評価 ★★★★☆(65点) 全12話
あらすじ 時は流れ、現代の日本。死んだはずの諸葛亮は若返った姿で再び生を受け、何故か中国ではなく、東京・渋谷で目を覚ました。引用- Wikipedia
これも孔明の罠!?
原作は週刊ヤングマガジンで連載中の漫画作品。
監督は本間修、制作はPA.Works。
転生
1話早々、あの「諸葛亮孔明」が現代の日本に転生するところから物語が始まる。
昨今、異世界転生が流行だが、そんな異世界転生を逆手に取るように
五丈原の戦いで病死した諸葛亮孔明がなぜか若い頃の姿で現代に日本に転生する。
彼はどうして若い姿で現代の日本に転生したのか、理由は一切わからない。
自らは死んだ身であり、ハロウィン中の日本を「地獄」かと思った彼。
そんな中で彼は「英子」というシンガーソングライターと
出会うところから物語が始まる。
非常にインパクトのある始まりだ。
諸葛亮孔明が現代の日本に来る、それだけでも十分にインパクトが有るのに、
彼がする事は「売れないシンガーソングライター」のプロデュースである(笑)
彼は何も知らない。
いきなり現代日本にきたせいもあり、何もかもが新鮮だ。
現代知識を知らない諸葛亮孔明に「英子」は丁寧に彼にスマホの使い方を
教えた結果、持ち前の知恵を活かし、あっさりとスマホを使いこなしている。
自らの死後の歴史、見知った顔も居ない現代。
彼の寂しさを癒やしたのは売れないシンガーソングライター「英子」の歌声だ。
売れずに悩む彼女のために、彼女を人気にするために彼は彼女の軍師になる。
かなり突拍子もない展開とも言える。
だが、妙に説得力のあり、その妙な説得力を勢いでごまかすことで
なんだか楽しいアニメということを感じさせており、
極めつけはEDだ。
なにせ「気分上々↑↑」である(笑)
懐かしさと無駄にテンションの上がる曲は、
この作品らしいエンディングと言えるかもしれない。
しかもOPは「チキ・チキ・バン・バン」だ。
この謎の選曲センスがこの作品にあっているのが不思議だ。
調査
1800年くらい前の人物が、一体どうやって
売れないシンガーソングライターをマネージメントするのか。
誰もが気になるストーリー展開だ。
現代のはやりや音楽の知識も彼にはない。
だが、彼には持ち前の知略と計略がある。
BMPをしり、クラブミュージックを知り、「客の煽り方」を知る。
人気のアーティストのライブにいき、学び、吸収する。
そんな中で英子は軽いノリで彼に命令をする
「軍師孔明に命じる。私のステージを満員にせよ!」
フォロワーが200人くらいしか居ない売れないシンガーソングライター。
そんなシンガーソングライターのステージを
諸葛亮孔明はいったいどうやって満員にするのか。
同じ時間には別のステージで人気のアーティストが歌っている。
見ている側が一切予想できない。
諸葛亮孔明という人物が、一体、どのような計略で
彼女のステージを埋めるのか。
石兵八陣
彼が使った手法は「石兵八陣」である(笑)
一度足を踏み入れれば二度と元の場所には戻れない必殺の陣、
戦場で活かされた計略を諸葛亮孔明は「クラブ」という場所で再現する。
客を迷わせ、出口を見つけられず、出られなくする。
やってることは卑怯そのものなのだが、諸葛亮孔明の計略なのだから仕方ない。
その計略だけが全てではない。
英子という少女がシンガーソングライターとして魅力がなければ、
もっと真剣に客は出口を探し出ていってしまう。
彼女が魅力的だからこそ、計略は効果的に作用する。
諸葛亮孔明の計略という要素を
シンガーソングライターの人気向上に活かすという
突拍子もないストーリー展開ではあるものの、
それがこの作品はうまいこと効果的に作用しており、
ギャグとして笑えてしまう。
英子くらいしかツッコミ役は居ない。
むしろ「三国志大好き」なオーナーもおり、
彼の存在のお陰で諸葛亮孔明の計略の解説役にもなっており、
ツッコミは少なくとも解説役のせいで三国志を知らずとも楽しめる。
イッツパーリータイム!
その後もやってることは基本的に変わらない。
英子というシンガーソングライターを人気にするために、
諸葛亮孔明が自らの計略を現代の、クラブやステージで活用することで
英子が人気になっていく。
ときには邪魔もはいる、ときにはトラブルも起きる。
そんなときに諸葛亮孔明が計略を巡らせることでライブが成功し、
英子はどんどんと人気になっていく。
序盤から中盤は基本的にこの繰り返しで1話完結で話が進んでいく。
このサクサクとしたテンポ感と英子というヒロインの可愛らしさ、
そして圧倒的キャラの強さを誇る「諸葛亮孔明」と、
解説役のオーナーという3人のメインキャラだけで
話がうまく進んでいる。
これがどこぞの素人が立てた計略ならば納得感は生まれないが、
「諸葛亮孔明」という歴史上の人物だからこその
妙な説得力がこの作品を成立させている。
50年も生きた彼、伝説的な軍師の彼だからこその説得力だ。
歴史そのものがキャラクターの行動や台詞の説得力につながっている。
過去の経験、過去の公開、そして今、彼が「学んだ」からこそ
計略がうまくいく。
彼が次々と建てる計略に見ている側が「納得」できてしまう。
「諸葛亮孔明」も敵を作るばかりではなく、
英子を人気にするためにフェスの他の参加者を邪魔するようなこともある。
だが、そんな彼らにもきちんと「アフターケア」をしており、
平和な世だからこその立ち回りが彼の好感にもつながっている。
自信
英子という少女は自信を失っていた。
シンガーソングライターとして目が出ず、諸葛亮孔明に出会うまでは
もう夢を諦めようとしていたくらいだ。
だが、彼と出会い、彼が自分自身の歌に惚れてくれたからこそ、
彼女の夢の道は再び開ける。
彼女の前に簡単に参加できるフェスの権利と、
10万いいねを獲得しないと参加できない大きなフェスの権利が並べられる。
彼女は迷いつつも「大きなフェス」の権利を選ぶ。
以前の彼女ではありえなかったことだ、諸葛亮孔明と出会い、
自分自身に自信がついたからこその選択。
序盤の段階で彼女の成長と変化が見える。
この作品は非常にわかりやすい作品だ。
話は1話完結であり、次の話になると冒頭で前回のお話が解説される。
1話見逃しても問題ないような丁寧な作りになっており、
どストレートな面白さをわかりやすく追求している。
彼女の夢、あまりにも壮大で無鉄砲で、無理だとも言える彼女の大きな夢。
そんな夢を彼女は「誰か」に初めて話す。
諸葛亮孔明とならばたどり着けるかもしれない、彼女にとっての希望。
自殺未遂までした彼女が音楽という夢にたどり着き、
そして「諸葛亮孔明」という希望と出会った。
水魚の交わり、水餃子の交わり。
つるとんたんでかわされる二人の会話にほっこりとさせられてしまう。
KABE太人
しかしながら、中盤からやや方向性というか雰囲気が変わってくる。
序盤は基本的に1話完結で物語が進んでいたが、
5話あたりからは1話完結形式ではなくなる。
孔明は「ラッパー」をなぜか探しており、そんな彼のおメガネにかなったのが
「KABE太人」というラッパーだ。
かつてはラップバトルで連戦連勝した成績を持つ彼ではあるものの、
徐々にラップバトルへのプレッシャー、勝者のプレッシャーが
彼を押しつぶし、ラップバトルができなくなっている。
そんな彼のある種のメンタルケアのストーリーが中盤から描かれる。
彼はプレッシャーに負け、1度逃げた人間だ。
だが、諦めきれない。
日常的にラップを口ずさみ、諦めきれない思いを抱えている。
英子は諦めかけていたところに孔明と出会ったからこそ、
彼女は諦めなかった。
「KABE太人」というキャラはある意味で
孔明に出会っていなかった「英子」でもある。
そして同時に「目的」を失っていた「孔明」でもある。
英子の歌に出会い、彼女の軍師になった。
彼女の歌が孔明の心を動かしたように、「KABE太人」の心も動かす。
あえて孔明はあおり、あえて闘争心を刺激する。
おそらく諸葛亮孔明という歴史上の人物に
「ラップ」をさせたのはこの作品が初めてだろう(笑)
そんなラップバトルをアニメーションとしてもり立てる。
もはやスタンドバトルのような表現、
孔明を演ずる「置鮎龍太郎」さんのラップとあいまって、
棒立ちのはずのラップバトルが中盤の盛り上がりになっている。
そしてラップバトルのあとに分かる真実。
プレッシャーに負けてラップバトルができず、
胃がいたくなっちゃう彼がなぜ胃が痛くならずにラップができたのか。
これもまた孔明の罠である(笑)
きちんとギャグとしての「オチ」もつき、
孔明の計略っもきちんと物語に活かされている。
決して序盤だけの出落ちに終わらず、
「諸葛亮孔明が現代に来てシンガーソングライターの軍師になったら?」
というシチュエーションを活かしている。
中盤
中盤からのやや方向性の転換から物語のサクサク感はやや薄まる。
英子も自分探しをしており、1話の中での起承転結の良さというのが
失われるのはやや残念なところであり、ややテンポ感も失われてしまう。
ついでにいえば序盤から気になっている部分なのだが、
歌うシーンの多い作品なのに、そんな歌うシーンが
「静止画」の連続になってしまっているシーンがやたら多い。
話が進めば進むほど静止画がかなり増えている。
そのせいで「ライブ」というこの作品の盛り上がりどころが
いまいち盛り上がりきらない感じに終わってしまうところが多い。
中盤になると「諸葛亮孔明」というこの作品の中心にいる人物の
出番自体が一気に減ってしまっており、
そのせいで本作品における「ギャグ」が減ってしまう。
「ナナミン」という英子のいわゆるライバルポジションのキャラとの
関係性の掘り下げやキャラ描写をしているのは分かるが、
この「ナナミン」自体が孔明となんの関わりも持たないため、
余計に孔明の出番が減ってしまう。
孔明に頼りきりではなく、それぞれが自分を見つめながら
成長するというストーリー自体は悪くないものの、
英子だけではなくKABE太人のストーリーも同時に描いているため
余計にテンポ感が落ちてしまっている印象だ。
序盤の雰囲気と違ってしまっている部分やテンポがおちてしまったせいで、
世間的に「失速」と言われてしまっていたのもやや納得できてしまう。
このあたりはアニオリ部分も多いらしく、
PA.Worksお得意の「群像劇」的な要素が強まってしまっている印象だ。
この作品を序盤のように「孔明」が主人公の物語と捉えるか、
中盤からの孔明という軍師を得て成長していく「英子」や「KABE太人」の
物語と捉えるかで評価も変わっていきそうだ。
「10万いいね」をどう獲得するのか、そのエピソードが
中盤から続いてしまっているのも序盤の印象との違いを生んでいる
音楽性
英子が仲良くなった「ナナミン」はアゼリアというバンドを組んでいる。
彼女たちは本来は仲のいい3人の友達同士のバンドだ。
しかし、なかなか売れなかった。その中でとあるプロデューサーに
プロデュースされることで大人気になったバンドだ。
その代償は大きい。
自分たちが作った音楽でもない、衣装も過激、
あくまでもプロデューサーによる売れるための
プロデュースどおりにしているにすぎない。
売れるために自身の音楽性を隠す、それはリアルでも良くあることだ。
売れ線の曲と自分たちがやりたい音楽は違う。
だが、音楽は芸術であり自信を表現するためのものでありながら
同時に娯楽でありエンタメであり「商業」でもある。
終盤は「商業主義」と「芸術性」のぶつかり合いとも言える。
ナナミンと出会った英子、英子と出会ったナナミン。
ナナミンは自らの音楽性を犠牲にしながらも悩んでいる。
そんなナナミンに英子は届けたい。
自身の歌を、自身の思いを、共に歌ったときの感情を。
ナナミンが売れるために犠牲にし、置いてきたものを
「英子」は持ったまま、彼女の目の前に立っている。
誰かに歌を届けたい、歌が大好きで、純粋な気持ちで思いっきり、
売れる売れないなんて関係ない、歌いたいという気持ちで歌う彼女。
そこに孔明の計略は必要はない。
あくまで彼は軍師だ、兵や将がそれについていき、
兵や将が戦わなければ結果は残らない。
英子の歌を受け、あるべき形で歌う「アゼリア」の顔は、
かつて英子が歌に影響され、生きる気力を取り戻したときの顔にそっくりだ。
物語は綺麗に幕を閉じ、英子の、孔明の戦いはまだこれからも続いていく。
総評:Let’s Party Time
全体的にみて作品の前半と後半で色々と印象が違う作品だ。
序盤は現世にやってきた諸葛亮孔明が売れないシンガーソングライターを
売るために様々な計略によって画策し、トラブルに対処する。
1話完結で起承転結スッキリとしたギャグアニメになっている。
しかしながら中盤は「英子」、そして「KABE太人」が
話の中心となり、彼らの再生と成長の物語が中心となり、
そこに「ナナミン」が関わることで青春ストーリーへとなっていく。
その分、諸葛亮孔明の出番は減ってしまっており、
ギャグアニメとしての要素も減る。
前半は前半、後半は後半の良さがあるものの、
前半の雰囲気が好きな人にとっては後編からの展開や雰囲気は
「なんか思ってたのと違う」「想像してた展開じゃない」という
感想を生みやすくなる部分があり、そういう感想が生まれてしまうのも
わかってしまう。
それでも1クールで英子の挫折からの立ち直り、
そして誰かに影響を与える前の成長と変化はよく描かれており、
その成長と変化を感じさせるための「ナナミン」という
キャラの描写も素晴らしい。
ただそれでも、前半がサクサクテンポよく物語が進んでいたのに対し、
後半はやや冗長な部分も多く、余計に人による受け取り方や
感想の違いが生まれやすくなってしまっており、
原作ストックも10巻とそれなりにあるだけに、
全2クールくらいでもう少しテンポを上げて描いても良かったのでは?と
感じてしまう作品だった。
個人的な感想:もっと孔明
OPやEDの謎の中毒性、序盤から中盤までの孔明の存在感など
個人的には好きな部分も多いが、やはり中盤からは
あーこんな感じになるのかという方向転換が見えてしまう。
前半だけなら90点くらいの作品なのだが、
後半だけ見ると60点くらいになってしまうような、
そんな印象を受ける作品だった。
それでも2期がみたい。
この続きを見てみたい、英子がどう売れていき、
孔明がどういう策で彼女をサポートするのかをみてみたい。
2期があるならばOPとEDも何になるのか気になるところだ。
この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください
KABEがダメ。変にカッコつけた巻き舌で、ラップバトルで何言ってるか全然聞き取れないんだもん
即興でやってるはずなのにあれじゃギャラリー置いてけぼりだよ