評価 ★★☆☆☆(25点) 全12話
あらすじ 通り魔から女性2人を庇って刺殺されてしまった椎名和也は、剣と魔法の異世界にて貴族の三男カイン・フォン・シルフォードとして転生した。引用- Wikipedia
AIに 脚本書かせました?
原作は小説家になろう」にて連載されていた小説作品。
監督は中村憲由、シリーズ構成は高橋ナツコ、
制作は EMTスクエアード、マジックバス
寒気
1話冒頭、何の前触れもなくコンビニ強盗と主人公が争い死んでしまう(笑)
開始して1分もたたず、彼がどんな名前なのかもわからない状態で死ぬ。
彼に対して何の感慨もわかない。
なにせ彼はコンビニ強盗に自ら突っ込んでいっている。
突っ込んだら強盗が持っていたナイフが刺さった始末だ。物凄くダサい。
少女を二人守るための行動は立派ではあるものの、
あっさり死んでしまう。
彼は目を覚ますとこんな事を言う
「知らない天井だ」
もうびっくりするほどの「寒気」を感じてしまった。
エヴァのパロディギャグはこすり倒されており、
知らない天井ネタもやりつくしている、
そんな使いつくされたパロディをさらっと見せる。
寒気を超えて吐き気すら感じるほどの台詞回しにゾワッとしたものを感じてしまう。
少なからず、このパロディをやるなら主人公の視線で天井を映すべきだろう。
しかし、主人公がいきなり目を開けてパロディセリフを言い放つ。
パロディとしても成立しておらず、みせ方も最悪だ。
主人公は死んだと思ったら異世界で転生している。
貴族の三男の3歳の少年として目覚めたという、
もうテンプレすぎて新鮮味を一切感じな展開を開始して5分で詰め込んでいる。
異様なまでのカット多さ、場面転換の多さは慌ただしい。
特に場面転換の時に「短剣」が視聴者側にトンでくる演出があるのだが、
しょっちゅう場面転換をするため、みている最中にダーツの的にでもなった気分だ。
異様なまでのテンポの速さと脚本の詰め込み具合は流石は高橋ナツコ女史だ。
剣と魔法の世界
当然、なろう異世界ファンタジーなので剣と魔法の世界で冒険者がいる。
主人公の前世は天涯孤独の身らしく前世の世界に未練はない。
転生をし前世の知識を持ったままの彼は子供としては異様なほどの
知識を持っている。いつものやつだ。
本来は子供には使えないような魔法も当然使えることができる。
この世界について何も知らない主人公はこの世界の知識を学ぶという流れで
基本的な世界観についても説明されるが、
説明される必要も一切ないほどテンプレななろうファンタジーの世界だ。
制作側もそれを分かっているのか怒涛のテンポで物語が展開していき、
5歳になり「洗礼」を受けることになる。
当然、ステータス画面も表示する(苦笑)
この作品はテンプレの領域を一切出ず、テンプレを詰め込みだけ詰め込んでいる。
テンプレのバーゲンセールだ。
昨今流行りのAIに「なろう小説を書いてください」といえば
10秒もかからずに出力されそうなほどの内容でしか無い。
むしろAIが書きましたと言われたほうが納得できるほどの
独創性の一切ないテンプレまみれの展開には乾いた笑いしか出ない。
加護
そんなテンプレまみれの世界だからこそチート能力も存在する。
むしろないほうがこの作品において不自然だ。
主人公は予定外の「死」を迎えている。
この「無駄死」という要素もどこどの祝福されたなろう作品で出る展開だ。
善行で亡くなった主人公だから異世界に記憶をもったまま転生させてくれたうえに、
7人の神様から加護をもらう。
しかも通常は「5」あれば高い方なのに彼は「10」もの加護を
それぞれからもらっている。
何の苦労もなしにチート能力ゲットだ。
それだけならまだいいのだが、1話で「召喚魔法」を使って
間違って凶暴なモンスターを呼び出してしまう。
姉たちが危険にさらされて、彼はチート能力でモンスターを倒す。
とんだマッチポンプだ。
そんなマッチポンプが終わると
主人公は誰かを守るために、みんなの笑顔を守るために冒険者になる決意をする。
驚くことにこれが1話の内容だ(苦笑)
テンプレ展開にしか無いからこそ、それをあえて詰め込みまくることで
独特の空気感とずれた感じの笑いが生まれており、
内容はテンプレしか無いのだが、なろうRTAのような面白さを感じる。
力の限り、イキりまくれ
2話からは冒険者になるための特訓が始まる。
二人の女声冒険者を家庭教師として父が雇い、特訓をするのだが、
「特訓」の必要性は0だ(苦笑)
ありとあらゆる加護を人の2倍~3倍ももらっている主人公は
剣術もベテラン冒険者並み、魔法もありとあらゆる魔法を初級とはいえ
「無詠唱」で全属性使える
「ありえない!賢者クラス宮廷魔法師も全属性使える人は居ない!」
と主人公を絶賛だ。
別に努力したわけでもないもらっただけの能力を
女声冒険者二人に見せつけ、驚き、褒める。
「主人公バンザイ!」な称賛の褒め言葉の数々には寒気すら感じる。
しかし、これもまたテンプレ展開だ。
冒険者ギルドに行けば「ヒャッハー!」なやつらが
女声冒険者二人に絡んできて、主人公がやっつける。
お約束な展開をお約束のままテンプレ通りにみせてくれる。
予想外の展開、この作品だからの要素はない。
オリジナリティという名の作品としての個性を一切感じない。
そんな個性0の作品だからこそ怒涛の展開で物語を展開する。
2話で二人の冒険者を家庭教師にして3年間レッスンしてもらうのだが、
2話の終わりには3年あっという間に経っている(苦笑)
1話1話の内容があまりにも薄い。
脚本ではなく「プロット」だけで物語が進んでいる印象だ。
レベル8000万
3話で10歳になった主人公はレベルが8000万超えている。
もはや数字の意味がない。
そんな中で道中でたまたま魔物に襲われていた馬車を助けると
中には二人のお姫様が居て、当然惚れられる。
2話の時点で女声冒険者二人からキスされていたが、
3話でもハーレム要因たるヒロインを増やしている。
即落ち2コマとはこの事を言うんだろうと思うほどの、
ちょろすぎるヒロインしかいない。
催淫魔法でも使いましたと言われたほうが納得できるほどの即落ち具合だ。
そんな主人公のハーレム要員でしかないヒロインに魅力など無い。
2話の冒険者も2話ででてきて2話で頬にキスして退場し、
3話で出てきたヒロインには出会って3分もたたずに惚れられる。
恐るべき速度でなろうにおけるテンプレをみせられる。
なろう系アニメはテンポが早い作品も多く、
中には本当にRTAのような作品もあるが、この作品の負けていない。
常に3倍速でみているような感覚になるような作品だ。
もしこの作品を倍速再生していたら6倍くらいの感覚で物語が進むだろう(苦笑)
3話でヒロイン二人を救い、王様に称賛され、
報奨として「男爵」になる。成り上がりだ(笑)
ヒロイン二人も当然のように婚約者になる。
怒涛の展開が序盤の3話で一気に進む。
金儲け
ヒロインもゲットし、地位もゲットしている。次は「金」だ。
前世の知識で作り上げた「リバーシ」を異世界に持ち込み、大儲けだ(笑)
他のなろう系でも将棋だのチェスだのを異世界で再現することもあるが、
今作はオセロを異世界に持ち込み再現し、売りつけている。
本当にテンプレの粋を出ない。
原作自体は2017年から連載されていることを考えると、
他の作品からアイデアを頂いたわけではないようなのだが、
そうとは思えないほどこの作品には「THEなろう」の要素が詰め込まれている。
一切新鮮味がない。
もう、嘘かと思うくらいにどこかでみたことのある展開しか無い。
それなのに基本的にコメディタッチにしており、
怒涛に詰め込みまくったストーリーのリズム感がクセになる。
主人公がなにかやるたびに周囲が驚き、称賛し、
主人公はやりすぎたことを反省する、この繰り返しだ。
リバーシ、オセロ、ウォシュレット、ハンバーグ、スパーリングワイン、
主人公が作るありとあらゆるものを称賛してくれる。
ウォシュレットはともかく、ハンバーグとスパーリングワインくらい
異世界にもありそうなものだが関係ない(笑)
ちなみに冷えてるだけで驚き歓喜する、
誰にでも使えるただの水魔法だけなのに。
ここまで極端にやられると逆に面白くなってきてしまう。
暴露
中盤でやや個性が出てくる。
この世界には過去にも日本から転生してきたものがおり、
一部の書物に「日本語」が記載されており、
それを読んでしまったことで周囲にバレてしまう。
だが、バレたところで何も変わらない。
中盤をすぎると冒険者となっての活動が始まる。
新人でありながら大量のモンスターを倒し、
冒険者としてのランクも初日でAランクに一気に上がる。
もう勝手にしてくれといわんばかりの主人公バンザイ!という展開が続く。
試験に参加すれば自重せずにイキりまくり、
そんな主人公に絡んでくる輩はあっさりと成敗される。
序盤でもみたような展開を中盤でも繰り返してしまっており、
流石にマンネリと飽きを感じてしまう。
修行
だが、終盤はやや趣が変わってくる。
序盤から中盤までチート能力のおかげもあって基本的には戦闘においては
無敵であり、彼が苦戦することは一切ない。
しかし、彼がここまでチート能力を与えられたのには理由があることが発覚する。
彼と同じくチート能力をもっている初代国王と出会い、
「邪神」と戦う使命があることを知らされる。
しかも、自分の前世の両親の「死」にもきちんと秘密がある。
そんな邪神の封印が解けかけている邪神をどうにかするために、修行をする。
終盤ではあるものの、物語の方向性やストーリーの「到着点」が
ようやく明かされることで、
なろうテンプレでしかなかったこの作品の
個性的な面白みが若干ではあるものの生まれてくる。
相変わらず展開は早く異世界の、更に違う異世界で5年の月日が一気に流れる。
色々と設定やバックボーンが明かされるものの、
ダイジェスト的な魅せ方のせいか、いまいちそれが面白みになりきれていない。
個性を出した真面目なストーリーよりも序盤から中盤までの
ギャグチックななろうテンプレのほうがこの作品らしい面白みになっているのは
皮肉だ。
終盤
終盤はそんな「邪神」の一部が復活し、バトルが展開される。
一応は苦戦をするものの、出会った仲間と共闘し、
彼の当初からの目的でも合ったそ
「誰かを守るために、みんなの笑顔を守る」ことが叶う。
話としては邪神は完全には滅しておらず、
今後も現れそうな感じで終わっているものの、
1クールで物語の起承転結はスッキリとしており、
話としてはまとまっている。
きちんと1クールのストーリー構成ができており、
1期の「区切り」もきちんとしており、
僕たちの戦いはこれからだ!で終わっているものの、
見終わってみれば以外と悪くないと感じる作品だ。
総評:AIに脚本書かせました?
全体的にみて、まるで「AI」に「なろう小説を書いてください」と
命令して書かせたのか?と感じるほどTHEなろうの要素の数々を詰め込んでおり、
原作自体は2017年から始まった作品ではあるものの、
この6年の間に数多のなろうアニメが生まれたことで、
2017年時点では斬新だったかもしれない要素も全てがテンプレになってしまっている。
この作品らしい要素、この作品だからこそのオリジナル性というものはないに等しい。
一応中盤で主人公の両親の秘密などの個性はあるものの、
それもどこかでみたことのある展開に過ぎない。
そんな新鮮さのない作品を詰め込みに詰め込みまくることで、
作品全体を「ギャグ」にしており、
どこか「あるあるネタ」のようになろうテンプレを詰め込み、
ダイジェストのごとくストーリーを進めることで、
独特の面白さが生まれている。
中盤からはそんなノリに飽きてきてマンネリを感じる部分もあるものの、
そんな中盤から主人公の両親の秘密をだすことで
マンネリを回避するような構成になっており、
最後まで飽きずに見ることのできる作品だ。
基本的なストーリー自体の面白さはなく、
キャラクターに特に魅力があるとも言えないが、
「高橋ナツコ女史」らしい詰め込みまくったストーリー構成と
独特のテンポ感によって独特の面白さを感じさせてくれ作品だった。
個人的な感想:ナツコ
高橋ナツコさんの脚本やストーリー構成は色々と言われることもあり、
この作品もちょっと警戒しながら見始めたのだが、
この作品の場合は高橋ナツコさんのセンスが良い方向に働いた結果、
偶然か意図してかはわからないが、異世界ファンタジーギャグアニメのようになっており、
なろうテンプレをあるあるネタのように使っているのには驚いた。
おそらく来週には主人公の名前もストーリーも忘れているとは思うが、
1話のパロディネタ以外は不快感を感じることはなく、
わりと起承転結のすっきりとしたストーリーになっているため、
ながら作業のお供に見るには悪くない作品かもしれない。
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