評価 ★★★☆☆(59点) 全8話
あらすじ 鬼殺隊最強の剣士《柱》と鬼殺隊士たち。来たる鬼舞辻無惨との決戦に向け、《柱稽古》開幕。それぞれの想いを胸に、炭治郎と柱たちの新たなる物語が幕を開ける。引用- Wikipedia
水増しの刃
本作品は鬼滅の刃の4期。
監督、制作ともに1期から変更はなく、
監督は外崎春雄、制作はUfotable
原作1巻分
本作品はタイトルからも分かる通り、
「柱稽古編」を描いている。
これまでの鬼滅の刃は基本的に竈門炭治郎を主人公に、
妹を鬼にされた彼が鬼に挑み戦い続ける日々を描いていた。
しかし、今作はいわゆる「修行パート」だ。
過去にも修行するシーンが描かれることはあったが、
今作の場合はほぼ8割くらい修行をしている。
3期では禰豆子が太陽を克服し、
それを知った無惨が彼女を狙っているという状況だ。
無惨が来る前に戦力アップがてらに修行をしているのだが、
この話は原作ではわずか1巻ほどしか描かれては居ない。
通常アニメの場合、原作の漫画1巻あたり2話ないし3話で
描かれる場合が多い。1巻あたり1話ということもあるが、
大抵はこのくらいのペースで原作のエピソードを進めていく。
そんな原作では1巻分しかないエピソードを
4期の全8話、初回と最終話は1時間SPでお届けされる
この作品をどうするか。
水増しである(苦笑)
1話の段階から原作では描かれていないシーンが
ふんだんに含まれており、特に原作の中ではほとんど描かれなかった
柱達の戦闘シーンがこれでもかと増やされている。
柱
一部の柱を除き、ここまででほとんど出番のない柱も多い。
岩柱や蛇柱、風柱など出てきてはいるが戦闘シーンのないキャラも多い。
本作では彼ら、特に風柱と蛇柱は1話では任務に赴くシーンも描かれ、
更には模擬戦という形で戦うシーンもかなり描かれている。
いわゆる修行シーンが1クールに渡って描かれるため、
原作では彼らの模擬戦どころか戦闘シーンすらないのだが、
アニメではアニメオリジナルのシーンとして、
彼らの掘り下げを後押ししている。
ここまで掘り下げも出番も少なかった風柱や蛇柱や岩柱。
彼らと主人公である竈門炭治郎を修行という形で絡めることで、
それが同時に彼らの掘り下げにもなっている。
日常シーンもかなり多くなっており、閑話休題的な話が多い。
それが同時に柱たちの掘り下げになっており、
令和のアニメというよりは、もし鬼滅の刃が平成初期に
平日の夕方で1年通してのアニメだったらこうなっていただろうなと
感じるようなエピソードの数々だ。
ここ4,5年はアニメオリジナル展開やアニオリストーリー、
いわゆる原作にはなかった話や原作改変というのが
嫌われる傾向にある。
しかし、90年代のジャンプアニメはアニオリ展開は
当たり前のように存在した。
原作に追いつかないようにアニオリエピソードで1クールや
2クール稼いだり、映画ではオリキャラが当たり前のように出てくる。
それが当たり前だったのが平成という時代だ。
鬼滅の刃は平成から令和にかけて連載された作品だが、
平成と令和、どちらも股にかけた作品とも言える。
アニメ自体はクールごとに分かれて1年ほどの感覚をあけて
放送される令和スタイルではあるものの、
このアニオリエピソードの数々はどこか平成のテイストを感じてしまう。
前作の刀鍛冶の里編は回想シーン概要に長く辟易した部分があったが、
今作では回想シーンは在りつつも、
アニオリシーンで原作のエピソードを膨らましつつ補完している。
それが同時に原作では掘り下げ不足、
日常シーン不足だった柱たちの掘り下げにもなっているとも言える。
特に「風柱」はおはぎが好きというエピソードまで追加されることで
どこか可愛げすら感じてしまうキャラクターに仕上がっている。
作画
そんなある種、日常回だらけな1クールではあるものの、
作画の凄さは軍を抜いている。
1話の戦闘シーンは当たり前のようにすごいのはもちろんのことだが、
ちょっとしたシーンですらUfotableという制作会社の
実力を見せつけるようなクォリティだ。
例えば「富雄義勇」が自宅の稽古場で正座をしているという
シーンが有る、本当に何気ないシーンだ。
しかし、そんなシーンですら「磨き上げられた床」に
きちんと冨岡義勇が写っている(苦笑)
別にただの木の床だ、鏡でもないのだから反射させる必要はない。
だが、Ufotableのこだわりゆえに床が反射するほど
磨き上げられてしまっている。
そんなちょっとしたシーンですらえげつない作画を見せつけてくる。
竈門炭治郎が冨岡義勇のもとへいくときに通る道、
そんな道ですら贅沢に背景にCGを使いつつ、
グリグリと動かしまくりなカメラワークでたっぷりと見せつけてくる。
ただの道なのに(苦笑)
もはや拘る必要がない細部までこだわりまくって
描かれているのが鬼滅の刃という作品だ。
そのこだわりに感嘆するというよりは笑いすら起きてしまう。
無惨様登場
1番笑ってしまったのは鬼舞辻無惨の登場シーンだ。
禰豆子を探し、鬼殺隊を根絶やしにするために目を放ち、
その中で「お館様」がいる場所を見つけ鬼舞辻無惨は
単身で乗り込んでくる。
その乗り込んでくるシーンの水増しっぷりといったらない。
もはや4期で1番気合が入ってると行ってもいいくらい、
ゆっくりと1歩1歩確実に足の指の先からかかとまで
踏みしめるシーンを描くような歩行シーン。
これほど1歩1歩に緊張感を持ったのは
アルプスの少女ハイジのクララくらいだろう。
鬼舞辻無惨が歩いて近づいてくる、
たったそれだけのシーンをありとあらゆるエフェクトを混ぜつつ、
ありとあらゆるアングルでお届けされる(笑)
無惨様がお館様の屋敷の扉の前から歩き始め、
石畳を踏みしめ、なぜか門が自然にあき、
広い屋敷の中をED曲が鳴る中でゆっくりと歩いてくる。
5分以上も7話の時点で尺を使っているのだが、
8話になると少し時が戻り、また無惨様が歩き出す(笑)
スタッフクレジットなどを含めると10分ほど
無惨様が歩いているだけのシーンがお届けされる。
これで成り立つのが鬼滅の刃という作品であり、
それを成り立たせてしまうのがUfotableだ。
俯瞰、アップ、ローアングル、サイド、バック、真正面、
ありとあらゆるアングルと角度で無惨様がただ歩いているだけの
シーンをCGによるエフェクトたっぷりで、
撮影効果マシマシで描かれている。
はっきり言えば尺稼ぎでしか無い。
しかし、そんな尺稼ぎですらアニメーションとして
楽しませようとしているのがこの作品だ。
無限城
特に最終話の作画は凄まじい。
お館様が無惨の襲撃にあったとしって柱と
竈門炭治郎が現場に駆けつける、
だが、お館様は自分と彼の家族もろとも自爆する。
そんな爆破のシーンのCGのクォリティは素晴らしく、
序盤から中盤までが日常シーンの繰り返しという名の
修行パートだっただけに最終話の爽快感が凄まじいものになっている。
そこからの戦闘シーン、岩柱のハンマー攻撃の立体感を出すための
カメラワークはUfotableらしさ全開であり、
更にその直後の「無限城」への突入シーンはテレビ画面で見ていても
酔ってしまうほどの浮遊感に溢れている。
物語としては最終章に至るまでの話でしかない、
だが、無限城が、最終章が思わずみたくなるつなぎとしては
素晴らしいものになっており、今後映画化される3部作が
一体どうなるのか気になるところだ。
総評:これぞ本気度120%の尺稼ぎ
全体的に見て尺稼ぎ、水増し感は否めない作品だ。
原作では1巻にもみたない作品を全8話にするにはどうすればいいか、
それを制作側も最大限に考え、最大限に面白いものにしようと思った結果、
本気度120%の作品が生まれている。
原作のちょっとしたシーンを最大限に膨らませ、
原作では描かれなかった、掘り下げきれなかったキャラのエピソードを追加し、
本作の最大の敵、ラスボスとも言える無惨様の登場シーンを
笑ってしまうほどの尺で描いている。
鬼滅の刃だからこそ、Ufotableだからこそ、
この尺稼ぎとしか言いようのないストーリー構成を
1つの作品として成立させてしまっている。
かなりの力技感はあるものの、作画で、演出で、カメラワークで、
キャラクター愛で批判の声を黙らせてしまうような作品だ。
無限城編を3部作の映画でやると決まったからこその、
4期のストーリー構成ではある。
これで無限城編もTVでやるとなれば、
本作は半分くらいの尺でサクッと描かれていただろう。
だが、あえてそうせずに無限城を三部作の映画にしてしまう。
それが吉と出るか凶と出るかはわからない。
しかし、元々鬼滅の刃はTVでみるにはもったいないほどの作品だ。
だからこそ最初から劇場版で描かれる無限編がどうなるのか、
純粋に気になってしまう作品だ。
個人的な感想:新郎新婦ご入場かな?
無惨様の登場シーンはちょっと笑ってしまうほどの尺稼ぎっぷりだ。
ネット上ではプロレスラーの入場シーンだの、
新婦新郎ご入場シーンだのと色々と言われていたが、
それ以上の尺をかけての入場だ(笑)
間で1回トレイに行ったのだがそれでも無惨様は
お館様のもとにたどり着いていなかった。
本来なら尺稼ぎは欠点ではあるものの、
その欠点部分すらたっぷりとお届けすることで面白さに変えている…
のかもしれない(笑)
無限城編がいったいどんなクォリティになるのか、
そして鬼滅の刃という作品はアニメでいつ完結するのか、
今後が気になる4期だった。
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