映画

「整形水」レビュー

映画
スポンサーリンク

評価 ★★★☆☆(44点) 全52分

映画『整形水』日本語吹替版本予告

あらすじ 小さい頃から外見に強いコンプレックスを持ち、人気タレントのメイクを担当しているイェジ。タ引用- Wikipedia

美醜の代償

本作品は2020年に韓国で公開されたアニメ映画作品。
原作はLINEの漫画であり、日本では2021年に翻訳されて公開された。

魔法の水

冒頭からおどろおどろしい雰囲気が漂っている。
あまり美少女とも美女とも言えない女性が
「整形水」の使い方を説明している。
ノイズまみれのその製造はどこか怪しさを感じさせ、
その整形水の効果がどんなものなのかという期待感を感じさせてくれる。

この作品はフルCGで制作されているものの、
日本のフルCGアニメとはやや質感が違う。
「ぬるぅー」っとした動きは自然な動きではあるものの、
このぬるぬるとした動きは独特の違和感を生んでいる。
カメラも「固定」されていないからこそ余計に違和感が強い。

まるで実写の映画で、しかも「手持ち」で撮ったようなカメラワークをしており、
それがちょっと「酔う」ような間隔を与えてくる。
キャラクターデザイン自体もアニメ的というより実写的であり、
「韓国漫画」などでよく見られるようなキャラデザだ。

もう1つ気になるとすれば演出だ。
キャラクターが扉を勢いよく開けて登場するシーンが有るのだが、
このときに漫画的な表現方法の1つである「集中線」が表示される。
原作が漫画だからこその演出ではあるものの、
色々と癖がかなり強い部分がある。

ルッキズム

これはある種の「お国柄」ではあるのだが、
韓国という国は「整形大国」としても有名だ。
日本でも韓国コスメが有名になったり、韓国アイドルが人気になったりと、
日本という国以上に韓国という国は「美醜」に対するこだわりが強い。
あくまでも私のイメージではあるのだが(苦笑)

日本人の中でもわざわざ韓国に美容整形しに行く方もいるくらい、
韓国という国は日本以上に「整形」というものが身近だ。
外見による差別、外見による優劣がつきやすい、
いわゆる「ルッキズム」を日本に上に感じている国民性がある。

そんな国で主人公は「ブサイク」だ。目も細く、鼻も低い。
そんな国で生きる彼女は自分の見た目ゆえの生きづらさを
常日頃感じている。
綺麗な顔、細い体、胸の大きさが「羨ましい」と感じながらも、
彼女には手に入らない者だ。

それでもそれなりに生きてきた。
しかし、自分の見た目もネットに晒された彼女は家に引きこもってしまう。
そんな彼女のもとに「整形水」が届くところから物語が動き出す。

驚異的

整形水の効果は驚異的だ。
使えばまるで粘土をいじるように顔も体も自由自在に変えられる。
その決定的な主人公が整形水を使うシーンがカットされているのは
かなり謎ではあるものの、主人公の変化は衝撃的だ。

太った体に美人の顔、このアンバランスさが不気味さを際立たせている。
整形水は甘い蜜だ、整形手術よりも手軽に簡単に理想の顔が手に入る。
しかし、甘い蜜に代価はつきものだ。
顔を自由に変えたがゆえに、今度は体も変えたくなる。
体を変えれば今度は服にこだわり、服にこだわればまた顔を変えたくなる。

そんな欲望を「自尊心」が満たしてくれる。
周囲の自分に対する視線の変化、態度の変化、
それが彼女の自尊心を満たし、更に欲望を加速させる。
自分を見下していた人物が自分に媚びへつらい、
自分より美しかった人物と同じように自分も美しくなった。

人間の欲望に限りはない。
見た目という欲望を満たせば、次は「地位」を求めるようにな
る。
一度、整形水という「甘い蜜」を吸ってしまったがために。
その地位を得るために彼女はまた整形水という甘い蜜をすする。

彼女は欲望のあまり「罪」まで犯してしまう。
ルッキズムな社会の中で歪んでしまった彼女の心は、
見た目だけでなく心すらも「醜く」してしまった。
そういう展開を描きたいのはわかるのだが、かなり展開は唐突だ。

「見た目」にこだわった彼女が「見た目」を失い、
「見た目」を取り戻すために罪を犯す。
その見た目を失った結果も彼女のミスであり、
恩人でもある整形水の製作者を殺してしまう展開はかなり唐突だ。
誰かに「愛されたい」と彼女はいうが、彼女ば自分自身も誰かも愛せない。

例え「見た目」を手に入れても幸せになれるとは限らない。
甘い蜜を簡単にすすってしまったがゆえに、
ふと手に入れてしまったがために、彼女は自信を持てない。
変わっていのに変わったと思ってしまう顔や、
初めてできた彼氏への依存。

甘い蜜をすすり、罪の上でなりたっている幸せに
彼女は不安感じつつも浸る。

突飛

序盤から唐突な展開は多かったものの、
終盤の展開は唐突というよりも「突飛」だ。
確かにそういうニュースは流れていたものの「連続殺人犯」が
意外な人物であることがわかり、そんな犯人が彼女を襲う。

唐突に作品のジャンルが「サイコホラー」になるような展開は
展開が急すぎてあまりついていけず、
殺人犯も主人公に抵抗されて胸を一突きされてるのに顔色1つかえない。
どこかシュールな雰囲気すらただよっている。

日を求めるあまり他人のパーツを求める殺人鬼というのはいいのだが、
そのパーツをそのまま「目」などにつけるわけではなく、
「足」につけたりする(笑)
ちょっと意味不明な思考の殺人鬼に終盤めちゃくちゃにされたような作品だった。

総評:それでも貴方は整形しますか?

全体的にみて作品で描きたいことはわかる
「ルッキズム」な社会に対する警告と、美醜恐怖症や整形問題などを
「整形水」というファンタジーなアイテムを使って
序盤から中盤描いており、韓国というルッキズムな社会が生み出した
作品ということを強く感じる作品だ。

ただ、そんな序盤から中盤までは良いのだが終盤で
かなり唐突にサイコホラーな展開になってしまい、
しかもラストの展開はシュールさが強く笑ってしまうほどだ。

アニメーション自体もCGのクォリティは高いものの、
ぬるぬるとした動きはやや違和感をうみ、
カメラワークも固定されていないシーンが多くゆらゆらと
微妙に動いているため独特の違和感と気持ち悪さがでてしまっている。

1度見ると印象に残る作品ではあるものの、
色々と突飛な展開が多く、本来は30分位でまとまるような内容を
90分に引き伸ばしつつ、引き伸ばしたはいいものの
どうまとめようかと悩みシュールな感じになってしまったような
そんな印象すら受ける作品だった。

個人的な感想:シュール

これは私の偏見なのかもしれないが、色々な意味で
「韓国」らしさを感じる部分のある作品だった。
キャラクターデザインや整形がテーマという部分、
最後の突飛な展開と韓国イズムのようなものを感じる部分が多く、
日本のアニメ映画ではなかなか味わえない趣を感じる作品だった。

ただ何度思い出しても殺人鬼の最後の姿がシュール過ぎて…
下手したら夢に出そうだ(笑)

「整形水」は面白い?つまらない?

この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください