評価 ★★☆☆☆(30点) 全6話
あらすじ 時系列は本編第二部の北陸戦線後で、南海の孤島を舞台とする。レジスタンス組織「ヒヌカン」と、島を支配していたオセアニア軍を駆逐した北米同盟軍との戦いが描かれる。引用- Wikipedia
在庫処分アニメ
本作品は境界戦機の続編アニメ作品。
評判の悪かった境界戦機の続編が誰も予想しておらず、
監督が大張正己氏に変更され制作された。
1話10分ほどのWebアニメとして配信された。
続編
この作品は正式な続編だ。
時系列的にも境界戦機の最終話である北陸戦線のあとになっている。
境界戦機のことを忘れた人や分割2クールの1クール目しか
見ていない人のために軽く説明すると、
境界戦機は日本が分割統治されている設定だ。
政治的な失敗というふわっとした設定で、
日本が様々な国や連合に分割統治され日本人が虐げられている。
そんな世界で主人公たちはレジスタンス組織である八咫烏に入り、
特別なロボットとともに日本を取り戻そうとした。
結果的に4つの連合に分割統治されていたのだが、
最終的にはその連合とレジスタンス組織との交渉の末、
日本の一部を八咫烏が第二の日本政府を立ち上げ
獲得するというところで終わっている。
つまり4つの連合に統治されていたのが5つの連合に
統治され終わっているというややこしい状況で終わった(苦笑)
もともとの日本政府があるのに第二政府を作るという
1話よりも最終話のほうが日本という国が
困惑している状況で終わっているような
なんとも度し難い作品だ。
主人公は戦いからさり、マスコットキャラAIとともに
旅立って終わっていた。
続編では彼らがでるのか?というところも気になるところだ。
戦闘
1話冒頭から戦闘シーンで始まる。
あいも変わらず戦闘は日本で巻き起こってるようで、
オセアニア軍と北米軍が戦っている状況だ。
あれほど蒲生たちが頑張ったのに日本は相変わらずだ。
もっとも最終話の状況を考えれば当たり前だが(苦笑)
そもそも公式のあらすじでさえこんな感じだ
「北陸戦線終結後、新日本協力機構が統治する日本人のための新たな国土が誕生した。しかし、それで日本を取り巻く状況が劇的に良化したかというと、そうではなかった。」
そうではなかった(笑)
前作のストーリーが無意味だったことを公式が認めるようなものだ。
新たなレジスタンス組織である「ヒヌカン」というのもできている
八咫烏との関係性や第二日本政府とどういった関係なのかはわからない。
主人公はそんなレジスタンス組織に所属しており、
彼には何かしらトラウマがあるようで「逃げる」ことを拒否している。
そんな中で三澤 ジンというもう一人の主人公が現れる。
単騎で多勢に挑み、無双を繰り広げる姿は
「大張正己」監督らしい無骨な戦闘シーンだ。
ロボットアニメでありながら、この作品の機体は基本的に空を飛べない。
地に足をおき、きちんと重みを感じさせる戦闘シーンと
1枚絵の魅力はベテランの力強さを感じさせるところだ。
尺
ただ、いかんせん尺が短すぎる。
この作品はWebアニメであり1話10分ほどだ。
話によって多少尺の長さがかわることはあるが、
基本的には10分であり、更にそこにOPとEDがある。
実質7分くらいだ(苦笑)
しかも全6話しかない。全部見るとOPEDをのぞくと42分ほどだ。
普通のアニメの2話か3話分しかない。
そんな尺しかなければがっつりとしたストーリーが展開するのは不可能に近い。
唐突に現れた「三澤 ジン」は傭兵だ。
レジスタンス組織に雇われて主人公たちを助けにやって来る。
だが、主人公の行動を彼は否定する。
主人公はまだ若い、戦争に対してなんらかのトラウマがあり、
逃げないといけない状況でも彼は逃げることをしない。
そんな彼が「AMAIM」に乗るところで2話が終わる。
主人公が自身の機体に載って戦うシーンが
作品の全体の尺の半分を使ったところで描かれるアニメなど前代未聞だ。
主人公に何があったのか、敵と「三澤 ジン」にも
何らかの因縁があるようなのだが、どういう因縁があるのか。
1話1話の話の進行度合いが尺が短い故に遅く、
アモウたちはどうなったのか?今の日本はどうなってるのか?
そもそも彼らの組織はどういう位置関係にあるのかなど、
色々と気になることは多いがなかなか明かされない。
戦闘シーン
ただ、そういった日常パートをごっそり抜きながら、
常に戦闘シーンが描かれているのが本作の特徴だ。
あっさりと変わる戦況は面白く、
激しい戦場であることはわかるのだが、
あっさりとメインキャラっぽかった隊長が死ぬ(笑)
せっかくAMAIMにのっており、AMAIMに搭載されている
マスコットキャラ的なAIも出てきたのに、
隊長がAMAIMにのってマスコットキャラがでてきて
2分で死んでしまう。冗談のような速さだ。
マスコットキャラのAI的に彼らがいる離島は
沖縄あたりなのはわかるのだが、
現在の日本はいったいどうなっているのだろうか。
戦闘の中で主人公は戸惑うものの、
「逃げない」という心構えの元たたかっている。
だが、彼は人の死にたいしての恐怖心が強い。
敵であっても、誰かを殺すことに対して恐怖心がある。
兵士としての覚悟ができていない。
敵であっても人を殺すことに涙を流し、自身の弱い心を戦っている。
前作である「アモウ」よりもよっぽど主人公っぽさは強いのだが、
それゆえにこの尺の短さが惜しまれる。
前作のストーリーがアモウではなく彼を主人公に綴られていたら
境界戦機は面白くなった…かもしれない。
過去
4話で主人公の過去が語られる。
組織に入り、パイロットの適性があり、実践に挑んだものの、
出撃直前に北米軍に襲われ、彼以外の人が死んでしまった。
友達や知り合いを置いて逃げてしまったことが彼の中に残っている。
「三澤 ジン」の過去も語られる。
傭兵として戦ってきた過去、彼に何があったのかなどが
淡々と語られ、今作の敵との因縁も明かされる。
恋人を失った彼は復讐を抱いている。
このあたりのエピソードもわるくないのだが、
いかんせん尺が短い。
もっと丁寧に、きちんとした尺で描けば面白そうなのに、
まるで総集編映画でも見ているような感覚になってしまう。
ヒロイン的なキャラも居るのだが、もう存在感0だ。
主人公との会話も1,2回ほどしかなく、
あとはレジスタンス組織の一員として
AMAIMにも乗らずに他のモブとともに白兵戦をしているだけだ。
前作の紫々部 シオンもいる意味はあるのか?という
レベルで必要性を感じないキャラクターだったが、
本作もヒロイン枠のキャラクターを活かしきれておらず、
無用の長物になってしまっている。
自爆
ただ戦闘シーンの完成度は本当に素晴らしい。
極限の戦闘シーンだからこそ、
相手も兵器で人間相手に銃器をぶっぱなしてきており、
レジスタンス組織のモブキャラはどんどんと死んでいく。
この作品においてキャラクターの命は軽い。
主人公が戦っている相手も同じだ。
殺されるくらいなら、負けるくらいなら
「自爆」してでも相手を倒そうとする。
これが戦争だと感じる程、迫力のある戦闘シーンが描かれており、
このあたりは流石は大張監督だと言わざる得ないものがある。
特に最終話の戦闘シーンは秀逸だ。
「三澤 ジン」と、彼に因縁のある敵との戦いは一騎打ちだ。
そんな一騎打ちで見せる無骨な戦いは漢らしいものがある。
互いの装甲を切りつけ合い、撃ち合い、志をぶつけ合う。
死力を尽くす戦いとはこのことだ。
機体が破壊されボロボロのなりながらも、
相手を確実に「殺す」ための一手を撃つ。
この作品はこの6話の戦闘シーンを描くためにあったと
感じるほどの戦闘シーンが描かれている。
逃げたやんけ…
結局、主人公はまた戦場から逃げている。
そういう指示があったからこそ仕方ない部分はあるのだが、
「三澤 ジン」という仲間を置いて、島から生き残った
仲間とともに脱出しており、それでこの作品が終わりだ。
一体この作品はなんだったんだろうか(苦笑)
アモウがでてくるわけでもなく、前作のキャラが出てくるわけでもなく、
境界戦機の世界の中の沖縄での数日を見せられたに過ぎない。
ストーリー的な面白みは薄く、
結局「境界戦機」という土台を使ってこれ以上の
ストーリーを描くのは難しいと判断したからこそ、
こういう薄味なストーリーを短い尺で描いたのかもしれない…
総評:尺は前作の1割、面白さは前作の10倍
全体的に見て前作に比べれば面白い部分はある作品だ。
尺こそ短いが主人公と「三澤 ジン」というキャラクターは
描けており、それぞれの事情とそれぞれの目的を描きつつ、
「三澤 ジン」の物語は描ききっている。
ただ、わざわざ続編という時系列にしたのに
それを活かしきれていない。これならわざわざ続編ではなく、
前作の一部と二部の間の物語くらいでもよかったはずだ。
続編にしてしまったからこそ、前作での出来事が
日本という国にとってほとんどいい影響を与えておらず、
何も変わってないことがわかってしまい、
アモウたちの戦いはなんだったんだ…となってしまう。
もっとも、そう感じる程アモウたちに思い入れはないが。
主人公の戦いはこれからだ!で終わってしまっており、
続編の発表など今のところはない。
結局、いるだけだったヒロインはなんだったのか、
戦闘開始2分で死んでしまった隊長はなんだったのか、
色々と企画倒れな感じが凄まじい作品だ。
アニメーションのクォリティとしてはわるくない。
全編に渡って戦闘シーンが描かれており、
激しい戦闘シーンの中であっさりと散りゆく命や、
戦闘における主人公の覚悟の描写、
そして「三澤 ジン」の最後の戦いは盛り上がる部分がある。
そう考えれば前作よりは面白いと感じるのだが、
この尺の短さ故にあくまで前作比で面白いというだけの
作品になってしまっている。
毎話毎話エンディングの後にプラモの宣伝が挟まれていたことを
考えると、この作品は今後新しく出る境界戦機の
販促アニメとして割り切って作られた作品なのかもしれない…
境界戦機の中の日本がいつか救われる日はくるのだろうか…
個人的な感想:なんで…
そもそも、この作品が作られたのも謎だ。
境界戦機はヒットしたと言えず、散々の評価を世間では受けている。
それなのに尺が短いとは言え全6話のアニメの
企画が何故通ったのだろうか、本当に疑問だ。
すでにプラモの設計や製造が始まっており、
それを止めるわけには行かないからこそ、
せめてもの宣伝としてこのアニメが作られたのかもしれないが、
「境界戦機」というシリーズ自体がずっこけた印象があるのに、
なぜ続編が作られたのか、色々と謎な作品だ。
もしかしたら、今後もこういうWebアニメが作られるのかもしれないが、
そのときは日本が取り戻せるストーリーになることを期待したい。
無理かもしれないが。
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