評価 ★★★☆☆(57点) 全12話
あらすじ ナトラ王国の王子ウェインは弱冠16歳だが、父王の急病によって急遽、摂政として国政を任されることになった引用- Wikipedia
外道!だが王道!
原作はライトノベルな本作品。
なろうっぽいタイトルに思えるが純粋なラノベ原作の作品だ。
監督は玉川真人、制作は 横浜アニメーションラボ
売国したい、そうしよう
1話冒頭、優秀な王子の姿が描かれる。
部下に信頼され、策略は目論見通り、あまりにも優秀に見える王子。
だが、そんな優秀な彼の口からこんな言葉が発される。
「売国したぁぁぁーい!」
このギャップがこの作品の笑いと根幹につながっている。
主人公は一見やる気がありそうな王子であり、
部下にも恵まれ、信頼されている王子だ。
しかし、彼の内面は違う。
王子ではあるものの、国土の大半は不毛な大地、
金もなく、資源もなく、ろくな産業もない、簡単に言えば「弱小国家」だ。
王が倒れたため、仕方なく王の仕事をかわりにしているが、
彼は愛国心などまるでなく、あわよくばどこかの国に自国を売国したいと思っている。
魅力のない国だからこそ、価値のない国だからこそ、受け継いだ所で苦労しか無い。
まるでたけのこすらろくに生えない広いだけの田舎の山を
受け継ぐような気持ちだ(笑)
そとづらがよく、一見愛国心にあふれている優秀な王子だが
内面はさぼりたい、投げ出したい、売国したいと思っている。
そんな主人公の外と中を冒頭からしっかりと見せることで
物語における主人公の魅力と存在感をしっかりと醸し出している。
彼の廻りには既に優秀な部下や妹、可愛らしいヒロインが多く揃っており、
優秀なキャラクターデザインとそこそこの作画のクォリティで
女性キャラクターを見せることで、
1話からラノベ原作アニメらしいキャラの魅力を感じさせてくれる
どうしてこうなった
心ではさぼりたい、売国したいと思っている彼だが優秀ではある。
1万人近い兵士のひとりひとりの名前を覚え、優秀な戦略を考え、
弱小な自国に対する侵略を防いでいる。
自身が思っている以上に主人公は優秀だ。
それをひけらかすわけではない。
彼は別に己が優秀であることをアピールしようとは思っていない。
だからこそ「なろう」作品の主人公のような嫌味がなく、
どこかスカした感じはあるもののラノベ原作主人公っぽさが強く、
やや懐かしさすら感じてしまう。
彼が思った以上に敵が弱かったり、部化が優秀すぎるうえに、
やる気のある臣下のせいで、彼が想定した以上、
もしくは全く違う結果を出してしまう。
時には重要な人物が「泥酔」して死んでしまったりと、
本当に見る側も予想外な出来事が笑いにつながる。
俺なんかやっちゃいましたか?ではなく、
「どうしてこうなった」的な展開がこの作品のおもしろさでもある。
そんな主人公にも予想外な出来事が起こる部分が主軸ではあるものの、
きちんと「かっこよさ」も見せてくれる。
彼の幼なじみは「灰被り」と呼ばれる白い髪のフラム人であり、
差別の対象だ。そんな彼女が差別されると彼はブチ切れる。
「将」ではあるものの、彼女のためならば、彼女の尊厳を守るためならば、
自ら相手の将を討ち取るために戦場に出る姿は、
主人公としての魅力を見せてくれる。
ヒロイン
ラノベ原作アニメにおいてヒロインの可愛さは重要だ。
この作品もまた、幼なじみ、妹、旧友と可愛らしいヒロインが
主人公の周りには存在しており、
そんな彼女たちの「恋愛模様」もちょこちょこと描かれている。
そんなヒロインたちはなぜか「どこかしら」肌を露出している格好をしている(笑)
特に主人公の幼馴染は寒い地域のはずなのに、
常に横乳丸出しの格好をしており、
こういったヒロインたちの服のデザインも、どこか懐かしい
「ラノベ原作アニメ」らしさを感じさせてくれる。
序盤で主人公の魅力をきちんと感じさせ、
彼女たちとの過去のエピソードを交えることで、
彼女たちがどうして「主人公」のことを好きなのかというのを
見ている側も自然に納得できる作りになっている。
ヒロインもヒロインでただ主人公に従順な都合のいいヒロインではなく、
時には自らの立場や国のために主人公と対立することもある。
主人公とヒロインたちが様々な策略を巡らせ、
自らの現状を打破するさまがラブコメとしての恋愛模様と
コメディを生んでいる。
そんなヒロインのためにも、主人公は「売国」する余裕なんて一切なく、
成り上がっていくストーリーは、
テンポよくトントン拍子に進み、変に引き伸ばさないからこそ、
爽快感が生まれている。
ある意味で俺つえーな状況でイキりまくるような展開も
中盤からは見られるものの、この
サクサクと進むストーリーは心地よさも生まれている。
大量の人物
ただキャラクター数はかなり多い。
基本的にはメインキャラクターがストーリーを進行するものの、
各国のキャラたちや、そのキャラの部下や関係者など、
物語の都合上仕方ない部分はあるもののキャラクターが多く覚えづらい。
しかし、割とあっさり死ぬキャラが多い(笑)
序盤では泥酔して2階から落ちて死んでしまったり、
戦争の中で主人公の怒りを買って殺されたり、毒殺されそうになったり。
キャラ数自体は多いもののあっさりと退場するキャラが多いため、
そこまで気にならない部分ではあるものの、掘り下げの甘いキャラも多い。
また基本的に主人公より天才は出て来ない。
主人公の予想通りか、そうでないかはともかく、
結果的に敵が主人公よりバカだったために負けてしまったという展開が多く、
序盤をすぎると話がパターン化してくるのはやや気になるところだ。
専門用語、この作品だけの地域や国の名称も多く出てくるため、
きちんと頭の中でそのあたりを整理整頓しないと、
話についていけなくなってしまう。
登場人物が増え、物語が複雑になっていく印象だ。
作画
この作品の作画のクォリティはそれなりに高い。
特にヒロインたちの描写や、一部の戦闘シーンは気合が入って描かれている。
ただ、その一方で予算の低さを感じる部分もある。
特に序盤から中盤の戦況の描写。
戦争の描写は多くの人数を描かないといけなくなり、
CGを使って兵士をコピペしているような作品も少なくはない。
ただ、この作品の場合はそんなCGを使いつつも、工夫している。
例えば序盤は多くの兵士の動きを分かりやすく描くために
「チェスのコマ」のようなものをCGで描き、盤面で表している。
単純に兵士のCGをコピペして戦況を描くよりも、
画面としてはシンプルになるものの、戦況が分かりやすくなる。
メインキャラや主要な人物同士の戦いの場合は、CGを用いないものの、
止め絵を随所で用いることで、
そこまで潤沢ではない予算をうまく作品全体で回している印象だ。
魅せるシーンはきちんと魅せ、それ以外はうまく予算が少ないながらも
その予算の低さを露骨に感じさせない。
ストーリー構成もさることながら、予算もうまく構成している。
ファンタジーの世界でありながら獣人や亜人なども存在せず、
魔法なども存在しない。
ど派手な戦闘シーンを描きにくい世界観でありながら、
きちんと盛り上げるところは盛り上げている。
天才
ただ、終盤になるとややマンネリが目立つ部分がある。
主人公の「売国したい」もどこへやら、
優秀な指揮官としての行動やセリフが目立ち、
彼自身も売国するという理由があるとは言え、
国の発展と繁栄のために奮闘している。
あまり苦戦した状況や、主人公と同じくらいの天才が現れるわけでもなく、
いい意味でも悪い意味でもトントン拍子に終わってしまったような
印象を受ける作品だった。
総評:古き良きライトノベルアニメ
全体的に良い身で懐かしいライトノベル原作アニメののりを感じさせる作品だ。
最近はこの手の作品の場合は「小説家になろう」原作が主流であり、
どれもこれも似たような感じのことをしている作品が多いが、
この作品はそんな流行とは真逆を行くような作品だ。
我々の世界とは違う異世界なファンタジーではあるものの、
魔法や亜人などは存在せず、そんな異世界で「国同士」の争いを描いており、
戦が耐えない世の中で主人公は「売国」という本来なら
国のトップが考えないようなことを腹に抱えながらも、
その優秀さ故にどんどんと国が大きく発展していく。
いわゆる「戦記物」であり、ロードス島戦記など、
あの手の作品をライトな感じにし、
よりコミカルに、ライトに、かつヒロインの魅力を全面に活かしながら、
サクサクと進むストーリーに心地よさを感じさせてくれる作品だ。
ただ、その反面で中盤以降、話や情勢がやや複雑になっていき、
キャラも増える部分もあり、話自体もややパターン化が見え、
マンネリを感じてしまう部分があるところは残念なところではある。
それでも1クールで久しぶりに古き良きライトノベル原作アニメの
面白さを感じさせてくれる作品だった。
個人的な感想:ヒロインの衣装
ラノベ原作アニメにありがちだが、ヒロインの衣装だけは
最後まで謎だった(笑)
あんなに激しい戦にも関わらず、鎧1つつけず、
更に横乳が見えまくる衣装で戦う姿はやや違和感すら感じるものの、
これもまたラノベ原作アニメの様式美の1つなのかもしれない。
調べたところ、原作でいえば5巻辺りまでの内容を詰め込んだようで
本来なら掘り下げが甘いと感じるキャラの掘り下げも
もう少しあったのかもしれないが、
1クールで話を構成する上でそういった部分をばっさり切り捨てた
ストーリー構成だからこそ、このテンポ感が生まれていたのかもしれない。
2期があるかどうかは分からないが、
あれば見たいと感じさせてくれる作品だった。
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