評価 ★★☆☆☆(35点) 全12話
あらすじ 天才的な観察眼で、バドミントン選手として活躍していた白鳥尊。しかし、インターハイでのトラウマが原因で、思うようなプレーができずにいた。引用- Wikipedia
中途半端な池井戸潤
本作品はTVアニメオリジナル作品。
監督は山内愛弥、制作はライデンフィルム
大人
スポーツアニメといえば「高校生」がメインで描かれることが多い。
青春模様を描きながらスポーツを描くうえで、
高校生という年齢は最も描きやすいからだろう。
しかし、この作品は「大人」だ。
バドミントンの実業団選手を題材にした作品であり、
多くのスポーツアニメが学生であることを考えれば
主人公たちが「社会人」なのはスポーツアニメとしては珍しく、
作品自体もそれを売りにしている。
バドミントン×社会人アニメという売り込みは悪くなく興味をそそられる者だ。
主人公は1話そうそう首になっており、露頭に迷いかけていたところを
とある企業に拾われるところから物語が始まる。
バドミントンをやりつつも、会社員として働かなければならない。
バドミントン×社会人という組み合わせだからこそ生まれる
ストーリー展開では有るものの、冒頭から既視感は強い。
既視感
何処かで見かけたキャラデザは特徴的であるとはいい難く、
出てくるキャラクターの設定も既視感まみれだ。
トラウマを抱えているものの天才な主人公が
最弱の社会人チームの中で成長していく。
「社会人」というオリジナルの要素は有るものの、
その社会人という要素を「学生」にかえても問題のないような展開ばかりだ。
トラウマを抱え仲間を信じずソロプレイヤーだった主人公が
「ダブルス」をやらされるハメになる。
それでも彼はトラウマ故に拒否しようとする。
そんな彼を「先輩」が引き止めるためにソロで勝負するという流れだ。
どこかのスポーツアニメで百回くらいみたような内容は
王道といえば聞こえはいいが手垢まみれの展開でしか無い。
しかしながら1話は試合の描写に迫力があるからこそ説得力が生まれる。
スピーディーに展開するバドミントンというスポーツだからこその
目まぐるしい試合運びと、そんな目まぐるしさを表すような
キャラクターのキビキビとした動きは素晴らしい。
主人公には「先読み」という一種の能力があり、
そんな能力が有るからこそ自分の実力に自信がある。
そんな自信があったのにもかかわらず弱小なチームの先輩に負けてしまい、
ダブルスをやらされるハメになるというところから物語が始まる。
社会人
既視感は有るものの序盤の展開は悪くなく「社会人」という要素も活かされている。
主人公はバドミントン一筋でやってきた人間だ、ろくに社会経験もない。
名刺交換もろくにできない彼が初めてとも言える営業マンとしての
仕事をしつつ先輩との仲を深めつつ、社会人としてもバドミントン選手としても成長していく。
ベタかつ既視感の有る展開は多いものの、
序盤は「社会人」という要素と「スポーツアニメ」という要素が
うまく噛み合っており、トラウマの有る主人公が
先輩を信じ、自分の実力を最大限に発揮できるようになる流れは悪くない
本来なら学生活動や学生の日常の中で部員同士の仲が深まっていくが、
この作品の場合は「社会人」としての仕事の中で仲が深まっていく。
何も知らない主人公が会社の仕組みを知り、自らの企画書を作りながら、
先輩たちに教えてもらいながら仕事をしていく。
仲が良くなかったからこそ、信頼し合う仲間になったからこそ
自らの弱さやトラウマを吐露する。
主人公はトラウマを克服することができるのか、
弱小チームは優勝することができるのか、
主人公の「ネギジンジャー」は無事商品家できるのか(笑)
序盤から中盤までの社会人要素とバドミントンの要素の組み合わせ方から
生まれるストーリー展開はこの作品だからこその面白さになっている。
リベンジ
中盤からは序盤で負けた相手とのリベンジ戦が描かれる。
それぞれのトラウマ、問題を乗り越え強くなったからこその
リベンジ戦は王道では有るもののしっかりと見応えがある。
ただ、その一方で主人公と主人公のダブルスのコンビの相手である
「先輩」以外の掘り下げが甘い。
敵自体もこの手のスポーツアニメにありがちな強めの味付けの
キャラクターは多いものの、深い掘り下げがあるわけではない。
それでも社会人であるからこその良さは出ている。
結婚したからこそバドミントンをやめたもの、「引退」を考えるものもいる。
「若者」ではないからこそ、「大人」だからこその彼らの物語がある。
池井戸潤
ただ終盤から雲行きが怪しくなってくる。
この作品が「社会人」のスポーツものだからこその弊害ともいうべきか、
いわゆる「池井戸潤」作品的な展開になってくる。
池井戸潤作品の中にはルーズヴェルト・ゲームや
ノーサイド・ゲームなど、この作品と同じように社会人の
スポーツを扱ってる作品も多い。
その中でよくあるのが所属している会社との「対立」だ。
この作品もそんな池井戸潤作品と同じように終盤からは会社との対立が描かれている。
唐突に「先輩」が暴力事件を起こした犯人として会社に呼び出されてしまう。
先輩には暴力事件を起こした記憶は一切ないものの、
取引先の副社長は車いすにのりギブスをまき、包帯を巻いている。
副社長が勝手にころんだだけなのだが、会社の中で彼らのことを
よく思わない専務が取引先の副社長と組んで事件を「捏造」する。
とんでもない強引さだ(苦笑)
かなり無理のあるストーリー展開であり、
先輩が事件を認めなければ「バドミントン部」は廃部になる。
ちょっと意味がわからない。
わざわざ事件を捏造しなくても
バドミントン部の存在意義や会社の懐事情など
色々と展開は作れそうなのに、安っぽい事件の捏造という要素のせいで
白けてしまった。
専務が先輩を攻め立ててる間に同時に試合も描かれているのだが、
せっかくの試合もそんなしらける捏造事件のせいで集中できず、盛り上がりに欠けてしまう。
社会人部分のストーリーを描くために中盤からはダイジェスト的な
試合シーンやカットされることも多く、社会人要素が
話しが進めばすすほどどんどんと足を引っ張っていく。
キャラクターの「強さ」もいまいちわからず、
敵がダブルス世界ランク2位という強さの設定が有るのに、
組んだばかりの兄弟が勝ってしまうのはやや説得力に欠ける。
肝心の捏造事件も捏造した側がバカ過ぎて「嘘の怪我」があっさりとばれる。
序盤から中盤まではバドミントンと社会人という組み合わせが
うまく機能していたものの、中盤からはしらける展開が多くなってしまう。
例えば中盤から参加する選手がいるのだが、そんな選手の初試合がカットだ。
相手は序盤から存在感のあった17歳の天才少年的な敵キャラという
魅力的な組み合わせなのにカットされるのは消化不良感が凄まじい。
社会人としてのストーリーがなければ描けていた試合も
あっただろうに社会人部分のストーリーのせいで
肝心のバドミントン部分がカットされるのは本末転倒だ。
中盤から明らかに試合も社会人要素も「詰め込んでいる」感が強い。
主人公が持っているはずの「先読み」能力も
まるで無くなってしまったかのように中盤からは殆ど見なくなる。
怪我
終盤で主人公は試合中に目に怪我をしてしまう。
といってもまぶたのあたりを打ってしまい切れているだけだ。
それなのになぜか片目を全て覆う(苦笑)
怪我でも試合に挑む展開にしたいのは分かるが、
わざわざ片目のすべてを覆うのはちょっと意味がわからない。
ちなみに怪我は5分くらいであっさりと片目を覆っていたものを取ってしまう。
なにがしたいんだろうか。
敵も敵でダブルスなのに味方に「お前はもういらない」と1人でやりだす(笑)
ならもうダブルスじゃなくソロでやれといいたくなってしまう。
尺が足りずに試合中にキャラの掘り下げをしたいのは分かるが、
終盤の試合なのに試合に集中できない要素が多すぎる。
主人公も主人公で最終話の終盤では怪我をしている部分からまた出血しだす、
最初から絆創膏かなにかを貼っておけば良さそうなのに
妙な処置のせいでツッコミどころが生まれてしまっている。
事件の捏造までした専務もなんのお咎めもなしのままで終わってしまい、
なんか知らないが主人公が企画したネギジンジャーも
爆売れして終わってしまうのはよくわからない感じだ。
総評:魅力相殺
全体的にみて序盤から中盤まではうまく
「バドミントン」と「社会人」という要素がかみ合っており機能していたが、
中盤からはまるで池井戸潤作品のような展開が雑に挟まれ、
ダイジェスト的な試合展開が多くなり、よくわからないツッコミどころも
多く生まれてしまっている。
やりたいことは分かるものの、1クールではキャラクターも多く
特に敵チームの掘り下げは甘く、3チームも出ているが
もう1チームくらい減らしても良かったのでは?とすら思ってしまう。
キャラクターも要素も活かしきれていない部分が多く、
特に主人公の「先読み」能力とはなんだったのかと思うほどだ。
展開自体はベタであり、スポーツアニメでありがちな展開が多い。
よく言えば王道ではあるのだが、「こういうキャラだろうな」という
キャラが想像通りの台詞や行動をし、こういう展開になりそうだなという
展開になる感じだ。
アニメーション自体のクォリティは高く、
ハイスピードで展開するバドミントンの試合模様を迫力たっぷりに
描いているものの、試合の描写に関しても1話がピークで
それ以降、特に言及する何かがあるわけでもない。
2クールくらいあればもう少し色々と掘り下げることもでき、
社会人部分のストーリーもしらけるような展開にならなかったかもしれないが、
1クールという尺では多すぎる要素を掘り下げきれずに終わってしまったような作品だった
個人的な感想:うぅーん
序盤から中盤まではベタではあるものの楽しんでいたが、
捏造事件あたりからどうにもこの作品に白けてしまい、
最後の試合のツッコミどころの多さに燃えることが出来ず、
消化不良で終わってしまった作品だった。
社会人のスポーツものという試み自体は面白かったが、
なんというか中途半端な池井戸潤作品のような感じで終わってしまい、残念だった。
もしかしたら2期を想定してる部分もあるのかもしれないが、
2期があったら印象が変わる部分もあるかもしれない。
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