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狂気の特典商法「劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク」レビュー

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劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク 映画
画像引用元:(C)「劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク」製作委員会
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評価 ★★☆☆☆(39点) 全105分

『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』劇場幕間映像 第3弾

あらすじ CDショップで聴いたことのない初音ミクの歌を耳にした星乃一歌は、モニターに映しだされた見たことのない姿のミクと目が合うが、ほどなくしてミクは消えてしまう。引用- Wikipedia

狂気の特典商法

本作品の原作はソーシャルゲーム。
プロジェクトセカイの初のアニメ化作品であり、
「初音ミク」の初の映画作品でもある。
監督は畑博之、製作はPA.WORKS。
なお、本レビューにはネタバレが多少含まれます。

世界観

この作品の原作はソシャゲであり、多くのキャラとストーリーがある。
そのあたりの基本的な説明は映画では一切されない。
あくまでも映画というお金を払って見に行くものであり、
原作たるソシャゲをやってること前提の作りになっている。

これ自体はTVアニメの続きのアニメ映画などでも同じことであり、
映画だけ見てもわからない部分はあるものの、
事前情報を仕入れずに見なかったほうが悪いというのが私の認識だ。
もっともこれがTVアニメの場合は新規勢にも配慮しかるべしという
考えでもあるが、映画のため今回はそこは目をつぶっている。

本当に説明というものは一切ない。
この作品には5つのユニットがあり、
それぞれが音楽活動をしていることはわかる。
同時にそれぞれが「セカイ」という初音ミクなどの
ボーカロイドが存在する空間に行けるような存在らしい。

序盤はついていけない部分はあるものの、
中盤くらいになるとなんとなく世界観を把握できる部分もあり、
ついていけるのだが、キャラクターに関してははっきりいって多すぎだ

基本的なストーリー

映画の中で出てくる5つのユニットには、それぞれ4,5人のキャラが
所属しており、音楽活動をしている。
そんな「日常」の中で「迷子」の初音ミクに出会う。
というのが映画の冒頭だ。

この作品、ストーリーだけ見れば無難だ。
自らのセカイが壊れ、多くの人の中に存在するセカイ、
夢をあきらめ、将来、目的を失った人たちの残留思念のようなものが
迷子のミクのセカイにたまっていき、そんなセカイを
なんとかしようとするものの初音ミクの声は届かない。

初音ミクのセカイに限界がきて、
唐突に黒い何かがあふれでて迷子のミクだけでなく、
5つのユニットたちのセカイにいたそれぞれの初音ミクも消失し、
世界中から初音ミクの声が失われる。

そんな迷子のミクだけでなく、自分たちの初音ミクを、
世界の初音ミクを取り戻すために5つのユニットは
それぞれ「曲」を作り、多くの夢破れしものにそれを届けることで
初音ミクを復活することに成功し、ばんばんざいだ。

この作品のストーリーだけ見ると物凄くシンプルであり、
なんのひねりもなく、王道というかありがちなストーリーだ。
ソシャゲ原作アニメだからこそ「キャラクター」が重要であり、
話自体はありがちでも、それを綴るキャラが魅力的にうつれば
ファンは納得できだろう。

変に奇をてらったストーリーにせず、
作品のストーリーだけ見るとうまくまとまっているのだが、
この作品は見せ方が悪い。

5回

ソシャゲ原作アニメにありがちなのだが、
多くのキャラを「平等」に描こうとするがゆえに、
まるでお遊戯会のごとくキャラが順番に喋って、
「登場時間」や「セリフ量」すらも平等にしようとする傾向にある。
この作品がまさにそれだ。

物語を綴るメインとなるユニットが存在せす、
5つのユニット、すべてが主人公だ。
それ自体は問題ないものの、見せ方が問題だ。

例えば序盤で日常を描きつつ、スマホやテレビ画面から
唐突に初音ミクが飛び出してきて驚く、
それを同じユニットの仲間に伝えると、仲間たちも
街中で初音ミクを見かけたという。

この流れを各ユニットごとに5回繰り返す(笑)
流れ自体は一歳変わらないものの、
シチュエーションやリアクション自体は
ユニットやキャラによって違うものの、それ以外の違いはない。

これが序盤だけならばともかく中盤もだ。
迷子のミクが思いを伝えたい、歌い方を知りたいといい、
自分たちのセカイにつれていき、迷子のミクの歌を聞く。
これも当然、同じように5回繰り返す(苦笑)

序盤も中盤も終盤もぜーんぶ同じだ。
かならず、どの展開も5回繰り返している。本当に厳しい。
話が一切進まずにダラダラと同じ展開を繰り返している。
各ユニットを各キャラを平等に映すためだけの
ファンへの配慮でしかなく映画としての面白さにはなっていない。

これが1ユニットしか存在しないなら、45分くらいで描ける話だ。
しかし、5ユニット存在するがゆえに、
20分くらいの似たような展開を5回繰り返し、
120分の映画にしているような感覚だ。

これがYouTubeなどの動画サイトであれば、
5分割してやればいいと思うようなストーリー構成でしかなく、
それを無理やり120分の映画にしているのは無理がある。
非常に見ていて退屈だ。

別次元?

これは設定を飲み込めないまま見ている私も悪いのだが、
中盤くらいでわかる事実がある。
この作品には5つのユニットが出ている、
しかし、その5つのユニットに「横のつながり」というものがない。

普通のこの手のバンドアニメやアイドルアニメの場合は、
たくさんのバンドやアイドルグループが出てきても、
そのバンド同士の絡み、アイドルグループ同士の絡みが存在する。
しかし、この作品にはそれがない。

あくまでそれぞれが「孤立」したセカイであり、
だからこそ複数の初音ミクが存在するような感じなのだが、
その設定を知ったときに少し驚いてしまった。

中盤や終盤で迷子のミクの「セカイ」に
それぞれのユニットが訪れるのだが、
その次元では別のユニットは「モヤ」のようになっていて
なにかいるなということはわかっても、
どこの誰かまでな認識できないようになっている。

配慮

そういう設定だからこそ、同じ展開を5回繰り返さないと
5ユニットがストーリーについていけなくなってしまう(苦笑)
迷子のミクだけが基本的に5つのユニットのセカイを
自由に行き来できるようで、わざわわざ5つのセカイを
彷徨ったくれたせいで、5回もループするストーリーになっている。

そういう設定なのはわかるものの、結局「ファン」への配慮だ。
自分の好きなキャラが出ていない、
自分の好きなキャラの出番が少ない、台詞が少ない。

そういったことが一切ないように平等にしようとしたのだろう、
そのせいで常に同じ展開を5回繰り返すという
意味不明なことをしている。
ギャルゲーの共通ルートを何度も何度も味わされてる感覚だ。
オムニバス形式とでもいえばわかりやすいだろうか。

制作側がファンへ配慮した気持ちはわかるものの、
もう少しなんとかならなかったのかと思うほど、
本当に同じ展開を5つノユニットで5回繰り返してるだけで
工夫というものがない。

群像劇ともいえなくはないのだが、
結局は横のつながりがないため群像劇にすらなっていない。
同じ演目の話を5つの劇団が行ってるだけだ。
それがそれぞれの舞台でやっているならいいが、
この作品は同じ舞台でやっているのがたちがわるい。

アニメーション

アニメーションのクォリティ自体はそれなりだ。
特筆スべきものがあまり見つからないほど普通であり、
PA.WORKSらしい優等生的な作画、アニメーション、演出だ。

ライブシーン自体はかなり気合が入っていることはわかり、
ぬるぬると動くライブシーンやそれぞれのユニットごとの
特色が感じられる曲や演出はキャラの印象付けにもつながっている。
ただ、各ユニットのライブよりも初音ミクのほうの描写に
気合が入っている感じが強い。

斬新なのは映画前に「初音ミク」の舞台挨拶があることだ(笑)
しかも、スマホで撮影OKという特異なことをしている。
ラストには初音ミクによるライブも行われるのだが、
このライブシーンの描き方がリアルだ。

本来、こういったライブシーンの場合はカメラを
動かしまくりアップにしたり引きにしたり、いろいろな角度から
映し出していることが当たり前だが、
この作品は一切動かない、カメラは正面固定だ。

最初は「え?」となるのだが、舞台挨拶のときと同じことを
ラストの初音ミクのライブシーンでは行っている。
「リアル」に、そこに、スクリーンの前に初音ミクがいる。
私達は映画館の座席という「視点」で見ている。
だからこそ、カメラが真正面固定だ。

リアルにアイドルのライブを見るかのようなカメラの固定は
非常に面白く、もし今から見る人は、このラストのライブのために
なるべくスクリーンに近いところで見たほうが良いかもしれない。
リアルにそこに初音ミクが存在する、初音ミクのライブを見た。
その感覚が強く残り、映画本編の記憶は薄れてしまう作品だった。

総評:ファンが見れば80点、ファン以外が見ると39点

全体的に見てファンムービーとしては及第点を言えるかもしれない。
作画のクォリティは突出したものはないものの安定しており、
ライブシーンなどの見どころはきちんと盛り上げており、
映画に登場する5つのユニットのライブシーンもきちんと描かれ、
全キャラほぼ「平等」に出番もある。

そういった意味ではファンへの最大限の配慮がなされており、
劇中で多くのボカロ曲が使われており、
ボーカロイドというものが好きな人も楽しめる部分がある。

初音ミクだけでなはく、鏡音リン・レン、KAITOやMEIKOや巡音ルカといった
ボーカロイドたちも勢揃いしており、
彼らが「ボーカロイド」らしさを残したままセリフを喋るというのは斬新だ。

ただ、ファンムービーであるがゆえにファン以外が見て
楽しめる作品では確実にない。
世界観やキャラクターの過去や関係性など、ほぼ説明されず、
自己紹介などもないため、前提知識は必要だ。
それ自体はファンムービーであるがゆえに
映画自体には必要がない部分であり、欠点とは捉えていない。

そこをのぞいても問題なのが「ストーリー構成」だ。
ストーリー自体は非常にベタであり、無難だ。
ありきたりなストーリーではあるものの、
キャラクターに思い入れがあれば楽しめるストーリーになっている。

しかし、そんな無難なストーリーを展開ごとに
5つのユニットが全く同じな流れで繰り返すのは
流石に厳しいものがあり、テンポが悪すぎる作品になっている。
5ユニットごとのそれぞれのキャラ、20人が同じように
迷子のミクにであい、同じような経験をし、同じような結末を迎える。

作品の設定的にユニット同士の横のつながりをもたせづらく、
こういうストーリーになったのかもしれないが、
同じストーリーの映画をキャラだけ変えて5回見せられた気分だ。

あくまでファン以外が見た感想でしか無いものの、
外野からすると「プロセカ」の映画というよりは
「初音ミク」の映画を見ている感じが強く、
そのせいもあってプロセカのキャラクターの印象がほとんど
つかないまま終わってしまった作品だった。

個人的な感想:特典商法

映画公開前にはいわゆる特典商法として
「26回」みないとゲームの特典をコンプリートできないという
とんでもない仕様で大炎上を起こしており、
ファンムービーなのにファンのことを考えていないやり方には
少し笑ってしまった。

さすがにファンでもこれは看過できないことだったらしく、
26回から6回に緩和されたようだが、
26回のままだったら色々と恐ろしい(苦笑)

ミリしら状態で見ても、意外と作品を見れば
キャラの印象が残ることは多いが、
この作品の場合一人だけやたら暗い過去がありそうなキャラは
気になったものの、そのあたりが掘り下げられるわけもなく、
かといって原作をプレイしようとも思わないまま終わってしまった作品だった。

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