガールならぬ、
ガール・ミーツ・ガールな始まりだ。
彼女たちはなぜわざわざ、そんな得体のしれない何かの居る
「裏世界」をピクニックするのか。
裏側の生き物を狩るために、裏側のルールで彼女たちは戦う。
彼女たちは「共犯者」だ。
誰にも教えてはいけない、誰にも知られてはいけない。
「オカルト」というジャンルらしい1話の雰囲気と、
ガール・ミーツ・ガールなストーリーは、
1話でしっかりと期待感を上げてくれる。
作画
画像引用元:裏世界ピクニック 3話より
©宮澤伊織・早川書房/DS研
1話から遠いアングルのシーンでCGが使われることが多く、
普通のシーンとの作画との差に違和感を感じてしまう。
CGが使われないと、遠いアングルになった瞬間に作画が崩れてる事も多く
こういった「雰囲気」が大事な作品だからこそ、
作画が安定しないことはかなり気になってしまう。
「くねくね」や「八尺様」などネットでよく聞くような
都市伝説に出てくる怪異が多く出てくるものの、
そんな怪異の「怖さ」を感じるような描写がない。
明らかにCGで描かれた感ばりばりの怪異は怖さよりも
ちょっと可愛さすら感じてしまう怪異すらいる。
その怪異も、1つ1つをしっかり掘り下げるというわけでもなく、
行方不明になった友人を探しながら、その道中で怪異に会うというだけだ。
例えば2話は髪が長く背の高い友人を探してたら
「八尺様」に出会いました、途中で出会ったおじさんは
あっさりと殺されるものの、倒し方をみやぶり倒せましたで終わりだ。
別に八尺様じゃなくてもよかったのでは?というような
エピソードであり、いまいちこの手の怪異を扱うアニメとしての
「怖さ」を後押しするような演出が少なく雰囲気が生まれていない。
ストーリーのテンポはいいものの、そのテンポの良さが
この作品には不可欠な「雰囲気」を壊してる印象だ。
一歩間違えば死んでしまいかねない状況なのに、
二人の主人公が「恐怖」を感じるシーンも少なく、
この作品をオカルトアニメとして見ればいいのか、
はたまた美少女2人のアクションアニメとしてみればいいのか、
裏世界が絡むちょっと危険な日常アニメとしてみればいいのか。
いまいちよくわからない。
いろいろな要素はあるものの、
その要素の上澄みだけをすくってるだけで掘り下げてくれない。
この作品の芯となる「面白さ」が見えてこず、
いつまでも「軽い」印象しか残らず、淡々と話が進んでしまう。
百合
画像引用元:裏世界ピクニック 2話より
©宮澤伊織・早川書房/DS研
二人の主人公のうちの一人「紙越 空魚」は特に何か
明確な目的が合って裏世界に来ているわけではない。
裏世界への興味、好奇心からこの世界に踏み入れ、
そんな中で友人を探している「仁科 鳥子」に出会った。
「空魚」がわざわざ、命の危険のある裏世界に来る理由が
いまいちピンとこない。2話以降は明らかに
「鳥子」に対して恋愛観所のようなものを見せるが、
そのキッカケもよくわからず、彼女に対する執着心や、
彼女の友人に対する思いに対する嫉妬などいまいちついていけない。
登場人物は少ないのに、そんな登場人物の掘り下げが甘いせいで
2人の関係性、2人の心理描写が見ている側に伝わらず、
どのあたりで「空魚」が「鳥子」にここまでの感情を抱いたのか
見ている側に伝わらない。
そのせいで「空魚」がわざわざ命の危険をおかしてまで
「鳥子」の裏世界ピクニックに付き合うのかが納得できない。
鳥子も鳥子で「協力して」と何の対価もなく彼女に訴えるのも、
身勝手であり、物語の主人公である2人に好感を持てない。
物語のテンポを優先するあまり、本来は原作では描かれてるであろう
細かい部分がカットされているのを感じてしまう。
積み重ねや、説明、間をはぶいて描いている印象だ。
美少女2人が浅い百合な関係性を構築しつつ、
見た目だけ都市伝説の怪異を、なんか銃でぶっ放して倒す。
その繰り返しをしているだけに見えてしまう。
中盤
画像引用元:裏世界ピクニック 5話より
©宮澤伊織・早川書房/DS研
ただ、5話からの話は彼女たちが持っていた「銃」がない状況だ。
事前の準備もなく訪れてしまった裏世界、
そんな世界でようやく彼女たちが感じる死の恐怖。
死の恐怖の中で出会う「米軍」たち。
一ヶ月以上、この世界に囚われてる米軍達は疑心暗鬼が募る中で、
精神が狂っておかしくなるもの、化け物になってしまうもの。
仲間が次々とおかしくなる中でも見ず知らずの女性二人を保護してくれる。
限られた資材の中で食料まで分けてくれる、いい人たちだ。
そんないい人たちに対して彼女たちの反応が意味不明だ。
「電話を掛けるな」と米軍から注意を受けるのに、
言われたその直後に電話を掛ける、意味不明だ。
何が起るかわからない世界で、親切にしてくれた人からの注意を
無視する行為は理解し難い。
もちろん米軍側の説明が足りていないというのもある。
電話をかけると何が起るのかという詳細を説明しないのは問題だが、
彼女たちが裏世界に初めてきたというような状況なら分かるが、
中盤までに何度も裏世界に来て、色々と理解してることもあるはずだ。
それなのに警告を無視して電話を掛けるのは理解し難い。
コンタクト
画像引用元:裏世界ピクニック 6話より
©宮澤伊織・早川書房/DS研
「空魚」はくねくねを倒す際に右目が青く変異してしまっている。
そんな青く変異した目を見て米軍は彼女たちが怪異へと
変わってしまった存在だと認識してしまうという展開が起る。
だが、普通のシーンでは目は青くないのに急に6話で青くなる。
いつのまにか彼女は「カラーコンタクト」をしているという
設定が生まれているものの、それまで一切説明はない。
調べた所、原作では序盤で目の色を隠すためにコンタクトをしているという
説明があったようだが、アニメではカットされてしまっている。
説明にそんなに尺が必要なほどの設定でもなく、
1シーンでも「カラーコンタクト」を入れていると
アニメでもシーンを入れていれば違和感がないのに、
入れていないせいで急にカラコンをしていた設定が生まれてしまっている。
そのわりには9話ではいつのまにか、そのカラコンをやめており、
視聴者が知らぬ間にカラコンをしてたかと思ったら、
視聴者が知らぬ間にカラコンをしないようになっている。
制作側の頭の中では原作を読んでいて理解していることを、
原作を読んでいない視聴者にきちんとその情報を開示できていない。
そのせいでたまに見ていて「ん?」となるような違和感が生まれており、
この作品で重要な雰囲気に魔が差してしまう。
話のつながり
画像引用元:裏世界ピクニック 7話より
©宮澤伊織・早川書房/DS研
カラーコンタクトもそうだが、中盤辺りから
話の違和感が異様に目立ってくる。
例えば5話では彼女たちは銃火器を一切持たずに裏世界に入ってしまい、
そこで米軍と出会うものの怪異と疑われ、
6話で2人だけ裏世界の出口から抜け出し沖縄についてしまう。
それなのに7話では取り残された軍隊は色々と親切にしてもらったのに
そのまま裏世界に放置したまま、
彼女たちはお気楽ムード全開で沖縄を満喫している。
それだけならまだしも、
彼女たちは持っていなかったはずの銃火器を何故か持っている。
謎だ。何の武器も持たずに裏世界に入り、出てきたはずなのに
7話になると急に銃を所持している。この話の違和感の正体を調べると、
この作品は原作と話の順番を変えている。
本来は米軍と出会い、1度裏世界から出た後、
再度、裏世界に入り米軍を助けた後に沖縄でバカンスをする話になる。
アニメでは終盤に話の盛り上がりとして「米軍救出」の話を
もってくるために、話の順番を変更している。
そのせいで米軍を見捨てて沖縄でバカンスを楽しみ、
なぜか銃を持っている2人というおかしな話になってしまっている。
話の構成や順番を変えるのはいいが、
細かい部分まできちんとストーリーの順番の変更にともなう
修正をしていないため話のつながりまでおかしくなっている。
米軍は11話まで完全放置だ。
本来は6話から11話の話がつながるのに、4話も間をあけたせいで
二人の主人公の薄情な感じが出てしまっており、
余計にこの2人についていけない。
制作側としては水着回な7話を中盤で持ってきたかったのかもしれないが、
原作からの変更やカットが話の違和感を生んでしまっているのは
なんとも言えないところだ。
毎度毎度、よくわからないままに怪異に対する対抗手段や
逃げる方法が見つかって解決するパターンも多く、
なぜ、その対抗手段に至ったのか、逃げる方法が分かったのかが
イマイチ納得できないままに終わってしまう。
1話から行方不明になった友人もずっと行方不明のまま、
5話で出会った米軍は11話まで放置のまま。
そもそも「裏世界」とはなんなのかなど、
いろいろな要素を宙ぶらりんのままに別の話を描いてしまうため、
1つ1つの話が終わらずに中途半端で放置されることがあまりにも多い。
1つ1つの話も弱く、スッキリとした話とも言えない。
話が進んでいるのか、進んでいないのかすらよくわからないまま
終盤を迎えてしまう。
米軍救出
画像引用元:裏世界ピクニック 12話より
©宮澤伊織・早川書房/DS研
彼女たちが沖縄で楽しんでいたり、後輩の問題を解決したり、
後輩の幼馴染の問題を解決したり、焼肉に行こうとしてる間、
ずっと放置されていた米軍の救出がようやく11話で行われる。
気になってたなら早く行けばいいのにと思わず突っ込んでしまいたくなるが
すべて終盤の盛り上がりを作るためだ。
ちなみに色々なことを楽しんでいた間に彼女たちに親切にしてくれた
米軍の一人は亡くなってしまっている。
また色々と都市伝説の怪異は現れるものの、
いつものように掘り下げるわけでもなく出て終わりな怪異を、
物理攻撃で倒して終わりだ。
わざわざ終盤に持ってきたのに盛り上がり所を作れてるとは言えない。
最終話のAパートであっさりと米軍救出が終わり、
Bパートはダラダラ会話をしてるだけだ。
結局、行方不明の友人は行方不明のまま、裏世界の謎も謎のまま。
2人の関係性は進展したかもしれないが、
ほぼメインのストーリーが進まずに終わってしまっている。
総評:怖くない
画像引用元:裏世界ピクニック 12話より
©宮澤伊織・早川書房/DS研
全体的に見て題美少女2人が都市伝説に出てくる怪異と裏世界で戦う、
というメインとなる要素は悪くないものの、
都市伝説ががっつりと掘り下げられるわけでもなく、
戦闘方法は銃で撃つだけだったり、唐突に解決方法が見つかったりと
パターン化してしまっている。
1話からずっと行方不明な友人もずっと行方不明なままであり、
いろいろな要素も宙ぶらりんのままだ。
そういったメイン部分を進めずに話の進行に関係ない話ばかりで、
最後まで話を見ても、この作品で何がしたかったのだろうかという
疑問が残ってしまう。
百合な関係性ももっと深い描写があれば、
この作品の良さになったかもしれないが都市伝説とおなじく
百合要素も表面をなぞるだけで終わってしまっている。
一応、都市伝説は「未知の何かが都市伝説の恐怖を利用して
コンタクトしてきている」という設定らしいのだが、
それなら妖怪でも幽霊でもなんでもいいという話になってしまい、
ネット上の都市伝説、ネットロアを題材にしてる意味も感じなかった。
原作ではゾッとする描写や怖さを感じる要素があるのかもしれないが、
その原作の怖さをアニメと言う媒体で活かしきれておらず、
色々と中途半端な作品に仕上がっているという印象で終わってしまった。
個人的な感想:うぅーん
画像引用元:裏世界ピクニック 3話より
©宮澤伊織・早川書房/DS研
個人的に好きな要素が多い作品だったが、
その1つ1つの要素を活かしきれてない作品だった。
面白そう止まりといえばいいのか、駄作というほどでもないが
面白いとも言い切れない、評価そのものも中途半端になってしまうような
微妙な作品で終わってしまった。
ストーリー構成の悪さも響いており、
本来は1話30分では収まらない話を収めるためのカットや、
米軍放置などアニメーションという媒体に整えるための作業が
うまく言っていない感じが歯がゆさを生んでいる作品だった。
この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください
いつもレビュー動画とっても楽しく見ています。
SCPとか都市伝説とか大好きだったので期待していた作品だったのですが
色んな要素が中途半端で今回のレビューと動画にはうんうんと頷きながら見てしまいましたw
制作陣が都市伝説も百合もそんなに興味なさそう
よろしかったらドラマCD、キャラソン、映画、テレビアニメと幅広く展開するものの
不発続きで最後の望みだったアプリがリリース3日にして長期メンテに入ったのち
そのメンテは一度も開けることなく、そのままサ終という作品ごと爆発して死んでしまった
「WAVE!!」という残念な作品をおすすめさせてください
え?は?ええー…なんだったの…って作品なのでお時間泥棒になってしまうかもですが…
笠希々さんのアニメレビューで今まで見る事のなかった作品に興味が持てて
好きな作品が増えました。これからも応援しています!