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「すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ」レビュー

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評価 ★★★★☆(70点) 全65分

『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』劇場予告(60秒)11月5日全国ロードショー!

あらすじ とある秋の日、キャンプへ出かけたすみっコたちは、空にいつもより大きく青く輝いている月を発見する引用- Wikipedia

夢ってなぁに?

本作品はすみっコぐらしの劇場オリジナルアニメ作品。
すみっコぐらしとしては2作品目の映画となる。
監督は大森貴弘、制作はふぁんわーくす。

実質奈須きのこ

前作はSNS上で「実質奈須きのこ」と評価され、
私も意味がわからず足を運んだのだが、
過剰な歪んだSNSでのバズりを意識した強い言葉のせいで、
この作品の面白さや魅力の本質が薄れてしまったようなイメージだ。

当時はやっていた「JOKER」と比較するような感想もあり、
的外れで意味不明なものばかりでSNSの悪い部分が出てしまっていた。
ちょっと切ないけど幸せな気持ちで終わることのできる、
王道な子供向け作品として前作は素晴らしい出来栄えだった。
そんな第一弾から約2年ぶりの第二弾の映画だ。

すみっこ

冒頭、月に住む魔法使いたちが描かれる。
彼らは自由に魔法を使い、楽しそうに暮らしている。
魔法使いたちの五兄弟、末っ子のファイブだけは
兄たちとは違い魔法がうまく使えない。

そんな月に住む魔法使いたちが描かれた後に
地球に住むすみっコたちに視点が移る。
隅っこが大好きで、世間から少しだけはじかれた彼ら、
相変わらず彼らは本当に可愛いらしい、

シロクマはしろくまなのに寒いのが苦手、
ネコは猫らしい体に憧れ、
ペンギンは自分がペンギンなのかを悩み、
とんかつとエビフライの尻尾は
いつか誰かに食べてもらうことを願っている。

そんな愛くるしい彼らには前作と同様に基本的に
声でセリフを喋ることはない。ときおりでる字幕と、
動きと表情だけで、アニメーションだけで
彼らの心理描写がされており、幼い子供も見るからこその
細かいキャラ描写を見ているだけで楽しめる。

そこに前作と同様に優しいナレーションで補足することで、
まるで絵本を読んでもらっているかのような感覚で
前作と同様に楽しむことができる。

日常描写

前作は彼らはすぐに絵本の世界に旅立って、
絵本の中の世界を舞台に物語が展開されていた。
今作はそんな前作とは違い「日常描写」が非常に多い。

彼らがリニューアルオープンしたスーパーで
食べ物を買い、キャンプをしに行く。
そんな彼らの日時描写をゆっくり描きながら、
今作の主役とも言える「トカゲ」にフォーカスを当てている。

トカゲはトカゲではない。
彼は「すみっしー」という恐竜の子供だ。
お母さんと離れ離れで暮らす彼はいつか
お母さんと一緒に暮らしたいと願っている。
家族で離れ離れで暮らしている彼はどこか寂しさを抱えている。

キャンプに出かけた先で前におかあさんと
会った時のことを思い出す彼の表情は
嬉しさと悲しさを秘めており、大人が見ても切なくなってしまう。
恐竜だとバレてしまえば、お母さんも自分も捕まってしまう。
だからこそ彼は「トカゲ」と名乗っている。

そんな切ない事情と彼の儚い夢。
すみっこたちが抱えている夢は希望であり、
それが彼ららしさたらしめるものになっている。
そんな「すみっコぐらし」というキャラの本質を
つくような内容なのがこの作品だ。

魔法使い

魔法使いたちは5年に一度、青い満月の日にやってくる。
願いを叶えてくれる魔法使い、もしかしたら
「すみっこ」たちの夢も叶えてくれるかもしれない。

そんな彼がやってくる。
彼らは自由に街に魔法をかけていく、なんでも魔法で作り出し、
どんなことでもできてしまう5人の魔法使い。
しかし、一人だけ、「ファイブ」だけはまだまだ未熟だ。

そんなファイブがとある出来事のせいで
月に帰れなくなり家族と離れ離れになってしまうところから
物語は動き出す。

ファイブはトカゲ、そしてすみっこたちにお世話になりながら
5年後の青い満月を待つことになってしまう。
家族と離れ離れで暮らすトカゲと同じ境遇の彼に
トカゲは自分自身を重ねる。

魔法使いとしては未熟なファイブだが、
そんなお礼に彼らの夢を叶えてくれようとする。
だが、そもそも「ファイブ」には夢という概念が理解できない。

魔法でなんでもできてしまう。
見た目を変えることも、気温を変えることも、
お菓子やケーキを出すことも。
なんでも出来てしまうからこそ夢という概念がファイブにはない。

「夢ってなぁに?」

そんなファイブの疑問にトカゲは答える

「こうなりたいなーって思うことだよ」

しかし、時に夢は自分自身を苦しめることもある。
なりたい自分になれない、夢がなかなか叶わない。
それは辛いことだ。
無垢な「ファイブ」は彼らの夢を消してしまう。

夢とは人としての本質

すみっこ達だけではない、これを見ている貴方も
私自身にも多かれ少なかれ夢がある。
大人になってそれを諦めたとしても、また新しい夢ができる。
人は誰しも少なからず夢があるはずだ。

もっとお金持ちになりたいな、もっと痩せたいな、
好きなあの人と結ばれたいな。
美味しいものを食べたいな。
そんな夢。

夢があるからこそその人がその人たらしめると言える。
そのために頑張り、そうなろうとしている行動が
「自分らしさ」に繋がっている。
だからこそ、夢を失ったすみっこは「らしさ」を失ってしまう。

特に「とんかつ」はいつか食べられることが
彼にとって全てだったと言ってもいい。
夢をなくしたとんかつの「しょんぼり」した姿は
どこか心にくるものすらある。

夢が叶わなくなった、叶わないと知ってしまった
あの頃の自分を「とんかつの端っこ」に重ねてしまう。
しょんぼりしてる姿は本当に可愛らしいのに、
どこか哀愁と共感を覚えてしまう。
すみっこぐらしとは本当に不思議な作品だ。

夢を失ったすみっこ達の夢を思い出させようとする
「アジフライの尻尾」や「あげたま」達の姿は本当に可愛らしく、
そんな彼らの行動のおかげで夢を取り戻す流れを
コミカルに描きながらもホッとさせられる。

「夢を思い出させてよかったね」

心の底からそう思ってしまう。
夢を失った原因になったファイブを誰も責めたりはしない。
夢は誰かに叶えてもらうものではない、彼らは分かっている。
ファイブの優しさからの行動であるとわかっているからこそ誰も攻めない。
彼の魔法で夢が叶わなくとも、それで落ち込んだり攻めたりはしない。

すみっコぐらしの優しい世界がこの作品には広がっている。

夢という概念

物語の序盤でファイブには夢という概念すらなかった。
しかし、すみっこたちと暮らす中で夢を追い求める彼らを
見る中で少しずつファイブにも夢ができる。

家族と離れ離れになり始めて寂しさを感じ、
同じような立場のトカゲの夢を叶えてあげたいと思うようになる。
だが、トカゲの夢はそんなに簡単に叶うことではない。
すみっコたちの中で1番難しい夢といってもいい。

そんな夢を兄達に頼み、一夜限りだけでも叶えてあげようとする「ファイブ」の健気さや、
母とあそび幸せそうなトカゲの姿は涙腺を刺激されてしまう。
この時間がずっと続けばいい、だけど続かないのはトカゲ自身が1番よくわかっている。

またお母さんに会いたい。いつか一緒に暮らしたい。
そんな夢がいつか叶って欲しい、ファイブがそう思ったように見てる側にも
そう感じさせるようなストーリー構成は65分という尺をうまく生かし、
しんみりとした気分になってしまう。

夢が何かもわからず夢がなかったファイブが
夢を理解し、夢を持つまでの物語が
65分という尺の中で綺麗に描かれている作品だった。

総評 夢ってなーに?

全体的に見て「すみっコ」たちのかわいらしさを描きつつ、
家族と離れ離れになったらトカゲ、
そして今作のオリジナルキャラである「ファイブ」を
中心に夢について描かれている作品だ。

前作は思わず大人でも油断したら号泣してしまうような作品だったが、
今作はいい意味でそういった要素は控え気味ではあるものの、
ほっこりとさせられながらホロリとさせられるような作品になっている。

前作がSNSで間違った方向に過剰評価されてしまったが、
今作はすみっコぐらしのキャラの本質である彼らの「夢」を
ストーリーに組み込むことで、それぞれのキャラの魅力と
メッセージがまっすぐに伝わる作品になっていた。

お子様と一緒にぜひ、足を運んでいただきたい作品だ。

個人的な感想 まっすぐ

前作は思わず泣かされるような作品だったが、
今回はギリギリ涙腺が耐え切れるくらいの
ほどよい作品になっていた。

個人的にはちょこちょこと画面に現れる
ほこりが前作と同じく可愛らしくて仕方ない作品だった。
今から見る方は「ほこり」にぜひ注目して欲しい。

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