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至高の百合を最低な作画で台無しに「ささやくように恋を唄う 」レビュー

ささやくように恋を唄う 青春
© 竹嶋えく・一迅社/ささやくように恋を唄う製作委員会
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この記事を書いた人
笠希々

オタク歴25年、アニメレビュー歴13年、
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評価 ★☆☆☆☆(16点) 全12話

TVアニメ「ささやくように恋を唄う」PV第1弾(2024年4月放送開始!)

あらすじ 高校入学初日、木野ひまりは新入生歓迎会で見かけた先輩・朝凪依に「一目ボレ」した。ひまりはその気持ちを依にぶつけるが、彼女はひまりの思いを恋心と勘違いしてしまう。引用- Wikipedia

至高の百合を最低な作画で台無しに

原作は百合姫で連載中の漫画作品。
監督は真野玲、制作は横浜アニメーションラボ、クラウドハーツ

登校

1話冒頭、主人公の登校シーンから始まる。
主人公の自己紹介、高校の入学式という始まりの日、
女子校だからこその女の子だらけの世界観は、
もはや古典的な百合アニメな雰囲気全開だ。

特にキャラクターデザインはかなり優秀で、
等身がやや高めではあるものの、
それがよりスラっとしたキャラのスタイルの良さを見せつつ、
どこか少女漫画家チックなデザインだ。

百合姫らしい百合なムード全開の女子同士の交友、
1話からドバドバとキャラクターはでてくるものの、
キャラクターデザインが優秀だからこそ頭に入ってくる。

特徴的だが派手すぎない髪型は今どきであり、
単純にショートやロング、ツインテールなどでもなく、
編み込みやレイヤーが入ったかなり複雑な髪型をしている。
それがキャラクターの特徴と魅力にもなり、
独特な色彩の髪や瞳の色がキャラの印象を強めている。

そんな主人公が新入生の歓迎会で、
演奏をしながらボーカルもしていた先輩に一目惚れをする。
放課後にそんな先輩に再会した主人公は自分の思いの丈をぶつける。

「私、一目惚れしました!」

ストレートな告白だ、しかし、あくまで一目惚れしたのは
彼女の「歌」だ、しかし、先輩である「朝凪 依」は
それを恋愛感情として受け取ってしまう。

このすれ違いが百合なラブコメを巻き起こす。
歌に一目惚れした主人公と、自分に告白してくれた主人公に
一目惚れしてしまったもう一人の主人公。
1話からニヤニヤしてしまうほどの百合ラブコメ空間が描かれている。

しかし、1話の段階であっさりと、そのすれ違いが
勘違いであることを「朝凪 依」は実感してしまう。
つまり、「朝凪 依」だけが主人公である木野 ひまりに
恋愛感情として一目惚れしてしまっている。

だが、彼女の惚れているは「朝凪 依」のボーカルとしての部分だ。
それをわかっていながら、惚れてしまったがゆえに
彼女の頼みを断れない。

もっと惚れさせるために、ボーカルだけでなく、
自分自身に惚れさせるために彼女は、
ささやくように恋を唄う。

微笑ましいのぉ…

恋愛感情なんかよくわからないと思っていた少女が、
一人の少女と出会うことで恋愛感情に目覚める。
1話は完璧とも言える百合なガール・ミーツ・ガールな物語が
描かれている。

2話以降もそれは変わらず、「朝凪 依」はどこか
かっこいい系の女性であり、「木野 ひまり」に対して
ナチュラルにイケメンムーブを噛ましてくる。
そんな行動に木野 ひまりは一瞬ドギマギして照れたりするものの、
最初に感じた「朝凪 依」への感情のせいもあって
それが恋愛感情に簡単に変わるわけではない。

いわゆる第一印象というやつだ。
第一印象の印象はなかなか変わることはない、
それが会話を積み重ねていくうちに、第一印象から変化することもあるが、
第一印象の印象が強ければ強いほど、
その印象を変えることはなかなかに難しい。

この作品はそんな第一印象を乗り越えるようなラブコメだ。
「木野 ひまり」も彼女に対して恋愛感情などないはずなのに、
かなりあざといムーブを噛ましてくる。
そんなあざとさ全開の彼女だからこそ「朝凪 依」の思いは止められない。

2話であっさりと自分の思いを告白してくる。
そんな告白を受けて「木野 ひまり」という少女は
ずっと逃げていた自分の中の思いと向き合う。

恋愛感情

「木野 ひまり」にとっての「好き」は全て同じだ。
相手が女の子だろうが男の子だろうが関係ない、
英語で言えば彼女の好きはLikeだ、Loveではない。
そのLoveという感情が彼女にとってはよくわからない。

しかし、真っ直ぐな告白を受けて、そんな思いと向き合うことになる。
戸惑いつつも、友人や両親の話を聞き、自分の気持に整理をつける。
告白を今すぐ受け入れることはできない、
だが、前向きに進む決意をする。

そんな彼女のために「朝凪 依」はバンドを始めることになる。
自分の好きな人を振り向かせるために、
あの時、自分に一目惚れしてくれた自分をもっと高めるために。

ドロ…

4話から交友関係がより広がっていく。
「木野 ひまり」は部活に入り、新しい先輩と出会い、
「朝凪 依」はバンドを組みライブを目指している。
告白する前よりは会って話す時間は短くなっている。
だからこそ、そこに嫉妬な感情も生まれ、色々と考えてしまうこともある。

そこで出てくるのは「ライバル」だ。
以前から「朝凪 依」に想いを寄せているキャラがいたりと、
複雑な人間関係が構築され始める。
序盤はシンプルな百合ラブコメだったが、
中盤からは複雑な百合という印象を受ける作品へと変わっていく。

ストレートに「朝凪 依」への思いを「木野 ひまり」に告げるライバル、
「木野 ひまり」は自身の感情に迷いがあるからこそ、
そんなライバルの告白に戸惑ってしまう。
中盤からはややドロドロとした恋愛事情が描かれていく印象だ。

「朝凪 依」は3年生だ、同じ学校に通う時間は1年もない。
ゆっくりと考えればいい、ゆっくりと好きになればいい、
そう思っていたのに焦りが生まれる。

作画

ストーリー自体はラブコメからドロドロとした恋愛感情への
変化が面白いのだが、そんなストーリーとは裏腹に
作画が徐々に不安定になってくる。

その兆候が見えるのは3話くらいからだ。
1話と2話は美麗な作画だったのだが、3話くらいから
キャラの動きがぎこちなくなってくる。

この作品のキャラクターデザインは優秀だ、
特に髪の描写はかなり細かく、それゆえに作画コストも高いのだろう。
完成されたキャラデザなだけに顔のパーツのバランスが
少しでも狂うと違和感も生まれる。
下手すると一瞬誰?と思うほどキャラクターの作画が崩れ始める。

アニメーションによる演出、背景や表情の描き方1つで
丁寧な心理描写につながっていたのに、それが3話くらいから
一気になくなってくる印象だ。

1話と2話が良かっただけに、少しそのクォリティが落ちると
悪目立ちするような印象だ。

そんな作画も、キャラクターの感情も揺れ動く中で、
ストーリーは悪くない。
ライバルキャラなどが出てきて不安や時間の制限なども感じつつも、
それでも互いに今抱えている思いをぶつけ合い、
ライブで絶対に惚れさせるライブをすることを「朝凪 依」は決意する。

「木野 ひまり」への思いを込めたラブソング、
ひだまりのような彼女のための歌だ。

ライブ

6話の作画は最悪だ、2回目のデート模様が描かれるのだが、
キャラクターの作画が安定せず、引きの絵もかなり多い。
6話は大事な回だ。
「木野 ひまり」という女の子が自身の恋心をきちんと自覚し、
素直に「朝凪 依」の告白を受け入れるのか。

そんなきっかけになるためのライブだ。
「朝凪 依」は彼女のために恋の歌を用意している。
大事な、本当に大切な回だ。

それなのに作画が悪い。演奏シーンは同じような動きを繰り返し
回想シーンを挟むことでごまかし、
せっかく告白を受け入れるというシーンも引きの絵が多く、
キメのシーンの作画のクォリティはギリギリ保っているものの、
その前後のシーンの作画はかなり崩れ気味だ。

ほっぺとはいえ「キスシーン」なのに軽く済まされる演出、
もう、告白シーンで制作が力尽きたんじゃないのかと
感じさせるほど、ここから作画の体力が尽きていく。

バンドアニメ

百合成分が濃ゆいせいで忘れかけていたが、
この作品は一応バンドアニメでもある。
中盤を過ぎると、「朝凪 依」が所属しているバンドの
以前のボーカルである「泉 志帆」がでてきて、彼女のバンドも出てくる。

あくまでこの作品の中でのメインキャラがやってるバンドは学生のものだ。
同時期にやっていたガールズバンドクライや、
ぼっち・ざ・ろっく!のように彼女たちは「プロ」を
目指しているわけではない。

部活の延長でライブハウスでライブすることはあるものの、
あくまでも部活だ。
そんな部活動なのにライバルバンドが出てきて勝負する流れになる。
ちょっと予想外の方向に話が進む印象だ。

百合アニメとしては優秀だが、バンドアニメとしては色々と物足りない。
曲の印象もあまり残らず、演奏シーンも作画が終わっている。
特に7話などやばいくらいに作画が崩れている。

1話や2話にはあったキャラクターのオーラは消え去り、
演奏シーンは手抜きかつ、作画崩壊と作画ミスが目立ちまくりだ。
特にライバルバンドである「ローレライ」のライブシーンは酷い。

作品の中での初演奏、プロを目指す彼女たちの
本気のライブのはずなのだが、馬鹿みたいにカットをいれまくり、
ステージと観客を交互に映しながら、一切動かないモブもうつし、
全然オーラの感じないライブが描かれる

「そんな私でもシホさんたちの演技が圧倒的だってわかった」

と主人公は言うものの、見てる側は一切圧倒されないどころが
作画が気になって仕方ない。

二人の主人公の関係性はすでに中盤の時点で完結しており、
だからこそ新キャラを投入してストーリーを複雑にしたいのは
わかるのだが、サブキャラ同士のいざこざなども
作画の悪さもあいまって話に集中できない。

顔面のアップと1枚絵を下から上に、パンすることで
なんとかアニメーションとしての形を保っているもののギリギリだ。
そんな中で9話では万策が尽きてしまい、
2週間ほど延期してしまう。

9話以降は多少は持ち直したものの、
明らかに作画枚数を削るような構図や
1枚絵から切り取るようにキャラを映すような漫画の構図もあったりと、
作画枚数を減らす努力をしており、1話のクォリティはどこへやらだ。

ドロドロドロ

バンド要素はあるものの、基本は百合アニメだ。
ライバルバンドも恋心ゆえの葛藤を抱えている。
ライバルバンドのボーカルがなぜ元のバンドを抜けたのか、
それも根本をたどれば色恋だ。

バンド対決で勝つ負けるは百合のおまけでしかない。
二人の主人公も一応絡んだ問題ではあるものの、
中盤以降の本筋はサブキャラ同士の恋愛事情の問題になっており、
話の本筋がそれた感じが否めない。

もし作画がよかったら、そのあたりもきちんと
消化できるストーリーだったかもしれないが、
作画の悪さがノイズになってしまい、
ストーリーを素直に味わいきれないまま10話が終わってしまう。

残りの2話は完全に万策が尽き延期だ、
いつ放送するかどうかはわからないが、
この続きを見るならばアニメではなく原作の漫画の方で
楽しんだほうが時間を有意義に使える。

本当に原作の面白さや魅力を台無しにした作品だった。

総評:何もかも台無しだよっ!

全体的に見て序盤はすごく楽しめる百合作品だった。
すれ違いと勘違いから始まるラブコメをストレートに描きつつ、
徐々に恋愛という感情を自覚しながら二人の主人公が
付き合うまでに至る流れが素晴らしく、序盤は作画の良さと
キャラクターデザインの優秀さを感じることができる作品だ。

しかし、中盤のライブで作画は完全に力尽き、
作画崩壊寸前のがたがたな作画のせいでストーリーを素直に楽しみきれず、
中盤から二人の主人公の物語からサブキャラ同士の恋愛事情になることで、
余計にこの作品に対する感情移入がすっかりと薄れてしまう。

エンドクレジットをみると外注に投げまくりだったようで、
制作の横浜アニメーションラボの内情も海外でリークされた。
リークによると初期に集められたスタッフがいなくなり、
ほぼ外注に投げまくりな制作事情だったようだ。

同じ制作で同時期に放送されてたTHE NEW GATEも
作画崩壊ながたがたな作画だったが、同じように外注に投げまくりだった。
それでもなんとかTHE NEW GATEは1クールえがききったが、
この作品は犠牲になってしまった。

制作元請けをやれる能力のない制作会社が、
せっかくの魅力的な原作を台無しにしてしまっている。
少し調べると作画だけでなくストーリーも原作から
だいぶカットしているようで、二人の主人公のデートシーンや
キスシーンなども大胆にカットしている。

作画だけでなくそういったあたりも意味不明な作品だ。
おそらく中盤からサブキャラ二人をメインにし、
もう1つのバンドを早く登場させ活躍させることで、
バンドアニメとしてCDをうりたい、ライブをやりたいという
大人の事情があったかもしれないが、色々と台無しになった作品だ。

11話と12話の放送がいつになるかはわからないが、
正直、続きをアニメで見たいとは思えない作品だった。

個人的な感想:気になる原作

主人公を演じていた嶋野花さんは初主演作だったが、
魅力的な声と可愛らしい演技をしており、
「木野 ひまり」というキャラの可愛らしさ、
天然の小悪魔っぷりを後押ししてくれる演技をされていた。

そんな声優さんたちの演技も台無しにしている。
本当にもったいない。
ストーリーは気になる部分も多く、中盤からのストーリーは
作画のせいで頭に入ってこなかった部分も多いため、
続きは原作で楽しみたいところだ。

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