評価 ★★★★★(80点) 全83分
あらすじ むかしある城に白雪姫という美しい王女が住んでいた。幼い頃に両親を亡くしていた白雪姫は継母である女王とともに暮らしていた。引用- Wikipedia
ディズニーよ!これがディズニー映画だ!
本作品はディズニーによる初のアニメ映画作品。
世界初の長編アニメ映画であり、1937年に制作された。
監督はデイヴィッド・ハンド、制作はウォルト・ディズニー
1937年
この作品が制作されたのは1937年だ。
今から88年前、ほぼ100年前に制作されたといってもいい。
日本では白蛇伝という作品が1958年にフルカラーのアニメ映画として
制作されたが、それよりも20年も前に制作されている。
今見るとたしかに絵としてのふるさは感じる。
しかし、それがどこか絵本でもめくっているような感覚になる。
アニメーションとしてのクォリティは少しえげつないほどだ。
一言で言えばぬるぬるだ。
決して1枚絵と1枚絵をつなげただけではない、
何十枚もの絵をつなげて動きを見せる。
「アニメーション」の妙が88年前から存在し、
88年の月日が経っても遜色がないどころか
今のアニメでは表現しないレベルのことをやっている。
何気ない水の波紋、キャラクターのぬるぬると細かい動きは
ミュージカルを見ているかのように「指先」1つまでも
キャラクターに演技している。
いわゆる「ロトスコープ」の技術がすでに使われており、
人間の一挙一動がアニメと言う媒体にこれでもかと落とし込まれている。
そうかと思えば逆に動物などのキャラクターは
コミカルに描かれており、アニメアニメした動物たちと
生々しい人間のキャラクター描写が
「ディズニー」らしさを生んでいると行っても過言ではない。
シンプルに見て楽しい、見ているだけで楽しいアニメーションが
この作品にはきちんとある。
ストーリー
ストーリーも軽やかに進行していく、
幼い頃に両親をなくした白雪姫は女王である継母に
育てられていたものの、女王は白雪姫を奴隷のように扱っている。
それでも白雪姫は明るく、歌を歌い、楽しそうに暮らしている。
ある日、白雪姫は王子様と出会い恋に落ちる。
女王は毎日のように魔法の鏡に
「この世で一番美しい女は誰?」と聞くと、
女王様以上に美しく、肌は雪のように白い女性と応えたことで
嫉妬に駆られた彼女は白雪姫を亡き者にしようとする。
シンプルなストーリーではあるものの、
そのシンプルなストーリーをアニメーションで見せている。
女王の刺客から逃げた白雪姫は森に逃げ、
動物たちと出会い、小人たちが暮らしている家を片付け始める。
歌を歌いながら楽しそうに、命を狙われていようが関係ない。
白雪姫という女性はいつでも明るく前向きだ。
そんな女性だからこそ動物たちも彼女を慕い、
楽しそうに掃除を手伝ってくれる。
この動物たちの動きは本当に完成されており、
なぜディズニーが今も多くの人に愛されているのかを
感じさせるディズニー作品でしか感じられないような
動物のアニメ的な動きがたまらない。
小人
生々しいキャラの動きとアニメらしさ。
そこに「憧れ」と「夢」と「歌」と「魔法」を詰め込めば
ディズニー映画の完成だ。
小人たちが働きながら「ハイホー」と謳っているだけで楽しい、
子供の頃にみたきりで細かい部分を覚えていなかった私だが、
この曲を聞いただけで強烈な懐かしさに襲われ、
思わず口ずさんでしまう歌の良さもディズニー映画の魅力だ。
小人たちが仕事から家に帰る、そんな何気ないシーンでさえ
小人たちが歌い、体全体使って感情を表現するからこそ見ていて楽しい。
ディズニー映画はミュージカル映画の側面が強く、
ややオーバーとも言える演技をキャラクターがしている。
しかし、そのオーバーさがコミカルになり、
そして子供もセリフが分からなくても見ていて伝わりやすい。
大人も子供も同じように楽しめてしまう。
小人の家に忍びこみ、掃除をして眠ってしまった白雪姫を
不審者だと思い、こっそりこっそりと調べる小人たちの
コミカルさと可愛らしさは素晴らしく、
きちんと「見た目」でキャラの性格がわかるキャラデザも素晴らしい。
そんな小人たちの名前を白雪姫が当てていく、
日常の何気ないシーンにクスクスと笑ってしまう。
完成されすぎて怖いほどだ、ディズニーの凄さを
まじまじと感じてしまう。
白雪姫が料理をふるまい、7人の小人たちと仲良くなる。
その何気ない日常、なんてことないシーンが
一人ひとりのキャラクターの掘り下げに繋がり、
細かい表情の変化と動きの細かさへのこだわり、
ディズニーの「狂気じみた」アニメ制作を見ていて感じる。
ただ顔を洗い、手を洗う。
そんなシーンですらBGMに合わせて歌い上げる、
日常の中に音楽があり、その音楽を鳴り響かせる。
ディズニーといえばミュージカル映画であり、
その部分は好みが分かれるところではあるものの、この作品は違う。
ミュージカルではあるものの、その描き方は徹底的にアニメだ。
日常シーンはやや冗長ではあるものの、
この作品は「ディズニー」という会社が「こういうアニメができるんだぞ」
というアピールをしているようにも見える。
だからこそ、何気ない日常シーンでさえ200%の力を持って描いている感覚だ。
ラスト
そんな日常からのラストの展開は
ジェットコースターのごとく勢いよく終わる。
女王の毒リンゴを食べた白雪姫は眠りにつき、
小人から逃げた女王は崖に落ちる。
眠りについた白雪姫のもとに王子様が現れ、
キスをして目覚めた白雪姫は白馬にのり、
王子様とともに城へいき、幸せに暮らす。
キレイなラスト、すっきりとしたラストは
やや強引な部分はあるものの、
「いつまでもいつまでも幸せに暮らしました」
そんな締めの言葉が強引な部分やご都合主義な部分を吹き飛ばし、
1本の映画を見た満足感をきちんと感じさせてくれる作品だ。
総評:100年で失われた夢と憧れと技術
全体的に見てディズニー100周年作品として制作されたウィッシュと
比較すると雲泥の差だ。
キャラクターの動き1つ1つにディズニーを感じるこの作品と、
まるで感じないウィッシュ、100年でディズニー映画らしさというのが
失われてしまったんだなと悲しくなってきてしまう。
洗練された動きの描写、アニメという表現の技術、
1枚1枚の絵をつなげることで動いているように見せる、
その技術を見せたいんだという制作側の熱量、魂を見ていて感じるほどだ。
この当時のデジタルではない手書きによる厚みも相まって、
描き手の思いが1枚1枚の絵に乗り移ってるようにすら感じる。
セル画の枚数は25万枚も使われており、これは異様なことだ。
ジブリのポニョが17万枚と言われており、
それと比較すると余計に異様さがわかる。
約100年前に2億5000万ほどの制作費を投じて、
25万枚の作画で描いたからこそ歴史に残る作品になり、
今のディズニーをディズニーたらしめん作品に仕上げている。
ディズニー映画の魅力をここまで白雪姫という作品で感じられたのかと
数十年ぶりに見返して驚いたほどだ。
確かにふるさは感じる部分はある、だが、
それでも一切色褪せない魅力がこの作品にはある。
ディズニーの長編アニメ映画の原点、
ここからディズニーは始まったのだと感じさせるクォリティだ。
それだけにこの約100年の間にそれが失われてしまったのが
本当に悲しい、見ていて楽しくないウィッシュ、
偏った思考に染まった実写版白雪姫、
100年という月日で失われたものがあまりにも大きいことを
最近のディズニー作品をみていると感じてしまう。
そういう虚しさを感じる部分はあるものの、
いつかこの頃のディズニーの魂が帰ってきてくれることを
切に願いたい。
個人的な感想:ぬるぬる
もう驚くほどヌルヌルで笑ってしまった。
子供の頃は何気なくみていた作品だが、
おとなになって見返すと「えぐさ」すら感じるほどの
アニメーションのレベルの高さに驚いてしまった。
ディズニーが夢と希望と憧れを作品の中に表現するうえで、
そこには「狂気じみた」ものがあった。
だからこそ、ディズニーは愛されているのだと感じる作品であり、
初期のディズニー映画を見返したくなってしまった。
最近の作品は色々と問題を抱えている作品はあるものの、
間違いなくディズニーという会社、ディズニーの作品は
偉大だったことをひしひしと感じてしまう。
それだけに実写版がなんであんな事になったのか。
本当に残念で仕方ない。