評価 ★★☆☆☆(24点) 全98分
あらすじ 父親に引き取られた日高暦は父親が勤めている「虚質科学研究所」の託児施設で、佐藤栞に出会う。引用- Wikipedia
センス0のアニメ映画
原作は小説な本作品。
監督はカサヰケンイチ、制作はトムス・エンタテインメント。
この作品は日本同時公開の作品であり、
原作も同じく2本発売されている。
原作は「2作を読むと互いの世界が
絡み合っている様子が見えてくる」ことがうりであり、
アニメ映画でも同じ形を取ったようだ。
先に
どちらを先に見るか迷ったが、なんとなくこちらを先に見ることにした。
2作同時公開の作品という仕掛けは非常に面白いものの、
そもそも制作会社自体も2本とも違う。
同じ世界観の話でありながら、並行世界のストーリーであり、
どちらを先に見るのか、両方見たほうが良いのかなど
公開当時は若干話題になった記憶があるが、
かなりハードルは高い作品だ。
制作費も2本同時制作ということで厳しかったのだろう、
映像的な部分もやや厳しく、
アニメーションとしての面白みもかなり薄い。
昨今のアニメ映画は予算もあがり作画のクォリティも上がっているだけに、
映像的な見ごたえの薄さがあるのは最近のアニメ映画としては
やや厳しいところだ。
パラレルシフト
この作品は「パラレルワールド」の要素がある作品だ。
この世界はパラレルワールドの存在が明確なものになり、
そんな並行世界などを研究する虚質科学というものも存在している。
そんな世界で主人公は7歳という年齢で決断をする。
並行世界に行くことのできる機械である「IPカプセル」に
出会ったばかりのヒロインに放り込まれ、
彼は死んでしまった犬が生きている世界にパラレル・シフトする
というところから物語が動き出す。
パラレルシフトした世界では死んでしまった犬は生きている、
だが、そのかわり犬を飼っていた彼のおじいさんは無くなっている。
いくら並行世界に行ったとしても、都合のいい現実などありえない。
何かを手に入れれば何かを失う。
このパラレルシフトがややこしさを生んでいる部分がある。
パラレルシフトはあくまで並行世界の自分と
一時的に意識を入れ替えるだけのものだ。
タイムトラベルではなく「もしもボックス」のようなものだ。
このあたりの設定の説明があまりなく、
見る人のSFの知識によって理解できるか理解できないかが
大きく分かれそうなところがある。
君の名は
犬がなくなったことで落ち込んでいた主人公が出会ったのがヒロインだ。
虚質科学の研究をしている母がいるものの、父とは離婚しており、
ヒロインは父と母が離婚していない世界を求めている。
そんな出会いとそれぞれの事情が描かれたかと思えば
主題歌を流しながらのダイジェストだ(苦笑)
「君の名は」が流行ったあとにこの主題歌を流しながらの
ダイジェストシーンをやる作品は多く現れたが、
大本の新海誠監督は最新作ですらやらなくなってしまった。
それほど使い古された手法だ。
それなのに、この作品は2022年になってもまだやっている。
映画を見ながら思わず「またこれかよ…」と呟いてしまったのは言うまでもない。
さんざんこすり倒された青春SFアニメ映画における手法を今更みせられる。
だが、そんなダイジェストの中の時間の変化が顕著だ。
あっという間に主人公たちは成長し、高校生になっている。
このダイジェストの間に幼少期がサクッと描かれ、
2人は幼馴染のような関係性になっている。
原作は君の名はよりも前に生まれた作品なのだが、
制作側が君の名はに影響されたことがもろわかりだ。
青春SF要素のあるアニメ映画はこういう演出で、
こういうふうに作れば良いんでしょという考えが透けて見える。
再婚
そんな二人の両親が再婚してしまう。
幼馴染でお互いに好意を持っていた主人公とヒロイン、
だが、互いの両親の再婚によってそんな関係性が許されなくなる。
そんな2人の「逃避行」が始まる。駆け落ちだ。
何十年前の作品なんだといいたくなるような古臭い展開だ。
だが、子供である2人はそんなことを続けるのは無理だ。
2人は「逃げる場所」として並行世界を求める。
お互いの両親が再婚していない世界、
そんな並行世界に2人はパラレルシフトする。
しかし、パラレルシフトした先でヒロインは事故にあってしまう。
何かを手に入れようとすれば何かを失う。
映画の冒頭で同じ結末にたどり着いているがゆえに、
あまり意外性はない。
映画の冒頭と違うのはパラレルシフトした先で
死んでしまったり事故にあった場合、元の世界に戻っても
ヒロインの意識が戻らなくなってしまう。
パラレルシフトは意識の並行世界への転送だ、
そんな意識にパラレルシフト先で何らかの問題があった場合、
元の世界に普通に戻れなくなる。
このあたりの概念自体は理解できるのだが、
ヒロインが「幽霊」として現れるため色々とややこしくなってしまう。
声優
この作品の主人公とヒロインを演じているのはいわゆる芸能人声優だ。
ヒロインを演じている橋本愛さんの演技は
そこまで気にならないのだが、
問題は主人公を演じている宮沢氷魚さんだ。
明らかに声での演技力が足りていない。
特に感情的な声を上げるシーンや声を荒げるシーンなどで
その演技力不足を感じてしまう部分があり、
そのせいでストーリーに集中できないところがある。
思わず「下手だな」と素直な感想がこぼれ出てしまうほどだ。
幽霊となってしまったヒロインを助けるために、
主人公はパラレルシフトの実験を繰り返しながら、
ヒロインをどうにか助けようと努力しているが、
何年もの月日がたってしまう。
そして彼女の脳死状態の肉体も鼓動を止めてしまう。
そんな淡々とした会話劇が続き、
アニメーションとしての面白みもなく、
虚数空間やIP、虚質、タイムシフトなど専門用語オンパレードの会話が
ひたすら続いてしまう。
その結果、1本の映画としての見ごたえがあまりにもなさすぎる。
ヒロインが幽霊になってしまって、
彼女を助ける糸口を見つけるまで30分くらいの尺を使ってしまう。
またダイジェストかよ!!
序盤でヒロインが幽霊になってしまって
主人公がその手段を見つける。
この過程の描写までもグダグダだったのだが、
終盤、驚くべき展開がある。
「ダイジェスト」だ(苦笑)
別の並行世界での主人公の幼少期からのエピソードが
いきなり描かれだし、並行世界でのヒロインとの
エピソードがこの映画の序盤でやったようなダイジェストでまた描かれる。
ようやくヒロインを助ける手段を見つけだして
終盤の盛り上がりになるのか?とおもいきや、
センスの一切ないダイジェストでそんな盛り上がりの腰を折る。
本当にセンスのない映画だ。
並行世界での出来事をダイジェストで見せられても
それが面白いわけでもなく、
淡々とどうでもいい主題歌が流れる中でどうでもいいダイジェストが描かれる。
ヒロインと普通に出会い、結婚し、子供が生まれ、年老いる。
作品を2本に分けるという大胆な手法をとったがゆえに、
その大胆な手法を貫き通しきれずに、
日和ってダイジェストを入れたのかもしれないが、
それが無意味なものになっている。
この映画の世界線の主人公もまた年老いている。
主人公とヒロインが出会ってしまったからこそ事故が起きた。
だからこそ事故が起きていない世界線にうつれば良い。
だが、その代償に主人公はヒロインと同じ状態になってしまう。
ヒロインを救うために自分を犠牲にする。
やりたいことはわかるものの、ストーリーの盛り上がらなさ、
ダイジェストの多用、主人公を演じる方の演技力のなさのせいで
作品が台無しになってしまっているような作品だった。
総評:芸能人声優を使うな
全体的に見てセンスを感じない作品だ。
2本作るということで予算が少なかったかもしれないが、
作画のクォリティは劇場アニメレベルではなく、
アニメーションという表現での面白さを殆ど感じない。
これが10年か20年くらい前の作品といわれても
納得できるほどキャラデザや作画、アニメーションに古臭さを感じる。
ストーリーも盛り上がらない。
並行世界というややかこしい概念のせいで
会話劇を中心とした物語なのに、その会話が専門用語だらけでつまらず、
ヒロインが幽霊状態になって30分くらいろくに話が進まない。
100分ほどの尺しかないのだが、そこに2回もダイジェストを挟み込む。
君の名はで一気に流行った主題歌を流しながらのダイジェストという
手法自体にも古臭さを感じるのに、
そんな古臭いダイジェストを2回もやってしまう。
2本分けてしまったがゆえにダイジェストを挟まなければ
ならなくなったのはわかるが、
終盤の盛り上がりの前にまたダイジェストを見せられるのは
厳しい部分があり、1本の映画としても消化不良に終わってしまう。
会話劇が中心なのに主人公を演じている方が
いわゆる芸能人声優であり、演技力はかなり厳しい。
そのせいでこの作品への没入感を随所随所の
感情をあらわにするような盛り上がるシーンで消し去られてしまい、
この作品の面白さを素直に味わうことができなかった。
せめて、もう少し演技力のある芸能人声優か、
きちんとした声優さんだったらならば、
この作品の面白さを素直に感じられた部分もあったかもしれないだけに
芸能人声優という最大のリスクがこの作品の面白さを
感じにくくしてしまっているように感じる作品だった。
個人的な感想:もう一本
これをみたあとに僕が愛したすべての君へも見るのだが、
どうなるだろうか…
もしかしたら、2本見ることで1本目のこの作品の評価も
多少変わることはあるかもしれないが、
ただ、声優が同じ時点で色々と厳しいかもしれない…
この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください