評価 ★★★★☆(76点) 全49話
あらすじ 西暦2009年、地球人類は戦争しか知らない巨人型異星人ゼントラーディと遭遇し、後に「第一次星間大戦」と呼ばれる史上初の星間戦争により滅亡の危機に瀕する。引用- Wikipedia
銀河よ、俺の歌を聞けっ!
基本的なストーリーはSFロボット。
かつて巨人「ゼントラーディ」と遭遇し戦った地球人、
その戦いはアイドル歌手「リン・ミンメイ」の歌をキッカケに終戦した。
終戦から35年、人類は移民惑星を求め銀河を旅していた
ある日、正体不明の敵「バローダ軍」の奇襲を受ける
そんな中、主人公である熱気バサラは戦場に乱入し戦うこと無く「歌」を歌った
というところからストーリーは始まる。
序盤から主人公である「熱気バサラ」は唄いまくりだ(笑)
いや訂正しよう、彼は作品中歌いっぱなしだ。
戦闘中であろうと、ミサイルが飛び交う中だろうと、歌い続ける
彼は何かの拍子に攻撃してしまうと、攻撃したことを後悔する
彼は戦場で戦ってるわけではない「歌を伝えに来てる」のだ
だが、決して戦わない彼の賛同者は少ない。
当たり前だ、敵との激しい戦闘中に彼は敵の攻撃を華麗によけつつ歌うだけ
市民を守るために戦っている軍人たちは苛立ち、
彼のバンドのメンバーであるミレーヌも「なぜ歌うのか」と彼に問いかける
だが、彼の答えはいつも同じだ「俺は歌いたいから歌う」。
序盤、彼に対する印象は多くの軍人やミレーヌと同じで
「なんであいつは歌うんだ?」という印象だろう、それで正解だ。
本作品は4クールという尺を上手く使っている
ストーリー構成が非常にうまい作品といえるだろう
昨今の1クールが定番のアニメにはなかなか難しい心理描写とキャラの変化だ
序盤、彼は「何故歌うのか」「なぜ戦わないのか」を主軸にストーリーを展開する
だが彼の答えはいつも同じ「歌いたいから」だ。
その疑問が解決されることはなく、周囲はいらだち視聴者も若干のいらだちを感じる
中盤以降も彼は歌い続ける。誰に何をいわれようと。
そんな彼の強固な意志は次第に周囲に影響を与え、視聴者にも影響を与える
いわば「もう、勝手に歌えばいいじゃん」という気持ちになってくる
そんな中でも人類と敵の戦いは進む。
戦いの中でバサラの歌は届かないが、一部の敵が「彼の歌を聞いて動揺する」反応をする
苦戦する敵に対抗するため、彼の歌は戦いに利用されていく
彼の歌は次第に有名になっていく。
強い敵を「倒す」事はしないが「撤退」させることが出来る彼の歌は
人類に強い希望を与え、彼の歌も流行りだす。
しかし、彼は叫ぶ「俺は戦っているんじゃない、歌いに来てるんだ」と。
だが、彼の歌はよくも悪くも戦いに利用され、強い憤りを感じる
彼の歌は敵を撤退させるものになっており、彼は自分の歌を伝えたいだけなのに。
そんな憤りは、彼にミサイルを打たせる。
多くの視聴者はこう感じるはずだ。
「今まで決して戦わずにお前は歌ってたじゃないか」
「お前がミサイルを打ったのは誰かを守るために仕方なくじゃなかったじゃないか」
と。
そんな視聴者の心の声をそれまで彼が戦場で歌うことを
強く否定していた「ガムリン」が彼に向かって叫ぶ
「お前は歌うんじゃないのか?! 歌えバサラ!!歌うんだ!!バサラ!!」
それまでのストーリーの積み重ねがあったからこそ、
登場人物にも、視聴者にも主人公であるバサラが「歌う」意味が伝わる、
4クールという長い尺を本当に上手く使っている。
彼が歌うことを視聴者も納得すれば、この「マクロス7」の世界にどっぷりと浸れる
見ている中、FIREBOMBERの歌が流れる度に思わず、リズムを取ってしまったり
思わず口ずさんでしまう人も多いはずだ
はっきりいってしまえば、序盤の10話以上は積み重ね回だ。
登場人物の行動は苛立つものが多く、敵も小物感が強い、
序盤のストーリー的にも「面白い」と言える展開は少ないが、
重要な積み重ねに使っている。
1クール目を捨てたからこそ、中盤以降のキャラクターの描写は素晴らしい。
「敵が歌い出す。」
文章にすればひどく稚拙に見えるが、この物語において
これほど感動的に感じるシーンはない。
1話から歌い続け、叫び続け、悩み、あがき、それでも歌い続けたバサラの歌が
中盤、ようやく敵にも届き、敵も自ら歌い出す。
序盤は本当に小物の敵でしかなかった「ギギル」という敵キャラが、
自らのピンチにそれまでさんざん聞いていたバサラの歌を思わず
下手くそながらなも口ずさむシーンは、感動だ。
「敵が主人公の歌を歌い出す」、言葉としては簡単だが「戦争をしているアニメ」と
考えれば、敵が主人公が歌っている歌を歌ういうのがどれほど凄いことか分かるはずだ
最終話の熱さは素晴らしい。
彼のために多くのものが歌い、銀河に彼の歌が響き渡る。
全体的に見てアニメだからこそ許される、本当にアニメ的な作品だ。
実写ドラマや実写映画などで主人公が戦わずに歌うだけで許される作品などあるだろか?
アニメだからこそ、主人公が歌いまくりでも許される。
アニメだからこそ、4クールという長い尺でのストーリー構成が許される。
アニメだからこそ、描ける世界観とストーリーの内容だ。
欠点を言えば、「マクロス」という名前はついているが戦闘シーンの面白みはやや薄い。
その大きな原因として「板野サーカス」の
板野一郎氏が本作には参加していないことが大きいだろう
ただ、本作品は戦闘シーンの面白みは重要ではない、
あくまで主人公の目的は相手に自分の歌を伝えるためなのだから。
しかしながら、もう少しだけ戦闘シーンに迫力があってもいいのでは?と
感じてしまうのは、マクロスの名前の重さを感じさせる
更に言うならサブストーリー的な話が話によってはつまらない。
その話も「バサラの歌が伝わるまでの積み重ね」と割りきってしまえばいいが、
サブストーリーは結構多いので、そういった話を省いたほうが
もっとすっきりと本作品を楽しめたのでは?と感じてしまう。
しかし、そういった欠点を覆い隠すほど本作品には「熱さ」がある。
主人公、敵、ライバル、ストーリー、歌。
細かい部分や欠点を燃やし尽くすような熱気で4クールしっかりと楽しめる作品だ。
見ていない人にかなりわかりやすく伝えるとしたら、
「アンパンマンの歌を、バイキンマンが歌い出す」という感じだろうか。
かなり極端な例えだが、一体どういうこと?と感じた方は
ぜひ、この作品の中盤まで見て欲しい。
この例えは極端ではあるが、「マクロス7」の例えとして間違っていないはずだ。
あなたもぜひ、マクロス7の熱さに触れてほしい。
アニメだからこそ許されるストーリーと主人公、そして熱気バサラの歌
全て見終わった後に、あなたも思わず「FIRE BOMBER」の歌を口ずさんでしまうはずだ。
この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください
マクロス7は自分も思い出深い作品です。「アニメだからこそ許されるストーリーと主人公」という評価には深く同意します。