評価 ★☆☆☆☆(13点) 全12話
あらすじ 2008年――謎の勢力の出現により、アニメ、ゲーム、マンガ、音楽、鉄道、コスプレなどあらゆるオタク文化が排除された日本引用- Wikipedia
浦島太郎がオタクアニメを作った結果…
本作品はTVアニメオリジナル作品。
メディアミックスプロジェクトも動いており、
ソーシャルゲームもアニメと同時期にサービスが開始している。
監督は博史池畠、制作はバイブリーアニメーションスタジオ
オタク共の夢のあと
1話冒頭から様々なオタクっぽい奴らが集い戦闘の準備をしている。
そんな男オタクをかきわけて美少女が空から飛び降り、
「変身」と叫ぶところから物語が始まる。
この作品は「オタク文化保護法」というものが制定された世界だ。
なぜかオタク文化が規制され、
そんな法律に反対するものが逮捕される世の中だ。
まるで「2ch」の某キャラを思い返すようなモブ兵士によって
オタクとオタク文化は保護という名の規制された世界だ。
この手のオタク文化が衰退した世界というのは
アニメでもやったことがあるネタだ。
最近で言えば逆転世界ノ電池少女や、ぱすてるメモリーズ、
元を正せば図書館戦争に近いものがある。
そんな世界で主人公を含むオタクたちは反旗を翻している。
ベタなオタクっぽい主人公のキャラクターデザインや、
「いかにも」なオタクなキャラクターたちは、
時代錯誤感すら感じるものだ。
物語の舞台が2011年ごろであり、
そのころのオタク像のようなものを描いているのはわかるが、
10年前でもややふるさを感じたに過ぎない
テンプレ的なオタクの描き方はやや好みの分かれるところだ。
時系列
1話は物語の起承転結の起の部分が描かれているものの、
謎の魔法少女やマスコットの存在について説明がなく、
すでに「秋葉原」だけは奪還しているという状況だ。
物語の中盤か、2期の1話のような状況であり、
数々の戦いをへて主人公は疲弊している。
1話なのにわからない部分があまりにも多く、
話やキャラクターの感情についていけない感じだ。
主人公は「オタクヒーロー」ともてはやされてるが、
彼がなぜそんなにもてはやされてるかもわからないのに、
やさぐれている。
そもそもなぜオタクが保護という名の規制を食らってるのか。
そういう根本的なものもわからないため、
1話でこの作品の掴みづらさが強烈に現れてしまっている。
同族嫌悪
やりたい方向性はなんとなくわかるものの、
色々と状況が理解できない状況で、
キャラが叫んだり、泣いたり、落ち込んだりしてもついていけない。
「オタクはこういうのがすきなんだろ?
こういう展開が好きなんだろ?」
そう言われるような感覚が常に付きまとう。
確かにこういうシーンは好きだ、こういう展開は好きだ、
こういう表情やキャラクターは好きだと感じる部分はあるのだが、
それがまったくもって面白さに繋がっていない。
一言で言えば的はずれだ。
オタクが求めるものがある的のど真ん中に挿そうとして、
反対の的のど真ん中に当ててしまっているような
暴投ぶりを感じさせる。
アナーキー
ヒロインはいわゆる暴力型の魔法少女だ。
爆発や殴りで戦う魔法少女であり、口も悪い。
だが、こういうタイプの魔法少女も散々見てきたものであり、
新鮮味は薄い。
「ギャグ」もかなり滑っている。
敵が大量のミサイルを彼女にうちはなつが、
彼女にはきかず、どこからともなく現れたこたつの中で
みかんをたべて休んでいる。
作画も意図的に「崩す」手法を取っている。
デジタルでありながらアナログな雰囲気を感じさせつつ、
どこか「海外」っぽさも感じさせる作画とアニメーションの演出、
これもおそらくは「TRIGGER」や「今石監督」を意識しているのはわかるが、
バイブリーアニメーションスタジオでは模倣にしかなっていない。
中身が伴っておらず外側しか真似していない。
だからこそ、面白そうにはみえても、よく動いてそうには見えても、
心を全く動かされない。
同属嫌悪
1話からずっと「それっぽいなにか」でしかない。
こういうのが好きなんでしょ?という制作側の気持ちはつたわるが、
見ている側としては
「こういうのは好きだが、それを真似しただけのもの」にしか見えない。
例えば2話からは「ブルー」という魔法少女を
彼らが取り戻している。
アナーキーもそうだが、仲間になった過程が描かれていないため、
いつまでたってもキャラクターに愛着がわかない。
基本的な起承転結ができていない印象だ。
そんなブルーだが、いわゆる「シモネタキャラ」だ。
初登場もギャグボールをくわえており、
2話では全身を縛られ、顔を赤らめている。
そういう下品な感じのキャラクターであることがわかる。
こういう「淫乱」なキャラクターが好きなんでしょ?という
主張はわかるが、オタクとしてはこういう役割は「ピンク」が定番だ。
ブルーではない。
肝心のピンクは常にガスマスクをつけており、
「ガバガバガバガバ」という声がセリフにかぶさっているキャラだ。
そういった微妙な解釈違いが常に発生している。
制作側もオタクなことはわかる。
だが、それゆえに「同属嫌悪」のようなものを感じてしまう。
この「狙いまくった」キャラクターや設定、ストーリーが常に鼻につく。
2話では薬を決めたキャラクターたちが
脳内空間のような世界で「ピンク」と戦うが、
1話と同じように2話もそれっぽいシーンを繋いでるだけだ。
ピンクが仲間になると主人公がこう叫ぶ
「俺たちの戦いはこれからだ!」
ひたすらに寒いギャグでしかない。
浦島太郎
4話になると主人公たちとは別組織のオタクたちも出てくる。
主人公たちよりもやや年齢層が上のオタクであり、子供も居る。
だが、彼らは家族の理解がないうえに、世間の理解もえられないなかで
育ってきたからこそ、今のオタクである主人公たちとの仲も悪い。
そういった「オタク」の迫害要素をメタファー的に
描いているが、主張も描かれている内容も薄い。
オタクというものを描きたいのはわかるが、
主義も主張も浅く、古臭い。
これが本当に舞台になっている2011年に放送された作品なら
刺さるひともいるかもしれないが、
それから現実の世界では12年も経っている。
原作者の方は2012年に海外に中学生の時に移住しているようで、
その2012年頃の感覚で日本のオタクに対する概念が止まってしまっている。
10年前のオタクの感覚でオタクというものをメタ的に描いている。
その「メタ」の部分が表面的に出過ぎているせいで、
ストーリーの面白さも、キャラクターの魅力も感じられない。
メタはあくまで裏側にあるからこそメタだ。
作中の中でキャラクターが好きなものとして出てくるものが
勇者ロボットのようなものだったり、魔法少女だったりと、
10年前の価値観で止まってしまっている。
そんな10年魔の価値観で描かれて「ノスタルジック」さを感じるわけでもなく、
ただただ価値観のふるさだけを感じる。
原作者さんが日本に居なかった6年間で日本は、アキバは、
オタク文化は大きく変わった。
その変化を味わっている我々と味わってない作中のキャラで
大きな溝を感じてしまう。
Wikipediaによれば、この作品の原案自体も2018年から3年前から
考えていたものらしく、2015年に考えたものだと考えれば
納得できてしまう部分がある。
まるで龍宮城に行っていた浦島太郎に話しかけられるような気分だ
オタク
オタク文化の衰退や世間の批判そういった
制作側の主義主張が表に出すぎているせいで、
そんな同じ主義主張毎話毎話やっているだけになってしまっている。
オタクの素晴らしさ
「好きなものを好きと言って好きに楽しんでなにがわるい!」
という主張を描きつつ、
同時に「オタク」に対する同族嫌悪を描いている作品だ。
オタク同士の戦い、オタクに向けられる世間の視線や声、
時にオタク同士が嫌悪し合う。
そういうのを盛り込んでオタクというものを描きたいのはわかるが、
それが面白さにはなっていない。
「好きなものを好きなだけ好きと言ってなにがわるい!」
的なセリフも何度も出てくる。
ここぞという時に言えば見ている側に刺さるかもしれないが、
朝のあいさつレベルで出てくるセリフでは刺さるものも刺さらない。
出会い
6話で3人の魔法少女との出会いが描かれる。
まるで1話のようにオタク文化の保護という名の規制の経緯や、
主人公が彼女たちと出会った経緯が描かれる。
ただ、描かれたところで意味はわからない。
彼女たちがなぜ特別な力を持っているのか、
彼女たちはなぜ生まれたばかりなのか。
生まれたばかりの彼女たちは初めて見た主人公を親のようにしたい、
彼のオタクイズムに影響されていく。
かつての秋葉原を語り、革命を目指す主人公に彼女たちがついていく。
そこには宿敵であるオタク文化を規制する
「SHOBON」も幻想であらわれる。「SHOBON」とはなんなのか。
本来なら1話で描くようなことを6話でやっている。
3話切り、下手したら1話切りされてしまう
昨今のアニメ事情を考えても6話で導入を描くのは遅すぎるうえに、
結局、魔法少女とはなんなのかもわからない。
四天王
SHOBONには四天王が降り、定期的に襲ってくる。
一人目はまだ敵としての魅力がある感じだったのだが、
二人目はただのゲーマーだ。
かつてチートを使いまくった結果、ゲームから拒否され、
「自分の思い通りになる世界」をもとめてSHOBONに所属している。
チーター批判のようなものを描いているようだが、
特に面白みもなく、作画のクォリティも序盤に比べて
中盤辺りからはかなり落ちている。
それなのに「ロボット」が出てきたりするため作画カロリーが高く、
脳内ゲーム世界ということでドット絵を使って誤魔化したりしているが、
1話のようなTRIGGERっぽい作画の雰囲気は一気に消え失せる。
OPやED、エンディングカードのクォリティは非常に高いのだが、
本編の作画は厳しいものがある。
OPやEDと本編の作画のクォリティがどんどんと離れて行ってしまう。
8話では中途半端なエヴァパロディまでする始末だ。
面白くないパロディほどつまらないものはない。
中途半端なパロディをいれまくり、
怒涛の展開を繰り広げられているものの、
それが面白みにもならず、今何をやってるんだろうと感じるほど
見なくてもいい話が多すぎる。
3割位は見なくても話を追える話が多い。
そもそもオタクを保護し規制しているはずのSHOBONなのだが、
「スレイヤー」という四天王の一人が
彼女たちと戦おうとしていると「SHOBON」がそれをとめる。
一体何をしたいのか、キャラの行動が理解できない。
スレイヤー
敵の四天王である「スレイヤー」は
なぜか「アナーキー」の2Pカラーのような見た目をしている。
終盤には唐突にブルーやピンクの2Pカラーのようなものまで出てくる。
SHOBNの本拠地の億で主人公は「絵コンテ」のようなものを発見する。
これまでの彼らの行動が何故かアニメの絵コンテのように記載してあり、
まるで未来予知のようにその通り物事が展開していく。
メタネタをやりまくりな作品で更にメタを重ねている。
とあるゲーム開発者の男が匿名掲示板のアンチコメに疲弊し、
狂っている中で「オリジン」とよばれる神のような存在があらわれ、
彼に力を与え、彼が作り上げたシナリオどおりに物語が展開していた。
というオチだ。
スレイヤーがなぜアナーキーに似ているのかなど
伏線が回収され、タイトル通り魔法少女デストロイヤーズが生まれる。
やりたいことはわかるものの、そこに至るまでの
キャラクターの積み重ねが圧倒的に足りないせいで、
キャラクターたちの盛り上がりに一切ついていけない。
これだけ面白みの薄いストーリーを作り上げていたのは、
アンチが多く存在する作中のゲーム制作者が作ったシナリオだから。
そう考えることもできるが、
そんな彼のシナリオから外れた終盤のシナリオになっても、
面白みが生まれるわけでもない。
オリジン
オリジンはこの世界の神のような存在だ。
そんな神がボスキャラに力を与え、彼は世界をデザインする。
「オリジン」はそんなシナリオをマスコットキャラに成り代わり見守っている。
彼のシナリオ通り物語が進んでしまった終盤、
主人公であるオタクヒーローはそんな存在にどう抗うのか。
主人公は敵となった魔法少女デストロイヤーズの前に立ちふさがる。
好きなものを叫び、オタクとしての愛を叫び、
オタクたちもそこに集まってくる。だが、叶わない。
彼女たちに串刺しにされて終わる。
ほぼ敵のシナリオ通りに物語が進んだものの、
「2代目オタクヒーロー」が現れ物語が終わる。
続きはゲームで!ということをやりたいのはわかる、
だが、あまりにもぶん投げたラストに深い溜め息しか出ない作品だった。
総評:周回遅れのオタクの主張
全体的に見て色々と酷い作品だ。
「オタク」というものをメタ的に描きつつ、
オタクの自己嫌悪や同族嫌悪、オタクの素晴らしさみたいな
主張をずーっと描いている1クールだ。
1話1話の内容も「この話になにか意味はあるのか?」というような
話も多く、実際見なくても問題ない話も多い。
1話の段階で物語が途中なところからはじまっているせいもあって、
いつまでもメインキャラクターに思い入れも愛着もわかず、
古臭いオタク観の主義主張が語られるだけだ。
終盤でここまでの話が全て「敵のシナリオ通り」なことが明らかになる。
つまらないゲームデザイナーがつまらないシナリオだから
つまらないんです。そう言いたげな部分もあるものの、
終盤はぶん投げまくったラストになっており、
一体何がしたいんだと思ってしまう作品だ。
作画自体もクォリティの差が激しく、
終盤などは気合が入って描かれてる部分もあったが、
序盤は「TIGGER」や「今石監督」を強く意識しているのはわかるが、
意識しているだけでそれがアニメーションとしての面白さには繋がっていない。
何度も何度も主人公は
「好きなものを好きと言って好きに楽しんでなにがわるい!」と
叫ぶが、それだけだ。
10年前にこの作品が放送されていたら違ったかもしれないが、
今のオタクに刺さるような言葉ではない。
モラトリアムやノスタルジックさを感じるわけでもなく、
ただただ「周回遅れ」のオタク観をひたすら聞かされたあげく、
最後はぶん投げている作品だ。
その主義主張を描きたいのはわかるが、流石にしつこすぎだ。
考察しなくてもメタファーのような要素がオモテにですぎており、
それがわかったところで面白さにもならない。
続きはゲームで!とされても、
肝心のゲームは8月末にサービス停止が決定している。
本当に最初から最後まで的外れで終わってしまった作品だった。
個人的な感想:虚無
やりたいことやいいたいことはわかるものの、
それを「エンタメ」にしきれておらず、
主義主張だけをひたすら聞かされている感覚だ。
中盤くらいになると「それはもうわかった、で?」と言いたくなる。
原作者さんの海外暮らしのブランク、
それが日本のオタク観のズレに繋がってしまい、
作品自体も色々とズレてしまった感じのある作品だ。
この手のオタクやオタク文化を描いた作品は
ちょこちょことあるが、毎回同じようになぜか少しズレてる
内容になってしまうのはどうしてなんだろうか…
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