ファンタジー

「異世界はスマートフォンとともに。」レビュー

ファンタジー
スポンサーリンク

評価 ☆☆☆☆☆(4点) 全12話

あらすじ 神様の不注意によって死んでしまった望月冬夜は神様によって異世界で蘇らせてもらうことになる引用- Wikipedia

これがスマホ太郎だ!

原作は小説投稿サイト「小説家になろう」で連載しているWeb小説。
いわゆる「なろう」と呼ばれる類の作品だ。
監督は柳瀬雄之、制作はプロダクションリード。
この作品の後あたりから大量のなろう原作作品のアニメが増え始めた。


引用元:異世界はスマートフォンととともに。1話より
©冬原パトラ・ホビージャパン/ブリュンヒルド公国

始まって早々に神様から

「お前は死んでしまった、ちょっとした手違いで」

と言われるところから始まる。
神様のミスであり、本来ならあまりにも理不尽すぎる「死」に対して
人間であるならば戸惑いや驚きや怒りという感情が生まれるはずだ。
自分を死に追いやった人物に罵倒の一つでもぶつけたくなるのが人間だ。

しかし、主人公は一切慌てない。感情のゆらぎのようなものを一切感じず、
「現実感がない、起こってしまったことをどうこういっても仕方ない」と
まるで悟りを開いた菩薩のような達観した主人公だ。
こんな主人公にそもそも視聴者は感情移入できない。
人間として当たり前に盛ってるはずの感情を彼から感じない。

身内や友人、そういったものに対する思いもない。
これで生前、一人ぼっちの孤独の存在だったからこそ未練がないという
設定が彼にあるならまだ理解できるが、そういった描写が一切ない。
一応、祖父の存在だけは匂わせており、主人公いわく

「人の過ちを許せる人間になれ」と教えられたらしく、
その教えのとおりに主人公は神を許している。
神様に元の世界に生き返らせる事はできないと言われても、秒で納得し、
異世界への転生をすぐに受け入れる。

この作品が放映された後にも似たような「なろう」作品は多く放映されたが、
他の作品の主人公は慌てたり、戸惑ったり、怒ったりと人間的な感情をみせている。
しかし、この作品の主人公は「人間的な感情」の描写がない。

だからこそ「気持ち悪さ」が生まれている。

スマホ


引用元:異世界はスマートフォンととともに。 1話より
©冬原パトラ・ホビージャパン/ブリュンヒルド公国

神様に「なんでもしてあげる、望みを叶える」と言われ彼はなぜか、
「異世界でもスマホを使えるようにしてくれ」という
わけのわからない事を言い出す。
ある意味でこの作品で1番わからないのがここだ。

これで主人公がオタクだったり、ネット依存だったり、
スマホがどうしても必要というようなキャラクターならまだ理解できるが、
前述したように菩薩のような主人公であり、そんなヲタク的な要素は見えてこない。
彼があえて「スマホ」を異世界でも使えるようにしてくれと
頼んだ根本的な理由があまりにも不明確だ。

どうしても気になってる漫画やドラマの続きが見たい。
そういった単純な理由でもいいが、
そんな単純な理由すら描かれないのがこの作品だ。
見てる側に「感情移入」や「共感」というのを絶対にさせてくれない。
わざとか?と思うほどに突き放してくる。

そもそも、このスマホが便利アイテムすぎる。
神様との通話可能、元の世界のネット使用可能、異世界の地図対応など、
様々な機能が備わっている。

このスマホだけが主人公の特別な能力ならば、
まだ異世界スマホライフを素直に受け入れることが出来たかもしれない。
タイトル通りでスマホを駆使して異世界を生きる、これならばまだ面白そうだ。
異世界でスマホを使うという作品も多くあり、
「百錬の覇王と聖約の戦乙女」という作品ではスマホで色々と調べることで
戦略を練っていた。

しかし、スマホ以外にも主人公には色々な能力が携わっている。
身体能力強化、魔法能力強化、どんな武器でも作れるなど、
もはややりすぎなくらいステータスがMAXな
主人公であり、弱点と呼べる要素が一つもない。

トントン拍子


引用元:異世界はスマートフォンととともに。 2話より
©冬原パトラ・ホビージャパン/ブリュンヒルド公国

この作品のテンポは異様なまでに早い。
主人公は異世界でチンピラに絡まれてる二人の少女を助け、
彼女たちと「冒険者」として活動する。

これで助けた少女がひ弱な少女であるならば分かるが、
モンスター相手にも普通に戦える少女であり、決してピンチと言う状況ではない。
ちなみに2話でもチンピラに絡まれてる少女を助けている。
1話と2話でほとんど同じパターンでヒロインと出会う引き出しの少なさに
ため息しか出ない。ちなみに8話でも同じパターンを使う。

その後、モンスターを退治し、魔法を覚え、異世界人に料理を教える。
ある意味でベタな流れとも言えるのだが、サクサクと進みすぎるストーリー展開は
物語における「溜め」というものが一切ない。
どんどんと仲間が増え、どんどんと主人公が魔法を覚え、どんどんと強くなる。
ちなみに、スマホが絡むのは料理を教えるシーンのみだ。

ストーリーが進めば進むほど「スマホ」の要素が薄まっていく。
例えば主人公の前に「視力を失った母を持つヒロイン」が現れる。
このヒロインは母を直せる魔法を使える持ち主を探していたお姫様であり、
主人公と出会う。いわゆる見せ場である。

ここで主人公がスマホを活用して何らかの治療法を見出すなら、
この作品の「異世界はスマートフォンとともに。」というタイトル通りになり、
見ている側も納得できるだろう。

しかし、この作品はそんなことはしない。
主人公は「どんな魔法でも魔法の名前と効果を知っていれば使える」という
無属性魔法使いたい放題能力も身に着けており、
簡単にヒロインの母親を魔法で直してしまう。
ちなみに助けたヒロインは「公爵令嬢」であり、コネと大金をゲットする。

そんな主人公をヒロインたちは「凄い凄い」と称賛し、
出会って10分足らずで主人公に惚れている。
あまりにも「チョロすぎる」ヒロインだ。

ちなみに2話でスマホを使うシーンはヒロインの寝顔の盗撮のみである。
他にも魔法でヒロインの刀を盗もうとしたり、たまたまとはいえ覗きをしたり、
ナチュラルに犯罪を起こす主人公はシンプルな気持ち悪さを生んでいる。

トラブル


引用元:異世界はスマートフォンととともに。 3話より
©冬原パトラ・ホビージャパン/ブリュンヒルド公国

何かが起きても基本的には3分ほどで解決する。
病気の人間がいても主人公がいれば即解決、地下遺跡から古代兵器が蘇っても
主人公の素晴らしいアイデアで即解決。「苦労」というものが一切ない。
主人公に一切苦労させず、努力もさせない。
そういった「ストレス」になりやすい要因をこの作品は徹底的に排除している。

ただ、それ自体はみせ方1つでもどうとでもなる部分だ。
しかし、そんなノーストレスな環境に嫌悪感が湧く主人公がいることが、
見ている側にはストレスになる。

なんの努力もなく与えられた力でやりたい放題する。
美少女をはべらせ、地位を得て、大金をゲットする。
これで少なからず主人公に愛着を持てたり、主人公に感情移入できれば
彼の成り上がり街道まっしぐらなサクサクストーリーも
楽しめる部分はあるかもしれないが、感情移入を拒否してくる主人公だ。

意味のわからない台詞も多い。例えば3話。
3話で主人公は異世界の人たちに「将棋盤」を提供しており、
そんな将棋に異世界の人がめちゃくちゃハマる。ここまではいい。

3話の後半で主人公たちは遺跡の「古代兵器」と戦う。
魔法が吸収され、破壊しても再生されるという敵、そんな敵に主人公は
こんなことを言い放つ。

「魔法を吸収し異常に硬い強度。何か弱点はないのか…?
僕たちの魔力を奪って再生するなんてまるで将棋みたいだ…」

この時点で何が将棋なのかがまるでわからない。
駒を奪うと言う部分と、魔力を奪うと言う部分を将棋に例えたいのかもしれないが、
例えが下手すぎてまるでピンとこない。
敵の「核」の部分を魔法で抜き取り、それを破壊して戦いを終わらせる。
どこが将棋なんだろうか(苦笑)

主人公の「台詞」の意味不明さでさらに感情移入をさせない。
ココまで徹底的に「感情移入」というものを拒否する作品は
この作品くらいかもしれない。
ちなみに「将棋」云々のくだりはアニメオリジナルだ。

そんな主人公をヒロインたちは「凄いすごい」と持ち上げ惚れ、顔を赤らめる。
ぞわっと鳥肌が立つような嫌悪感だ。
ハーレムでも「主人公のモテる理由」が納得できれば楽しめる。
だが、モテる理由が「神様からもらった力」でしかなく、納得ができない。

異常なまでのテンポの良さ


引用元:異世界はスマートフォンととともに。 5話より
©冬原パトラ・ホビージャパン/ブリュンヒルド公国

この作品のある意味で「いいところ」は異様なまでのストーリー展開の速さだ。
まるで総集編のごとく、本来ならもっと丁寧に尺をかけて描く所を
この作品は一切、丁寧に尺をかけて描いたりしない。
なにかトラブルが起きても基本的には5分以内に解決する。

これで丁寧に描かれれば主人公への不快感がもっと強まるところだが、
まるでギャグアニメのようなテンポで描かれてるからこそ、
その不快感や作品に対するツッコミどころを「ギャグ」として
認識することで見ることができる。

本当に異常なまでのテンポの速さだ。
ステータスMAXで異世界に転生し、美少女3人と冒険、
お姫様を助けて、結婚を申し込まれて、神獣を使い魔にして、
大金と豪邸GET、ドラゴンを倒して、妖精族の長と仲良くなって、
ホームレス少女をメイドにし、武田信玄を倒し、古代遺跡で人造少女GETなどなど

もはや作品を見ていない方にしてみれば「???」となる展開かも知れないが、
この作品の内容その通りに書いている。
この大まかな流れの中にも細かいイベントがあるが、
そんな細かいイベントなど3分もかからずに描かれて終わる。

こうやって文章で書いてしまうとすごく「濃い」内容に見えるかもしれないが、
そんな濃さはまるで感じない。あっさりサクサクでどんどんどんどん
ストーリーを進めてキャラを追加しまくる。
この作品は「スマホ太郎」と言われる理由はここにある。

ある日おじいさんが川で桃を拾ってきてそこには桃太郎が入ってて、
成長して鬼退治をしにでかけ、犬やキジや猿を仲間にして鬼と戦って
宝をゲットして帰りました。

そんな絵本のようなストーリー展開でこの作品は話を勧めている。
本来はもっと、そこに「間」があるはずだ。
積み重ねてストーリーに厚みを出さないといけない部分を出さずに、
子供向けの絵本のようなサクサクとしたストーリー展開ですすめる。
同じ状況に15分以上居ることがまるで無い。常に場面展開する。

9話でようやく、ちゃんとした「敵」キャラがが出てきても
敵の力の源を主人公があっさりと盗み破壊してしまう。
本来は苦戦するシーンやきちんと戦うべき部分なはずなのだが、
そんなことは一切しない。まるでギャグアニメだ。

「私にはこの宝玉がある!」
「よし!それ盗んで破壊してやった!」
「ぎゃぁぁああ!」

このレベルの話を大真面目にやってるのがこの作品だ。

作画


引用元:異世界はスマートフォンととともに。 7話より
©冬原パトラ・ホビージャパン/ブリュンヒルド公国

作画のレベルも相当に低く、演出も悪い。
異世界であるがゆえに「魔法」もかなり出て来るが、いちいちダサイ。
主人公が最初に戦闘で使う技は「砂による目潰し」と行う魔法だ。
そして魔法を使われた様子が↓である。


引用元:異世界はスマートフォンととともに。 2話より
©冬原パトラ・ホビージャパン/ブリュンヒルド公国

どうだろうかこのダサさ(苦笑)
原作の文章でどう表現されているかわからないが、
アニメーションとしての表現で「砂による目潰し」の魔法がこれでいいはずがない。
戦闘シーンも止め絵が多く「アニメーション」としての動きの面白さはほとんどない

無意味に街の外観や路地を映すようなシーン、違和感を感じる構図、
止絵の多さから、そもそもの制作費が足りてないのかもしれないが、
あからさまにヒロインの顔の作画が省略されていたり、
とめえばかりの戦闘シーンは面白みにかけてなんの盛り上がりもない。

ただでさえ主人公に感情移入できずかっこいいとも思えないのに、
そんな主人公の戦闘シーンもかっこ悪いため余計に厄介だ。

ハーレム


引用元:異世界はスマートフォンととともに。 12話より
異世界はスマートフォンととともに。 話より
©冬原パトラ・ホビージャパン/ブリュンヒルド公国

ヒロインたちはヒロインたちで
「みんなで主人公のお嫁さんになろう」と結託している。
これで主人公をめぐるヒロイン同士があれば面白いのだが、
一夫多妻が認められている世界であり、相手が12歳だろうが関係なく
「結婚」できる。主人公にとって都合の良すぎるハーレム世界だ。

ヒロイン同士で主人公を巡る争いが起きるわけでもなく、
主人公が一人のヒロインを決めるわけでもない。
酒池肉林の限りを尽くせる状況が生まれている。

そんなヒロインがどんどんどんどん増える。
どこまでヒロインを増やせば気が済むんだどともうほどに増やしまくり、
最終的にはアニメでは出てきてすら居ないヒロインまで嫁候補になって終わる。
もはや意味不明だ。

結果的に1クールひたすらに主人公の嫁集めをみせられただけだ。
最終話のCパートにはそれまでOPに出ていたキャラがいきなり主人公の
前に現れて自己紹介をして終わる。
一体何のために出てきたのか本当に意味不明なままだ。

総評:これがスマホ太郎だ!


引用元:異世界はスマートフォンととともに。12話より
異世界はスマートフォンととともに。 話より
©冬原パトラ・ホビージャパン/ブリュンヒルド公国

全体的に見て「面白い」「面白くない」以前の問題だ。
この作品の何の困難もないサクセスストーリーを好きな人も居るのだろう。
いわゆるシリアスな展開やストレスになる展開は一切なく、
主人公=見ている人にとって都合の悪い展開はなく、
気持ちの良さという快楽だけできているといってもいい。

もし自分にとって都合のいい世界と都合の良い設定と都合の良い展開しか
起こらない人生ならばこうしたい。
そんな願望を見ている人に全て叶えてくれるような作品だ。

神から力を与えられ、美少女を囲い、絶対に誰にも負けず、
大金を持ち、権力を持ち、豪邸に住む。
まるで雑誌の裏側の「幸運になれるアイテム」に書かれた成功談のような
サクセスストーリーでしかない。

しかし「小説家になろう」という媒体のメインターゲット層である中高生ならば、
サクサクと進んでいく「絵本」レベルの分かりやすい展開と、
ご都合主義すぎるうえにあり得なさすぎるサクセスストーリーと
最強すぎる主人公に自分を投影し楽しむことができる人もいるかも知れない。

しかし、悪すぎる作画、尺稼ぎのSDキャラの小劇場、
ご都合すぎるストーリー展開、なんの努力もなくチートな力を得た主人公。
どこをどう愉しめば良いのか?と考えることが無駄と思えるほどだ。

私はこの作品を「AI」が作りましたと言っても納得してしまう。
オリジナル性と言う部分はなく、どこかでみたヒロインたち、
どこかで見た魔法、どこかで見たストーリーでしか無い。
要素をかけ合わせただけの作品でそこにオリジナル性はない。

この作品を楽しむためには「考えて」は駄目だ。
「いかにこの作品の主人公になりきるか」というのも大事だ。
雑誌の裏側のあやしげな幸運アイテムを買ってしうような感じで、
描かれていることをなんの抵抗もなく受け入れ信じる。

この作品の主人公に強く感情移入し、
「俺は望月 冬夜だ」と強く自己催眠をすることではじめて楽しむことができる。
それかこの作品を「ギャグ」と認識するしか無い。
主人公の行動は全てボケであり、視聴者がそれを突っ込むことで成立する。

おそらく制作側もこの作品を面白くしようとはしていない。
サクサクなストーリー構成にすることでギャグ的にすら感じる部分も多く、
本来は原作でももっと描かれてる部分をあえて省いている。

そうすることで、この作品の面白さである「成り上がり」感を強め、
余計なシーンや台詞を省くことでテンポの良すぎるほどのストーリー構成に
する事で、主人公に対する嫌悪感をなるべく薄め、ツッコミどころを
ギャグのように描写することで回避し、有象無象のヒロインをどんどん出すことで
一人くらい視聴者の好みにハマってくれるかもしれない。

面白くするのではなく、どうにかしようとしてる感じのある作品だった。

個人的な感想:見返しても


引用元:異世界はスマートフォンととともに。 10話より
©冬原パトラ・ホビージャパン/ブリュンヒルド公国

2年ぶりにこの作品を見返したが、よりひどい部分が見つかるだけだった。
数々の「なろう」原作のアニメがこの作品以降も多く生まれ、
もしかしたら、今見返したらこの作品も楽しめるかも?という
一筋の希望をもとに見返してみたが、より酷いところが目についてしまう。

原作では、この後、なんかもう神とかになっていたりロボットに乗っているらしい。
ロボットに乗って戦うのは少年の夢であり、新世界の神になりたいと
1度は思うはずだ(笑)
ある意味で中学生男子の全ての願望を叶えるような作品だったとも言える。

まだ見てない方は試しに1話を見てほしい。
この作品を下回る作品はなかなかお目にかかれない

「」は面白い?つまらない?

この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください

  1. 匿名 より:

    え、この出来と反響で2期始動するんですか・・・・