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「SK∞ エスケーエイト」レビュー

4.0
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評価 ★★★★★☆(70点) 全12話

TVアニメ「SK∞ エスケーエイト」第3弾PV

あらすじ 深夜、沖縄にある閉鎖された廃鉱山で、関係者しか入れない「S(エス)」と呼ばれるスケートボードのレースが開催されていた。 その中では「ビーフ(決闘)」と呼ばれる、山頂から麓の廃工場まで 攻撃妨害なんでもありのレースバトルが行われ、大勢の観客が熱狂していた。引用- Wikipedia

子安劇場

本作品はアニメオリジナル作品。
監督は内海紘子、制作はボンズ

エス

本作品は「スケボー」をあつかった作品だ。
しかし、恐らくは多くの人が想像するであろうスケボーを
この作品はしない(笑)
冒頭から深夜の廃鉱山で「ヒャッハー!」なやつらが大集合しており、
主人公はそんなヒャッハーとなぜかスケボーで勝負をするところから物語が始まる。

コースと言えないようなコースはろくに整備をされていない。
そんなコースを彼らはルール無用で競い合う。なんでもありだ。
対戦相手に爆竹を投げてもいい(笑)
もはや何を言っているかわからないと思うが、この世界では
スケボーとはそういうものである。

1話の冒頭というこの作品のファーストインプレッションをつける部分で、
主人公の敵がヒャッハーなやつで爆薬を投げてくるスケボーアニメ、
「スケボーってなんだっけ?」とスケボーについて1回、
本気出して考えたくなるほどスケボーの概念をぶち壊してくる。

この世界では「エス」と呼ばれるレースが開かれている。
関係者しか入れない、いわば「闇のスケボーレース」といわんばかりの
レースは多くの人を魅了している。

どこか突飛な世界観とアウトロー全開な敵キャラたちがの存在が、
「コロコロコミック」や「ボンボン」で連載していた
ホビー漫画作品を連想させる。
ミニ四駆で台風をおこし、ビーダマンでコンクリートを破壊する。
そのホビー漫画のようなノリがこの作品には有る。

一歩間違えば…

そんななんでもありな闇のスケボーレースに、
もうひとりの主人公であるカナダから転校してきた男が
参加するところから物語が動き出す。
1話からクセ全開、見た目の美麗ども全開な
ピーキーすぎるキャラ付けのキャラクターがどんどん出てくる。

本来はこういうふうに1話でどんどんとキャラを出すのは悪手だ。
しかし、この作品の場合、ひとりひとりのキャラクターの存在感が凄まじく、
そんな存在感の有るキャラクターを緑川光や子安武人などの
ベテラン声優陣が演じるからこそ、より存在感とカリスマ性のようなものすら感じさせる。

一歩間違えばギャグだ、しかし、そんなギャグアニメに片足を突っ込んだ状態で
同時に「スケボー」というものを見せてくる。
アウトロー達が集う闇のスケボーレースだからこそ、
舗装されていないレース会場だからこそ、なんでもありなレースだからこそ、
予想ができない。

迫力満点なスケボー描写はさすがはボンズだ。
3DCGをうまく使いながらもアップではしっかりと手書きの作画を見せつつ、
カメラをキャラの視点に切り替えたり、アップにしたり、引いたり、
頻繁に切り替わるカメラワークがあるからこそ
スピーディーなスケボーレースに迫力が生まれている。

常に動き回り、常に暴れまわる。
何が飛び出すか、どんな技が飛び出すか、見ている側には一切予想できない。
そんあレース模様があまりにも面白く、
スピーディーかつ迫力満点でなんでもありなスケボーレースを
眉目秀麗なキャラクターがやるからこそ妙な美しさすら生まれている。

真面目に描かれているスケボーレースと、
その内容のなんでもありさやキャラのピーキーさの
アンバランスこそがこの作品の魅力だ。
真面目なスケボースポーツアニメを描くことも出来るのにあえて、
「闇のスケボーレース」を描く。

スノボじゃないよ、スケボだよ

転校生である「ランガ」はかつてスノボをやっていた経験のある少年だ。
とある出来事をキッカケにスノボから離れていた彼が、
スケボと出会い、主人公である「レキ」に教わりながら
スケートボードの魅力に、面白さにハマっていきながら上達していく。

怪我をしながらも、何度も転倒しながらも少しずつスケボがうまくなっていく様子は
非常に丁寧だ。人との交流が苦手なランガが、レキとであうことで
少しずつ変わっていく。まるで王道スポーツアニメのノリだ。

しかし、彼らが挑むのは「闇のスケボーレース」であることを忘れてはいけない(笑)
しかも、少年たちがきらびやかに青春スポーツアニメのようなことをやってる中で、
大人たちの事情も描かれる。

あくまでもコミカルに、ギャグをふんだんに入れながらも、
「スケボーあるある」的な要素をおり混ぜつつ、
二人の主人公をきちんと掘り下げていく序盤だ。
スノボーとスケボーの違いや、スケボーの技などの解説もきちんとやっており、
キャラクターたちがスケボーにハマる過程を丁寧に描いている。

なぜランガが沖縄に来たのか。なぜ彼はどこか他者との関わりと閉ざしているのか。
そんなバックボーンを描きつつも、決して重くならずに
キャラクターを掘り下げている。

才能は有るものの技術も経験も足りない「ランガ」が
経験者である「レキ」ととともにスケボーを上達させていきながら、
ときにライバルと戦い、仲間になる。
非常に王道な流れは心地よさすら感じさせてくれる。

愛の儀式

そんなピーキーさと真面目なスケボー要素と王道のストーリーが
描かれるのは序盤だけともいえる。
中盤からはやや様子がおかしくなってくる(笑)

序盤から裸で登場し、存在感全開の政治家である「愛之助」。
厳しい家で育ち、偽りの仮面をつけている。
自らの婚約者すらも自分の意志では選べない。
そんな「抑圧」された生き方をしてきたからこそ、彼の本性は歪んでいる。

スケボーは彼いわく「愛の儀式」であり、
才能ある若手には唾を付け、常に監視し、育てようとしている。
彼を演じる子安武人さんの声と演技も相まって
変態さを隠しきれていないキャラクターであり、
二人の主人公よりも1話から存在感を抜群に醸し出している。

中盤でそんな愛之助こと「アダム」と主人公が戦う流れになる。
この作品におけるボス的な存在であり、
そんなボスにふさわしいキャラクターだ。

Sの神、無敗の男、伝説のチャンピオン。
そんな彼のレースはあまりにも異質だ。
まずスタートと同時に滑り出さない、タバコを吸い出す(笑)
主人公が遥か彼方まで進んでいっても気にせずに、ゆっくりと煙をくゆらせ、
タバコの旨味を感じ、自由を味わいようやくスタートする。

意味がわからないくらいの速さだ(笑)
彼が走り出した瞬間に思わず大爆笑してしまうほどの速さ、
完全に「舐めプ」してるうえに、対戦相手の手を取り、
超高速の世界に引きずり込む。

対戦相手を何人も病院送りにしたことも納得なほど、
次元の違う「敵」の存在。
だが、そんな存在にもめげずに挑もうとする「レキ」もまた主人公だ。
誰かに勝ちたい、誰よりも早く滑りたい、スケボーは楽しい。

そんな主人公を煽るかのように抱きつき、ときには坂を登り「逆走」してくる
アダムの存在も圧倒的であり、4話でこの作品のおもしろさが絶好調に至る。
彼は「強者」を求めている。

絶対的な実力があるからこそ、己の高みに誰も居ないからこそ、
自らの高みに至る存在を彼も求めている。それが「ランガ」だ。
アダムに認められしイブはアダムの高みへと到れるのか。
もうひとりの主人公であるはずのレキそっちのけで描かれる
アダムとランガ、そして強者に挑むものの物語。

劣等感

だが決して仲良しこよしではない。
「ランガ」という存在がSを楽しんでいた多くの人に影響していく。
それはアダムしかり、もうひとりの主人公である「レキ」にもだ。
数ヶ月前まではレキはランガに教える立場だった。
しかし、数ヶ月という時間でランガはレキを抜いてしまう。

なぜ自分はランガのようになれないのか。
努力が足りないのか、センスなのか、才能なのか。
「スポーツ」だからこそ己の才能の限界と同じスポーツを楽しむ同士だからこその
「劣等感」すらも感じてしまう。

アダムとかつての友もそうだ。かつて同じスポーツを楽しんだはずの仲間の変化、
楽しく、面白くエスを楽しむだけのはずだったのに、
いつしか「アダム」はかわっていった。
政治家であるがゆえに、政治家の家で育ったがゆえに彼はそうなるしかなかった。

一人ひとりのキャラクターの掘り下げがすばらしく、
キャラクター自体はどこかぶっとんでいるものの、
ストーリーが王道だからこそ面白く、
キャラクターたちのスケボーを介した関係性が話しが進めば進むほど深まっていく。

政治家、花屋の店員、高校生、中学生、シェフ。
職もちがければ年齢も違う、本来なら関わりあうはずのない彼らが
スケボーを通して関わっていき、変わっていく。
ときには友情を、今を、立場を、投げ売ってても挑むたいものがある。

あるものは劣等感を、あるものは高みを目指すため、
あるものは抑圧からの解放を、あるものは強さを求め、
あるものは誰かを変えるために「トーナメント」に挑む。

それぞれがスケボーをやる理由、
一人ひとりがスケボーの楽しさを改めて噛み締め、競い合う。

様子が…

しかし、そんなトーナメントという盛り上がりが生まれる中で
肝心のレース内容がとんでもないことになっていく。
なにせアダムはレース中にスケボーから降り
逆走したかと思いきやスケボーで相手を殴る(笑)

確かになんでもありだ。
しかし、スケボーを降りて、なおかつスケボーで殴る。
もはや「スケボーとは…?」と思うほどにぶっとんだレース内容になっていく。
あまりにも突拍子もないレース展開は予想することは不可能だ。

逆走はアダムの技術であり、凄さを感じたのだが、
ラスボス的な存在がまさかスケボーから降りてスケボーで
殴りつけるレースなど誰が想像できるだろうか。
見ている観客もドン引きである(笑)

暴虐の限りを尽くす彼のレース模様はこれこそが
「エス」だといわんばかりの無法地帯であり、
壁に押し付けるわ、引っ張るわ、ぶん殴るわ、やり放題だ。

そんな彼に主人公である「レキ」も負けない。
かつて1度は負けた相手に臆さずに、
「スケートボード」の楽しさをもう1度味わった彼だからこそ、もう逃げない。

才能がないかもしれない、センスも負けてるかもしれない。
そんな「レキ」がもうひとりの主人公として、
「アダム」に挑むさまはまさしく主人公だ。
しかし、アダムも負けてない。

「子安劇場」開幕と言わんばかりの逆上したハイテンションな演技はさすがであり、
それまでやや存在感の薄かった「レキ」の存在感が極まると同時に、
「アダム」というキャラの魅力も頂点へと至る

レキは1度はスケートボードで挫折し友情を捨てそうになった。
しかし、彼は友情を取り戻した。だが、アダムは違う。
彼は1度スケートボードを捨て、なおかつ友情も捨てた。
友情を取り戻さぬまま、スケートボードの面白さも取り戻さぬまま、
彼は孤高の存在へと成りえてしまった。

これぞ悪役といわんばかりのバックボーンの描写がすばらしく、
友情で成長したランガと、友情を捨てて成長したアダムの
最終試合が盛り上がる。

1クールで綺麗に物語を描き、キャラクターの成長と変化を描き、
そしてスケボー?を描いた本作品は
すっきりとした視聴感を残してくれる作品だった。

総評:スケボーってなんだっけ?

全体的に見てスケートボードという題材を扱いつつも、
ストーリーは王道なスポーツアニメらしい展開だ。
だがそこに「アダム」を中心としたぶっとんだキャラクターと
「エス」というアウトローなレースを描くことで、
エスケーエイトという作品だからこその魅力をこれでもかと感じさせてくれる。

なんでもありなレースだからこそ、妨害行為ありで殴りけりぶつかりあう。
スケボーの技術だけでは勝てない。
最終レースなど「どっちが早くゴールに着くか」よりも、
「どっちが早くたち上がるか」みたいな展開も生まれている。
ボクシングアニメみたいな展開だ(笑)

しかし、根本は「スケボー」を楽しむものの物語だ。
職業も年齢も違う彼らがスケボーを通して交わす友情の物語、
そして「アダム」という男の再生の物語が1クールで描かれており、
荒唐無稽な「エス」と王道なストーリーとぶっ飛んだキャラ描写が
見事にマッチしている作品だ。

新作アニメプロジェクトも動いており、
それが2期なのかOVAなのか映画なのかはわからないが、
個人的にはこの「エス」というスケボーレースをぜひ、
スクリーンで味わいたいと感じる作品だった。

個人的な感想:緑川さん

子安武人さんの演技も流石だったが、緑川光さんの演技も流石だ。
終盤はどちらかといえば大人組のほうの物語が面白く、
彼らのレース模様に胸をときめかされた。
まあ、アダムが台無しにしていたが(笑)

やや掘り下げ不足のキャラも降り、
このあたりが続編でどうなるのかも気になるところだ。

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出演声優 畠中 祐, 小林千晃, 永塚拓馬

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