評価 ★★☆☆☆(30点) 全83分
あらすじ 動画配信サイトを中心にさまざまな活動を行う6人組エンタテインメントユニット「すとぷり」。顔出しせず、メディア出演時はイラストキャラクターで活動している彼らを主役に描くアニメーション映画。引用- Wikipedia
ファンが見れば70点、ファン以外が見ると…
本作品はYouTubeなどで活躍しており、紅白にも出演した
「すとぷり」の劇場アニメ作品。
監督は松浦直紀、制作はライデンフィルム
ミリしら
レビューを始める前に前提条件として、
私は「すとぷり」に関してほぼ何も知らない。
紅白に出たということや、メンバーの騒動などが
SNS上で流れてきたくらいで
「そういうグループもいるのかー」くらいの情報量だ。
いわゆる、ミリしらである。
女性ファン、特に小中高生に人気の歌い手グループという
認識のもとにアニメ映画を見に行った奴の
レビューとしてお読みいただきたい。
ストーリー、作画、演出
この作品はジャンルとしては青春学園日常ものであり、
ストーリー自体はベタ、よく言えば王道だ。
メインキャラクターが通う学校の廃校が決定し、
彼らにとってこの学校で行う最後の文化祭が秋に行われる、
その秋の学園祭を盛り上げるためにメインイベントをどうするのか、
メインキャラが話し合った結果、ライブをすることが決まり、
色々とトラブルはありつつも最後はライブをして終わる。
それがタイトルにもある通り「すとぷり」という
グループの始まりの物語として描かれている。
これは別に史実などではなく、あくまでも創作上の
ファンタジーであることはわかるものの、
このストーリー自体は意外と悪くない。
この手のアイドルものや部活ものとしては、
かなり王道のストーリーであり、わかりやすいストーリーだ。
私が見に行ったときは小学生くらいの女の子もチラホラ見かけており、
そういったターゲット層を考えれば、
このシンプルながらもストレートなストーリー自体は悪くなかった。
作画に関して言えばそこまでクォリティが高いわけではない。
昨今のアニメ映画の作画のクォリティが上がりすぎているということもあるが、
この作品は至って普通だ。
ただ演出面ではきになるところもあり、
やたらと目だけを映すようなアップなシーンが多かったり、
ライブシーンでのカメラワークが一辺倒だったりと、
ちらほらとは気になる部分はあるものの、
作品全体の完成度としてはそれなりに高い作品だ。
ただ、ミリしらであるがゆえに気になった部分も多い
犬
すとぷりのメンバーは6人いる、そのうちの一人である
「莉犬」というメンバーが一応主人公として
話を回す役目を負っているような印象だ。
そんな彼の見た目、キャラクターデザインが謎だ。
なぜか彼だけ犬の耳と尻尾がついている。
他の5人は普通の人間なのに、彼だけが犬人間であり、
彼以外にもそういう見た目なキャラが居るならば
そういう世界として認識できるのだが、
彼だけが犬が擬人化したようなキャラクターデザインになっている。
これがどうにも最後まで引っかかってしまう部分でもあるが、
特に意味はないのだろう、そういうキャラデザのVTuberが出てると
思えば飲み込めなくはない。
日常
序盤から中盤までは高校生である「すとぷり」の日常が描かれている。
文化祭のメインイベントについて話さないといけないのに、
莉犬以外のキャラは積極的に会議に参加せず、
各々がやりたいことをやっていて部活も学年もバラバラだ。
そんな彼らが少しずつ日常の中で中を深めていき、
1つの目標に向かって進むようになり、結果的に
「すとぷり」というグループが生まれる、
この流れ自体は悪くない。
ただ、その日常がファン以外には厳しい。
例えば喫茶店で学園祭のメインイベントをどうするのかという
会議が行われる。すると各キャラがそれぞれ案を出してくれる。
自主映画をとろう、朗読劇をやろう、クイズ劇をやろう、
ファッションショーをやろうという具合だ。
案がでるたびに妄想でもしもそれをやった場合どうなるのかという
ギャグパートのようなものが描かれるのだが、
ファンではないものからすると、退屈なギャグパートでしかなく、
しかもそれが5人分だ。
会話も各キャラの出番を平等にするためなのはわかるが、
いちいちセリフを細切れにして順番に喋っているような感じもあり、
それぞれの出番を平等にするための日常パートの
テンポがかなり悪くなってしまっている。
これはソシャゲ原作アニメなどの、
原作から人気の高いキャラが複数いる場合のアニメでも
よくある欠点ではある、ファンならば楽しめるかもしれないが、
ファン以外にはかなり厳しい日常パートだ。
ファンならば彼らのYouTubeをみるような感じで、
ボケやギャグを楽しめる部分もあるのだろう。
実際、少し離れた席に座っていた小学生くらいの女の子の
笑い声は時折聞こえてきていた。
そう考えれば日常シーンはあくまでもファンサービスとして飲み込める。
しかし、ファン向けと考えても飲み込めない部分がいくつかある。
タイヤ交換
中盤で夏休みに入り、みんなで海に行こうという流れになる。
その道中で、恐らく夫婦が運転していた
キッチンカーが立ち往生しているシーンが有る。
そんなキッチンカーを見つけた「すとぷり」様ご一考は
キッチンカーに近づき、タイヤが故障していることに気づく。
みなさんはこのあと、どういう展開になると予想するだろうか。
もし、私が同じ場面に遭遇したら無視である。
大人が二人いてスマホもあるならJAFなどに連絡すればいい、
そもそもタイヤの故障など一般人にはどうしようもない。
しかし、すとぷりは違う。
彼らは応急処置ではあるものの、タイヤを直してしまう(笑)
しかも、その方法自体はYouTubeの動画を見ながらだ。
ちょっと意味不明すぎる展開だ。
これで自転車のパンクくらいならまだわかるが、
自動車、しかも結構大きめなキッチンカーのタイヤを
素人の高校生がYouTubeを観ながら修理する。
しかも他人の車だ、なにかあったら大事故だ。
一応、応急処置なのでと言っているものの、
ちょっと意味不明すぎる展開だ。
タイヤの修理ができるすとぷりかっこいい!とファンならば
なるのかもしれないが、あまりにもぶっ飛んだ展開に
ファン以外だとちょっと笑いすら出てしまう。
その後の展開も度肝を抜かれる。
急に歌うよー
すとぷりは紅白にも出るくらいいろいろな楽曲をリリースしている。
それゆえに、そんな彼らのアニメ映画なら
アイドルアニメのように多くの楽曲が流れる、
そんなイメージがあるかもしれないが、楽曲自体は控えめだ。
しかし、中盤で海の家でバイトをする展開になるのだが、
そこでメインキャラの一人に幼女がピアノのアプリがインストールされた
スマホを唐突に渡される。
このキャラクターは作曲が得意なことはそこまでで語られており、
なにか弾いて良いムードがただようのかなーと想像できる。
だが、違う。
彼がピアノを弾き出すと、それを聞いた莉犬以外の3人が歌い出す。
しかも、しっかりとパート分けして(笑)
これでここまでのストーリーで彼らがライブをやることが決まっていて、
曲作りや練習などをしているなら理解できるのだが、そうではない。
即興で奏でた曲を、即興でパート分けして歌い出すのが
すとぷりだ(笑)
これがディズニー映画ならそういうミュージカル的なシーンとして
飲み込めるが、急にパート分けされて歌い出すのは
さすがに笑うしか無かった。
その後の展開は、この件もあって文化祭でライブをやることがきまり、
すとぷりが結成されて終わる。
序盤から中盤までの日常パートはファン以外には厳しいが、
中盤からはファン以外が観ると突っ込みどころの多い部分も多く、
逆にそこを楽しめる作品でもあった。
Raychell??
みていて謎にしか感じず、映画を見終わったあとに
調べて納得したのだが、すとぷりの映画なのに
映画冒頭で流れる曲がすとぷりの曲ではない。
何を言っているか意味不明かもしれないが、私も観ていて意味不明だった。
唐突に女性アーティストの曲を莉犬がききだして、
街中でアーティストの看板などを見かけるシーンも有り、
この女性アーティストは一体誰なんだ?と頭の中で
?マークが浮かびまくりだ。
すとぷりに関して何も知らなかったため、
もしかしたら、すとぷりと関わりが深い歌い手やVTuberなのかな?と
思ったのだが、映画を見終わった後に調べると
「Raychell」さんという方だ。
この方はアーティストであり声優で、バンドリなどにも出演されている。
ちなみにバンドリも、この作品もブシロードが関わっており、
ブシロード声優である三森すずこさんなども
ちょい役で出ていたりする。
つまりは大人の事情だ(苦笑)
アイマスやラブライブの映画の冒頭でメインキャラが
なぜか一切関係のない男性声優の曲を聞いていたら
違和感があると思うが、そんな違和感をいきなりぶつけられてしまう。
すとぷりのファンはすとぷりを観るために、映画に来ているはずだ。
それなのに冒頭で関係のない女性アーティストの曲を流すのは
かなり疑問でしかない作品だった。
総評:ファンが見れば70点、それ以外が観ると…
全体的に見てファンが見れば楽しめる作品なことはわかる、
日常を描きながら6人の出会いと、掘り下げつつ、
すとぷりというグループが結成するまでの流れを描いており、
このストーリー自体は王道だ。
ただ日常シーンが「すとぷり」というグループをしっていないと
厳しいものが在り、その日常シーンがなければ
45分で描ける話を日常シーンをいれることで90分ほどの
映画にしているような作品だ。
その45分はファンサービスであり、ファンならば楽しめるはずだ。
しかし、ファン以外がなミリしらな人が行くとかなり厳しい。
グダグダとした日常パートもそうだが、
メインキャラのうちの半分とまでは言わないが、
二人ほどの演技はかなり気になるところだ。
ファンにとってはいつもの彼らの声で自然に聞こえるかもしれないが、
声優としてみると演技が厳しい部分が多く、
棒演技とまではいかないものの、台詞を読んでいますという
感じの印象が強い演技をしている人もいる。
アニメーションのクォリティ自体は普通であり、
特に言及するほど良くも悪くもない。
一部の演出やカメラワークは気になるものの、
キャラクターの描写はしっかりとしているものの、
最近のアニメ映画と比較するとやや見劣りする部分はある。
この作品はファンが行く映画であり、
ファンが楽しめればいい作品ではあるものの、
なぜか大人の事情で関係のない女性アーティストの曲が
入っているなど違和感のある部分もある作品だった。
あくまでファンが見れば70点、もしくは満点以上の作品だろう。
しかし、それ以外が見ると30点かそれ以下に感じる作品だ。
ただ、それもTVアニメの続編のアニメ映画を、
TVアニメを見ずに観に行くようなものであり、
ファン向けに割り切った映画としては及第点な作品だったのかもしれない。
個人的な感想:お呼びでない
本来、私のようなアラフォーおじさんが見る映画ではない。
これが地上波のアニメならば新規層などに配慮した
作品にしたほうがいい部分もあるかもしれないが、
あくまでも映画であり、ファンが自らの意思で見に行くものだ。
だからこそ、本来は私のようなファンが見に行ってレビューする道理はない。
しかしながら1オタクとして気になる部分もあり、
炎上覚悟で見に行ったものの、意外と見れる部分もあり、
ファンが見れば楽しめるんだろうなと感じる作品だった。
ただ、そこを差し置いても、
ブシロードが絡んでいるからこその大人の事情を
ビンビンに感じる部分などもあり、
そのあたりはファン向けだからこそ、
もう少し配慮できなかったのかと感じる部分だ。
余談だが紫の彼がドジっ子キャラになっており、
あの騒動のせいもあって、
「あの騒動を起こしたのもドジっ子だったからか?」などと
余計なことを邪推してしまった(苦笑)
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