SF映画

「スプリガン【劇場版】」レビュー

3.0
SF
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評価 ★★★☆☆(58点) 全90分

スプリガン劇場予告

あらすじ はるか超古代、現代を遥かに上回る科学力を持つ文明が存在した。深海から引き揚げられた金属板に、その超古代文明の人々からの警告が記されていた。引用- Wikipedia

戦って、死ね

本作品の原作は1989年から1996年まで連載されていた漫画作品。
総監督「大友克洋」というキャッチコピーのもと作られた映画作品。

オーパーツ

この作品は非常にわかりやすい作品だ。
超古代文明のテクノロジーが地球の随所に眠っており、
そんなテクノロジーが悪用されないことを防ぐための組織
「アーカム」が存在し、そんな組織の所属し戦う存在を「スプリガン」と呼ぶ。

そんなスプリガンである少年が主人公だ。
超古代文明のテクノロジーを奪い、悪用しようとする組織に対し、
一人の少年が挑む。
普段は普通の高校生、だが実は裏の組織の特殊工作員という
「中二病」心をくすぐる設定はこの時代の少年漫画原作特有のものだろう。

そんな主人公の同級生が
「人間爆弾」に変えられ自爆するというところから物語は始まる。

音量バランス

ただ序盤から気になるのが「音量バランス」だ。
妙にキャラクターの音声が小さく、BGMなどに隠れてしまう部分が多い。
キャラの声を聞きとろうと音量を上げるとBGMもでかくなってしまうため、
見ている側の音量バランスも難しいことになっている。

これは私が見ている環境のせいかもしれないと思ったのだが、
AmazonのBDのレビューを見ると同じようなレビューが
ちらほら見受けられるので、このBDの問題なのだろう。
当時劇場で見れば違ったのかもしれないが、
現在は配信サイトなどでも配信されておらず、円盤しか見る方法がない。

キャラの立ち位置などで音量バランスを変えているのはわかるが、
そのせいで余計にキャラクターの声が聞き取りづらいシーンが多く、
シーンが切り替わるたびに音量ボリュームをいじらないといけない。
かなりみていてストレスが溜まってしまう。

アニメーション

そんな音量バランスの問題はあるものの、
アニメーションとしてのクォリティと迫力は凄まじい。
特に序盤の「逃走劇」は街の中を主人公が走り回りながら
敵を次々と倒していく。

文章にするとこれほどシンプルなシーンではあるものの、
パルクールばりのアクションとキャラクターの動き、
キビキビとした戦闘アクションは思わず「おぉ!」と唸るほどの
出来栄えになっており、質のいいハリウッド映画を見ているような
ワクワクする銃撃戦、街を駆け回る際の構図やカメラアングルへのこだわりを
1シーン1シーンの中で感じることができる。

銃器や車などの機械の描写に対するこだわりもすごく、
細かいシーンでの描き込みの圧と作画枚数の多さによる
圧巻の戦闘シーンはAKIRAと同様に20年以上の月日がたっても
色あせないものだ。

序盤から中盤にかけてそんなアクションシーンやバトルシーンが
連続して描かれており、息をもつかせぬ戦闘シーンの数々が
この作品の魅力と言ってもいい。

ストーリー

ストーリーはかなりシンプルだ。
「ノアの方舟」が発見され、それを巡る攻防であり、
ノアの方舟とは一体何なのか?何が目的でペンタゴンはそれを狙っているのか?
とシンプルなストーリーがまっすぐに展開されている。

ただ90分と映画としても短めな尺なこともあり、
シンプルすぎる部分もあり、主人公の掘り下げやキャラ描写が足りず、
主人公以外のキャラクターの印象も薄い。

「ジャン」などの別のスプリガンも出てくるものの、
原作では獣化する彼が今作では獣化しないなどの改変もあり、
90分しか尺がないゆえに改変してしまっている部分や、
薄味になってしまっている部分があるのはかなり残念なところだ。

原作を読んでいない人、原作ファンじゃなければ気にならないだろうが、
原作を読んでいると「キャラクターデザイン」含めて気になるところである。

悪いことを考えている敵を正義の味方である主人公が倒す。
この物語の構図自体はかなりシンプルであり、
「人殺し」として育てられた少年が「人殺しの道具」にならないようにしつつも、
人類を守るために自らを犠牲にしつつも戦う。

アニメーションの迫力があるからこそ、
このシンプルなストーリーが映える部分はあるものの、
どこか物足りなさを感じてしまうことも事実だ。

本来はアニメ映画向きの作品ではなくTVアニメ向きの作品であるがゆえに、
「ノアの方舟編」だけを映画にしてしまったがゆえの弊害も出ており、
物語自体は起承転結すっきりとまとまっているものの、
まとまりすぎて深みが出ていないような印象だ。

見終わった後の印象もどこか煮え切らない感じがあり、
スッキリと終わっているのだがどこか納得できない印象がつきまとうような
そんな作品だった。

総評:大友克洋臭全開

全体的にみてスプリガンをもとにした大友克洋作品というような印象だ。
アニメーションのクォリティは20年以上前のものとは思えないほど高く、
こだわった構図とカメラアングルとこだわりぬいた銃器や機械や車の描写、
そんなこだわりから生まれるグリグリと動く戦闘シーンは
息をもつかせぬクォリティになっており、見ごたえは抜群だ。

ただ、その一方でストーリーはシンプルすぎるくらいシンプルになっており、
原作のスプリガンを読んでいる方からすると、キャラの印象の違いや
キャラクターデザインの違い、改変要素などが気になる部分であり、
90分にまとめるために仕方ない部分はあるが、
そういった意味では悪い意味での大友克洋らしさがでている。

当時劇場で見れば違ったかもしれないが、
円盤における音量バランスも最悪であり、
今見るとこの音量バランスが最悪な中でこの作品を
みないといけないのがあまりにももったいない。

物語やキャラクターの面白さや魅力が90分という尺では
表面的なものしか捉えられておらず、
色々ともったいない作品だ。

それでもアニメーションとしての魅力は群をぬいており、
その部分の魅力はある。
アニメーションとしては100点だが、アニメとしてみると50点と
なんともレビューアー泣かせな作品だ(苦笑)

個人的な感想:久しぶりに

Netflixでシリーズアニメ化されることになり、
久しぶりにこの作品を見返してみたが、
当時は感じなかった「音量バランス」の問題がやたら鼻についてしまった。
最初にこの作品を見たときは原作が未読だったため違和感もなかったが、
原作を読んだあとだと不満点も多い。

いい意味でも悪い意味でも「大友克洋」という色に
染め上げられてしまった作品なのかもしれない。

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