評価 ★★☆☆☆(23点) 全12話
あらすじ 身体の一部を機械化し、機能拡張した人間「拡張者(エクステンド)」と生身の人間が共存する社会引用- Wikipedia
余計な台詞はハードボイルドに似合わない
原作はウルトラジャンプで連載中の漫画作品。
監督は伊藤尚往、製作はマッドハウス。
ハードボイルド
引用元:©カラスマタスク/集英社・NGL PROJECT
見出して感じるのはTheハードボイルドな雰囲気だ。
サックスによるしっとりとした曲と「頭が銃」の主人公である十三のセリフ、
彼を演じる諏訪部順一さんの声がまさにハードボイルドといわんばかりの
雰囲気を醸し出している。
「酒と女は男を狂わせる、俺はこいつで十分さ」
と言って彼は煙草をくゆらせる。だが女の子にキスされた瞬間に
彼の顔は緩む(笑)
ハードボイルドを貫こうとしてるのか、それともそのハードボイルドを
ギャグとして描こうとしているのかいまいち判断しかねる部分はあるものの、
この劇画調ともいわんばかりの雰囲気は独特であり、個性と面白さを感じる。
この世界は自分自身の体を機械化した「拡張者」と呼ばれるものが存在する。
彼らは戦争の際に体を機械化しており、戦争の後にその力を持て余し、
そんな彼のもとに同じ全身を拡張者から
「子供の保護の依頼」が舞い込むところから物語が始まる。
盛り上がりそうで盛り上がらない
引用元:©カラスマタスク/集英社・NGL PROJECT
ただ1話から色々と世界観やキャラクターの立場を
全部が全部説明しすぎてる感もあり、色々と面白うな雰囲気は
ただよってるのにメリハリのない見せ方や説明しすぎてる部分のせいか
いまいち盛り上がりに欠ける。
アクションシーンが極端に短いということもあるかもしれない。
全身を機械化している主人公であり、手のリボルバーを正拳突きすることで
必殺技のようなものを放つことができるものの、
演出の力不足のせいかいまいちインパクトがない。
せっかく盛り上がりそうな戦闘シーンになっても
あっという間に終わってしまい次の場面に切り替わることが多い。
シリアスなシーンとコメディーのシーンの切り替えも唐突で、
この作品をどういうスタンスで見れば良いのかいまいち判断しかねる。
世界観やキャラクターの設定の説明台詞も多く、
分割2クールがゆえにストーリーのテンポも悪く、話が少しずつしか進まない。
終始、盛り上がりに欠ける印象が拭えない。
本来は序盤の盛り上がりどころである主人公の「頭の銃身」の引き金を
助けた少年が引くというシーンもあっさりしており、
本来はそこを「魅せる」ことが重要なはずなのに出来ていない。
致命的なまでに盛り上がり所の作り方と盛り上げ方が下手だ。
戦闘中でもベチャベチャベチャベチャ喋りまくるのも
盛り上がらない原因であり、無駄にセリフが多く、
緊迫感が持続しないから盛り上がらない。
それっぽい感じ
引用元:©カラスマタスク/集英社・NGL PROJECT
「拡張者」と呼ばれる肉体の機械化は攻殻機動隊でいう義体化のようなものだ。
だが、主人公自身は全身が銃にされる前の記憶がない。
その記憶や過去に迫る話になるのかと思いきや、そういうわけでもない。
いわゆるサイバーパンクな世界観ではあるものの、
あくまで「サイバーパンク風」であり、そこにSFとしての設定の練り込みや
世界観の面白さがあるわけでもない。
ただ機械化している「拡張者」と呼ばれるものが存在し、
それに関するゴタゴタがあるだけという感じで、
あくまでも雰囲気だけのサイバーパンクでしか無い。
「士郎正宗」作品を目指しているのは分かるが、それが透けて見えるのも厳しく、
面白うな設定と雰囲気と世界観をただ見せられており、
そこにあるはずの「キャラクターの魅力」も見えてこない。
それっぽい世界観とそれっぽい話でしかなく、
ずーっと上辺だけを魅せられてるような感じだ。
大企業との対立
引用元:©カラスマタスク/集英社・NGL PROJECT
主人公はベリューレン社から逃げてきた少年を保護し、
それがきっかけで「ベリューレン社」と対立するようになる。
これが一応物語の主軸であり、ベリューレン社が行っている実験や陰謀などが
徐々に明らかになっていく。
だが、本当に徐々にしかわからない。
分割2クールというストーリー構成もあるのだろうが、
基本的には主人公たちの日常を描きつつ、主人公に依頼が舞い込み、
そのゴタゴタを解決しつつ、主軸のストーリーが進んでいく。
ストーリーが進む中で復興庁という拡張者を取り締まる組織や、
そこに所属するキャラクターなども出るのだが、
出てくるキャラクターの「インパクト」は主人公と同じようにあるのだが、
その外見や初登場時の印象よりも深くならない。
なぜ「ベリューレン社」はCEOの息子まで拡張者に改造し、
手足の健や声帯を潰すまでの行為をしたのか。
「ベリューレン社」は何がしたいのか?というのがはっきりとせず、
主人公たちも「ベリューレン社」から追われてるはずなのに
どうにも緊張感がない。
説明しすぎ
引用元:©カラスマタスク/集英社・NGL PROJECT
序盤からその傾向が強かったが、この作品はとにかく説明しすぎだ。
世界観や設定をセリフで説明するのは仕方ない部分があるものの、
キャラクターの「行動理由」までも説明してしまう。
例えば主人公が敢えて捨て身の作戦で敵と戦う。
逃げた敵を仲間が捕まえる。
生きたまま捕まえるために主人公が捨て身の作戦をとったというのは
きちんと「描かれている」のにも関わらず、
その状況やキャラクターの行動理由をモノローグで別のキャラが説明する。
別に説明する必要は一切ない。
見てれば分かることを敢えて説明してしまうため、
テンポが崩れ、面白さも薄れる。
どんな状況でも喋り続けるキャラクターたち、
説明しなくてもいいことまでも説明してしまうがゆえに、
盛り上がり所で盛り上がりきれない。
ハードボイルドを気取ってるのに無駄口が多い。
せっかく盛り上がりそうな緊迫感のあるシーンでも、
コミカルなセリフを吐くようなキャラも多く、色々とチグハグだ。
区切り
引用元:©カラスマタスク/集英社・NGL PROJECT
終盤になっても話が進んでるようで進んでいない。
主要キャラクターの行方不明の兄の存在が匂わされたり、
主人公と同じタイプの「拡張者」が現れたり、
主人公の過去が少しだけ明らかになったりする。
ただ最終話も結局、普通に依頼を受けてそれを解決して終わってしまい、
本来は分割2クールだからこそ2クール目への引きすらなく、
最後まで地味なままで終わってしまい、
結局、最初から最後まで盛り上がりどころを作れていない作品という
印象を拭えないままに終わってしまった。
総評:それっぽいなにか
引用元:©カラスマタスク/集英社・NGL PROJECT
全体的に雰囲気だけはいい作品だ。
頭が銃という主人公、ハードボイルドでサイバーパンクな世界観、
劇画調な雰囲気を感じる作画やキャラクターデザインなど
見た目やこの作品から漂う「雰囲気」だけはそれっぽい。
だが、結局、その雰囲気にふさわしい面白さがない。
サイバーパンクっぽい世界観とハードボイルドっぽいストーリー、
どれもこれも「それっぽい」何かではあるものの、
サイバーパンクとしてもハードボイルドとしても中途半端で、
そこに徹しきれていない。
シリアスな雰囲気やバトルシーンですら急にコメディタッチになったり、
場の雰囲気を壊すようなセリフを吐くようなキャラクターが居るせいで、
せっかく盛り上がりそうなシーンになっても
盛り上がりきらないままになってしまい、
ハードボイルドもハードボイルドで終わらせずにギャグにしてしまう。
分割2クールということで尺に余裕があるのは分かるが、
ストーリーの進行も遅く、本筋の話がゆっくりと進まずにもどかしく、
決してつまらないわけではないが面白いわけでもないという
中途半端な感じのストーリーばかりが描かれてしまい、
魅力的なはずのキャラクターの魅力を活かしきれないままに終わってしまっている。
2クール目でこの地味さや盛り上がりきらなさが改善されれば
作品全体としての評価は変わるかもしれないが、
少なくとも1クール目だけだと何とも微妙な作品止まりで終わってしまっている。
個人的な感想:キャラデザは好き
引用元:©カラスマタスク/集英社・NGL PROJECT
主人公や彼を取り巻くキャラクターたちのデザインは好きだが、
そのキャラデザの魅力以上にキャラクター自体の魅力の描写がなく、
結局ファーストインパクト以上にキャラの魅力が深まることもない。
戦闘シーンもマッドハウスということでもう少し期待したかったが、
色々と中途半端な描写が多く、もう一歩迫力が足りない。
2クール目でどうなるかはわからないが、
話自体が完結してくれれば1クール目のこの地味さや盛り上がりきらなさが
後の展開のための描写と考慮できるかもしれない。
原作が完結していないことを考えれば
2クール目で完結するのか微妙なラインではあるが…
できればこの1クール目の評価を覆すような2クール目になってくれることを
期待したい。
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