評価 ★★☆☆☆(22点) 全12話
あらすじ ゲーム運営者の社会人「大野晶」は気づくと異世界の森におり、そこでは自分の作成したプレイヤーキャラクターの魔王「九内伯斗」の姿になっていた。引用- Wikipedia
B級アニメになりきれなかなった
原作は「小説家になろう」で連載中の小説作品。
監督は木村寛、制作はEKACHI EPILKA。
いわゆる「なろう」アニメだ。
ド定番
引用元:© 神埼黒音/双葉社・「魔王様、リトライ!」製作委員会
この作品の始まりは驚くほどに、ドがつくほどに定番だ。
主人公はゲーム制作者であり運営者だったが、
自身が作ったゲームのサービスを終了しようとしたときに、
なぜか異世界に飛ばされてしまい、
しかも自身が作ったゲームの「魔王」の姿になっていたというところから始まる。
驚くほどにひねりがない。
いわゆる「なろう系」と呼ばれる作品ではゲームの世界に飛ばされる作品も
数多あり、主人公が「魔王」という作品も数多ある。
このド定番中のド定番かつ、ナンのひねりもないどストレートななろう系は、
なろうとも言わずともなろうとわかるレベルのなろうっぷりだ。
ただ主人公がなぜ異世界に呼ばれたのかも、呼んだものも1話でわかってしまう。
本来なら「なろう」ではこの部分は濁されたり序盤ではわからない事が多いが、
この作品は他のなろう作品では重要な要素があっさりとそれがわかってしまう。
当然、主人公は最強だ。
しかも魔王の力だけでなくゲーム管理者として
管理者権限という能力まで使えてしまう。
良い意味でいえばなろうとしては「王道」のストーリーがどうなっていくのか、
王道であり定番であるがゆえにストーリー展開は気になるものがある。
くそデカBGMと低予算作画
引用元:© 神埼黒音/双葉社・「魔王様、リトライ!」製作委員会
作画の質もあまり高くなく、
予算やスケジュールがあまりないことを感じさせてくれる。
それところかBGMまで安っぽい。
セリフと同じくらいの音量で安っぽいBGMを流しており、
正直、音量バランスの感覚がおかしいとしか思えない。しかも安っぽい。
安っぽいだけなら我慢できるが、流石に音量が多すぎて邪魔にしかなっていない。
作画の枚数が少ない紙芝居のような戦闘シーンで、
安っぽいBGMをでかすぎる音量で流すと余計に安っぽさが増してしまう。
止め絵の多さも顕著であり、その止め絵の多さをごまかすこともできていない。
明らかに予算が少ないだけだ。
予算が少ないからこその安っぽさが作品の雰囲気すらも安っぽくしてしまっている。
もはやあまりにも安っぽすぎてギャグアニメにすら見えてくる、
これが制作側があえて、わざと安っぽくしてるなら素晴らしい演出と言いたい所だ
あえてリコーダーで吹いたような間の抜けた用なBGMを使い、
あえて作画崩壊ギリギリの作画で描いている。
これが本当に笑わせるために「あえて」やってる演出なら本当に凄いが、
ただ予算がないだけだ。
テンポ
引用元:© 神埼黒音/双葉社・「魔王様、リトライ!」製作委員会
安っぽい作画やBGM、なろう定番みたいなストーリーや設定の作品だ、
ただ、王道であるがゆえに見れてしまう部分もあり、
安っぽさが妙にギャグアニメのように感じるときもある。
だが、この作品をギャグアニメとしてきっちりと感じられないのは
致命的なまでのテンポの悪さだ。
ぐだぐだーとだらだらーとストーリーを進めてしまってるせいで、
この安っぽい雰囲気をギャグアニメとして感じさせてくれない。
もっとテンポを上げて「なろう系」にふさわしく、
主人公が「魔王」として異世界で成り上がっていく様を見せてくれれば
面白くなりそうなのに、グダグダな展開のせいでその面白さを感じにくくしている
調べた所、原作は書籍で3冊しかでていない、たった3冊だ。
ラノベ原作のアニメなら1冊3話~4話でアニメにすることが多く、
正直、まだ3冊しか出ていない状況ではギリギリだ。
原作ストックがあまりないせいでテンポを上げて
ストーリーをどんどん進めることもできない。
だからこそテンポを悪くしてグダグダとやってしまっている。
わざわざ2,3話前にやったシーンを「回想」で入れることも多く、
明らかに尺稼ぎをしてるのが目立つ。
この作品に1番必要なのはテンポだ、安っぽさは受け入れられるが、
このテンポの悪さだけは受け入れきれない。
戦闘シーン
引用元:© 神埼黒音/双葉社・「魔王様、リトライ!」製作委員会
こんな状態で戦闘シーンなどまともに描けるはずもない。
止め絵の連続、文字演出などでごまかしにごまかした戦闘シーンは
もはやギャグでしかない。
ただ「蹴られた」「殴られた」だけで地面をコロコロと激しく敵が転がっていく。
これがギャグでないならなんなのだろうか(笑)
意気揚々と出てきた敵キャラがあっさり殺されることも多く、
ギャグアニメのように敵キャラを使い捨てにする。
本来は強いはずなのだが、主人公も敵も安っぽい作画とBGMのせいで
全く強そうに見えない。
弱そうな敵とその弱そうな敵より強い主人公のバトルの安っぽさは凄まじい。
本来は笑えるはずのシーンではないのに、戦闘シーンで大爆笑してしまう。
あまりの安っぽさが故のギャグだ。主人公がいくらカッコつけても笑えてしまう。
むしろカッコつければカッコつけるほどギャグになる、
このシュールさは脇腹をくすぐられるような面白さだ。
めちゃくちゃ
引用元:© 神埼黒音/双葉社・「魔王様、リトライ!」製作委員会
序盤こそ「なろう系」らしい王道ストーリーを展開するのだが、
終盤あたりから、この作品はぶっ飛びだす。
主人公は異世界にて「近代的な病院」と「温泉旅館」を建てる(笑)
現代の知識や道具を異世界で作ったり持ち込むことがよくあるものの、
建物自体を異世界で立ててしまうのはかなり突飛な展開だ。
しかも、それがお金儲けのためだ。
4次元ポケットのようなスキルを使い、
建物だろうが物だろうが何でも取り出して異世界でそれを活用する。
異世界にはない「オルゴール」や「茶器」なども高値で売りさばき資金にしまくる。
その資金で何をするかと思えば温泉旅館の経営での金儲けだ。
この作品のストーリーが一体どこへ向かってるのか皆目検討もつかない(笑)
最初に感じた「なろう系」らしい王道ストーリーはどこへやらだ。
超絶薄味
引用元:© 神埼黒音/双葉社・「魔王様、リトライ!」製作委員会
終盤になるほど話の内容も恐ろしいほど薄くなる。
10話などできた温泉旅館でおえらいさんを接待してるだけだ。
1クールの終盤も終盤に差し掛かって、温泉施設の紹介で終わる。
11話など最終話の直前にも関わらず、ほぼ酒屋で飲んで終わる(笑)
話が薄すすぎて見てるこっちが心配になるくらいの薄さだ。
この話の薄さで逆に笑えてきてしまう。話の内容の薄さが日常アニメレベルだ。
1クールの最終話、本来なら1番盛り上がるべき話でさえ
ほとんど「主人公が女性キャラ」と混浴してるだけでAパートが終わる。
とんでもない薄さだ(笑)
回想シーンもたっぷり入れながら、尺を稼ぎまくりで最終話が描かれる。
話の薄さで笑えてきてしまう、ある意味で斬新な作品だ。
総評:この安っぽさをどう消化するか
引用元:© 神埼黒音/双葉社・「魔王様、リトライ!」製作委員会
全体的に見てなんとも言えない作品だ。
低予算な作画やBGMはかなり目立ち、低予算さをごまかすための演出も多い。
それだけならまだしも「テンポの悪さ」はかなり致命的であり、
終盤などほとんど話が進んでいない。
しかし、この全体に漂う「安っぽさ」がシュールなギャグのようにもなっている。
敵がギャグアニメのように転がる戦闘シーンや、ダサすぎる文字演出、
セリフと同じ音量のBGM、ギャグのような展開の数々、
わざとやっているのか偶然の産物なのか判断しかねる安っぽさの数々が
妙な笑いを生んでいる。
そんな妙な笑いもグダグダなテンポのせいでいまいち笑いになりきれていない。
原作が書籍では3巻しか出ておらず、原作ストックがあまりないせいで
詰め込んだストーリー構成にできずに尺稼ぎをするしかなかったのかもしれないが、
せっかくシュールな「B級アニメ」としての面白さが出てきそうなのに、
その面白さが顔を出したり引っ込めたりを繰り返しているような作品だった。
伏線もいろいろ残っており、主人公のやったことといえば温泉宿を建てたくらいだ。
やってることは様々な「なろう系」作品で見たことのあるようなストーリーなのだが
進行の遅さや、安っぽさがギャグアニメのような作品に仕上がっている。
これでテンポさえ良ければと感じる作品だ。
もっと詰め込んで「ギャグアニメ」と割り切ってサクサクとストーリーが進めば
もっと素直に笑える作品に仕上がってかもしれないだけに
いろいろと惜しい作品だ。
個人的な感想:惜しい
引用元:© 神埼黒音/双葉社・「魔王様、リトライ!」製作委員会
ハマりそうでハマ力れなかった作品だった。
本来はこういうB級アニメのノリは嫌いじゃないはずなのだが、
どうにもこの作品のノリに乗り切れず、雰囲気に浸りきれなかった。
作画やBGMの安っぽさはともかく、テンポの悪さだけは最後まで改善されず
もう少し詰め込んだストーリー構成だったら印象は違ったかもしれない。
ここから面白くなりそうなところでストーリーが終わってるのも歯切れが悪く、
うぅーんと唸ってしまうような作品だった。
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