評価 ★☆☆☆☆(18点) 全12和
あらすじ かつて魔法使いに助けられた少女クルミ=ミライは、自分も魔法使いになるべく魔法の名門校・レットラン魔法学校に進学する引用- Wikipedia
大規模プロジェクトのあとしまつ
原作は『エブリスタ』で連載されていたオンライン小説であり、
あのサクガンと同じく「Project Anima」
監督は渡部高志、制作はJ.C.STAFF。
絵本
1話冒頭では主人公の幼少期が描かれる。
まるで絵本のようなテイストで描かれるアニメーションは
童話でも読んでいるような気分になる、
幼少期に「魔法使い」と出会った彼女は魔法使いに憧れる。
ベタではあるものの自然な導入と絵本のようなテイストは
深夜アニメというよりは日曜あさの子供向けアニメを見ているかのような
気分になる部分はあるものの、王道で自然な導入は
どんなストーリーを見せてくれるんだろうという期待感を
自然に感じさせてくれる。
1話冒頭と過ぎても独特の作画のテイストは変わらず、
ややなれるまでみづらさを感じる部分はあるものの、
この作品らしさ、独創性を感じるテイストだ。
大きくなったら魔法使いになる。
そんな夢を抱えていたはずなのに主人公は魔法専門学校の
魔法科に落ちてしまう。
模試では圧倒的に1位だったのに、本番ではうまくいかず、
普通科に入ることになるというところから物語が始まる。
普通科
魔法科と普通科が何が違うのか。
魔法科に入り、卒業しなければ正式に魔法使いに離れない。
そんなルールが有る世界で普通科で主人公はどう魔法使いになるのか。
そこが主軸に描かれる話だ。
だが、1話からかなりキャラクター数が多く、
どばどばと色々なキャラクターがでてくる。
誰が誰だか、もう名前も一切覚えられずにただただ
先輩や同級生がドバドバでてくるだけで掘り下げは特に無い。
そのせいで1話からテンポの悪さを感じてしまう。
別に今出さなくてもいいキャラを1話から出すせいで
大漁のキャラに無駄に尺をとられテンポが崩れる。
主人公に突っかかる同級生、なぜか主人公を狙う生徒など
色々と1話からゴチャゴチャしすぎだ。
魔法のプログラムが組み込まれた手帳を使う生徒だったり、
先生は「杖」で魔法を使ったりと、
魔法の世界観自体は面白く、興味深いのだが、
キャラの多さがノイズになってしまっている。
本来は魔法使いに離れないはずの普通科なのだが、
なぜか担任はそんな普通科の生徒を魔法使いにしようとしている。
2話になっても同級生の紹介が止まらない、
まるでソシャゲでもやるかのようにドバドバとキャラを出しているが
深い掘り下げもないため、ろくに印象がつかない。
このキャラにはこういう夢があります、こういう子です、
そういうのがサラサラ描かれるだけでドラマが生まれていない。
古代魔法
普通科の先生が教えようとしているのは「古代魔法」だ。
本作品における現代の魔法はタブレットのような手帳を使い、
プログラムにおいて魔法を発動している。
そんな手帳を使い魔法を使えるのは魔法使いの「資格」がなければ
国のルールに違反してしまう。だが、古代魔法は違う。
ペンと紙を用いて魔法陣を描く。魔法陣とは「図形」の塊だ、
図形で魔法を発動させるルールや設定など
ファンタジーにおける裏付け「嘘」が非常にうまく、
いわゆる象形文字のなりたちのような古代魔法は
妙に納得してしまう部分がある。
主人公が初めて魔法を使おうとするシーン、
意味がなさそうに見えた図形で魔法を使おうとしたシーンは
印象的であり、まるで子供向けの魔法少女アニメのような演出は素晴らしい。
現代魔法と古代魔法の違い、なぜ現代魔法とちがい、
古代魔法は知れ渡っていないのか、
「魔素」や「魔神」といったキーワードや裏で動いてる人物、
学園の七不思議や先生の謎など序盤からキャラの多さも
含めて大量に伏線のようなものをばらまいている。
このあたりの設定の面白さ、なにか裏で動いてそうな感じは
非常に面白いものの、序盤を過ぎても物語の方向性が見えず、
1クールのアニメなのに4クールのアニメを見せられているような
感覚になってしまうほど話が進まない。
古代魔法の存在を先生から教わった主人公たちが
徐々に古代魔法を使えるきっかけを掴もうとしてる中で
唐突に担任の先生が居なくなったり、色々なイベントが起こったりと、
本筋のストーリーをきちんと見せてくれない感じだ。
グダグダ
中盤になるとグダグダ感がマシていく。
いわゆる体育祭のようなものが開催されたり、
冬休みになったりするが、それが特に面白いというわけでもない。
多すぎるキャラを出すためにそういった学校全体のイベントを描くことで
少しでもキャラを掘り下げようとしているのはわかるものの、
ちょっとずつつまんでいくようなキャラの見せ方では
ろくにキャラの印象がつくこともない。
キャラの多さに脚本が振り回されてしまっている。
これが4クールのアニメなら問題ないが、この作品は1クールしか無い。
1クールのアニメなのに4クールのアニメのような
ストーリー構成になってしまっているせいで、謎だけが積み重なる。
主題としては夢を諦めるな、1度道が閉ざされても
別の道がある的なことを魔法使いになりたかったのに
「普通科」に入ってしまった主人公を中心に描きたいのはわかるが、
一部のキャラ以外の印象が薄く、そんな薄いキャラのために
尺を取られてしまっているせいで、作品全体が薄い。
主人公も、古代魔法を使えそうで使えないという展開を
何度も繰り返してしまい、本当に話が進まない。
おそらく「魔法少女まどかマギカ」的なことをしたいのかもしれないが、
だらーっとしてしまっており、それを最終話まで引っ張るわけでもなく、
8話で二人で初めて古代魔法の発動に成功する。
ここまで引っ張る意味はあったのか?と感じる部分だ。
魔法使いになることを諦めたり、もう1度目指したり、
そうかと思えばまた諦めたり。
何度も何度も同じような展開を繰り返す。
終盤で魔法使いになるために編入試験を受けるのだが、
編入試験はトラブルで受けられなくなる(苦笑)
魔法使いになるならないで悩み、編入試験を受ける受けないで
悩んでいたストーリーは一体何だったんだと言いたくなる。
魔素
作中ででてきていた魔素の正体が明らかになる。
魔素は自然エネルギーのようなものだが、
魔法を独占したい者たちのせいで封じられており、
それが溢れ出してしまっている。
現代魔法は魔法を独占したいものが
魔法を安定かつ人の手で独占して使えるようにした結果、
人間の「生命エネルギー」をもとに使用している。
自然のエネルギーを使う古代魔法とちがう。
そういう理念のもと古代魔法と現代魔法が存在し、
現代魔法で魔法を独占しようとした存在が色々と裏で動いていたのは
わかったものの、独占しようとした結果、
現代魔法のエネルギーが大暴走し、爆発しようとしている。
原子炉と太陽光エネルギー的なものと考えればわかりやすい。
そんな問題を主人公たちがなんとかして終わる。
終ってしまう。様々な伏線をぶん投げて(苦笑)
主人公の祖母も魔法使いだったり、
担任の先生もなぜ子供の姿をしているのか。
このあたりの過去は匂わせるだけ匂わせて一切明らかにならない。
謎の少年だった「カイ」は最後まで謎のままであり、
今回の事件の黒幕以外の黒幕が居ることを匂わせたり、
最終話のラストシーンはかなり意味深なシーンで終ってしまう。
それなのにぶん投げている。
サクガンと同じプロジェクトの作品ではあるものの、
サクガンと同じようなラストを迎えている。
本当にこのプロジェクトは救いようがない。
あと一作残っているが、どうなることやら…
総評:サクガンの悪夢再び
全体的に見て非常に厳しい作品だ。
水彩画のようなパステル調を強めた絵本のような作画は
独特かつ個性的であり、まるで日曜朝アニメのような
魔法少女アニメ的なニュアンスは素晴らしいものの、
1クールでさばききれない要素を盛り込みまくっている。
キャラクターの多さ、設定の多さ、伏線の多さ、
それを最初から全て消化しようとしておらず、
多すぎるキャラは使いこなせず、1つ1つの設定も甘く、
多すぎる伏線は回収しきれずにぶん投げている。
同じプロジェクトの「サクガン」も同じようにぶん投げていたが、
同じ穴の狢なこの作品も同じようなことをしている。
視聴者に対してあまりにも失礼な行為だ。
サクガンと同じで一応、応募作品である原案があり、
その原案をもとにアニメ化しているが、
調べた所、これまたサクガンと同じく原案となる作品を
改変しまくっており、もう別物だ(苦笑)
原作では魔人という設定がでてきたり、
キャラクターの設定なども違ったりと、ほぼ別物であり、
サクガンと同じようにわざわざコンテストに応募してきて
受賞させた作品をズタボロにしてしまっている作品だ。
そんなプロジェクトは3作を予定しており、あと一作制作予定だ。
一体3作目はどうなってしまうのか…
色々と気になってしまうところだ。
個人的な感想:Project ANIMA
Project ANIMAというプロジェクトは本気でやばい。
DeNA、文化放送、創通、MBSが共同で
オリジナルアニメをつくるぞー!と息巻き、
様々なアニメの原案を募集し、コンテストを通った作品を
アニメ化しているが、そんな原案という名の原作を破壊し、
1クールで収めきれない上にぶん投げることを繰り返している。
これだけ船頭が多いと迷走するのかもしれないが、
アニメ化自体もコロナの影響もあってかかなり遅れており、
第三段である「メビウスダスト」もいつ放送されるやらだ。
そもそもサクガンが大滑りした時点でプロジェクトは失敗しており、
この作品で名誉挽回になるかと思いきや、そんなことにすらなっていない。
「メビウスダスト」も果たしてどうなるやら…
サクガンの失敗の時点で止まっておけば怪我も少なかったかもしれないが、
これだけの企業が共同でやってる企画なだけに止めることも難しい。
現状、ひたすらこの大規模プロジェクトの後始末をしているような状況だ。
荒波にツッコミ、壊れることがわかっていても
もう止まれない、それがProject Animaだ。
私は最後までその旅路を見届けたいと思う