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「転生賢者の異世界ライフ 〜第二の職業を得て、世界最強になりました〜」レビュ-

1.0
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評価 ★☆☆☆☆(13点) 全12話

TVアニメ『転生賢者の異世界ライフ』第2弾PV【2022年7月放送開始】

あらすじ 異世界へと召喚された元ブラック企業の会社員佐野ユージは、冒険者には不向きな『魔物使い(テイマー)』であったが、魔物使いとしては規格外の才能を秘めていた引用- Wikipedia

脚本崩壊

原作は小説家になろうで投稿された後に、
GAノベルで発売されてるライトノベル作品。
監督は小嶋慶祐、制作はREVOROOT

???

1話早々、置いてけぼりだ。
謎の人物がやたらロックな曲調の曲の中で謎モンスターと戦っている。
スライムを肩にのせ、オオカミのようなモンスターを従えているようだが、
特に何かインパクトが有るシーンなわけでもなく、
わざわざ時系列をシャッフルして見せるようなシーンではない。

主人公の名前はユージであり、テイマーの冒険者として
活躍しているのはわかるものの、
彼がなぜタイトルどおり「転生」してこの世界にやってきたのか、
そういった過程がまるまるすっ飛ばされている。

彼がなぜテイマーをしているのか、
なぜ普通の冒険者よりも強いのか、
なぜ転生してきてしまったのか。
そういった情報が1話にはなく、主人公に一切興味も共感も持てず、蚊帳の外だ。

最近のなろう系作品は「失格紋」など
序盤の展開をRTAのごとく、早回しとカットで
話を展開していく作品も少なくないが、
この作品はそもそもの導入部分をカットしてしまっているせいで、
1話から見ている側の興味や感情移入を一切誘わない。

彼が特別なテイマーで魔法を創造し、
強力な魔法を使えるのはわかるものの、
彼が多くの魔物の軍勢をとんでもない魔法で焼き払っても、
なんの感情も生まれない。

作画

作画のクォリティも1話から低クォリティを保っており、
主人公のキャラデザでさえどこかで見たかのような
典型的ななろう系主人公のデザインをしており、なんの特徴もない。
日常シーンのクォリティも低く、戦闘シーンのクォリティも低い。

主人公が1話で「終焉の業火」という魔法を使うが、
その名前の割にはエフェクトの派手さはなく、
CGなどを使うわけでもなく、どこかフリー素材の
爆破エフェクトでも引っ張ってきたかのような
クォリティだ。なんの見ごたえもない。

本来はこの世界では普通には使えないような魔法を
主人公が使える「チート」感をどう演出するかが、
どう見ている側に「すごい」と思わせるかが、
この手のベタななろう作品の面白さの1つではあるが、
その凄さを一切感じない。

原作の面白さや内容の善し悪し以前に、
アニメの制作側がこの作品を面白いものにしようとしていない。
制作側のやる気やこの作品にかける愛情というものを
画面から一切感じることができない。

一応、4話の「終焉の業火」だけは
この作品では逆に違和感を感じるほど
やたら気合が入って描かれているがそれくらいだ。

改変

あまりの違和感とアニメのクォリティの酷さに、
原作を少し読んでみたのだが、原作ではきちんと導入が描かれている。
彼が異世界に来てしまい、スライムをテイムし…という
「導入」が原作にはきちんとあるのに、アニメでは1話ではやらず、
2話以降で回想シーンのように適当に描いている。

桃太郎で言えば、おばあさんとおじいさんも出ずに、
桃から生まれる下りもなく、いきなり3匹のお供と
桃太郎が旅をしているところから見せられるようなものだ。
そんな旅の中で断片的に回想シーンが描かれても、意味がない。

この作品は余計な改変をしまくりだ。
例えば、なろう系作品には作品ごとに象徴するようなセリフがいくつかある。
賢者の孫という作品の「俺なんかやっちゃいましたか?」という
セリフはあまりにも有名だ。
この作品も同じように「それは弱すぎって意味か?」という台詞がある。

異世界に来て、自分の能力と他人能力の差を把握していないからこそ、
必要以上に強力な魔法を使ってしまったりしてしまい、
周囲が驚くなかで「それは弱すぎって意味か?」という
主人公のセリフがいわゆるボケにもなっており、
それに突っ込む周囲のキャラの反応で主人公の強さを表現している。

しかし、この作品はなぜか「それは弱すぎって意味か?」という
この作品の代表的なセリフを素直に見せてくれない。
過去回想をぶつ切りにして描くせいで、
そのセリフを素直に見ている側が受け止めきれない。

原作ファンやこの作品を読んだことがある人ならば、
「お!このシーンであのセリフが来るはず!」と期待しているのに、
その期待をバキボキに折ってしまう。
制作側がこの作品のどこか面白いのかを把握していないからこそ、
大事な部分まで改変やカットしてしまうのだろう。

そのせいで1話1話のストーリーもいまいち頭に入ってこず、
見ている間になんの感情も生まれない。
中途半端に過去回想を交えるせいでテンポも悪くなっており、
面白い、面白くない以前の「無味無臭」感が漂っている。

マイナスMP

主人公は序盤でありとあらゆる魔法を自動的に覚えている。
そんな魔法を無自覚に使いチートの限りを尽くすものの、
この作品には「MP」という概念がきちんとある。

RPGなどのゲームや、この手のなろう系作品では
「MP」設定がよく出てくるが、この作品はあってないようなものだ。
主人公が強力な魔法を使うと自身が持ってるMP以上のMPを消費し、
「マイナス」表示になる。

この時点で意味がわからないのだが、マイナスになった分はHPで
消費される仕組みになっているものの、
MPの数値とHPの数値の価値はイコールではない。
MPがたとえマイナス20万くらいになっても、HPは1000しか減っていない。

数値を増やせば数字のインパクトは出るものの、
それが見ている側のインパクトにはつながっておらず、
設定が死んでいる。

淡々

ストーリーも淡々としている。
主人公がなぜ転生したのかなどの伏線は匂わせる部分があり、
この世界を破壊しようとなぜか企んでいる秘密組織のようなものもおり、
そんな秘密組織の悪巧みにたまたま遭遇し、
主人公がチートな力で悪巧みを阻止する展開が続く。

主人公自身の感情も死んでいる。
ブラック企業に努めていた前世があるからこその心理描写なのはわかるが、
美女を目の前にしようと、強敵を目の前にしようと、眉毛1つ動かさない。
それなのになぜか彼は「食」にだけは興味を示しており、
ときおりグルメ漫画のようなシーンが描かれる。

しかし、それが別に面白いわけではない。
戦闘シーンの演出と違って食事シーンの演出はやたら気合が入っているが、
ギャグとしてやってるのはわかるが、
序盤の雰囲気といきなり変わってそんなギャグシーンをやられても
戸惑うしか無い。

主人公が目立ちたくないとは思いつつも、
その能力故に目立ってしまい、各地を旅しながら、
そんな旅先でいろいろな人に出会い、いろいろなトラブルを解決する。
そのせいか固定のメインキャラが主人公とスライムとオオカミくらいしかおらず、
各地で美女に出会っても、仲間になったり、何かが怒るわけでもない。

まるでギャグアニメのようにキャラを増やし使い捨てている。

尺稼ぎ

7話は特に酷い。
主人公であるユージが秘密の組織の暗殺者に
暗殺すべき人物が調査されるという、どうでもいいエピソードなのだが、
主人公はそんな観察に気づいており、無能の振りをする、それ自体はいい。
しかし、意味不明な間とアップが多すぎる。

例えば二人の暗殺者が暗殺スべきか会話をしつつも、
険悪なムードが流れて無言になる。
その無言のシーンがやたら長い。

一瞬、私の視聴環境になにかトラブルでも起きたのか?と思うほど
無駄な間があいており、それ以外にもだらーっとした会話は
シンプルなつまらなさを生んでいる。
「ユージは暗殺対象なのか?暗殺スべきなのか?」と
もう早く決めてくれと思うほどのダラダラさだ。

あらゆる角度から暗殺者のアップの絵をみせるのもわからず、
これがギャグとしてあえてそうしてるなら
優秀な演出といえるかもしれないが、
ただ予算と尺の問題なだけだ。

10話では主人公が居ないところで
「実はコレコレこうでこうでした」といろいろと説明されるが、
特に思い入れもないキャラとぽっと出の敵キャラに
なにかの感情が湧くわけもなく、
鼻をほじりながら「ほぉーん」といいたくなるような気持ちだ。

ツッコミとギャグ

中盤くらいになってくるとツッコミどころが増えてくる。
7話の妙な尺稼ぎ演出もそうだが、
8話ではやたら「レッサーファイアドラゴン」という名前を連呼する。
ファイアドラゴンではなく、レッサーなのが重要なのはわかるが、
何回も何回もレッサーファイアドラゴンと言いまくるため
ギャグとしてわざとやっているのか?と思うほどだ。

レッサーファイアドラゴン以外にもブルーレッサーファイアドラゴン
という更に長いドラゴンも存在し、キャラたちが連呼しまくる。
8話のセリフの5割はブルーレッサーファイアドラゴンか
レッサーファイアドラゴンだろう(苦笑)

そんなレッサーファイアドラゴンより強いブルーレッサーファイアドラゴンより強い、
ファイアドラゴンというのも存在する。
いきなり名前が短くなったことに思わず笑ってしまうものの、
ファイアドラゴンは雨が降るだけで怒り、街を崩壊させる厄介すぎる生物だ。

人間たちが特に何もしていないのに、雨という天変地異に
ブチギレて人間の街を破壊するドラゴン、
真面目にやってるのかギャグでやっているのか判断しかねるのが
この作品の評価にもつながっている。
ちなみにレッサーファイアドラゴンは数十Lの水をかけると死ぬ(苦笑)

10倍10倍

終盤になると強敵が現れる。
主人公と同じ「賢者」であり、MPも無限に近い。
そんな賢者との戦いはインフレ地獄だ。

敵の賢者が10倍の魔法を使えば主人公も10倍を使いまくる。
「極滅の業火!」ドカン!「極滅の業火!」ドカン!「極滅の業火!」ドカン!
火球!火球!火球!と、火炎系の魔法しか使わない(苦笑)
バカの1つ覚えのように同じ技で戦い合っている。

このあたりの展開はアニオリ展開らしく、
ただでさえ脚本が悪いのにアニオリ展開をやられても
なんの面白みもない。
最終話でとってつけたように今まで出てきたキャラが協力してくれるが、
特に思い入れもないキャラが再登場してもなんの感情もわかない。

最後もアホみたいに「天撃」を連呼しており、
どんな気持ちでこの作品を見ればいいかわからない作品だった。

総評:私のMPは-2万です(???)

全体的にみてストーリーの面白さの有無の前に、
脚本が崩壊している作品だ。
原作から時系列を変えてストーリーを描いているせいで、
導入部分が断片的にしか描かれず、その断片的な回想シーンが
頻繁に挟まる序盤から中盤はひどい有様だ。

中盤からは唐突にギャグ要素を強めたり、
尺稼ぎだったりしながら、似たような俺つえー的展開を繰り返しながら
ストーリーを進め、最終話の戦闘ではバカの1つ覚えのような
インフレと同じ魔法の繰り返しの戦闘シーンは盛り上がるものも盛り上がらず、
最後はふわっと終わる。

一部の戦闘シーンのクォリティは高いものの、
それ以外の戦闘シーンや日常パートの作画のクォリティは厳しく、
全体的に低予算感や制作側の適当感を感じさせる作品だった。

個人的な感想:レッサーファイアドラゴン

おそらく1年後に覚えているのはレッサーファイアドラゴンくらいだろう。
あの無駄な連呼はもう少しでなにかのツボに入って
お腹がよじれそうになったかもしれないが、その一歩を踏み込まずに
終わって助かった(笑)

シュールギャグ的な要素がもう少し強かったら
そういったアニメとして割り切って楽しめたのかもしれないが、
そもそも、制作側もこの作品にかける愛情がないのだろう。
改変やアニオリ展開など、原作を理解し面白さがわかっていれば、
そんなことはしないと感じる部分も多く、雑に感じる作品だった。

「転生賢者の異世界ライフ~第二の職業を得て、世界最強になりました~」は面白い?つまらない?

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