スポーツ

競輪プロパガンダアニメ「リンカイ!」レビュー

1.0
リンカイ スポーツ
©RINKAI League Committee
スポンサーリンク

評価 ★☆☆☆☆(18点) 全12話

TVアニメ『リンカイ!』特報PV 4月9日(火)放送開始!

あらすじ 国際的な舞台でも活躍するスター選手たちの誕生により、にわかに熱気を帯び始めた「女子競輪」。「RINKAI LEAGUE(リンカイリーグ)」とも銘打たれたその世界へと、今まさに、漕ぎ出そうとする者がいた引用- Wikipedia

競輪プロパガンダアニメ

本作品はミクシィによるTVアニメオリジナル作品。
監督は石山タカ明、制作はトムス・エンタテインメント

クセ強

1話冒頭でメインキャラクターの5人が
「競輪」を見に来ているシーンから始まる。
何の脈絡もなく5人が一気に出てくるのは度肝を抜かれるが、
その5人のデザインもなかなかクセが強い。

髪型は今風で複雑なものなのだが、
更に個性を出すために「メッシュ」が入っていたり、
単色ではなくグラデーションで染められていたりと、
インパクトは強いものの、クセが強すぎて逆に印象に残りにくい。

1話冒頭の時点で作画もかなり怪しい。
5人のキャラクターの描写もそうなのだが、
肝心の「競輪」シーンが恐ろしいほどつまらない。

奇しくも同時期に「HIGHSPEED Étoile」という
未来のF1レースを描いた作品があり、
その作品もレースシーンが致命的だったが、
それ以上だ。

やってることがあまりにも中途半端だ。
例えばレース開始時の遠いアングルでのシーンでは
「フルCG」で描かれており、どのキャラも似たような動きしかしない。
そんなキャラがアップになると手書きの作画に切り替わる。

このアップと引きのカメラが切り替わるたびに、
アップ以外の激しいシーンになるたびに「CG」に
作画が切り替わることでとんでもない違和感が生まれている。
スピード感のようなものも死んでいる。

近所のママチャリを漕いでいるお母さんのような単調な足の動き、
縦に並んで「だらー」っと足を動かしているシーンは
まったくもって競輪というスポーツにおける速度を
一切感じない描写だ。

集中線などの演出でそれをカバーしようとしているのはわかるが、
カバーしきれておらず、芯となる競輪シーンの作画が死んでいる。
見ている側が呆れ返っている競輪を見て
5人のメインキャラは競輪という競技の虜になる。
この時点でこの作品と見ている側で大きな溝が生まれてしまう。

フルCGのクォリティがとにかく低い。
人が漕いでいるようなブレがいっさいなく、
どのキャラクターも同じように一切ブレずにこいでいる。
見ていて全くもって面白くない。

導入

物語の導入も強引かつ説明口調まみれだ。
「競輪」が大人気な世界の中で5人のメインキャラは
「タックルチャンネル」という動画配信サイトを通じて出会い、
オフ会をしたというのが1話の状況だ。

そんなよくわからない状況を淡々と説明し、
応援している選手を応援するためのオフ会を開いている。
そんなオフ会で競輪を初めて5人はリアルで見ることになる。

競輪の魅力にハマった5人は競輪選手になることを目指す、
やってることはベタではあるものの、
1話で10人以上のキャラを馬鹿みたいに出す。
ソシャゲでも出す気なのか?と思うくらいの
無駄なキャラの登場のさせ方をしている。

5人がオフ会で応援している選手の試合、
競輪を始めてみて、競輪選手をあっさり目指す展開も
かなりご都合主義かつ唐突過ぎる展開だ。

「せっかくだからどう?この5人で競輪選手目指すってのは!」

ばかみたいなセリフだ(苦笑)
これで彼女たちが小学生くらいならばともかく、彼女たちは高校生以上だ。
一人は29歳という大人だ。
初めてみた競輪に影響されて競輪選手になる、あまりにも唐突だ。

キャラクターの感情、思考というものが感じられない。
脚本の操り人形にしか見えないストーリー展開は
見ていてバカバカしさすら感じてしまう。

1話で半年の時間があっというまに経過し、
5人のうちの一人は自転車部に入り3ヶ月で
県大会で優勝してたりもする(苦笑)
ご都合主義とはこのことだといわんばかりの頭の悪い展開は
多くの人がレース描写を含めて1話で切っただろうなと感じてしまう。

競輪はそれほど魅力的で、特に女子競輪は男子競輪に
負けないくらいすごい!
制作側がそういいたいのはわかるものの、
どこか宗教くささのようなものすら感じてしまうほど
「競輪」というものを神格化して描いている。

ご都合主義

ご都合主義もすさまじく、主人公が競輪をやることを
きめると近所の駄菓子屋のおばあちゃんが実は
昔、競輪選手だった!という展開には笑うしか無い。

競輪選手になるための展開や動機づけ、
状況が強引かつご都合主義まみれだ。
しかも、レースシーンになれば盛り上がりは一切ない。
この序盤の展開とアニメーションのクォリティは
最悪としか言いようがない。

競輪選手になるための過程も丁寧に描かれているといえば
聞こえはいいものの、丁寧すぎて盛り上がりがない。
淡々と競輪選手になるための展開を描いてしまっており、
5人のメインキャラクターも掘り下げきれていない。

3話になると養成所に入るためのに努力することになるが、
5人のメインキャラクターでさえ掘り下げきれていないのに、
他にも競輪選手志望のキャラクターも追加される。
ロクに掘り下げられていないのにどんどん
雨後の筍のごとくキャラが追加されても、誰も印象に残らない。

しかも養成所の試験も最終的には二人が一人おちるはずなのに
一次試験はカットされ、二次の学科もおわり、
養成所の試験はロクに描かれずにメインキャラ5人が
全員合格する(苦笑)

いったいどんな試験があったのかすらわからず、
二人に一人は落ちる!と散々言っていたのに、
メインキャラは誰一人おちない、ご都合主義に呆れ返ってしまう

養成所

養成所にはいると、もうキャラクターに溢れかえっている。
主人公でさえ存在感が薄いのに、他のメインキャラは
養成所に舞台が移ってから追加されたキャラのせいもあって
余計に存在感が失くなる。

このあたりはミクシィによるメディアミックス作品という
影響もあるのだろう、おそらくソシャゲを出すつもりだ。
でなければここまで無意味にキャラクターを増やす意味がない。

そのせいでソシャゲ原作アニメのごとく大量のキャラが
交代交代にしゃべるものの、誰一人印象に残らない。
ソシャゲがでてないのにソシャゲ原作アニメのような
キャラクターの多さのせいでソシャゲ原作アニメ特有の欠点が出ている。

メインとなるのは駄菓子屋のおばちゃんに鍛えられた伊東泉と、
自転車部に入って数ヶ月で県大会に優勝した熊本愛だ。
それ以外の最初に出てきた3人は完全に空気だ。
居ても居なくてもいい。

養成所で他のキャラと一緒にレースをし、
自分の実力や現場を知るという展開がある。
これでレースシーンが盛り上がれば話は違うが、
レースシーンは相変わらず死んでいる。

海外からやってきた「平塚ナナ」、
そんな彼女に勝ちたいと熊本愛は努力を重ねる。
このあたりはスポ根的な展開で悪くはないのだが、
彼女以外のキャラクターの存在感がひたすら薄い。

伊東泉も主人公の一人のはずなのだが、
どこかウジウジした性格のせいもあって熊本愛にくわれてしまっている。
元アイドルだったりお嬢様だったり、肩書だけは立派なキャラが多いが、
それを活かしきれていない。

伊東泉は「平塚ナナ」に嫌いと言われただけでずーっとウジウジしている。
中途半端な競輪選手を目指してもいいのかという迷いが彼女にはずっとある。
そんな思いを序盤で断ち切ったはずなのに中盤でまた再発する。
いい加減にしろと思うほどのウジウジ具合だ。

そんなウジウジしているのに脚本のご都合で、
あっさりと養成所に合格したりする。
これで過去に1度競輪をやめたなどの経歴があれば別だが、
そういう経歴もないのに難関なはずの養成所に合格したりするため、
いつまでたっても彼女を好きになれない。

それなのに主人公的な立ち位置にいる。
キャラクターが多すぎて主人公格のキャラでさえ
うまく掘り下げ切れていないのがこの作品だ。

オーバーワーク

熊本愛は平塚ナナをライバル視し、彼女を越えようと
オーバーワークを重ねてしまう。
努力が嘘をつかない、そんな彼女の思いはあっさり裏切られる。
そういうストーリー展開自体はいいのだが、
ろくにレースシーンを描かずに伊東泉によるナレーションベースで
「こういう結果でした」という事を説明してしまう。

熊本愛もオーバーワークの結果、養成所から退所してしまう。
もっと丁寧にキャラクターが描かれていれば、
この展開に感動できたり、涙腺を刺激されるのかもしれないが、
馬鹿みたいにキャラを増やしすぎた結果、
感情は一切揺り動かされない。

退所した同期のかわりにも主人公は上を目指す。
熊本愛も諦めては居ない、1度の失敗で全てが終わるわけではない。
そういうストーリー自体は悪くないものの、
6話になってもキャラクターが印象づかない。

熊本や平塚など、キャラクターの名前は全国にある
競輪場をモチーフにしているようで、全国には43箇所競輪場がある。
そんな43箇所なるべく多く登場させようとしているのはわかるが、
多すぎるキャラを描くための特徴的なキャラデザが
逆に印象に残らないものになっており、掘り下げも甘すぎる。

しかも、プロになると「どこどこの競輪場でレースがある」みたいな
台詞もあるため、地名なのかキャラの名前なのか
よくわからなくなってしまう。

そんな大量のキャラの殆どがあっさりと全員が合格しプロになる(笑)
唯一退所した熊本愛と伊東泉以外、ほとんど努力する様子も
レースシーンも描かれていない、ただ居ただけなのに、
熊本愛は退所扱いになり、ほかは全員プロになる展開は
もうご都合主義どころの騒ぎではない。

養成所の卒業記念レースも当然作画が死んでいる。
アップばかり、同じ構図ばかりのカメラワークを繰り返し、
CGを多用しスピード感のないレースが展開される。
そんな中盤の最大の盛り上がりなはずの
卒業記念レースでさえ盛り上がらない。

特に大きな盛り上がりもドラマもなく、
主人公たちはプロになる。

ルーキー

プロになったものの主人公は勝つことができない。
3着になることはできたものの1位にはなれない。
ルーキーファイナルというルーキーだけが集まれる
レースに出るために主人公たちは努力することになる。

序盤は競輪選手になるために養成所にかよい、
養成所に通うことになったらプロになるために頑張り、
プロになったらルーキーファイナルに出るために頑張る。
シンプルなストーリーではあるのだが、
そこにドラマが生まれず、淡々としている。

ドラマを生むために終盤になってようやく掘り下げが始まる(苦笑)
元アイドルなキャラがモノローグで
過去の自分と今の自分を比較したりと長々と語ってくれるのだが、
その間に描かれるのはスーツケースで移動してるシーンだ。
本当につまらないアニメーションを見せてくれる。

メインキャラ5人の内、3人が掘り下げ不足のまま終盤になっている。
それに気づいたのか終盤で慌てたように3人を掘り下げようとしても遅い。
主人公でさえ掘り下げ不足なのに、他の3人を掘り下げたところでだ。
1番掘り下げられていた「熊本愛」は途中で退所し、物語から離脱するため、
せっかく掘り下げた意味も薄い

5人のメインキャラをきちんと掘り下げたいのなら、
「プロ編」を描かなかったほうがいいだろう。
競輪の経験がない5人の女の子が競輪選手を目指す、

その中で養成所に受かるために頑張り、養成所を卒業し
プロになるために頑張り、最後はプロとしての頑張りを描いている。
描かないといけない要素が多い。
そのせいでキャラクターの掘り下げが薄くなってしまっている。

これで養成所時代をしっかり描きながら、
5人のキャラを掘り下げつつ成長と変化をえがき、
その結果、5人がプロになって1クール終わっていれば
印象は違っただろう。

この慌ただしい展開のせいでまるでダイジェストを見ているようだ。
終盤で掘り下げの甘いキャラの回が今更描かれても、
それがメインのストーリーに影響するわけではない。
結局主軸となるのは伊東泉であり、ライバルの平塚ナナだ。
この2人がいればストーリーが描けるだけに、他の4人が邪魔でしかない。

終盤の8話、9話、10話あたりは
そんな3人の掘り下げであり、特にメインストーリーに
深く影響するわけでもないため、飛ばしても問題ないくらいだ。
どうでもいいエピソードが終わると、
いつのまにかルーキーファイナルに出る選手が決定している。

主人公もふわっと1位をとるレースも増えてきているようなのだが、
その成長の裏付けがあまり見えてこない。
他の4人や平塚ナナも主人公をライバル視し、
どこか神聖化するものの、そこまでの魅力が彼女にはない

ウジウジ

終盤で主人公はテレビの取材を受けることになる。
若手の注目ルーキーとして彼女は平塚ナナとともに注目されている。
そんな中で彼女は自分を勝手に追い詰める。

周囲の反応、応援されているという重圧、
テレビに出たからこそ「ネットの反応」も様々だ。
エゴサして勝手に落ち込んでしまう。またウジウジだ。
このウジウジが本当に長い。11話で始まり、12話まで引きずっている。
どうでもいいウジウジパートが心底つまらいうえに長い。

そんなウジウジを引きずったままの最終話だ。
勝手にエゴサして、勝手に色々と考えて、勝手に落ち込んで、
勝手に自分を追い込んでいる。視野があまりにも狭い。
視野を広げたところで掘り下げ不足のキャラしかいないのだから、
視野を狭めるしかないのはわかるが、展開が浅い。

そんなウジウジをルーキーファイナルまで続け、
ファンの声援や応援してくれる人の声で立ち直るという展開で
レースに挑んで終わる

ここまで引っ張ってきた終盤の盛り上がりである
ルーキーファイナルのレースシーンは10分もない(苦笑)
多少最後のレースの作画と演出はよかったものの、
ときすでに遅しで終わってしまった作品だった

総評:競輪プロパガンダアニメ

全体的に見て、ミクシィが絡んでいることもあり
ソシャゲを展開する予定なのかもしれない。
そうでないとありえないほどキャラクター数が多く、
1話の時点で10人以上のキャラがどばっと出ている。

そのせいで主人公を筆頭に多くのキャラが掘り下げ不足になっており、
1番掘り下げられていた「熊本愛」は中盤から一切でなくなる。
終盤に急に主人公以外の3人の掘り下げが始まるものの、
特に見ても見なくてもどうでもいいエピソードでしかなく、
本筋には一切関係ない。

肝心の主人公もウジウジとしており、中盤でのウジウジはまだしも、
終盤になってもウジウジとする展開は主人公に対する
好感や掘り下げにつながっていなかった。

やってることは王道のスポーツアニメであり、
あまりひねりのある展開はない。
だが、そんな王道を盛り上げるためのしっかりとしたキャラ描写や、
王道を引っ張るための主人公の魅力がなく、
王道を後押しする「作画」が死んでいる。

レースシーンはとにかく硬い。フルCGでところどころ描かれる
レースはスピード感を感じず、アップと引きの絵を繰り返し、
集中線でごまかすレースシーンに何の面白みもない。
もう少しレースシーンの魅力があれば印象も違ったのかもしれないが、
1レースたりともレースが面白くないというのは致命的だ。

そもそも彼女たちが競輪を始める切っ掛けもかなり
パワープレイな脚本になってしまっており、
起承転結の起の部分でつまづいてるという
珍しい作品だったかもしれない。

個人的な感想:プラオレ

制作側としては女の子版弱虫ペダル、
自転車版ウマ娘のようなものを目指そうとしたのかもしれないが、
作画やストーリーなどいろいろな部分が追いついていない。

どことなくプラオレを彷彿とさせる部分もあり、
この作品ももしかしたらソシャゲになるのかもしれないが、
熊本ちゃんがどうなったのかだけが気になってしまう作品だった

「リンカイ!」に似てるアニメレビュー

「リンカイ!」は面白い?つまらない?

この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください

  1. Inuko より:

    いつも楽しく拝見させていただいております。 さてこのアニメ、アニメレビュアーの方からの評判は一部を除き散々ですね。一方、競輪ファンからの評判は概して悪くなく、放送終了後の競輪場でのアニメイベントも、大ヒットアニメには全く及びませんが、それなりに盛り上がっています。本アニメプロデューサーが作品をリアルに寄せた結果、登場人物は全うに「博打の駒」になっており、変に個別の深堀りや過度に主人公に感情移入させない作りが、少なくとも競輪ファンでもある当方には心地よかったです。  https://keirin.netkeiba.com/news/column_detail.html?id=2744