評価 ★★★☆☆(58点) 全101分
あらすじ 新世界の「デルタ島」。この島で海賊の一大イベント「海賊万博」が開催された。主催者は、フェスティバル海賊団の船長で「祭り屋」と称される海賊ブエナ・フェスタ。引用- Wikipedia
オールスター感謝祭
本作品はワンピースの劇場アニメ作品。
ワンピースとしては14作品目の映画作品となる。
監督は大塚隆史、制作は東映アニメーション。
海賊万博
映画冒頭から「黒ひげ」が登場し期待感をつのらせてくれる。
彼があえて「仲間」にしなかった存在、「鬼の跡目」と呼ばれた存在、
一体どんな人物で、どんな能力を持っているのか気にならせてくれる。
そんな中で始まるのが「海賊万博」だ。
「海賊王ゴールドロジャーにまつわる宝探し」が行われる祭りであり、
海賊ならば誰もが求めているお宝だからこそ、数々の海賊がそこに集う。
この作品は「テレビアニメ放送20周年記念作品」として作られている。
ワンピースの歴史は長い、様々なアニメ作品はあるものの、
20年以上の連載とTVアニメが続く作品はめったにない。
「国民的アニメ」の1つに仲間入りしそうなワンピース、
そんなワンピースの20周年記念をこの作品は祝うかのような作品だ。
なにせ、この作品には「200名」を超えるキャラクターが所狭しと出ている(笑)
OPの段階でも画面の端に色々なキャラクターがまるで
「ウォーリーを探せ」のごとく隠れており、
TVアニメ本編や原作だけでなく「映画」のキャラクターまでも
セリフこそ無いにしろ、画面には登場している。
この作品はワンピースファンのワンピースファンによる
ワンピースファンのための映画と言っても過言ではない。
逆に言えば新規のワンピースファンやワンピースについて
あまり知らない人は楽しみづらい部分がある。
OPの段階から「あのキャラが出てる!」とワクワクできる、
そんなワンピースが好きな人だからこそ楽しめる要素を
散りばめていると言っても過言ではない。
原作やアニメを見ていても忘れているようなキャラもおり、
海獣の「海ネコ」などあまりにもニッチなキャラ過ぎて
笑ってしまうくらいだ。
0.5秒くらいしか映らないキャラも多いため、
一時停止しながら見たくなってしまうような作品だ。
勢ぞろい
この作品で映画に初登場のキャラクターも多い。
そんなキャラクターがワチャワチャと戦いまくっている
「バギー」や「ロー」など序盤から争いあっており、
海賊だけでなく「海軍」も出てくる。
むしろワンピースの生きているキャラクターはある程度出ているのでは?
出ていないキャラクターを探すのが早いのでは?と思うほど、出まくりだ。
ロジャーのお宝を手に入れるため、海賊たちが争い合う。
序盤は本当にシンプルだ。
ルフィたち麦わら海賊団、キッド海賊団、ボニー海賊団、ウルージ海賊団etc…
彼らがお宝争奪戦を繰り広げるさまは「ワチャワチャ」しており、
本編ではできない、映画だからこその特別感のあるキャラの大集合だ。
いろいろな海賊たちが、悪魔の実や己の持つ力で
所狭しと戦いながら争奪戦を繰り広げる様にニヤニヤしてしまう。
多くの個性豊かなキャラクターが多種多様な技で戦う。
ワンピースという20年の月日を経た作品だからこその、
キャラクター数だからこそできるシーンだ。
スモーカーVS麦わら海賊団など、初期から見ていたワンピースファンにも
たまらないシーンも繰り広げており、
そんな中で文字通りの「道化回し」としてのバギーが
コメディリリーフとして作品をコミカルなものに仕上げている。
彼が居ることでいい意味でワンピースらしい初期のコメディのノリが生まれており、
作品全体で懐かしい雰囲気のある作品だ。
最近のワンピース映画は大人向けに仕上がっていることも多いが、
この作品は初期の映画、90年代の「ジャンプアニメ映画」のノリがある。
映画だからこその共闘、映画だからこそのシチュエーション、
本編とは基本的に無関係の「映画」だからこそできるシーンと
キャラクターの活躍が描かれている作品だ。
そんな中でかつて「レイリー」と同格といわれた
「ダグラス・バレット」がルフィたちの目の前に立ちふさがる。
海軍によるバスターコールが迫る中で、
この祭りを開いたフェスタの目的はなんなのか?ダグラスの目的はなんなのか?
ロジャーのお宝とは「ワンピース」なのか?と
シンプルなストーリーとキャラクターの多さが作品を盛り上げてくれる。
世界最強
敵の目的はシンプルだ「世界最強」になりたい。
これほどシンプルな目的は清々しさすら感じる。
「ロジャー」に挑んだものの敗北した過去を持つ彼、
死者を超えるため、全ての海賊に勝つという目的だ。
めちゃめちゃシンプルな敵に笑ってしまう。
そんな「最強」の敵にルフィたちが挑む。
本来は協力しないはずの海賊たちが、文句を言いながらも
「ダグラス」に挑みながらそれぞれの技を放つシーンは
短い尺ではあるものの、そんな短い尺にぎゅっと押し込められた
濃さがあり、ニヤニヤとしてしまう。
ルフィ達とダグラス以外にも、別の場所ではゾロたちと藤虎が
戦っていたりと、スピーディーに様々な場所で
それぞれの戦闘シーンが描かれまくっており、
序盤をすぎれば戦闘シーンだらけのシンプルなストーリー構成は
目が離せないシーンの連続だ。
特に前作でも出てきたギアフォース、
前作ではギアフォースの尺は短かったものの、
本作ではギアフォースでの戦闘シーンも全開に描かれている。
ゾロはゾロで「隕石」を叩き切ったり、
ミホークも出てきたりと、お祭り感が素晴らしい。
ガシャガシャの実
悪魔の実の能力を使わない状態の「ダグラス」でも十分強く、
こんな敵にどう勝つのか?という期待感が生まれるが、
「ダグラス」は悪魔の実の能力者だ。
ただ、これに関しては正直微妙だ。
彼は無機物と合体することのできる「実」であり、
使えば機械や武器、土などと合体して巨大化する。
前作もそうだが、巨大化した敵との戦いは「大味感」が生まれやすく、
巨大化する前のダグラスのほうがかっこよく、強そうに見えてしまう。
巨大化したダグラスのデザインもやや微妙であり、
悪魔の実を使わないほうが強そうに見えるという
やや矛盾したデザインになってしまっているのはかなり残念なところだ。
これもまた90年代のジャンプ映画、ドラゴンボール映画的な
特徴ではあるのだが、もう少しデザインがなんとならなかったのかと思うほど
やや安易なデザインなのは本当に残念だ。
意外な組み合わせ
終盤は意外な組み合わせでバトルが展開される。
ルフィ、ハンコック、バギー、スモーカー、サボ、ロー、クロコダイル。
本来なら立場も年齢も何もかも違う彼らが「ダグラス」に挑む。
巨大な敵にそれぞれが協力して戦う展開はシンプルに燃える展開であり、
敵を倒すきっかけが「ウソップ」なのも本作の魅力だ。
自分の弱さを知り、弱い事実を受け入れきれず、それでも、
仲間のために戦うウソップの姿、そんな弱いウソップが
一矢報いる展開、ラストの「曲」は反則だ。
ワンピースへの最短、ラフテルへのエターナルポーズを手に入れた
ルフィの行動もルフィらしく、
最後の一瞬の「ファンサービス」、この作品だからこそなし得た
夢の共闘に大満足して終わる作品だ。
総評:集え!ワンピガチ勢
全体的にみて、この作品はファン向けに割り切った作品だ。
20年というワンピース作品の重み、出てきたキャラクターたち、
そんな重みとキャラクターを知っている「ファン」に向けたものであり、
20周年だからこそのお祭り感覚で作られている作品と言ってもいい。
過去作と比べると初期の頃のようなノリであり、
敵の過去の描写は一応あるものの、最強を求めているだけの敵であり、
勧善懲悪の作品だ。
この作品の数作前からそういった勧善懲悪ではなく、敵の過去や
同情するようなキャラも多かったものの、今作品は勧善懲悪に割り切っている。
「深い」面白さがあるわけではない。
ZやSTRONGWORLD、GOLDとは方向性が違う作品だ。
新規層やワンピのワの字も知らない人には楽しみづらいものがあり、
ワンピースという作品をある程度以上知ってる人しか楽しめない。
しかし、割り切ったからこそ200人以上のキャラが登場し、
この作品だからこその夢の共闘が描かれている作品だ。
サンジとチョッパーの活躍はやや薄いものの、
それぞれのキャラに活躍どころがあり、ファンサービスもたっぷりとある。
どこか90年代のジャンプ映画のようなノリもあり、
割り切ったファン向けの映画としてシンプルなストーリーと
キャラ描写の数々が光る作品だった。
個人的な感想:高い評価は…
ここまで絶賛しているものの、高い評価はしにくい作品だ。
この作品を100%楽しむためにはワンピースの20年の重み、
原作なりTVアニメを読み込んでいる必要性があり、
そういった意味でのハードルは高い。
巨大化した敵とのバトルも前作と同じで大味感があり、
いろいろな技を見せるため、共闘して戦う姿を見せるためとはいえ、
「ダグラス」という敵が悪魔の実の能力の割には強すぎる印象も受ける。
いい意味でも悪い意味でもファン向けだ。
そこを割り切った上で見れば、ストレートに楽しめる作品だった。
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