評価 ★★★☆☆(57点)
https://youtu.be/qYzlw_wHch4https://youtu.be/qYzlw_wHch4
あらすじ 宇宙飛行士候補生であるレフ・レプスはチーフ技術者よりある任を受ける。人類初の宇宙飛行に向けて、無重力下での人体への影響を見たいと。引用- Wikipedia
宇宙飛行士で吸血鬼!?
原作はライトノベルな本作品。
監督は横山彰利、制作はアルボアニメーション
なお、本レビューは「1話」のみを見たレビューとなります。
林原めぐみ
1話冒頭で描かれるのは宇宙だ。
人類が初めて「動物」が宇宙にいったその日。
その日を堺に始まった宇宙への人類への飽くなき思い。
そんなSFな作品な世界観を見せると同時に吸血鬼が現れる。
耳が長く、牙のある彼女。
そんな彼女を演ずるのは「林原めぐみ」だ(笑)
令和という次代に「林原めぐみ」が主演のアニメが見れる。
もうこの時点で異常事態だ。
林原めぐみさんといえば90年代は
多くの主人公、そしてヒロインを演じてきた。
声優としての実力もギャラのランクも高く、
「深夜アニメ」という予算の限られた枠では
ベテランの声優が主人公で起用されることは少ない。
しかし、この作品は「林原めぐみ」をあえて起用している。
しかもOPは「ALI PROJECT」が歌っている。
00年代前半の深夜アニメを思わずおもだしてしまいそうな雰囲気を、
林原めぐみとALI PROJECTの二人で醸し出している。
最近はライトノベル原作と言っても、いわゆる「なろう作品」が多く、
純粋なライトノベル原作の作品はなろうに押され少なくなっている。
そんな中であえて、ライトノベル原作アニメが多く制作されていた
00年代前半から後半を思い出させるようなラノベ原作アニメを作っている。
制作側のそういった「意図」を思わず感じざるえない。
宇宙
この作品の舞台は1950年~60年代だ。
人類が宇宙に夢を見ていた時代。
各国がロケットを開発し、なんとか「有人飛行」の成功を
国家の威信をかけて成そうとしている。
もうひとりの主人公であるレフ・レプスは宇宙飛行士候補生だ。
そんな彼に与えられた任務。
世界初の「生中継による人類の宇宙飛行」の前に行う実験、
その実験に使う「動物」の監視と訓練が彼の目的だ。
それが林原めぐみ演ずる「吸血鬼」だ。
この作品は基本的にはSFだ、だが同時にファンタジーでもある。
SFな世界なのに「吸血鬼」が存在する世界。
「人間」とは認められず、軍が密かに捕獲し管理している存在。
極めて人間に近いが、人間とは言えない。
人類にとっては「動物」と同じとみなされる吸血鬼だからこそ
実験動物としてふさわしい。
だが、吸血鬼だからといって何か超人的な力を持っているわけではない。
確かに耳が尖り、牙はあるが、「太陽」の下にいても日焼けしやすく
長い間、日の下にいれば熱中症のようになるだけだ。血も吸わない。
ただ見た目が違うだけだ。暗闇の中でも少しよく見えるだけだ。
我々が想像する創作物の中の「吸血鬼」の姿をしているが、
我々が想像する創作物の中の吸血鬼とは違う。
すこし見た目が違うだけで人間にしか見えない吸血鬼。
差別
そんな彼女だからこそレフ・レプスは彼女を「名前」で呼び、
同じ服を着せ、人間のように扱う。彼の中に差別意識はない。
だが、彼以外には差別意識がある。
「吸血鬼」という設定で濁しており、、架空の世界ではあるものの
この時代に存在した「他人種への差別」を暗喩している部分もあるのかもしれない。
黒人やユダヤ人に対する差別意識を作品の中にさり気なく盛り込み、
それを「吸血鬼」と比喩的に表現している。
作品の中に盛り込もうとしているものが非常にギリギリではあるものの、
そのギリギリさを感じさせない。
深読みした人間は察してしまう部分はあるが表面的には
「美しい吸血鬼」でしかない。
人間を嫌う彼女は言葉数も少ない。
そんな台詞の少なさ、一言、二言漏らすからこそ
「林原めぐみ」の声と演技が際立つ。
多くを語らずとも彼女の魅力を表現している。
彼女が声を漏らせば漏らすほど、ちょっとした吐息や「舐める演技」や
「咀嚼」するときの声が聞こえれば聞こえるほど、
吸血鬼である彼女に魅了されていくような感覚だ。
もののようにしか扱われない吸血鬼、
そんな彼女をもののように扱わない兵士。
人間嫌いの吸血鬼に対し一人の人間が吸血鬼への考えや認識を
改めつつ、徐々に距離を縮めていく。
宇宙を目指す吸血鬼。
彼女は果たして宇宙へ行くことができるのだろうか、
宇宙から彼女は「生きて」戻れるのだろうか。
人間として認められない吸血鬼と、彼女を人間として認めようとする兵士の
物語が静かに、しっとりと、粛々と始まる。
総評:宇宙飛行士で吸血鬼!?
1話の段階でしか無いがこの作品は非常に危ういバランスで描かれている。
「吸血鬼」という言葉で濁してはいるものの、
人間が想像する吸血鬼とは違い特殊な能力もなく、
見た目がすこしだけ人間と違うだけでしかない。
描いていることは1960年代の地球にもあった「差別」だ。
そんな「差別」があるからこそ、モノ扱いされている吸血鬼の少女が
実験動物として宇宙へ行く。悲しい物語だ。だが、希望はある。
優しい少年が彼女を、吸血鬼に対する認識を改め、
彼女に対する差別に対し嫌悪し、彼女に優しくしようとしている。
1話では何も変わっていない。少しだけ近づいただけだ。
歩み寄ったとはいえない。だが、かわれるかもしれない。
人間を恨む吸血鬼の少女が人間を信じるようになり、
吸血鬼を差別する人たちが吸血鬼を差別しないようになるかもしれない。
夜に輝く一筋の月明かりのように希望は描かれている。
2話以降のストーリー展開がどうなるのかはわからない。
だが、この先、この「差別」をどう解決し、どう描くのか。
非常に重たいテーマを背負った作品なだけに期待したいところだ。
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