日常

いぶし銀の名作「ラーメン赤猫」レビュー

4.0
ラーメン赤猫 日常
画像引用元:©アンギャマン/集英社・ラーメン赤猫製作委員会
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評価 ★★★★☆(68点) 全12話

TVアニメ『ラーメン赤猫』本PV

あらすじ ラーメン屋のラーメン赤猫は、店長の文蔵を始め、猫たちだけで切り盛りしてきた。そこへ人間の女性、社 珠子が就職面接に訪れる。引用- Wikipedia

いぶし銀の名作

原作は少年ジャンプ+で連載中の漫画作品。
監督は清水久敏、制作はE&H production

人の手を借りたい

この作品は1話から不思議な空気感を醸し出している。
主人公である「社 珠子」はちょっと地味なメガネっ子だ。
最近のアニメのキャラクターデザインというよりは
20年くらい前の深夜アニメのようなキャラデザをしており、
かなり独特なクセが有る。

どこか懐かしく古臭くもある。
そんな彼女が訪れるのは「ラーメン赤猫」だ。
美味しそうな昔懐かしい醤油ラーメンを出す、
チャーシュー、ノリ、煮卵、メンマ、透き通るようなスープに麺。
「あーこれだよこれ」というド定番なラーメン屋だ。

そんな定番のラーメン屋ではあるものの店主と従業員は「猫」だ(笑)
二足歩行で当たり前のように会話をし、
踏み台にのってラーメン鍋の前にたっている。
猫だらけのお店で「どちらかといえば犬が好き」という理由で
彼女は雇われている。

だが、あくまでラーメン赤猫のコンセプトは
猫がつくり、猫が接客するラーメン屋だ。人間である主人公の存在は異質だ。
猫であるがゆえに飲食店を営むハードルは高い、
頻繁にブラッシングをし、気合で抜け毛を防ぐ。
そんなブラッシングのために主人公は雇われている。

彼らはプロだ、猫ではあるもののプロとしてラーメン屋を営んでいる。
抜け毛が入ることはある、猫だもの。
しかし、それでも極力入らないように彼らは努力をし、
プロとして人間にラーメンを提供している。

そんなプロとしての仕事の姿と、猫の愛嬌さ、
それを同時に味わえるのがこの作品だ。
なんとも言えない味わいを1話から醸し出しており、
他のアニメにはない魅力がこの作品には詰まっている。

社会

ラーメン赤猫は主人公以外猫が働いているという
特殊な空間だ、しかし、それ以外は「社会」がある。
新人である主人公は新人であるがゆえにまだ仕事を理解していない。

猫である彼らにどう接すればいいのか、
ブラッシングという仕事1つにしても、猫によって
ブラシの好みがちがい、やり方にも好みがある。
一生懸命、マニュアルを読み、ブラッシングと掃除をする。

猫だからこその特異性はあるものの、「仕事」は「仕事」だ。
雇ったからには甘やかさない、厳しくあたる先輩もいる。
それでも彼女は1つずつ仕事を覚え、
このラーメン赤猫に馴染もうとしている。

猫がいるラーメン屋という特殊な環境ではあるものの、
描かれているのは完全なる社会であり、社会人の物語だ。
「労働条件通知書」や「雇用保険」など生々しい用語も出てくる(笑)

主人公は前の職場でひどい目に合っている。
いわゆるブラックな環境であり、辞めるのさえも一苦労だった。
人間にブラックな人間の環境から、人間にはホワイトな猫の環境へ、
転職した主人公の物語が丁寧に描かれている。

爆笑するわけでもない、なにかラブコメ的な恋愛要素があるわけではない。
だが、1エピソードが丁寧につづられることで、
自然と1人、いや1匹1人のキャラに愛着を持ち、
そんな彼らの「日常」が染み渡る。

出世

1話の時点では裏方、ブラッシングや片付けが仕事な主人公だが、
2話では洗い場にはいることになる出世だ。
そんな異質な存在の主人公ではあるものの、
彼女は必死に働こうとしている。

猫でなくても、たとえコンセンプトを崩しても
「仕事」をすれば周りが評価してくれる。
お客も、同僚も、懸命に真面目に働き、結果を出す主人公を
徐々に同僚もお客も認めてくれる。

努力すれば結果が伴う。
前職がブラックな環境だったからこそ、
前の職場ではその努力や頑張りが評価されなかった。
だが、ラーメン赤猫は違う。
きちんと仕事の成果と評価が生まれるこの環境に
主人公が馴染み、努力しようとする姿と
猫たちに日常に癒やされる。

ブラッシングしかやらせてもらわなかった主人公が、
皿洗いをし、麺を整えられるようになる。
迷惑系配信者がくれば、自らが前に立ち追い払おうとする。
忽然と彼女も「ラーメン赤猫」の従業員として
プロになろうとしている。

猫たちも同じだ。
恥ずかしいからと宣伝ポスターに出なかった虎の
クリシュナが、自身の恥ずかしさよりもプロであることを選び
ポスターを貼ることを許可してくれる。

丹念に麺を打っていても、
それを伝える努力をしなければ客には伝わらない。
猫が働くラーメン屋というゆるい職場にみえるものの、
きちんとプロがおり、商売をしている姿が素晴らしく、
ゆるさとプロであることの締まり、
このバランスがこの作品らしい面白さを生んでいる。

でも、猫だからこその魅力もある。
猫には「ネギ」はNGだ、だからこそネギは使用していない(笑)
それどころか店主はきちんとスープを味見していない、
しかし、匂いと受け継いだレシピと猫だからこその食材で、
ラーメン赤猫のラーメンは生まれている。

話が進めば進むほど、このラーメン赤猫という
作品の世界観に取り込まれていく。

掘り下げ

序盤でこの作品の世界観や雰囲気を掘り下げた後に
中盤になるとメインキャラクターを掘り下げていく。
ゲームが得意な猫もいれば、食品を扱うからこそ
長毛種な猫はあえて短くカットしていたりする。
そんな彼らの一匹一匹の意外な個性が日常につながる。

彼らにもここまでに至る過去がある、
そんな過去にもドラマが有り、今の彼らを作り上げている。
野良猫だったり、拾われたり、動物園生まれだったり。
猫にも猫生があると感じさせるストーリーが染み渡る。
そこに更にお客さんたちも絡む事で、どんどんと作品の深みが増していく。

各話のあとの「毎日赤猫」という
ショートエピソードも4コマ漫画チックで面白く、
AパートからCパートまできっちりと
楽しまさせるという制作側の気概を感じる作品だ。

ただの一発ネタ、出落ちではなく、
きちんと「ラーメン店」というものを描いていたり、
買収騒動がおこったり、ラーメンを評価する人が現れたりと、
猫が働いているという特殊さはあるものの、
そこを除くとラーメン屋の物語としてもきちんとしている。

CG

ただ作画に関しては違和感が生まれる部分が多い。
特に人間のキャラクターはCGを多用している部分もあり、
ぬるぅーっとした独特のCGらしさが
強烈な違和感を生んでいるシーンも有る。

見ているうちに慣れる部分はあるものの、
猫たちの作画、CGの違和感は薄いのに、
人間の違和感はかなり強烈だ。
このあたりは好みが分かれる部分であり、
この作品の欠点らしい欠点とも言える部分だ。

猫以外のキャラクターデザインもかなり曲があり、
それが懐かしい雰囲気を醸し出すと同時に、
好き嫌いが別れやすい要素にもなっている。

この世界の猫は成長すると知能を獲得し人語をしゃべることもあるものの、
必ずというわけではないようだ。
話す必要があるからこそ言葉を獲得する、
それは「生きるため」の手段でもある。

飼い猫はあまり喋ることはない、喋らなくとも
飼い主が世話をしてくれて甘やかしてくれる。
だが、野良猫たちは違う。
生きるために彼らは喋っていると言ってもいい。

猫が言葉を喋り二足歩行で歩きラーメン屋を経営する。
この作品における「ファンタジー」な部分を
きちんと納得できる理由を裏付けしている。
その裏付けされた理由はややシリアスではあるものの、
この作品の優しい世界観がシリアスさをうまく濁している。

1クール、そんな優しい世界観の中で描かれる
猫たちの仕事の流儀が光る作品だった。

総評:猫にはブラック、人間にはホワイト

全体的に見ていぶし銀のような作品だ。
アニメーションのクォリティが高いというわけでもない、
爆笑する内容でも、号泣する内容でもない。
しかし、この作品は面白い。

この作品にあるのはラーメン屋で働く従業員の日常だ。
唯一突飛な部分があるとすれば、「猫」が働いているという一点のみ。
その一点を除けばまっすぐな日常系であり、それ以上でもそれ以下でもない。
恋愛要素すらなく、キャラクターたちが「仕事」に打ち込むさまが描かれる。

一匹一匹、一人ひとりに事情があり、過去がある。
そんな彼らがラーメン赤猫の授業員という今があり、
その今を現状維持で落ち着かせずに努力し、
よりよいものにしようとしている。
そのメインキャラクターたちの姿が微笑ましく癒やされる。

ファンタジーな部分はあるものの、そのファンタジーな部分に
納得できる理由があり、猫が飲食店を営むうえでの
ストーリーというこの作品だからこそのドラマも生まれている。

CGやキャラデザの癖はあるものの、そこさえ乗り切れば
1クール、染み渡るように楽しめる作品だった。

個人的な感想:ずっと

2期も決定しているため、今から2期が心待ちな作品の1つだ。
昔だったらこういう作品は1クールじゃなく、
通年アニメとして1年中ずっと放送してたんだろうなと思う部分もあり、
今の時代は1クールしかできないことが残念でしか無い。

それでも2期が決定していることは嬉しい限りだ。
こういった地味な作品は評価されづらい部分があるものの、
2期、3期、4期と続いてい作品になることを期待したい。

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