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このアニメは不完全燃焼すぎる 「この世界は不完全すぎる」レビュー

3.0
この世界は不完全すぎる ファンタジー
画像引用元:Ⓒ左藤真通・講談社/『この世界は不完全すぎる』製作委員会
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評価 ★★★☆☆(45点) 全13話

TVアニメ『この世界は不完全すぎる』本PV第1弾

あらすじ ベイル王国の辺境の小さな村で、少女ニコラは宿屋の下働きをして平穏に暮らしていた。そんなある日、ニコラは村の外で巨大なドラゴンに遭遇したところを奇妙な男に救われる。引用- Wikipedia

この世界は不完全すぎる

原作はコミックDAYSで連載中の漫画作品。
監督は馬引圭、制作は100studio、studioぱれっと

設定

見出して感じるのは独特なテイストのキャラデザだ。
最近のアニメというよりは少し前の2000年代から
2010年代くらいのアニメを感じさせる雰囲気があり、
一言で言えば「濃い」デザインだ。この世界は不完全すぎる

1話冒頭から出てくるドラゴンのデザインにしろ、
ヒロインにしろ、主人公にしろ、どのデザインも濃い。
とくに主人公などムキムキマッチョで、赤い髪で、
それなのに頭身はそこまで高くない。

独特なデザインはこの作品らしい雰囲気を醸し出している。
ファンタジーな世界でドラゴンが現れ、
ヒロインが押しつぶされそうになった瞬間、
主人公が助けてくれるというところから物語が始まる。

彼はひたすら「ドラゴン」の生態を観測している。
それだけではない「世の中」のことを観測している不思議な存在だ。
キングスシーカーと呼ばれる探求者たち、
主人公もまたそんなキングスシーカーだ。
世界の異変を調べるために王国のエリートが世界中に送っている。

そういう「設定」だ。
ヒロインは繰り返しの日々を送り、外の世界を知らない。
笑っちゃうほど同じ毎日を繰り返す少女にとって
主人公の存在、ドラゴンの襲撃はいつもの毎日ではない。

彼女は死ぬ運命の存在だ、ドラゴンに襲われて死ぬ。
それが彼女の「設定」であり、それを覆すことは出来ない。
たとえドラゴンを主人公が倒しても、
村が全滅するというシナリオは変わらない。
「ゲーム」のシナリオ、設定を覆すことは出来ない。

バグ

主人公はデバッガーだ、この世界はVRのゲームであり、
主人公はデバッガーとしてありとあらゆる条件で
ゲームを試し、バグがないか確認している。
だが、このゲームは「バグ」まみれだ。
そのせいで主人公たちデバッガーはこの世界に閉じ込められてしまっている。

この手のゲームからログアウトできないという作品は
最近ではかなり増えている。
.hackからはじまり、ログ・ホライズンや、
ソードアート・オンラインなども大ヒットしたこともあり、
なろう系では多い設定だ。

そんな設定をこの作品も用いているものの、
主人公はプレイヤーではなく、あくまでデバッガーであり、
このゲームの世界自体がバグにまみれているというのが
特徴的でもある。

1話でそんな世界観を見せ、
救えないはずの少女が生き残るバグを発見したところから
主人公の物語が動いていく。

デバッグ

あくまでこの作品の世界はゲームの世界だ。
だからこそ主人公は「デバッグ」を欠かさない。
シナリオにバグがないか、いろいろな手段で試し、
フィールドに設置されている「壁」もチェックする。
通り抜けることの出来ない壁を通り抜けられないか。

ファンタジーの世界の住人からすれば奇っ怪な行動ではあるものの
重要なデバッグ作業だ(笑)
この世界がゲームの世界だということを知らないNPCである
ヒロインの視線でそんなデバッグ作業を行う主人公を描くことで、
それがギャグ、コメディなシーンにもなっている。

そんなデバッグを行っているのは彼だけではない。
多くのキングスシーカーがこの世界に閉じ込められており、
デバッグ作業をしている。
しかも1年以上ログアウトできない日々が続いている、
だからこそ多くのシーカーたちが狂っている。

使ってはいけないデバッグモードを使い、
NPCを好き放題して、この世界を楽しんでいる。
主人公のように真面目にデバッグしている人はわずかだ、
そんな狂ったデバッガーが主人公の前に常に立ちふさがる。

だが、あくまで主人公はデバッグモードは使わない。
それがバグを生む原因にもなる、真面目な彼は
真面目に無敵にもなれて地形も無視できるデバッガーモードは使わず、
ゲームに存在する「バグ」で敵を倒す。

デバッグモード

決してチートでもない手段でチーターともいえるような
敵を倒すストーリー展開には爽快感がきちんと生まれている。
あくまでデバッグモードを使わない主人公も、
きちんと理由がある。

デバッグモードを使い無敵になった結果、
即死トラップにはまり、死と生を1年銃繰り返している同僚、
座標指定移動を使った結果、ずっと床に沈み続ける同僚、
ずっと空に浮かび続けている同僚、そんな同僚たちを見ているからこそだ。

デバッグモードを使ったものを末路をみたからこそ、
主人公はどんな状況でも使わないことを決めている。
真面目なキャラクターという設定だからこそではあるものの、
チートな敵に対し、チートを使わない理由の裏付けがきちんとされている。

何故かイベントから生き残った「ニコラ」も
実は「AI」がその体を借りていることが明らかになる。
ゲーム全体を統括するAIが彼女を蘇らせ、
このゲームが完成するように背中を押している。

不真面目なデバッガー、デバッグモードを使いバグを増やす
デバッガーを排除し、デバッグが進めばバグがなくなり、
このゲームが完成し、主人公たちもログアウトできるかもしれない。

序盤の3話で世界観や設定、主人公やヒロインの掘り下げを行い、
そして物語の方向性をきちんと指し示している印象だ。

この世界は不完全すぎる、バグまみれだ。
そのバグの描き方がある意味、ゲームあるあるであり、
キャラクターが「Tポーズ」で固定された村だったり、
日本語音声がなかったり、宝箱を殴ることで飛ぶことが出来たり(笑)
私達がゲームの中で体験したようなバグが大量にこの世界には存在する。

主人公がバグを報告すれば翌日にはそのバグが修正されている。
そんなバグだらけの世界で、バグを利用しながら
バグを修正していく物語だ。
いつかログアウトできないバグも修正される日がやってくるかもしれない。
それを信じながら主人公は一心不乱に仕事をしている。

そうでなければ他のシーカーのように狂ってしまう。

この世界はゲームの世界だ、プレイヤーは本来、
蘇生魔法もあり死ぬことはない。
だが、バグまみれのこの世界でデバッガーたちは
「死」をデバッグすることが出来ない。

現実と同じような感覚になれるフルダイブVRMMOだからこそ、
ゲームの中で「死」を味わったらどうなるのか。
生き返ることはできるのか、現実の自分の体はどうなるのか。

多くのものが狂いそうになってしまう精神を抑え込み、
時にNPCをいじめ、時に仕事に勤しみ、時に
この世界の住人になろうとするものもいる。

各デバッガーがこのバグだらけの世界で
己の哲学のもとで己の生き方を見つけている。
各話あまりパターン化しておらず、いろいろなデバッガーと出会い、
主人公たちが対処していく。

消化不良

バグに対してもそれぞれの考えがある。
主人公は開発に報告し直したいと思っているが、
放置して見て見ぬふりするものもいれば、
バグや問題になっているNPCを排除しようとするものもいる。

各デバッガーの価値観や生き方などを
主人公を通して描いているものの、
メインストーリー部分は進んでるのか進んでないのか
いまいちよくわからない部分がある。
主人公以外のデバッガーも大量に存在し一体何人いるかわからない。

終盤にはもうひとりのAIが現れて、色々と物語が展開するのだが、
最終話に至っては主人公はレイドボスと出会い、
そんなレイドボスに少数で対抗する手段を見つけて倒すものの、
第2形態になって復活して…
というところで物語が終わっている。

ものすごい中途半端だ。
原作は13巻もでており、原作ストックがないわけではない。
それなのにあまりにも1クールとして
歯切れの悪いラストになってしまっており、
妙な消化不良感が残ってしまう作品になってしまっていた。

これで分割2クールなり2期が決まっているならばともかく、
今はそういう情報はない。
1クールというのが当たり前になった今のアニメ業界で、
この歯切れの悪いラストは最後の最後でマイナス評価につながってしまった。

総評:このアニメは不完全燃焼すぎる

全体的に見てログアウトできないVRMMOという
ベタな設定ではあるものの、きちんと設定された世界観があり、
デバッガーたちがそれぞれ1年以上ログアウトできない限界状態な
精神状態の中で己の生き方を模索し、試行錯誤している。

あるものはNPCを好き放題にし欲望に限りを尽くし、
あるものはこの世界に順応しようとし、
あるものはデバッガーとしてバグを修正し続けようとしている。
誰が間違っているか正しいなど彼らにはわからない。
三者三様、この新たな世界でみずからの生き方を模索している。

そんな中でゲームの世界らしく「バグ」を利用した
戦闘シーンは斬新で、時に無限ループに落とし込み、
時に読み込みバグでフリーズさせる。
そんな主人公の戦闘スタイルはこの作品らしい面白さを生んでいる。

それぞれの勢力、それぞれのデバッガーの生き様を1クールでは
描きつつ、それでも主人公はブレずにデバッグ作業に勤しんでいる。
さぁ、ここからどうなるのかというところで1クール終わってしまっている。
原作も連載中で未完の上に1クールという尺の都合上、
物語の風呂敷が畳まれないのは仕方ないが、それでもやりかたはある。

多くのアニメが1クールで放送され、その中できちんと
1話から最終話までの流れがあり、物語が完結しておらずとも
「区切り」を作っている。
しかし、この作品はまるで14話以降もあるような構成だ。

これで分割2クールや2期が決まってるなら納得できるが、
そうでもないのにこんなストーリー構成になってしまっているのは
1本のアニメとして致命的なバグを抱えている作品だった

個人的な感想:続きを読むきも…

1クールで完結しない作品には慣れっこだが、
気になる作品は原作を読んだりすることもあるものの、
この作品は見ている最中はしっかりとおもろさを感じて
楽しんでいたものの、ラストのぶつ切り感のせいで
萎えてしまった作品だ。

もう少し1クールのアニメとして歯切れの良いラストになってれば
原作を読んだり、2期があればいいなという気持ちも
生まれたかもしれないが、
そうはならなかったのがもったいない作品だ。

原作は13巻でており、5巻くらいまでアニメ化したようだ。
原作ストック的には十分、2期ができるものの、
最初から分割2クールくらいで制作されていれば
このぶつ切り感も多少はマシだったかもしれないだけに残念だ。

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