評価 ★★★★☆(70点) 全104分
あらすじ 射撃スキルは抜群、でも美女にはめっぽう弱い超一流のスイーパー、冴羽獠。亡き相棒の妹に懇願され、しかたなくふたりでその死をめぐる真実を追い始める。引用- Wikipedia
完璧すぎる実写化映画
本作品はシティーハンターの実写映画作品。
Netflixにて配信されている。
もっこりちゃん
冒頭から「キャラクター」の解像度があまりにも高すぎる事を感じる。
シティーハンターの主人公といえば冴羽獠だ、
昭和に生まれ、平成を生き抜いたシティーハンターという作品の主人公は、
今見るとコンプライアンス的にアウトなキャラクターでもある。
なにせ「もっこり」をひけらかし、下ネタやセクハラも当たり前だ。
しかし、そんなどすけべなキャラクターにも関わらず、
長身で筋肉の鎧を身にまとい、一度戦闘シーンになれば
素晴らしいガンアクションを披露してくれる。
そんな主人公に平成の少年少女はあこがれとかっこよさを見出していた。
冴羽獠という主人公を「令和」の時代に実写化するのは
いろいろな意味でハードルが高い。
単純にかっこいいだけじゃない、今どきのイケメンとも少し違う。
背も高くなければならないし、筋肉もなければいけない。
そんなハードルの高さを超えてきたのが「鈴木亮平」という役者だ。
あまりにも完璧すぎる、実際に映像を診てもらうとわかりやすいが、
もう「120%」の冴羽獠だ。
身長の高さもさることながら、もっこりダンスを披露する際に
ほぼ裸になるのだが、無駄な脂肪が一切ない筋肉美が本当に素晴らしく、
イケメンではあるものの、今どきのイケメンとは少し違う彼の
顔はあまりにも「冴羽獠」なのだ。
漫画から飛び出してきたようなという安易な言葉は使いたくないが、
思わずそんな安易な言葉を用いてしまうほど、
北条司先生が描く美麗な作画のシティーハンターの冴羽獠がそこにいる。
流石に「もっこり」表現に関しては実写ではされてないものの、
鈴木亮平さんのギャグなシーンでの演技の声が
一瞬「神谷明」さんにも聞こえてしまうほど、
声すらも完璧すぎるのだ。
そんなかっこいい彼が冒頭から「もっこりちゃん」を見つめている(笑)
美女に弱い彼がもっこり美女からの依頼を受けて彼女の妹を探す、
そんなシティーハンターらしいストーリーの幕が開ける。
アクション
なによりも素晴らしいのがアクションだ。
キビキビとした徒手格闘戦だけでも素晴らしいのだが、
シティーハンターに置いて最も重要なのはガンアクションだ。
そんなガンアクションを流れるように描いている。
特に鈴木亮平さんの銃の扱い方は本当に素晴らしく、
鈴木亮平さんがガンマニアということも納得できるほど、
銃を構える姿が本当に決まっている。
物語冒頭で敵のもつ銃を背面でコート越しに撃ち落としたかと思えば、
そんな撃ち落とした銃をものの数秒であっさり解体してしまう姿だけで
もうお腹いっぱいだ。
「銃弾」の描き方も素晴らしい。
シティーハンターといえど街中でバカスコうち回るのは流石にまずい、
雑踏の中で敵を狙撃する、そんな一瞬のシーンにうちはなった弾丸を
あえて「スロー」で見せている。
スロー演出は鬼門だ。
誰でも簡単にそれっぽくできてしまう演出なだけに、
馬鹿みたいに多用している作品は実写やアニメ問わずに存在する。
しかし、この作品はスローを使いこなしている。
本来は目にも止まらぬ速度で撃ち放たれる弾丸、
そんな弾丸の弾道をあえてスローで見せることによって、
針の穴を通すような狙撃を、冴羽獠の銃の腕前の凄さを
みている側に感じさせてくれる。
そんなスローを多様はしつつも、長尺では利用しない。
一瞬を切り取るための刹那的なスロー演出が
アクションシーンにメリハリを産んでいる。
作中でかなりアクションシーンは多いのだが、
そのどれもが素晴らしいアクションを披露しており、
イベント会場での踊るような戦闘シーンや、
ラストの「エンジェルダスト」を使用した敵との戦闘シーンなど
1つ1つの戦闘シーンの完成度が高く、素晴らしいアクションの数々だ。
特に終盤の冴羽獠と香が互いに相棒として戦闘するシーンは
多勢に対して二人で挑むという本来ならありえないほどの
アクションシーンなのだが、メリハリの聞いたアクションと、演出、
二人の相棒感が最高潮に達し、思わずニヤニヤしてしまうアクションだった。
ストーリー
ストーリーは原作の序章の部分である「牧村」との相棒時代から描かれる。
元警察の牧村と冴羽獠が依頼を受け、もっこり美女の妹を保護するために
動いていると、もっこり美女の妹は冴羽獠をも凌ぐような
身体能力を発揮し逃げてしまう、そんな彼女は「とある薬品」を
落としていたというところから物語が始まる
原作改変という意味ではかなり改変されている作品だ。
本来、牧村は妹である香の誕生日の日に彼女に会う前に亡くなっているが、
本作では香との食事の時にエンジェルダストを使用したものに襲われて
香の前で命を落としている。
そんな兄貴の敵をとるために香は冴羽獠についてまわりながら、
事件を追う流れになっている。
映画としてある程度起承転結を作るためのストーリーになっており、
舞台も昭和や平成の新宿ではなく「令和」の新宿になっている。
トー横にはトー横キッズと呼ばれる若者がたむろし、
行き場をなくした彼らが突如消えたかとおもえば街に戻ってきて
暴力事件を起こす事件が多発している。
その原因は「エンジェルダスト」だ。
冴羽獠の宿敵とも言える「ユニオンテオーペ」も
がっつりと登場しており、わかりやすい悪役を映画では見せている。
このあたりの原作改変に関しては気になる人もいるかも知れないが、
私個人としては余り気にならなかった。
シティーハンターの基本である「美女の依頼」を受けて
「美女」のトラブルを解決するという流れがきちんと
描かれているおかげもあるだろう。
今回、冴羽獠が守るのはトー横キッズなコスプレイヤーだ。
エンジェルダストを打たれても自我を失わなかった彼女が狙われる中で、
彼女の夢であるコスプレイヤーとしての成功を叶えるためにも
シティーハンターが彼女を守り、最後まで守り切る。
この基本的なシティーハンターの様式美が守られているからこそ、
改変されても気にならない。
なおかつ、シティーハンターという作品を知らない人でも
自然と作品を楽しめるようになっている。
ユニオンテオーペ関連は1本の映画で解決しては居ないものの、
このあたりは続編の可能性として期待できるものだ。
ハンマー
鈴木亮平さん演ずる冴羽獠の再現度の高さもさることながら、
「槇村香」の再現度も素晴らしい。
原作やアニメにおける彼女はときおり、美女という扱いを受けるが、
基本的にはどこか男勝りなボーイッシュなキャラクターだ。
そんな「槇村香」を演ずる森田望智さんの見た目の近さもさることながら、
冴羽獠についていって戦場で腰が引けてる感じの姿が「香」そのものだ。
そして、香といえばハンマーだ(笑)
冴羽獠のモッコリを防ぐべく、依頼人である美女を守るべく、
彼女はつねにハンマーを持ち歩いているのだが、
これはアニメや漫画だからこそ許されるギャグ的な表現だ。
実写映画というリアルな画面においてハンマーの存在は異物感が出てしまう。
しかし、この作品はうまいことやっている。
守るべき美少女が「コスプレイヤー」であり、彼女が参加するイベントに
香も冴羽獠もコスプレして紛れ込むのだが、
その際に香は「ハンマー」を持ったキャラに扮している(笑)
そのおかげで自然と彼女がハンマーを持つようになり、
ラストで冴羽獠にハンマーを振りかざすオチに自然とつながっており、
次回作への期待感をつのらせながら流れる
「GetWild」で満足感を感じられる作品だった。
総評:あまりにも解像度が高すぎる
全体的に見て素晴らしい実写映画になっている。
アニメや漫画の実写の場合、下手したらドンキで買ってきたような
ウィッグを被ってコスプレ大会が繰り広げられてることが多いが、
この作品の場合はコスプレではなく、きちんと画面の中に
「冴羽獠」と「槇村香」が存在する。
役者たちのキャラの理解度、解像度から生まれる再現度は
本当に漫画やアニメから飛び出てきたほど、キャラクターそのままであり、
そんな彼らが綴るシティーハンターらしいストーリーが
起承転結スッキリとした面白さを感じさせてくれる。
原作の序章の部分のストーリーを改変しつつ、
オリジナル展開をガッツリと入れているものの、
シティーハンターらしいストーリーに仕上がっており、
思わず次回作、続編を期待したくなる出来栄えだ。
アクション部分の出来栄えも素晴らしく、
徒手格闘のシーンからガンアクションまで決まりに決まりまくっている。
スロー演出がここまで決まっている作品は実写邦画では
久しぶりに見た気がするほど、計算された演出とカメラワークが
作品全体の画作りによる世界観の描写を後押ししている。
唯一気になるとすれば「もっこり」描写が流石にアウトだったことだけだ(笑)
やはりアレを実写でやるのは厳しいのかもしれないが、
次回作があれば、Netflixという媒体だからこそやってのけてほしい。
個人的な感想:続編
こうなってくると期待したくなるのが続編だ。
ユニオンテオーペ絡みのストーリーを中心に描いていけば、
3部作や5部作くらいでいい感じにまとまりそうな感じもある。
この1本だけで終わってしまうのはあまりにももったいない。
これだけ原作に対する理解度、解像度が高く
リスペクトの数々を感じる実写化作品は久しぶりだ。
日本の邦画はまだ終わっていない、実写化も捨てたもんじゃない。
そう感じられる素晴らしい作品だった
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