評価 ★★☆☆☆(33点) 全13話
あらすじ 近代化が進み、大正ロマン只中にある日本の帝都、東京。華やぐ帝都の裏では、なんらかの出来事で普通の人間として生きられない「ヴァンパイア」になってしまった者たちが隠れて生活していた。引用- Wikipedia
逆鬼滅の刃
原作は舞台という珍しい作品、その後、朗読劇にもなり
ソーシャルゲームも制作される予定。
監督は羽多野浩平、制作はSIGNAL.MD
読売テレビエンタープライズ設立50年記念プロジェクトの一環で制作された
黒帯
特徴的なのは画面の比率だ。
画面の上下に黒帯を追加し、すこし横長の画面比率に見せることで
まるで映画を見ているような感覚を与えている。
この作品の舞台は「大正」だ。
大正ロマンという言葉を使うと色々なところから怒られそうだが、
時代考証をしっかりしたことを冒頭でも視聴者に伝えている通り、
「大正時代」の背景をしっかりと感じられる。
ただ作画が物凄く良いというわけでもなく、
しっかりと大正時代の雰囲気自体は感じられるものの、
同じ大正時代を舞台にした「鬼滅の刃」があるだけに、
どうしても、あの作品がちらついてしまう。
しかも、この作品には「吸血鬼」が出てくる(苦笑)
勘違いしてはいけないのはこの作品の舞台が2013年であり、
鬼滅の刃の連載開始は2016年だ。
それは理解した上ではあるものの制作側というより、
このアニメを企画したプロデューサーや大人としては
「鬼滅の刃」ブームに乗っかりたい部分はあったのだろうなと感じるほど
設定的にやや似通った部分が多い。
会話の多さ
1話から非常にセリフ量が多い。
専門的な用語と出てきてすらいないキャラの名前が大量に飛び交いながら
キャラクター同士の会話が繰り広げられており、
1話の段階で何がなんだか分かりづらい。
原作が舞台劇であるがゆえのセリフ量の多さというのを感じてしまう。
この作品は明確な主人公がおらず群像劇な作品だ。
どんどんとキャラクターが出てくるものの、
どこか芝居がかかったキャラクター達の芝居がかった台詞が
頭に残らず、キャラの印象がつきにくい。
「ヴァンパイア」が存在する大正時代、
そんな彼等を「正規の日本軍」が倒す。
物語の設定の図式自体はシンプルで分かりやすいものの、
芝居がかった台詞の多さと登場人物の多さが物語をわかりづらくしてしまっている。
2話あたりまで話が進むとやや分かりやすくなるものの、
いまいちこの作品の「面白さ」というのが見えてこず、
ピンとこない感じが続いてしまう。
目には目を、歯に歯を
「正規の日本軍」の中に存在する特殊部隊は「元人間の吸血鬼」だ。
彼等は吸血鬼に噛まれても死なずに生き残った人間であり、
人間でありながら吸血鬼である特殊な存在だ。
彼等は人の血を飲みつつ、吸血鬼を倒す部隊に所属している。
隠れて暮らしているものの、時折その衝動を抑えられず人を襲う吸血鬼。
彼等の中には幸せに暮らしていたいだけのものも居る。
しかし、吸血鬼であるがゆえに狙われ、吸血鬼であるがゆえに
ひっそりと暮らし続けている日々に鬱屈とした気持ちを抱えている。
そんな吸血鬼たちの事情を描きつつ、吸血鬼を倒す部隊の日常を描いている。
話自体は何処かで見たことのある設定であり、
ありきたりとしか言いようがない話だ。
それをこの作品ならではの雰囲気と声優さんの演技で
誤魔化している部分が大きく、そのせいかこの作品で何がしたいのか、
この作品ならではの面白さというのが感じにくい。
1話1話の話も薄味で、1話1話色々な吸血鬼がでてきて
その吸血鬼の事情が描かれるのだが、それが面白いわけでもない。
ひっそりと吸血鬼に興奮する血を横流ししているものを追いつつ、
徐々に物語が進んでいくもののいまいちぱっとしない。
戦闘シーンもあるのだが、アニメーションとしての面白さが
感じられるような戦闘シーンではなく、
「刀」による戦闘シーンなのに何処か地味であり、
吸血鬼たちが高速移動できるがゆえにその姿すら描かれない
戦闘シーンも多い。
軍内でも吸血鬼を用いた軍隊をどうするかなどの
議論が行われており、それに絡んだキャラやゴタゴタなのがあるのだが
それが面白いわけでもない。
ひたすらに地味で、面白さがなかなか見えてこない作品だ。
死
中盤から物語が一気に動き出す。というよりも動き過ぎである(苦笑)
吸血鬼に血を流していたものの正体、吸血鬼だけの部隊の正体などが
一気に明らかになり、なおかつ「関東大震災」が起こる。
そんな中で主人公ポジションに居る「前田」は悩む。
吸血鬼になり軍に従うか、それとも人間のままでいるか。
恩義のある上官の命令、想い人でありヴァンパイアになった
「岬」への思い。様々な思いから彼は1度はヴァンパイアになろうとする。
だが、そんな思いは部下の命をかけて行動によって変わる。
永遠ともいえる命を持つヴァンパイア。
この作品はそんな永遠の命を持つ彼等の生き様と死に様を描いている作品だ。
たしかに彼等は人より長く生きることができ、人を襲うこともある。
だが、日の下には出れず、追われる存在だ。死者である彼等には戸籍もない。
密かに生きようとするもの、密かに愛を育んでいるものも居る。
人間と同じでヴァンパイアもまた人を襲うものもいればいないものもいる。
それだけだ。
しかし永遠の命を持つ彼等には永遠の命を持つからこその
悲哀があり、そんな彼等の「哀愁」を描いているといっても良い作品だ。
あるものは愛に生き、あるものは仲間を守ろうとする。
それぞれの吸血鬼の生き様と死に様を描こうとしている作品だ。
6話辺りまで観ると序盤では分かりづらかった部分の
話がつながり、中盤まで観ることでこの作品の面白さが
ようやく顔を出し始める
軍と吸血鬼によって意図的にどんどんと増え続ける吸血鬼、
永遠の命という「業」を持つものがどんどんと生まれる一方で、
ヴァンパイアたちはどう生きるのか。
終盤
ただ、中盤でせっかく盛り上がってもまた地味になる。
淡々と粛々と、盛り上がりに欠けるストーリーばかりが描かれる。
増え続ける吸血鬼、吸血鬼になった前田、軍から捨てられた吸血鬼たち。
それぞれの吸血鬼たちの生き方が描かれ、どんどんと吸血鬼がしんでいく。
え?このタイミングでこのキャラ死ぬの?みたいなタイミングで
あっさりと死ぬキャラも降り、死の描写が軽い。
キャラクターは多いものの、群像劇であるがゆえに
キャラへの感情移入が分散してしまうえにキャラ描写が浅いキャラも多く、
説明不足な部分が多い。
キャラクター達がどうしてその行動をしているのかという部分も分かりづらく、
死んではいないものの、物語からいきなり退場するキャラも居るせいで
いまいちついていきづらい。
物語の中盤で一時退場してしまう「前田」の物語は決して悪くなく、
彼の最後の姿は1話から綺麗に繋がった物語が描かれており、
彼の意思を継ぐように覚醒する「栗栖秀太郎」の姿も悪くない。
だが、そこに至るまでの展開が微妙な部分が多く、
なんとも言えない感じが残る作品だった。
総評:雰囲気アニメ
全体的に見て雰囲気だけは一流な作品だ。
耽美とも退廃的とも言える世界観の中に生きる永遠の命を持つ吸血鬼たち、
永遠の時間を持つがゆえの悲哀、日のあたる場所では生きられない彼等の
思いが1話1話描かれており、声優さんたちも豪華だ。
それゆえに素晴らしい雰囲気が生まれている。
だが、全体的にキャラクターの掘り下げが甘く、
キャラクター達の心理描写が薄いせいで、
一人ひとりのキャラクターに感情移入も愛着が持てずに
淡々と話が進んでいる印象が強く、本来はもう少し掘り下げてほしい部分を
掘り下げないままにキャラクター達が死んでいってしまう感じだ。
7話で序盤ではわからなかった部分がつながったことで
ここから盛り上がるか?と思いきやそうはならず、
結局こいつは何がしたかったんだと思うようなキャラも多い。
戦闘シーンも高速戦闘をいいことに適当な描写に鳴ってるシーンも多く、
アニメーションとしての動きの面白みは薄い。
もう少し戦闘シーンのクォリティが高ければ盛り上がるシーンもあったかもしれないが、
作品全体として「地味」で終わってしまったような感覚だ。
元々が舞台劇、朗読劇だったこともわかる作品だ。
「役者の演技」に頼っている部分が多く、
声優さんの声と演技によってキャラ描写されている部分が強く、
それゆえに結果的に「雰囲気アニメ」になってしまっている作品だ。
舞台劇や朗読劇をアニメにすることの難しさというのを感じてしまった
個人的な感想:逆
おそらく子の作品のアニメ化を決めた大人としては鬼滅の刃ブームに
乗っかりたい部分もあったのだろう。
大正時代、吸血鬼、刀。似た部分が多い。
だが、鬼滅の刃とはちがい王道とは違うややわかりにくいストーリーと
硬派で大人向けなキャラクターや盛り上がりに欠ける戦闘シーンなど
キレイに鬼滅の刃と真逆を行っているような作品だった。
もう少しストーリーが練り込まれていれば違ったかもしれない。
原作には出てこないアニオリキャラや
8話あたりからはアニオリストーリーだったようで、
それがわかってしまう感じだ。
逆に言えば7話でこの作品の面白さがしっかりと伝わっただけに
原作ではアニメとどういうふうに違って描かれているのかは
気になる部分ではある。
読売テレビエンタープライズ設立50年記念プロジェクトという
御大層なご名目があるものの、その壮大なプロジェクトの割には
地味な感じで終わってしまった作品だ。
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