評価 ★★★★☆(70点) 全93分
あらすじ 子供たちに絶大な人気を誇る特撮ヒーロー番組『アクション仮面』の撮影中、突然スタジオで爆発が起こる。混乱の中、何者かがアクション仮面の力の源であるアクションストーンを奪い、どこかへと去っていった。引用- Wikipedia
あの頃、5歳児だったキミへ
本作品はクレヨンしんちゃんとしては初の映画作品
監督は本郷みつる氏。
アクション仮面
この作品はクレヨンしんちゃんとしては初の映画作品だ。
この頃のクレヨンしんちゃんは「子供に見せたくないアニメNO1」に
選ばれる理由もわかるほど下品さや、子供がマネする要素が多く
最近のクレヨンしんちゃんに比べればセリフにも刺がある。
最近では定番のぞ~さんをやらなくなったこともあり、
この頃の下品で自由奔放なクレヨンしんちゃんは単純に懐かしいと感じる。
そんなクレヨンしんちゃんの初期の映画作品だが、
冒頭からかなり気になる展開を見せてくれる。
しんのすけが夢中のヒーロー「アクション仮面」、
彼は撮影中になぞの爆撃をうけ彼の力の源である
「アクションストーン」を盗まれてしまう。
「アクション仮面」はあくまでもテレビ番組の、
特撮のヒーローだ、現実で言えば仮面ライダーのパロディキャラでしか無い。
そんなキャラクターが本当に
「ヒーローだったら?」というifを描いている。
子供もどこかテレビの中に映るヒーローが作りものであることは
察している、だが、察していても楽しんでいるのが子供だ。
しかし、そんな子供に「ヒーローが本当のヒーローだったら」という
ifを見せているのがこの作品の素晴らしいところでもある。
駄菓子屋
この作品は子どもの夢とロマンに溢れている。
特に冒頭の駄菓子屋でのシーン、しんのすけは
駄菓子屋でアクション仮面のレアカードを当てる。
たったそれだけのシーンだ。
しかし、子供にとっては限られたお小遣いで買ったものであり、
そんな自分のお金で買ったものが誰もが羨むものだったときの
衝撃は計り知れない。
自然な導入だ。冒頭でアクション仮面のシーンを入れつつ、
しんのすけのいつもの日常に変化していく。
友だちと遊んだり、母ちゃんに怒られたり、
嫌いなピーマンを残して怒られたり、
父ちゃんのおみやげに夢中になったり、テンポよく日常が描かれており
ぞーさんなどのギャグをはさみつつ展開する。
そんないつもの日常から不思議な非日常へと変化していく。
日常から非日常へ、同じ国民的アニメ映画のドラえもんもそうだが、
普段の日常から、アニメ映画では非日常へと変化していく、
この特別感がたまらない。
しんのすけが手に入れた「No99」のカード。
「駄菓子屋でレアカード」を当てるシーンはいつ観ても色褪せない。
路地裏の懐かしい雰囲気の駄菓子屋でチョコビのおまけを開けると
金ピカに光るレアカードをしんのすけが当てる。
たったそれだけのシーンなのに
子供も、大人も、このシーンはワクワクするシーンだ。
そんなレアカードが「非日常」への入口だ。
パラレルワールド
ゆっくりじっくり、本当に自然な流れだ
海に行くことになった野原一家が脇道にそれてたどり着くと
砂浜にぽつんと巨大なアクション仮面がたっており、
そこにテントが張ってある。
流れるBGMが不思議な雰囲気を後押ししており、
日常から非日常へと変化したことを実感する
しんのすけが引き当てたレアカードは
誰も持ってないレアカードであり、
そのカードはパラレルワールドへの鍵だ。
野原一家は「ハイレグ魔王」が支配する
もう1つの「春日部」へとたどり着く
という所からストーリーが動き出す。
今でこそ多次元宇宙、マルチバース的な概念は
マーベル作品で多く広まったが、
この時代、1993年の時点でクレヨンしんちゃんが
マルチバースという概念を取り入れていることを
見返して思わず驚いてしまった
別世界
中盤からの世界観も面白い。
しんのすけたちの世界では「アクション仮面」は空想の中のヒーローだが、
しんのすけたちが行った別の世界では
「アクション仮面」は本当のヒーローだ
敵の目的も「地球人をハイグレ姿にして支配する」という
ぶっ飛んだ目的であり、敵も「Tバック男爵」や
「腹巻レディース」などふざけた名前ばかりだ(笑)
そんな敵のせいで異世界はハイレグ姿の人だらけだ。
ハイレグという言葉がすでに令和の時代では死語ではあるものの、
異世界にきたということをすぐに実感させる展開、
この時代のセル画で描かれた作品だからこその
「怖さ」を感じさせる部分もある。
とにかくバカバカしく、どんな設定だと感じる要素も多いのだが
それこそ「クレヨンしんちゃん」だからこそ許される内容であり、
素直に笑ってしまい、素直に面白いなと感じてしまう。
あれから31年のときがすぎ、
あのとき子供だった私もすっかり大人になってしまった。
あのとき6歳だった私も今や37歳。
6歳のときとおなじように37歳の私も、
クレヨンしんちゃんという作品で笑ってしまう。
そこには懐かしさ、思い出補正ももちろんあるのだろう。
しかし、そこを差し置いても、
今見ても色褪せない面白さがこの作品にはしっかりとある。
この作品は簡単にいえば「子供らしさ」が溢れてる。
TVのヒーローが本物のヒーロー、
レアカードが非日常への入り口、そんな異世界で空飛ぶ三輪車にのり、
シロは喋り、敵は全人類をハイレグ姿にして支配しようとしている。
子供の想像がそのままになったようなコミカルで想像力豊かな内容だ
序盤はじっくりと描かれているのだが、
中盤から別世界にやってくるとコミカルかつハイテンポに
ストーリーが展開していきながらも、ギャグは満載だ。
「うんこ」などの言葉はもちろん、カンチョーや
ぞーさんなどももちろん出てくる。
シンプルかつ下品ではあるのだが、
だからこそ子供も大人も思わず笑ってしまう。
今だったらコンプライアンス的に色々とアウトだと感じる部分もある、
敵の紹介でさらっと「ホモ」という言葉が使われているも、
30年以上経った今みると逆に斬新にすら感じる。
作画
そんな内容を素晴らしい作画が後押しする。
空飛ぶ三輪車を鳥の頭のようなものが伸びながら追いかけてくるシーンなど
「板野ミサイル」ばりの複雑な動きを軽快に動いており、
CGを使っていないセル画だからこそのスピード感あふれる空中での動きに、
細かい重みと厚みが乗っかっている。
クレヨンしんちゃんでここまでの作画が必要なのかと感じるくらいだ(笑)
子供の頃は何気なく見ていたが、大人になって改めて見ると
作画の素晴らしさをひしひしと感じられる。
特に最後の戦いである「アクション仮面」と「ハイグレ魔王」による対決、
気持ち悪いくらいに動く作画は軽快なアクションシーンになっており、
ローアングルから狙うようなカメラワークからカンチョーにつなげる。
大人になった今でも腹が捩れるほど笑ってしまった。
このあたりのプロットを手掛けたのはあの「湯浅政明」さんだ。
のちに別のクレヨンしんちゃん映画でも
素晴らしいアクションシーンを手掛けていたが、
それを感じさせるアクションシーンがすでに存在している。
このシーンの緊張感は素晴らしく、
しんのすけと同じ目線でシーンに食いついてしまう。
ラストは「アクションビーム」だ。
ヒーローの決め技、子供が誰しもマネする必殺技、
そんな憧れの存在である「アクション仮面」の技を
しんのすけも使うことができる。
なんてロマンに溢れた展開なのだろうか。
最初で最後のWアクションビームは
ヒーローに憧れる子供の夢が本当にそのままになったようなラストシーンは
子供ならドキドキワクワクし、大人なら微笑ましく見守れる。
大人になった今だからこそ見直して気づくことが
たくさん詰まっている作品だった
総評:夢とロマン、子供心に溢れた色褪せない名作
全体的に見て「こんなに完成度高かったのか?」と驚くほどよくできている
日常からの非日常への変化、軽快で下品さあふれるギャグの数々、
後に定番になるオカマキャラ、わかりやすいストーリー展開、
そして作画の素晴らしさ。
子供が見ても、大人が見ても楽しめる「クレヨンしんちゃん」の映画だ。
子供の頃から何回も見ていた作品で、恐らく何年ぶりかに見た本作品だが
子供の頃と同じように、見ていて素直に楽しめた。
もちろん古さ故に「しんのすけ」の声に若干違和感を感じたり、
しんのすけ以外のキャラの活躍が少なかったりキャラの違和感などの問題はあるもの、
それを覆い隠す「子供心」溢れる作品だったといえるだろう
「クレヨンしんちゃん?しかも1番古い映画だろ?
子供の頃みたし。別にもう1度見なくていいや」
と思う方も大勢いると思うが、騙されたと思ってもう1度見てほしい
懐かしさなのか、忘れている子供心をくすぐられるのか、
その両方なのかは分からないが大人になってみると
子供の頃とはまた違う新鮮さ面白さを感じることが出来るはずだ
何度見ても素直に楽しめるクレヨンしんちゃん映画。
ここから後に30作以上続くクレヨンしんちゃん映画の
始まりなんだなと考えると
色々と感慨深いものがある作品だ
個人的な感想:色褪せない
本当に何度観ても、色褪せない名作だ。
1作目ゆえの荒削りな部分はありつつも、
1作目の段階でクレヨンしんちゃん映画らしい要素がしっかりとあり、
この作品が22億という興行収入を叩き出しているのも納得だ。
今見返すとセリフの刺々しさなど、
若干気になる部分はあるものの、それもまた時代感というやつだ。
コンプライアンスや価値観の変化でできなくなった表現、
セリフ回しなどがクレヨンしんちゃんという作品には意外と多い。
特にこの作品は主人公である「野原しんのすけ」の
クソガキ感も凄まじい(笑)
そういった時代感も含めて、ぜひ改めて味わってほしい作品だ。
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