ファンタジー

話の腰が複雑骨折「俺だけレベルアップな件」レビュー

2.0
俺だけレベルアップな件 ファンタジー
画像引用元:©Solo Leveling Animation Partners
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評価 ★★☆☆☆(39点) 全12話

アニメ「俺だけレベルアップな件」PV第1弾

あらすじ 十数年前に異次元と現世界を結ぶ通路「ゲート」が現れた世界。ゲートの出現以降、「ハンター」と呼ばれる超常的な能力を持った覚醒者たちが出現し、ゲート内のダンジョンに潜むモンスターを倒して大きな対価を得ていた。引用- Wikipedia

話の腰が複雑骨折

原作は小説な本作品。
韓国のカカオページで連載され、ピッコマなどでも
日本語に翻訳された漫画が連載されていた。
監督は中重俊祐、制作はA-1 Pictures

ハンター

この作品の原作は、わかりやすくいえば「韓国版なろう小説」だ。
日本のなろう小説の場合は異世界に転生したり転移して、
チート能力をもらってオレつえーなハーレムだが、
韓国や中国のなろう小説はちょっと違う。

特に中国の場合は「仙人」的な要素だったり、気功的な要素だったり、
異世界転移よりも「人生をやり直す」ようなものも多く、
このあたりはお国柄、文化の違いのようなものがあるのかもしれない。

この作品の場合もそうだ、異世界転移や異世界転生ではなく、
「異世界」そのものが現実の世界に侵食してきているといえばわかりやすい。
異次元の世界とつながるゲートが突如として世界中に現れ、
そこから出てくるモンスターには通常兵器は効かず、「ハンター」と
呼ばれる特殊能力に目覚めたものが討伐にあたっている。

ハンターたちは覚醒したときにランクが決まり、それ以上強くなることはない。
いくら努力してもEランクはEランク、Sランクには敵わない。
才能が全てな世界だ。

倒したモンスターから得られる結晶体は
原子力よりも安全なエネルギーとして世界中で高額で取引されている。
金が欲しければ、ハンターの能力に目覚めたのなら、
この世界ではハンターになることが当たり前だ。

そんな世界で主人公は「Eランク」のハンターだ。
人類最弱兵器と呼ばれる彼はハンターの中で1番弱いと言われる始末だ。
低収入でいつ死ぬかわからない、そんな中でも彼はハンターを続けている。
彼には金が必要だ、父は失踪し、母の治療のためにも、妹の学費を
稼ぐためにも彼はたとえEランクでも命をかけなければならない。

そんなストーリーの導入自体は悪くないものの、
1話からどばっとキャラクターが出てくるため、
主人公の視点のストーリーがなかなか進まない。

後に出てくるメインキャラを早めに出したかったのかもしれないが、
原作をちらっと読んだところ、明らかに原作改変している。
わざわざキャラを1話で出すために原作改変する意味がわからず、
いちいち視点が変わり、話の腰が折られ、テンポが崩れてしまっている感じだ。

隠しダンジョン

そんな主人公が同じハンターとともに低ランクのダンジョンに挑むものの、
そこで「隠しダンジョン」に侵入してしまう。
低ランクのダンジョンだったのに、あっさりと仲間たちの命は奪われていく。

最弱と呼ばれた主人公よりも強いハンターが一瞬で殺されるほどの相手、
そんな相手にどう挑むのか。
序盤はどこか「デスゲーム」のような雰囲気すらある。
今までなんとか生きてきた主人公、何度も命の危険に陥ったが、
圧倒的な強さを前に始めて「死」を意識する。

隠しダンジョンの強敵は一定のルールで攻撃してくる。
石版に書かれた言葉「掟」を読み解き、
最弱な主人公は生き抜くために最悪のダンジョンを攻略しようとする。

ストーリー的には悪くないのだが、脚本がストレートな見せ方をしておらず、
素直にそんなストーリーを味あわせてくれない印象だ。
2話もちょこちょこと視点が変わる。
このストーリー構成ははっきりいって最悪だ。

掟を読み解きながらも、次々と犠牲者が生まれる。
主人公は右足を失い、生き残りも少なく、満身創痍な状況だ。
そんな中で現れた祭壇。人が近づくと火が灯り、
石像を見つめていないと石像が動き出す仕組みが働く。

見つめ続けていれ死ぬことはない、だが、
他人を裏切り見つめ続けることをやめれば扉から逃げられる。
本当に扉の先に行けば生き残れるのかもわからない。
だが、目の前の恐怖から逃げるためにどんどんと逃げていくものが現れる。

そんな中で主人公は一人だけで残ろうとする。
彼は「右足」を失っている。走って逃げることもできない。
最弱のハンターは、死の間際に多くのものを救う。
真面目に生きてきたのに、もっと強くなりたかったのに、
家族を救いたかったのに、そんな希望があっさりと打ち砕かれる。

そんな自己犠牲と「もう1度チャンスが有れば」という思いが
彼に「力」を授ける。安易に異世界転生して
神様から力をもらうのではなく、それ相応の
「試練」を乗り越えることで彼は力を手に入れるチャンスを掴む。

この丁寧な導入は自然と先のストーリーを気にならせてくれる。

画面

ダンジョンから何故か生き残った主人公の前には
他の誰にも見えない彼だけが見える「画面」が現れる。
なろう系でよくあるステータスウィンドウ的なものだ。

なろう系ならば「あーステータスウィンドウね」くらいだが、
この作品の主人公はゲーム的なものとは理解しつつも、
自分の前に唐突に現れたそれを読み解いていく。

システムに選ばれた彼は「プレイヤー」に認定されている。
デイリークエストを日々かせられ、デイリークエストをこなさなければ
ペナルティが課される。

はじめはそんなペナルティのことなど彼は信じていない。
自分の前の前に現れれた謎のウィンドウを信用せず、
デイリークエストをこなさずに居た結果、
凶悪なモンスターが潜むエリアに強制的に送られてしまう。

特別な力を手に入れたものの、はじめからチートではない。
与えられたシステム、力を最初は信用せず、
デメリットを味わうことで始めてそれが本当のことだと実感できる。
非常に丁寧なストーリー展開だ。

更に主人公の演技も素晴らしい。
序盤の彼は命の危険に陥ることも多く、そんな絶望的な状況での
主人公の必死な叫びを「坂泰斗」さんが演じるあげることで、
主人公により感情移入しやすくなる。

そんな主人公のほうが気になるのに、
この作品は2話になっても3話になっても、
頻繁に視点を切り替えるのは辞めない。話の腰をいちいち折ってくる。

システム

デメリットを味わったことで主人公はシステムを理解し始める。
デイリークエストをこなせば3つの報酬をゲットできる、
回復効果、ステータスポイントをもらって振り分けることで、
自分を強くできること、アイテムを貰えることを。
少しずつ与えられた「システム」を理解していく。

そんな中で彼は「インスタンスダンジョン」の鍵を手に入れる。
「俺だけ入れる隠しダンジョン」である(笑)
某なろう作品を彷彿とさせる要素ではあるものの、
そこにチートなスキルを3つもくれる封印された美女は居ない。

彼には強くならなければならない理由がある。
たとえ命を賭しても、延命治療を続ける母のために、
妹の進学のために、家族のために彼は稼がないといけない。
システムという力をもらってもそれは関係ない。

たとえまた命の危険があっても、彼は一歩を踏み出さないといけない。
それがたとえ後戻りできない道だとしても。
E級ハンターで、モンスターすら一人でろくに倒せない彼は、
たった一人でダンジョンを踏破しなければならない。

戦闘

ステータスポイントのおかげで筋力は上がっているものの、
ダンジョンの中は強敵ばかりだ。たった一人で強敵が多く潜むダンジョンに挑む。
その戦闘シーンの緊迫感は伯領のある作画で描かれているものの、
やたらめったらカメラを動かす演出に関してはやや気になるところだ。

アニメーションの迫力よりも主人公を演ずる声優さんの
演技に救われている場面がかなり多い。
A-1Picturesといえば老舗の作画のクォリティが高い制作会社だが、
A-1Picutresにしては序盤は力不足な作画も目立つ。

モンスターを倒せば経験値を稼げばレベルアップする。
まるでゲームのようなシステムに「主人公」だけが支配されている。
この世界では本来はレベルアップの概念はなく、
ハンターは覚醒した段階で基本的に強さが決まる。
その世界で主人公だけが「レベルアップ」していく。

1度死を経験した主人公は死の恐怖を乗り越え、
血を流し、努力し、強くなっていく。
確実に強くはなっていく、だが、それでも彼の前には常に強敵が現れる。
それでも彼は逃げずに、前に進み続ける。

ストーリー自体は決して悪くないのに、
中盤になっても無駄な視点変更が多い。話の腰が複雑骨折しそうだ。

そもそも漫画版ではステータスウィンドウに表示されている言語が
「日本語」になっているのに、アニメではなぜか英語になっている。
そのせいで一瞬ぐらいしか表示されないアイテムの説明や
ステータスウィンドウに表示されている文章が読めない。

なぜ英語にしてしまったのだろうか、かっこいいと思ったのだろうか。
ちょっと色々とアニメの制作側のセンスがズレている。

ムッキムキ

レベルアップしてステータスが上がったせいもあってか、
5話の時点で主人公が別人のような見た目になっている(笑)
1話から4話までの主人公のキャラデザと、
5話からのキャラデザはまるで違う。背まで伸びてる始末だ。

彼の存在はこの世界において規格外だ。
ハンターは覚醒した段階で強さが決まる、
稀に「再覚醒」というのが起こりランクが上がることもあるが、稀な例だ。
主人公自身も自分に何が起こったのか分かっていない、
システムが再覚醒によるものなのか、それ以外のなにかなのか。

あくまで主人公はEランクだ。簡単な仕事しかすることができない。
そんな中で主人公は「数合わせ」なパーティーに参加することになる。
荷物持ちをするだけで20万、美味しい仕事だ。

だが、そんな美味しい仕事には「罠」がある。
弱肉強食な世界だからこそ、「ダンジョン」という外界から
断絶された場所だからこそ、巨万の富を得られるハンターだからこそ、
「犯罪者」も現れる。

E級ハンターである主人公が罠にはめられ「C級ボス」に挑むことになる。
中盤からようやく主人公の「チート感」が極まってくる印象だ。
CやEなんてランク付けは彼には関係がない。
「レベル」という規格外の概念を彼だけがもっている。

そんなせっかくチートな主人公の戦闘シーンを見れるかと思ったのに、
まーた視点変更をぶちかます。本当に話の腰を折るのが好きな作品だ。
話の腰の骨を折るどころか神経までズタズタにしている。
いちいち後で出てくるキャラの視点に切り替えまくり、
話の腰をおりまくる、何を巻がているのか本気でわからない。

ステータスウィンドウを英語にしたせいで、
主人公が以前手に入れた武器が「麻痺効果」のあるものだということも
わかりにくくなってしまっており、
その武器の効果もあってC級ボスを単独で倒せたこともわかりにくい。

裏切ったパーティーが主人公を殺そうと向かってくるのだが、
その時に「緊急クエスト」が表示されるのだが、
これまた一瞬でしか表示されず、英語なため、
クエストの内容がよくわからない。

主人公は殺意を向けられた場合、緊急クエストが発生し、
殺意を向けた相手を「殺す」ことを強要してくる。
そのあたりの要素が英語なためわかりづらくなってしまっている。

原作云々ではなく、アニメでの見せ方が悪い要素がかなり目立っており、
もったいなさを感じてしまう。
主人公をE級だと舐めてきた相手に向かってイキリちらかし、
罪悪感を感じずに人の命を奪う。なろう系らしい要素だが、
このあたりの描写自体は悪くない。

仲間

そんな主人公に仲間ができる、同じダンジョンに潜り、
同じく上位ランクのハンターに裏切られたことで、主人公の強さを彼だけが知る。
そんな彼の強さを買い、彼は「ギルド」を作るための協力を申し出る。
Eランクな彼では上位のダンジョンにいくことはできない、
レベルアップのために彼を利用しようとする。

更に彼の前には「Sランクダンジョン」の鍵も現れる。
Sランクという未知の領域、そんな領域を踏破すれば
「母の病気」を治す薬が手に入るかもしれない。

主人公がレベルアップしていきながら、
ときおりイキリながらも、彼の前には常に強敵が現れる。
一歩間違えば死ぬ、油断すれば死ぬ、おごれば死ぬ、
それでも彼は歩みを止めず、レベルアップし続けていく。
レベルアップして強くなり、母を救う、それが彼の目的だ。

危機的状況の中で「毒のあるアイテム」を主人公は飲むのだが、
この詳しい説明も英語のためよくわからない。
本当になんで英語にしたのか意味不明だ。
英語にしても主人公が説明してくれるならいいが、
断片的か、もしくは一切説明してくれない。

アニメとしての見せ方が致命的だ。

再開

中盤になると序盤で主人公とともにSランクダンジョンに行った
キャラクターたちと再会する。あの日、主人公をおいて逃げた者たちだ。
自分たちが生き残るために、主人公を犠牲にした者たち。
かつての仲間と「服役者」とともにレイドに挑むことになる。

そんなダンジョン内でまた人間が敵になる。
ダンジョンという欲望、ハンターという力に溺れたもの、
生死の境を彷徨いながら生き続ける彼らだからこそ、
人の業というものが現れやすい。

基本的に主人公は人間相手には圧倒してイキるが、
モンスター相手には苦戦するという流れを繰り返している。

転職クエスト

実力を隠している主人公だが、徐々に目をつけられていく。
他のギルドや、Sランクハンターetc…
彼がレベルを上げれば上げるほど、その強さに誘われるように強者も集まってくる。
そんな彼の前に「転職クエスト」が現れる。本当にゲームのようなシステムだ。

途中で戻ることもできない高難易度のクエスト、そんなクエストに挑む。
ただ、終盤になってもしつこいくらい視点変更をかましてくる。
本当にいい加減にしてほしい。
せっかく盛り上がる戦闘シーンを描いているのに、
「一方その頃」敵にいろいろな視点に切り替えるのは本当にわけがわからない。

終盤のこの戦闘シーンの迫力はかなり気合が入っており、
カメラアングルからハイスピードな作画、演出も凝っている。
そんな転職クエストを乗り越えると、転職する機会を得ることができる。
なぜかステータスウィンドウに表示されている英語の
字幕が急に出てきたりするが、今まで出てこなかっただけに謎だ。

そんな彼は「ネクロマンサー」となり、
魔物を仲間にする能力を身につけるというところで
1クールは終わっている。

総評:これが韓国産なろうだ!

全体的に見て、日本のなろう系と違い、最初からチートではなく
主人公が死を乗り越えることで強くなるチャンスを手に入れ、
何度も死線をさまよいながら、レベルアップが存在しない世界で
彼だ外科強くなっていく様を描いている作品だ。

なろう系特有の「イキリ」などもあるものの、
それと同時に主人公が一歩間違えば死にかねない相手との
戦いも描いているため、彼の強さの裏付け、努力がきちんとあり、
日本の無条件チートななろう系よりも楽しめる部分は多い。

作画に関しても、やたらめったらカメラを動かすのは気になるが、
終盤の戦闘シーンは特に気合が入って描かれており、
そこにさらに主人公を演じる「 坂泰斗」さんの演技力が重なることで
見ごたえのある戦闘シーンが生まれている。

ただ気になるのはストーリー構成だ。
序盤から視点の切り替えが非常に多く、
「一方その頃」的にやたらめったら別のキャラの視点に切り替える。
せっかく話が盛り上がってきたのに視点を切り替えることで、
話の腰を折るやり方が頻繁にあり、そこが1番気になってしまう。

この作品は2期も決定しており、2期から
主人公と絡むキャラもいるのだろうが、
1期の時点でほとんど主人公と接点のないキャラの視点の
シーンがあまりにもおおく、そのせいでテンポが悪くなってしまっている。

コミカライズも確認したところ、そういった視点の切り替えは
アニメ特有のものだ。なぜ、ここまで視点の切り替えたのが
本当に意味がわからない。

主人公にだけ見えるステータスウィンドウも、
漫画では日本語で描写されているのに、アニメでは英語だ。
そのせいで主人公が手に入れたアイテムやスキルの説明が
ほとんど読むことができないことが頻発している。

内容云々のまえに、このあたりの見せ方の悪さが
作品の足を引っ張ってしまっている作品だった。
2期ではこのあたりが改善されることを期待したい。

個人的な感想:反日

この作品は放送前から「反日」だ!と特定の界隈から
批判を受けていた。原作では主人公は韓国人であり、
アニメでは描かれていないが、少し先に出てくるDFNというのが
これが日本そのものだ。

そのDFN、日本が悪役として悪いことをしまくるせいで
「反日」とこの作品は言われているが、とんでもなくくだらない。
日本の作品でも韓国人や中国人を敵とする作品は多い、
すごくくだらない批判だ。

一部の年齢以上の、一部の人は今に「嫌韓」思想が根強く残ってるだけに
そういう批判も生まれるのかもしれないが、
個人的にはくだらないと感じてしまった。

作品自体の欠点もあるが、原作は完結しているだけに
完結までアニメ化するのだろうか?
3期以降が制作されるのかも気になるところだ。

「俺だけレベルアップな件」に似てるアニメレビュー

「俺だけレベルアップな件」は面白い?つまらない?

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