評価 ★★★★☆(70点) 全106分
あらすじ 幼くして国王である父を亡くしてしまい強欲な継母である女王によってお城に幽閉されながら育った白雪姫は次第に外の世界に憧れを抱いていった。 引用- Wikipedia
ディズニーよ、これが 実写白雪姫だ
本作品はグリム童話である
白雪姫をもとにした実写映画作品。
監督はターセム・シン、制作は レラティビティ・メディア
むかしむかし
映画の冒頭はジュリア・ロバーツ扮する「女王」による
ナレーションで始まる。
「むかしむかしあるところに女の子が生まれました。
雪のように真っ白な肌、夜の闇のように黒い髪、
人はその子を白雪姫と呼びました」
非常にベタな始まりだ。しかし、この作品はそのベタとは違う。
ベタな始まりの直後、ボヤキが入る(笑)
「思いつく中じゃそれが最高に仰々しい名前だったんでしょ?
父親は娘を甘やかし、国民は歌って踊って暮らしていました。
その頃は誰も働いていなかったのね、
歌や踊りに明け暮れてただけなんて」
非常に様子がおかしい。
「やがて王は男親だけで教えられることに限界を感じ、
新しい后を迎えることにしました。
これは娘ではなく私の物語」
もうおわかりいただけただろう、この作品はとんでもないギャグ映画だ。
あの白雪姫に対する強烈な皮肉とツッコミつつ、
物語の舞台が築き上げられている。
白雪姫
一方の白雪姫、登場して1秒で「ため息」である(笑)
ディズニーの白雪姫を想像するとありえない
深い溜息と、どこかわがままさと傲慢さを感じさせる風貌、
そして圧倒的な「美」は一瞬で心を奪われる。
雪のように真っ白な肌、夜の闇のような黒い髪、
そんな美しい白雪姫は素晴らしい衣装に身を包んでいる。
この作品で目を奪われるのは衣装だ、
「女王」の衣装の凄さは度肝を抜かれるほどの豪華さであり、
そんな衣装もあいまって国は破産しかけている(笑)
女王の傲慢さ、白雪姫に対する態度、
美しい女王のわがままな態度に耐える白雪姫の美しさ。美の暴力だ。
健気な白雪姫は女王に虐められながらも、多くの民に支えられている。
いつか白雪姫が女王の座に座る日を夢見ている。
ちょっとした名もなきモブキャラでさえインパクトが凄まじい。
例えば白雪姫がお城から出るシーンが有るのだが、
門番がこんな事を言う
「外に出してよかったんだっけ?」
「さぁな」
「どうだっけ?」
「まあいいか、黙ってようか」
「指切りげんまん」
「指切りげんまん」
どうだろうか、このウィットに飛んだ会話劇。
もう聞いているだけで心地良い。
モブキャラをただの背景で終わらせない、
作品の中の世界で息づいている。
魔法の鏡
この作品の魔法の鏡の概念は面白い。
女王は鏡の中の世界に入り、もうひとりの自分と対話する。
あくまでもうひとりの自分だ、それと対峙するのが女王の魔法だ。
「世界一美しいのは誰って言われても
いずれお望みの答えを返せなくなる」
鏡でさえこんなセリフを吐いてくる。
センスの塊のような会話劇だ。
そんな中で王子が序盤で山賊という名の小人に襲われるのだが、
その小人の独特な衣装も強烈に記憶に残り、
戦闘しながらの「曲」のインパクトも素晴らしい。
ディズニーじゃないのにディズニーの映画を見ているかのような
そんな錯覚さえ覚える。
それもそのはずだ、なにせこの作品の曲を手掛けているのは
「アラン・メンケン」だ。
ディズニー好きならご存知だろう、リトルマーメイド、
アラジン、美女と野獣、魔法にかけられて、塔の上のラプンツェル、
彼がディズニーの曲の多くを手掛けている。
だからこそディズニーじゃないのにディズニー映画を見てる気分になる。
まるで音楽という名の魔法にかけられているかのような気分だ。
7人の小人と王子様の関係性も面白く、
コミカルに物語が進んでいくさまが心地良い。
そんな半裸で逆さ吊りになった王子と白雪姫は出会う、
半裸の王子は女王にも謁見し、女王は王子に目をつける。
この作品では白雪姫と女王と王子様の三角関係だ(笑)
王子の国は豊かな国だ、欲望の限りを尽くした女王にとって
「リッチでガチムチな王子」は飛んで火に入る夏の虫だ。
この時代?だからこそのエステシーンも意味不明であり、
鳥の糞でパックをし、虫に刺させることで美を手に入れる
女王の姿に思わず笑ってしまう。
舞踏会と7人の小人
白雪姫は城の舞踏会に参加することになる。
このシーンの衣装の派手さは凄まじい、
何羽もの孔雀でも見ているかのような気分になるほど
豪華絢爛な舞踏会のシーンと、白雪姫と王子の
ウィットに飛んだ会話にクスクスと笑ってしまう。
そんな白雪姫に業を煮やした女王は白雪姫を殺そうとし、
白雪姫は小人の住む森へと逃げ込む。
小人は盗賊ではあるものの、かつては真っ当な職についていたものの
女王に追放されている。
白雪姫は機転を利かし、彼らを「義賊」に仕立て上げ、
白雪姫もまた「盗賊」となる。凄まじい展開だ。
女王もガチだ、魔法には代償が伴うものの
王子を手に入れるために惚れ薬を使おうとするものの、
なぜか子犬用だ(笑)
あまりにも予想外すぎる展開が多すぎて
見ていて楽しい。
戦え白雪姫
最終的に白雪姫は王子を助けるために女王との結婚式に乗り込む(笑)
この作品の白雪姫は毒リンゴなど食べない、
王子を待つだけではない、むしろ王子を助けにいく。
惚れ薬の魔法にかけられた王子の魔法を解くのは白雪姫のキスだ。
毒リンゴの呪の魔法にかかった白雪姫を目覚めさせる王子がいてもいい、
惚れ薬の魔法にかかった王子を目覚めさせる白雪姫が居てもいい。
ラストの展開は原作よりもアニメよりも幸せなラストになっている。
最後の最後までウィットな会話劇でおわり、
象徴たる「毒リンゴ」の使いかたも本当に素晴らしい作品だった。
ただなぜかラスト、インド映画のごとくみんな踊る(笑)
最後の最後まで理由のわからない作品だが、
とんでもなく楽しめた作品だった。
総評:ディズニーよ、これが実写白雪姫だ(笑)
全体的に見てゴリゴリに原作は改変しているが、
その改変がコメディ映画として素晴らしいスパイスになっており、
全編に渡り予想外すぎる展開になっている。
原作やディズニー版を知っていると、その逆手を行くような展開が
心地よく、毒リンゴを食べず、盗賊になり、女王と
男を奪い合う白雪姫というのが本当に素晴らしく、
この作品だからこその白雪姫像が完成されている。
ウィットな会話劇も聞いているだけで心地よく、
その会話のセンスがあるからこそモブキャラでさえ
生き生きとしている。
妥協のない衣装へのこだわりも綺羅びやかで印象が強く残り、
そこにアラン・メンケンの魔法もかかっている始末だ。
最期のインド映画ダンスは本当に謎ではあるものの、
映画の冒頭からラストに至るまでくすくすと笑えて楽しめる
本当に素晴らしい作品だった。
個人的な感想:本家の実写化
本家の実写化トを見て、作品を見ることになったのだが、
予想以上に楽しめてしまい、思わずレビューしてしまうほどだった。
本家の実写化も色々と改変しているが、
本家であるがゆえに本来はやらなくてもいい改変をしていたり、
この作品はあくまでギャグ、もはやパロディに近いが、
コメディとしてやっている改変だからこそ、それを
笑って許せてしまうものがある。
映像面に関しても衣装や背景など変にCGに頼らない画作りも素晴らしく、
ジュリア・ロバーツ演じる女王の素晴らしさと美しさ、
リリー・コリンズ 演じる白雪姫の可憐さと美しさが
本当に素晴らしかった。
本家よりも白雪姫の実写映画として完成されており、
個人的にはいい上書き保存になった作品だった(笑)