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「盾の勇者の成り上がり」レビュー

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評価 ★★★★☆(67点) 全25話

あらすじ 図書館で四勇者について書かれた本を手にとった大学生の岩谷尚文は、盾の勇者として異世界にある国家メルロマルクに召喚された引用- Wikipedia

なろうであってなろうでない

原作は小説家になろうで連載中の小説作品。
監督は阿保孝雄、制作はキネマシトラス

異世界転送


引用元:©2019 アネコユサギ/KADOKAWA/盾の勇者の製作委員会

なろう系といえば「異世界転生」だ。
これまで多くアニメ化してきた作品は大体が異世界で転生し、
その際に最強の何かを手に入れて異世界で無双するパターンが多い。
しかし、この作品はちょっと違う。

主人公が図書館で本を読んでいると突然、異世界へと召喚される。
「転生」ではなく「召喚」されるタイプの作品だ。
しかも、召喚されるのは主人公だけではない。
他にも「剣」「槍」「弓」をもった勇者が異世界から召喚されており、
主人公は「盾」の勇者として召喚され、世界の危機を救ってほしいと言われる。

正直なろう系というよりは90年台~00年代のライトノベルのような雰囲気だ。
重厚な雰囲気の世界観は古き良き剣と魔法の世界を感じさせ、
「軽いノリ」で始まることも多いなろう系のイメージとはかなり違う。

ステータス画面などの最近のなろう系のような要素はありつつも、
主人公がいわゆる「俺TUEEE」のように最初から強いわけではない。
いい意味でなろう系っぽくなく、なろう系が嫌いな方でも
強い拒否感は生まれないだろう。

冷遇と裏切り


引用元:©2019 アネコユサギ/KADOKAWA/盾の勇者の製作委員会

召喚されたのは4人の勇者だが、主人公だけ冷遇されている。
彼は盾の勇者だ、その名の通り盾を使って戦うことができるが
盾以外の装備を使うことができない、剣すらもてない。
それゆえに盾の勇者は使えないとされている。

驚くほどゲーム的だ、簡単に言えば職業による装備規制だ。
ゲームをやったことがある人ならばわかるだろう。
だが、普通「タンク職」でも剣くらいは装備できる。
しかし、勇者にはガチガチの装備規制がある。

しかも、なぜか主人公だけ召喚された異世界がモチーフになったゲームを
元の世界でやっておらず、他の勇者と違い異世界の知識がない。
弱いとされる盾であることと、異世界の知識がないことから
彼の仲間は他の勇者と違い仲間が一人しかいない。
見目麗しい彼女はあえて主人公のパーティーに単独で加わった。

しかし、そんな彼女に裏切られる。
金も盗まれ、高い装備品も取られ、主人公は外せない伝説の盾と
一張羅のみの状況だ、それだけではない。彼は「強姦」の罪まで着せられる。
徹底的だ。

色々なアニメ作品を見てきたが、
なかなか主人公が「強姦」の疑いをかけられる作品はない。
能力も、金もなく、やっていもいない罪まで被せられ、国民からも嫌われる。
徹底的にどん底の状況に主人公が追い詰められる所から物語が始まる。

まさしくタイトル通り、この絶望的な状況から「成り上がり」が始まる。
彼はどうやって冤罪を晴らすのか、どうやって周囲の信頼を得るのか、
どうやってここから「成り上がる」のか。
この作品の1話は1時間SPになっており、
あえて主人公が裏切られるまでの展開を「1話」で描いている。

1時間SPにした意味がきちんとあり、制作側がこの作品を
面白くしようという心がけを感じる作品だ。

奴隷なヒロイン


引用元:©2019 アネコユサギ/KADOKAWA/盾の勇者の製作委員会

なろう系作品では割と「奴隷」という要素は出てくる。
大体が美少女で主人公が助けたり買い取ったりして、
その子とイチャイチャするためのものだ。
しかし、この作品の場合は必要性にかられて主人公が奴隷を買う。

なにせ主人公は盾の勇者だ、彼単体での攻撃力はほぼ無い。
攻撃要員の仲間が居るが、国中の信頼を失っている。そこで奴隷だ。
奴隷は呪いで主人に嘘をつけず、裏切ることもできない。
主人公にとっては必要な存在であり、物語としても重要な要素だ。

買った奴隷に対しても高圧的だ。
裏切られ信頼することを知らない彼だからこその態度だ。
しかし、彼は厳しくなりきれない。多くの人に裏切られ味覚すら失った彼だが、
一人の少女に対して厳しい態度を取りつつも優しく接する。
小さな亜人の子をまるで娘のように育てていく。

主人公とヒロインが互いに「生き抜くため」にレベルを上げて様を描きつつ、
二人のメインキャラクターをきちんと掘り下げ見る側に感情移入させてくれる。
特にヒロインは非常に可愛らしく、主人公が高圧的な態度から
段々と態度を緩めていくのもわかるほどに可愛い。

話が進むと段々と彼女が大人の姿に成長していくのも
この作品の楽しみところの1つかもしれない(笑)

救い


引用元:©2019 アネコユサギ/KADOKAWA/盾の勇者の製作委員会

4話までの彼の状況は悲惨だ、裏切られ、傷つき、失う。
だが、そんな彼に救いが訪れる。奴隷だった少女「ラフタリア」だ。
彼女を娘にように大切に育てたからこそ、絶望的な状況の中でも救いが訪れる。
僅かな救いではあるものの、その救いが主人公を救う。

主人公は裏切りにあい傷つくも、非道になりきれない。
本来はもっと非道な行為を行ってもいいはずだ。
しかし、非道になりきれない彼は勇者として裏切らても人を救い、村を救い、
奴隷の少女を救い、勇者として行動してしまう。
それが彼の救いにもつながり、信頼にもつながっていく。

彼の行動が結果につながるようになっている。
序盤の展開ははっきり言ってストレスを感じる展開や、
いわゆる「胸糞」と言えるべき状況も多い。
しかし、そんな中から主人公が徐々に、本当に徐々に成り上がっていくさまが
面白く、物語の登場人物に強い感情移入を引き起こさせる。

主人公がなんだかんだで主人公らしく、ヒロインが可愛い。
作品において大事なキャラクターの魅力がこの作品にはしっかりとあり、
魅力的だからこそ、彼らが徐々に成り上がっていく展開に納得ができる。
ご都合主義ではない、説得力のあるストーリー展開だ。


引用元:©2019 アネコユサギ/KADOKAWA/盾の勇者の製作委員会

主人公を含む勇者たちが呼ばれた理由は「波」と呼ばれるものが原因だ。
波は一定周期で異世界を襲い、多くの魔物とボス的な存在が現れる。
一定周期ごとにそれを倒し、波をおらわせるのが彼らの目的だ。
しかし、物語中盤になると「波」が複雑なものになってくる。

単純に魔物が攻めてくるだけではなり、異世界から別の人間がやってくる。
彼らは主人公たち勇者と敵対する関係があると告げてくる。
「波」とはなんなのか、勇者とはなんなのか。
主人公の絶望的な立場からの成り上がりだけでなく、
中盤は「波」をめぐるストーリーも気になってくる。

しっかりとした世界観の設定があることをきちんと感じさせる要素であり、
「なろう系」特有の軽さを一切感じさせない世界観だ。

断罪


引用元:©2019 アネコユサギ/KADOKAWA/盾の勇者の製作委員会

終盤、主人公を騙し偽った人物たちが断罪される。
1話でどん底に落とされ冤罪をふっかけられた主人公が、
21話にしてようやくその冤罪が晴れる。
長いみちのりだ、実質2クール近い尺の間、主人公は無実の罪を着せられている
そして、断罪される。

主人公を騙しハメた女と、
盾の勇者を憎む王が目の前で処刑までされそうになる。
だが、彼は非道になりきれない。裏切られどん底まで
叩き落とされた人物にさえ非道になりきれない。

彼は勇者であり、主人公だ。だからこその彼の行動は清々しく、
物語の主人公としての「存在感」を見せつけてくれる。
ある意味で21話が最終話みたいなものだ。
2クールの積み重ねが21話で活かされる。

これが1クールではキャラクター描写の深まりが弱く、
主人公の「憎しみ」と仲間たちとの旅を経て至った考えの説得力が生まれない。
2クールあったからこそ21話の主人公の答えが納得でき、
主人公の冤罪が晴れた爽快感も生まれている。

終盤


引用元:©2019 アネコユサギ/KADOKAWA/盾の勇者の製作委員会

ただ21話で最終話だった感じも強く、
最終話までの展開は2期へのフラグ立てのストーリー展開も多い。
ストーリーの区切りとしては悪くないものの、
「異世界の勇者」や波の秘密など残ってる伏線も非常に多い。

この作品は面白い。
面白いがゆえに先が気になる所で終わってるもどかしさも強く、
最終話の「俺たちの戦いはこれからだ」感は悪くないものの、
中途半端な所でストーリーが切られてしまった感じも否めない。

主人公がどん底の立場から、最終話の状況まで成り上がり、
ヒロインとの関係性を再認識して終わる最終話は最終話らしかったものの、
最後まで見て面白かったと言える作品だ。

総評:90年台ラノベファンタジー感


引用元:©2019 アネコユサギ/KADOKAWA/盾の勇者の製作委員会

全体的に見てよくできた作品だ。
2クールと言う癪だからこそのストーリー構成の中で、
序盤はとことん主人公をどん底へ叩き落とし、そこから「成り上がる」様を
決してご都合主義ではないストーリー展開のなかでキャラクター描写を深め、
主人公が主人公らしく存在し、ヒロインがヒロインらしく存在する作品だ。

人によっては序盤の「胸糞展開」で切る人もいるだろう。
2クールと言う尺であるがゆえにたっぷりと主人公をいじめてくれる(笑)
そういった意味では「なろう系」作品の割には視聴ストレスのある作品だ。

しかし、そのストレスがあるからこそのカタルシスがあり、
「なろう系」ではなく90年台のラノベファンタジーアニメのような
雰囲気のある作品に仕上がっている。

なろう系というだけで拒否反応が出る方もいるかも知れないが、
試しに1話を見てほしい。本当にこれは「小説家になろう」で
連載してる作品なのか?と疑うほどにきっちりとした作品だ。
90年台では当たり前だった2クールの尺をたっぷりと味わっていただきたい。
なろう系だからと食わず嫌いするにはもったいない作品だ。

個人的な感想:意外だった


引用元:©2019 アネコユサギ/KADOKAWA/盾の勇者の製作委員会

最初の1時間SPの前半はなろう系らしさがあったが、
後半で一気に変わった作品だ。1話を1時間SPにしたのは正解だろう。
2クールであるがゆえの展開の遅さは少し気になるものの、
その分、ストーリーを積み重ね丁寧なキャラクター描写が光る作品だった。

昨今、色々ななろう作品があるが、
最近のなろう作品では私は1番好きかも知れない。
なろう作品特有の軽さやサクサク感がなく、主人公も最強ではない。
ステータス画面やゲームっぽさはなろう要素ではあるものの、
そこをのぞけば90年台のラノベファンタジーアニメだ。

スレイヤーズやオーフェン、リウイ、
このあたりの作品をアニメで楽しんでた方も楽しめるに違いない。
そう感じさせる魅力のある作品だった。
ちょっと驚いたのがBDが全4巻のBOX売りになっている、
売上的には2000枚前後だがBOXだと値段が高いため悪くない数字だろう。

個人的には2期を強く期待したいところだ。
もうある程度成り上がった状態なのでこの先、
「なりあがる」という要素があるのか、気になるところだ。

「」は面白い?つまらない?

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  1. 奈良 より:

    いや結局中身は
    追放系テンプレなろうだったじゃん

    BOXにしても巻割すると
    他より安いくらいなのにな

    • 笠希々 笠希々 より:

      追放系って言葉は聞いたことありましたが、調べたらこの作品よりも後の
      追放されて復讐するパターンのなろう作品が該当するようですね。
      この作品が元祖なのかはわかりませんが、少なくとも追放系テンプレという表現はふさわしくないと思います。
      この作品が人気になったから追放系がうまれたのでは?

    • より:

      普段アニメをあまり観てない自分でもそこそこに面白かったんだけど、私は同じことワンパターンに繰り返されるのが嫌いなので、槍の思考力、学習能力の無さが本当嫌でした。
      槍の主人公に対する姿勢や、主人公がビッチに情けをかけた部分とかは完全に原作とは異なる心情からなので、
      アニメは内容的に別物みたいですね。

  2. 猫まっしぐら より:

    追放系?ってパーティを追い出されたけど実は主人公がいたからパーティが成り立ってた実はすげえやつだったとかそんな感じの流行してたやつかね。
    流行始めたのってここ数年だし盾の勇者以前にはそういう系はまだ確立されたなかったと思うわ。