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「外見至上主義」レビュー

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評価 ★★★☆☆(55点) 全8話

『外見至上主義』予告編 – Netflix

あらすじ 外見が原因で学校で酷いイジメに遭っていた高校生の主人公・パク・ヒョンソク引用- Wikipedia

暴力至上主義

原作は韓国で連載中のWeb漫画作品。
監督はHan Kwang Il、制作はスタジオミール。
Netflixで独占配信されている作品だ。

外見

この作品、日本では「外見至上主義」というタイトルになっているが、
海外だと「ルッキズム」というタイトルになっている。
この言葉は簡単に言えば人を外見で評価・差別する思想のことであり、
美女や美男ばかりが優遇され、ブスやブサイクが冷遇される社会は
どうなんだ?という価値観を指すような言葉だ。

そんなタイトル通り、この作品のルッキズムは激しい。
主人公は身長も小さく、デブで、眼鏡でといわゆる
「ブサイク」な見た目をしている。
そんな見た目がゆえか強烈ないじめにあっている。

金をゆすられ、豚のマネをしろと言われ、殴られ、
授業中にはサッカーボールを当てられる。
「生まれながらの敗北者め!お前は一生底辺で這いつくばってろ!」
と見た目だけでここまでいじめられるのかと
恐れおののいてしまうほどのいじめ描写が冒頭で描かれる。

韓国はいわゆる「整形大国」として有名だ。
アニメでも「整形水」という作品でルッキズムが描かれており、
そんな整形大国な韓国という社会だからこそ
「外見」や「ルッキズム」という要素は多くの人の心をつかむのかもしれない。

外見は人の心を映すともいうが、主人公は性格も悪い。
母と二人暮らしで貧乏な家庭なのに母にあたりちらかす様は、
彼の事情はわかるものの見ていて不快感を感じるような描写が
1話冒頭から描かれる。

過度ないじめの描写、主人公の母への態度。
その「外見」がゆえの状況なのはわかるが、
ブサイクだからとかそれ以前に「いじめっこ」のいじめの描写がやばく、
外見を理由にいじめているのか、それ以外なのか理解しかねる部分だ。

そんな主人公ではあるものの「いじめ」られている状況を変えるために、
彼は転校して一人暮らしすることになる。
だが別の街に言っても対して変わらない。
街で人にぶつかっただけなのに殴られ、SNSに晒される。

外見至上主義といっているが外見の問題よりも
「暴力」の問題のほうがあまりにも大きい(苦笑)
というより治安がシンプルに悪い。

寝て起きたら…

そんな主人公がある日、寝て起きるとなぜか
「イケメン」に変身している。
見目麗しい韓国男性アイドルのような見た目、
顔だけでなく体型も身長も全てが変わっている。別人になったわけではない。

というよりもかなり不思議な状況だ。
主人公が「眠っている」間だけ、イケメンの体になれる。
それはまだわかるのだが、自分自身の肉体そのものが変化しているのではなく、
彼には「2つ」の体がなぜかあり、本体が眠っていればイケメンの体に、
起きているときはブサイクの体に霊が宿るような不思議な状態だ。

なぜ、こんな状態になったのかということは描かれない(苦笑)
たまたまであった魔術師にイケメンの体をもらったとか
そういう理由が描かれるならばともかく、理由は
1クールの中では一切描かれていない。

イケメンの体を手に入れた主人公は昼はイケメンの体に、
夜はブサイクの体で過ごす二重生活を送ることになる。
イケメンになった彼が何をなすのか?という期待感は1話では生まれる。

心はブサイク

イケメンの体を手に入れた主人公ではあるものの、
これまでの人生をブサイクで生きてきたがゆえに
「視線」や「人との関わり方」が不器用だ。

イケメンになっても心までイケメンになるとは限らない。
しかし、イケメンになったからこそ「気軽」に
話しかけてくれる男子や、自分に下心を向ける女子など
今までの生活とは正反対の「人間関係」を彼は築くことができる。

そういった意味での「外見至上主義」がかなり露骨に描かれている。
ブサイクならばいじめられパシりにされる。
イケメンならば女の子が寄ってくる。

露骨な外見至上主義の描写とそんなイケメンの生活を楽しむ主人公、
イケメンのムキムキボディを手に入れた主人公はまるで
特殊な力を手に入れたアメコミヒーローのようだ。
しかし、ブサイクな体が起きてしまえば、イケメンの体が寝てしまえば、
ブサイクの体に戻ってしまう。

設定的にはアメコミヒーローのようなテイストを感じる部分がある。
イケメンとしての日常生活を味わいながらも、
ブサイクとしての日常生活も味わう。
そんな彼だからこそイケメンとブサイクの周囲の態度の違いも
如実に感じることが出来てしまう。

暴力!暴力!暴力!

そんな二重生活の描写と設定は面白いものの、
相変わらず暴力描写はひどい。
街で因縁をつけてきたやつがコンビニのバイトをしてる途中に
やってきたかとおもえば、また因縁をつけられボコボコにされた挙げく
商品も奪われ、下半身を露出した写メまで撮られてしまう。

もはやいじめの描写がひどいとか治安が悪いとかの問題ではない。
明確な強盗という犯罪だ(苦笑)
そんなやつに「イケメン」の体で主人公は挑むことになる。

2話からはこんな感じだ。
この作品は外見至上主義といっているが根本にあるのは「暴力至上主義」である。
イケメンかブサイクで確かに周囲の態度は違う、
だが、イケメンだろうがブサイクだろうが最終的には「暴力」で解決する(笑)

イケメンもブサイクも美少女もブスも関係ない。
顔面さえ殴ってしまえばみな同じと言わんばかりの暴力による解決だ。
主人公は長年流れ続けてきたがゆえに動体視力がすごく、
今までは「体格」や「筋肉」がなかったからこそ、
なにより「心」で負けてしまっているからこそ反撃できなかった。

しかし、彼はイケメンの体格と筋肉と心を手に入れた。
そんな彼だからこそ初めて「反撃」することができる。
そういったことを描きたいのはわかるのだが、
常にこういうふうに「暴力」で全てが解決していく物語が描かれる。

学園バトル

3話からは学園バトルが始まる、一体何を言っているのか?と
この作品を知らない人が聞けば意味不明かもしれないが、
そういう展開になるのだから仕方ない。

同じクラスのチンピラを退治した主人公は
各学科の四天王的な存在に目をつけられてしまう。
別に主人公がなにか悪いことをしたわけじゃないのに、
治安が悪く暴力で全てを解決する学校の中で目をつけられてしまう。

本当に心底治安が悪い。
高校生が万引きだけでなく、強盗まがいのことをするのは当たり前、
因縁をつけてボコボコにするのは当たり前、
あたりまえのようにタバコを吸い、酒も飲んでいる。

日本のアニメならば高校生のキャラが喫煙飲酒するシーンは
規制されることが最近では多いが、
この作品はNetflixだからこそなのか韓国アニメだからこそなのか
当たり前のように高校生が喫煙飲酒をしている。
ちなみに韓国では満19歳からしか喫煙飲酒は認められていない。

いいから警察を呼べというような状況が多いものの、
絶対に警察は出て来ない(笑)
因縁の付け方も凄まじく、
主人公が「イケメン」だからというだけで絡んでくる。

基本的に肉弾戦で蹴りやパンチで戦うものの、
そんな戦闘シーンの作画のクォリティは悪くなく、
きっちりとしたアニメーションで戦闘シーンも描かれているおかげもあり、
暴力至上主義なこの作品を笑いながら楽しむことができる。

そんな中でブサイクな主人公も変わろうとする。
彼のことを認めてくれる、見てくれる存在がいるからこそ
「今」のままではだめだと自覚し、筋トレを始める。
キャラクターのゆっくりではあるものの成長と変化が見える

友達

イケメンの体を手に入れた主人公ではあるものの、
心はブサイクなままだ。
それゆえに同じような立場にいる同級生を彼は見捨てておけない。
外見故にいじめにあい、学園内でのカーストが低い同級生に
彼は積極的に声をかけている。

そんな光景は微笑ましいものの、それ以上にいじめの描写は酷い。
とある同級生はいじめにあっており、
彼の祖母の店は同級生であることをいいことに食い荒らされ、
おみやげで貰った食べ物も彼らは捨てる始末だ。
眼の前にいる彼はかつての「主人公」そのものだ。

いいから警察や先生を呼べと思うのだが、
この作品は大人の力は一切借りない(苦笑)
だからこそ、主人公はそんな立場の彼らを見過ごせない。
見た目がかっこよくなっても心まで簡単に変わることはできない。
でも、彼は変わろうとしている。

1度戦った「敵」は1度戦えば心の友だ。
彼らがやったことを考えると仲間になっているのは
やや違和感はあるものの、まるでジャンプ漫画のごとく
努力、友情、勝利の流れをつかんでいく。

たとえ見た目がブサイクでも、
彼らは彼らなりに自分を見定めていく。
暴力表現は多く、結果的に暴力で解決することも多いが、
終盤のエピソードは「外見至上主義」というタイトルに相応しい
ルッキズムな内容になっている。

イケメンな見た目とブサイクな見た目の二人。
そんな二人が挑む学園祭ライブは
ちょっとした感動を生んで1クールが終わっている。
ラストではもうひとりの身体入れ替え能力者も匂わせ、
2期への期待感も強めてくれている。

総評:イケメンも殴ってしまえば皆同じ

全体的に見てタイトルから想像できるような内容と少し違い、
ルッキズムを題材にして入るものの、どこか
ヤンキー学園バトルアニメを見ているかのような気分になるほど
拳によるバトルシーンが多く、暴力で物事が解決し
物語が展開していくことも多い。

そんな予想外な内容はややギャグにも感じる部分はあるものの、
終盤は「イケメンな見た目」を手に入れた主人公の成長と変化、
そんな成長と変化があったからこその友達との
学園祭ライブまでまっすぐにストーリーが描かれており、
全8話で物語をスッキリと楽しむことができた。

ただ、なぜイケメンの体がいきなり現れ
その体に乗り移ることができるようになったのか?といった
物語の根本的な部分は1クールでは一切明かされず、
そのあたりが2期があれば描かれることを期待したい。

外見至上主義、ルッキズム。
そんなルッキズムが根付いた韓国という社会だからこその
ストーリーは日本のアニメにはない角度で描かれた面白さがあり、
特に「いじめ」の描写はかなり過激だ。

そのあたりの好みはあるかもしれないが、全8話と
普通の1クールアニメより少し短いがゆえのみやすさもあり、
作画のクォリティも悪くないだけに、
タイトルやキャラデザで敬遠してる人は見てみると
意外と楽しめる作品かもしれない。

個人的な感想:こういう内容だったのか…

たまに広告などで一部のコマが出ていたため、
タイトルは知っていたものの内容は想像とは少し違ったものだった(笑)
おそらく、この後もバトル漫画的な要素を出しつつ、
イケメンの体の謎に迫るような展開になるかもしれない。
意外と話が気になっている自分がいる。

キャラデザや作画の癖、いじめ描写の過激さは
やや気になるところではあったが、個人的には
予想以上に楽しめた作品だった。

2期があるならば期待したい作品だ。

「外見至上主義」は面白い?つまらない?

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