評価 ★★★☆☆(45点) 全12話
あらすじ 仕事をしている中で銃弾に斃れたサラリーマンはルシエルという名前で異世界転生し、平和な生活を送ることを願った。引用- Wikipedia
タイトル詐欺
原作は小説家になろうで連載されていた作品。
監督は玉川真人、制作は横浜アニメーションラボ、クラウドハーツ。
とんでもねぇ死に方だ…
なろうといえば異世界転生だ。
そんな異世界転生のお約束でも有るのが「血を吸うトラック」だが、
この作品では警察から拳銃を奪った犯人が
警察に追いかけられ捕まる際に撃った弾が主人公に当たってしまう(苦笑)
かなりの不運であることは間違いない。
トラックによる交通事故など色々と異世界転生にも理由があるが、
平和な日本で銃弾がたまたま当たってしまうなど、
下手したら雷に打たれる確立よりも低いだろう。
そんなあまりにも無惨な死に方をしたせいか、
神的な存在によって主人公は唐突に異世界に転生されるところから
物語が始まる。
展開自体はテンプレ的では有るものの、
そのテンプレを独特な角度で描いている作品と言えるかもしれない。
特にキャラクターデザインに関しては独特の癖がある。
なろうといえば美男美女が当たり前のように出てくるが、
この作品はなんとも絶妙なキャラクターデザインをしている。
主人公は美男といえるかもしれないのだが、
この世界のキャラクターは全体的に無駄にガタイがよく、
女性キャラクターでさえ180cmはありそうな見た目をしている。
いわゆる「萌え」的な要素がかなり少ない。
「ステータス」の概念があり、レベルの概念が在り、魔法が有る。
展開自体はテンプレ的でありながら、
それを描きあげている部分でかなり癖がある作品だ。
作画
1話からかなり作画は悪い。
止め絵もかなり目立ち、無駄なアップのシーンもやたら多く、
主人公の顔の作画もカットがかかるごとに整形したかのように
毎回顔の長さがかわってしまうほどだ。
特に顎の長さはシーンによって城之内なみになったかとおもえば、
丸顔になったりと頻繁に顔の長さが変わるのは
かなり気になってしまうところだ。
そんな作画で描かれるからこそ、余計に女性キャラクターの
可愛らしさは感じにくい。
そもそものキャラクターデザインからそういった可愛さを感じにくいが、
作画のせいで余計にヒロインの可愛らしさが感じられない。
1話の段階からこうなのだから、作品全体の作画はガッタガタだ。
無知
主人公は神様的な存在によって最低限の異世界の知識を与えられているが、
いわゆるチートな能力はない。
この世界の知識も最低限しかなく、そんな彼は田舎の村の出身として
街に入り込み、少しずつ色々なことを学んでいく。
自分で選んだ「治癒士」という職業がなにをするものなのか、
「治癒士」に必要な知識、技術、力は何なのか。
少しずつ周囲の人間に教わりながらも、
彼はサラリーマンだった経験を活かし、
ときに営業トークで、ときに営業スマイルを活用し異世界で生き抜いていく。
チートではないというだけでどこか安心してしまうのは、
ここ最近、私がなろうアニメを見すぎてるせいかもしれない(苦笑)
作画こそ不安定では有るものの、
主人公がいきなり異世界にやってきてしまった状況を
序盤はきちんと活かし丁寧に描いている。
ただ、逆に序盤は地味では有る。
いわゆる「修行パート」として、少しずつ自らの力を上げていく。
努力すればそれがステータスに現れる、
そのあたりは「ゲーム」的ななろう世界ではあるものの、
努力をきちんと描いてるからこそ、好感が持てる展開だ。
最初はヒールすらできなかった主人公が、
きちんと修行をし、知識を身に着け、ヒールを使えるようになる。
治癒士
この世界の治癒士は治癒士ギルドによって管理されており、
悪徳な治癒士が多い現状だ。
国民健康保険のない国で医療行為を受けたらどうなるか。
アメリカなどの医療は料金が高いことで有名だが、
この世界もそれに近いものが有る。
だからこそ、この世界の住民は気軽に治癒魔法に頼ることができない。
しかし、主人公は前世での知識と経験と、
この世界で関わった人たちに優しくしてもらったからこそ、
そんな悪徳な治癒士にはならないと誓っている。
限られたMPで、限られた回数しかヒールの魔法を使えない。
そんな中でも目の前で傷ついている人を放っておくことはデキない。
その結果、救えない命も出てくる。
そんな後悔がうまれ、そんな経験が彼の行動理由と目的になる。
もっと優秀な治癒士に、もっと多くのものを癒やされる治癒士になるために。
この世界で生き抜くという目的は有るものの、
自らができることを自らができる範囲でやり、
その代価としてときに知識を、ときに技術を、ときに代価をもらう。
きちんとまっすぐとした主人公像が描かれており、
作画の悪さは常に気になり、展開の地味さは有るものの、
しっかりとしたストーリーが描かれている
努力
この作品は泥臭い作品だ。
主人公に当たられた能力は限られており、チートもなく、
「聖者無双」というタイトルでは有るものの、
この作品ではろくに無双しない(苦笑)
タイトル詐欺にも甚だしい内容では有るものの、
この泥臭い展開をなろう原作アニメでお目にかかるとは
思わなかったと思うほど地道に訓練している。
彼はこの世界で行く抜くための術を早く身につけるためにも
「スパルタ」をのぞんでおり、
この世界の住人なら普通はやらないようなことも平気でやっている。
冒険者ギルドでは基礎訓練で鬼教官による指導をうけており、
普通ならばすぐに逃げ出すレベルの指導を、
逃げ出さずに毎日毎日繰り返している。
筋肉は1日にして成らず。
そんな教訓をかかえているのでは?と思うほど、
ひたむきに走り込み、筋トレをし、戦闘訓練に励んでいる。
その泥臭さ故にかなり地味な展開が序盤は続いてしまうものの、
この泥臭さは悪くないと感じてしまう。
そんな努力に、彼の真摯な行動に多くのものが感銘を受け、
彼の行動に対する恩義を感じ、報いてくれる。
この世界で生まれ育ったわけではないからこそ、
無知だからこそ、この世界の住人ではなし得ない行動をする。
ある種でそれもなろう系によくある「チート」ではあるのだが、
肉体的なものや能力的なもののチートではなく、
精神的な部分でのチートや異世界人ゆえのズレだからこそ、
見ている側も納得ができる。
異世界に転生すれば女を囲い、大金と地位をえて、
誰にもまけず成り上がってウハウハする。
そういった「なろうらしい」作品とは真逆の作品だ。
特に序盤は地味さはかなりあるものの、
この泥臭さを感じるストーリーは骨太の面白さを感じられる。
だが、何度も言うようだが作画がとにかく悪い。
キャラクターデザインの段階から日本人ではなく、
中国の方のようで、そのせいかかなり癖があり、
そんなキャラクターデザインが崩れまくるせいで、
骨太なストーリーなのに作画というカルシウムが足りてないせいで、
骨がすかすかになってしまっているような印象だ。
もっときちんとした予算で作られていれば
この作品の面白さをきちんと感じられそうなのに、
素直に面白いとはいえないものになってしまっている。
あまりにも残念だ。
物体X
主人公は自ら進んでスパルダな指導を受け入れている。
そんな指導の中で「物体X」というものを飲んでいる。
飲めば様々なステータスが一定時間増加される、
物凄い効果のあるモンスターエナジーのようなものだが、
あまりにも不味く、あまりにも臭いせいで誰も飲めないものだ。
そんなものを主人公はごくごくと飲み干している(笑)
本来ならありえない成長というチートではあるのだが、
その成長の裏付けに物体Xの存在があり、
主人公以外もそれを飲めば同じように成長できるが、
飲めないがゆえに同じことはできない。
チートな成長にも、きちんと裏付けがある。
誰もが避ける鬼教官の訓練を受け、
誰もが飲みたくない物体Xを飲み自らを鍛えることで、
彼はどんどんと強くなっていく。
このあたりもこの作品の泥臭さ、骨太さを感じるところだ。
序盤の5話くらいまでそんな泥臭い展開が続く。
なろう原作アニメに限らず、他のアニメでも
ここまで修行パートをきっちりと描いた作品は
昨今はなかなかない。
治癒士ギルド
異世界で生き抜くために主人公は強くなった。
そのためにお金を稼ぐためにも彼はギルド内で
無料で冒険者を治療している。
そのせいで悪徳な治癒士から目をつけられてしまっている。
治癒士ギルドが高額な治療費を取る一方で、彼は格安か、または無料だ。
市場を破壊する価格で治療行為を行ったがゆえに目をつけられる。
当たり前の展開ではあるのだが、この当たり前の展開の流れが自然だ。
異世界に転生するという展開自体はなろうらしさを感じるのだが、
それ以外はハイファンタジーなかつてのラノベアニメを
思い起こさせるほどしっかりとした土壌で物語を描いている。
そんな治癒士ギルドの悪徳治癒士に目をつけられた主人公は
治癒士ギルド本部へ出向させられてしまう。
序盤の修行パートを終えて、中盤になるとようやく
物語が進んでくる感じだ。
そんな出向した治癒士ギルド本部の地下のダンジョンを
攻略することが中盤からの本筋になってくる。
序盤できちんと鍛えてるシーンを見せているからこそ、
彼の強さにも納得ができ、
いわゆるボス戦ではきちんと苦戦しながら戦っている。
決してチートでも俺つえーでもない、
タイトルに「無双」とついてるのに無双してる感が
一切ないタイトル詐欺のような作品だ
ダンジョン
ダンジョンも一筋縄ではいかない。
あいも変わらず「物体X」を飲みながら彼は少しずつ強くなっていき、
装備を整えながら何階あるかもわからないダンジョンをひたすら潜っていく。
ダンジョンの中での功績やアイテムをポイントとして
お店に有るものを買えるようになるなどRPG的な要素は有るものの、
中盤を越えてもこの作品の根本に有る骨太さは変わらない。
終盤になると、この作品のある意味でキーアイテムである
「物体X」の謎も明らかになる。
色々と良い効果があるが、その匂いと味が故に誰も飲めなかった。
だが、主人公は匂いと味よりも生き抜くために
良い効果を得ることを選んだ結果、終盤になっても飲み続けている(笑)
そんな彼がダンジョンを制覇し、
世界の謎に触れるところで1クール終わってしまう。
総評:あまりにも骨太すぎる
全体的に見てかなり骨太な作品だ。
タイトルに書いてある「無双」という言葉の印象から、
いわゆる「なろう原作アニメ」っぽい感じを想像してしまうが、
内容はかなり地道に修行を積み重ねながら
主人公が徐々に強くなる過程を描いている作品だ。
物体Xというチートアイテムの存在は有るものの、
主人公以外も使用することは可能だ、だが、
匂いと味ゆえに誰もそれを使用しない。
そういった主人公の強さの裏付け、成長に説得力を持たせており、
それを淡々と描いている。
いわゆる俺つえー!な感じや、無双するシーンは殆どない。
異世界の常識を知らない主人公が、前世での常識を活かしながら、
この世界における医療行為のぼったくりを改善する。
それが彼の目的であり、序盤で救えなかった命があったからこそ、
より治癒士としての力を求め、他の治癒士も同じようになって欲しいと願っている。
そういった骨太なストーリーが描かれており、
それゆえに地味では有る。
終盤になると戦闘シーンも多くなるのだが、
序盤から中盤はほとんどが修行シーンであり、終盤もある種の修行だ。
盛り上がりに欠ける部分は確かに否めず、つまらないと感じる人もいるかもしれない。
最終話になるとこの世界の謎や、魔族の存在、
40年後に現れる勇者や、封印されている竜達など
色々とストーリーの根幹となる要素も出てきており、
ここから更に面白くなりそうなだけに、
1クールで終わってしまっていることはもったいない部分だ。
作画に関してもあまり良くない。
ヒロイン達はお世辞にも可愛いとはいえず、
主人公の顔もちょこちょこと変わる始末だ。
このあたりをもう少しきちんと描いていれば、
もっと人気が出たかもしれないだけに残念なところだ。
作品の地味さは有るものの、ハイファンタジーな作品として
一本筋の通ったストーリーが展開されており、
もし2期があるならば見たいと感じる作品だった。
個人的な感想:悪くない
作画の悪さは気になれど、個人的には好きな作品だった。
ギャグもそこそこにありつつ、物体Xの存在や
主人公のニックネームなどをお約束ネタにしつつ、
なろう的なお決まり展開にきちんと1つずつ裏付けをし、
丁寧にストーリーを展開しているのは好感が持てた。
ただ、いかんせん地味すぎる(苦笑)
終盤になると強敵も出てくるのだが、
作画の悪さも相まって戦闘シーンが盛り上がるわけでもなく、
序盤から中盤は修行シーンのみだ。
不快感を感じるようなシーンや要素もなく、
作画の悪さを除けば、もっと色々な人が好きになってもおかしくない作品だが、
配信がAbema独占配信だったこともあいまって、
あまり多くの人が見るきっかけにならなかったのは残念なところだ。
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