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「鬼滅の刃 刀鍛冶の里編」レビュー

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評価 ★★★★☆(60点) 全11話
https://www.youtube.com/watch?v=GnjserPtgyI

あらすじ 炭治郎が向かう先は「刀鍛冶の里」。鬼殺隊最強の剣士《柱》である、霞柱・時透無一郎と恋柱・甘露寺蜜璃との再会、忍びよる鬼の影。炭治郎たちの新たな戦いが始まる。引用- Wikipedia

回想の刃

本作品は鬼滅の刃の3期。
監督、制作ともに1期から変更はない。

新たなる旅路

基本的にストーリーは2期から続いている。
遊郭編で無限列車編ではなし得なかった
「上弦の鬼」をようやく倒すことはできたものの、
柱の一人は怪我により引退、炭治郎たちもかなり傷ついてしまって満身創痍だ。

そんな中で「鬼」たちも動き出している。
鬼殺隊が鬼と戦うための要ともいえる「刀」、
そんな刀を作っている刀鍛冶の里が彼らに見つかってしまう。
炭治郎もまた刀鍛冶の里へ向かうというところから物語が始まる。

鬼滅の刃はそれぞれ立志編、無限列車編、遊郭編と
タイトルが付いており、1期、映画、2期と別れているが、
それぞれで物語の起承転結がきちんとついている。

続きものではあるものの、1つの章の中で
きちんと起承転結が作られているからこそのみやすさと、
1本の作品をみた満足感を感じられるようになっている。

立志編は鬼とであい、主人公である炭治郎に目的が生まれ、
その目的のために旅立ち、努力し、成長し、戦っている。
無限列車編はそんな中で己の無力さを感じる物語になっており、
遊郭編はそんな無念から、完璧ではないものの上弦の鬼の討伐という
展開に繋がっている。

そんな中での刀鍛冶の里編だ。
1章1章で炭治郎という主人公の変化と成長が
丁寧に描かれており、それが見る側にもしっかりと伝わる。
それが鬼滅の刃という作品の魅力の1つだろう。

柱二人

炭治郎が向かった刀鍛冶の里には柱が二人いる。
これまで1期で全員に会ったあとは、
無限列車編では煉獄杏寿郎と、遊郭編では宇髄天元、
それぞれと共闘して鬼と戦ってきた。

今作ではそれが二人だ。
恋柱と霞柱、一人は女性、一人は少年と、
正反対とも言える柱だ。
恋柱である甘露寺蜜璃は炭治郎たちに優しく接し、
霞柱である時透無一郎は炭治郎に興味すら湧いていない様子だ。

更にそこに炭治郎の同期である「不死川 玄弥」もいる。
3期はシンプルに「キャラクター」が多い印象だ。
恋柱も霞柱も不死川 玄弥もこれまで登場していたキャラクターではあるものの、
がっつりとした掘り下げ回や出番はなく、
3期は彼らの掘り下げと出番という印象がかなり強い。

しかも2期までは一緒に戦っていた
善逸や伊之助とは今回は別行動であり、彼らの出番は殆どない。
ストレートに行ってしまうと、1クールで
3人の新キャラクターが出たことで
鬼滅の刃の欠点がやや目立ってしまった印象だ。

回想

これまでは1期は2クールと長丁場であったものの、
無限列車編や遊郭編は、柱一人がメインの新キャラで、
そこに新しい鬼が来て、柱や鬼の掘り下げや回想が描かれていた。

しかし今回は3人、そこにさらに二人の鬼がやってくる。
5人もどばっと1クールの中で出てきてる上に
鬼はともかく、人間側の掘り下げや紹介的なものを行わないといけない
キャラクターが3人もいる。

そのせいもあってストーリー進行が
これまでと比べるとかなり遅い印象だ。
特に中盤以降はそれを顕著に感じる。

霞柱である時透無一郎の過去、記憶を失った彼に
なにがあったのか?というのを戦闘中に回想をはさんで描いている。
これ自体は鬼滅の刃がこれまでやってきたことではあるものの、
それが長い上に細切れになってる部分がある。

回想がはじまって終わり、戦闘シーンが再開されたかとおもえば、
また回想シーンが始まる。
物語が「細切れ」で描かれるような感覚になってしまっており、
同時に戦闘シーンも腰を折られてしまう。

終盤になると短めではあるものの恋柱の過去や、
恋柱よりも短いが鬼たちの過去も描かれる。
「鬼たちの過去」がやられる寸前に描かれることは多かったものの、
今回は柱の過去が二人分も描かれており、
それが「だらー」っと描かれてしまうせいも合ってテンポ感がかなり崩れている。

挙句の果てに最終話は「無惨様」の回想シーンまである(笑)
ある意味彼の自業自得な過去は悲しい過去というよりも、
ドジな過去に見えてしまうものの、
彼らしい過去といえるかもしれない。

面倒くさい敵

敵自体もかなり面倒くさい敵だ。
遊郭編の敵は「二人の首を同時に切らないと倒せない」という
シンプルかつわかりやすいものであり、
それが物語の盛り上がりに繋がっていた。

しかし、今回は相当面倒くさい鬼が二人もいる。
一人は壺の中に入っている鬼で切ろうとすると、
どこかに設置されたつぼに高速で移動しながら、
遠距離攻撃を仕掛けてくる上に、搦手のような技を使ってくる。

毒だけならばともかく「相手を見時に閉じ込める」という
呼吸が重要な剣士にとっては天敵だ。
このつぼの敵だけならばまだよかったのだが、
もう一人が更に面倒くさい。

まずクビを切ると分裂する。
むしろクビを切らせて分裂してからが本番といわんばかりに、
切れば切るほど鬼は増えていき、それぞれがそれぞれの技を使う。
雷を落としたり、強風で相手を吹き飛ばしたり、大声で鼓膜を破ったり。
色々な敵がドバっと出てくる。

単純に鬼の数が増えることで苦戦させられている印象だ。
しかしながら、この切れば切るほど増える鬼の魅力はかなりあり、
多種多様な攻撃をどう攻略するか?という戦闘方法は面白く、
共闘が生きてくる。

しかも切れば切るほど有名な声優が出てくる(笑)
古川登志夫、梅原裕一郎、 石川界人、武内駿輔、
極めつけは山寺宏一だ。
どこぞの男性アイドルアニメでも始まりそうなほどの豪華さには笑うしか無い。

しかし、そんな鬼を倒す方法も面倒くさい。
ネタバレになるが首を切られて増えるのは4体までだ。
だが、本体は別におり、物凄く小さくて早くて硬い。
分裂した4体の鬼の首を切ったところで、
本体を倒さなければ意味がない。

それゆえに本体の鬼が逃げまくる。
この「逃げる」パートが異様に長く、テンポが崩れている。
本体を見つけ、逃げる鬼のクビを切ろうとするものの、
クビがカタすぎて切れず、炭治郎が切ろうとするもののまた逃げられる。

捕まりそうで捕まらない追いかけっ子が中盤からずっとつづいいてしまい、
終盤でようやく本体を倒した!と思ったら、
更に本体が逃げて…という展開になってしまい、
かなりヤキモキさせられる。

場面転換

場面転換もかなり多い。
最初は炭治郎と霞柱が一緒に戦っているのだが、
途中で霞柱は敵の風の攻撃で遠くに飛ばされ、別の鬼と戦わされる。
恋柱も刀鍛冶の里に居るせいもあって、途中参加だ。

そのせいもあって「一方その頃」といわんばかりに、
戦闘が途中なのに別の場所での戦闘に場面が転換されたりすることが多く、
戦闘シーンの面白さや熱量がその度に途切れてしまう印象だ。
そこに更に前述した回想シーンも挟まれる。

物語の面白さを、戦闘シーンの面白さを素直に味わいたいのに、
素直に味わせない!といわんばかりに、
食べている料理とは別の料理が口に運ばれてしまうような
なんともいえない食事をさせられてるような気分になってしまう。

1クールにするための「引き伸ばし」のようなものを
随所随所で感じてしまうのは本当に残念でならない。
「刀鍛冶の里」編という区切りを作るためなのは分かるものの、
本来ならば10話くらいで描けそうな内容を全11話、
初回と最終話は1時間スペシャル故に実質13話と考えると
3話分ほど尺稼ぎしてるような印象だ。

戦闘シーン

それでも戦闘シーンのクォリティはさすがとしか言いようがない。
鬼滅の刃らしいエフェクトの数々は相変わらずであり、
そこに劇場版のような「カメラワーク」がかなり増えている。
奥行きを感じさせるようなシーンやグリグリと動かすカメラワークが
更に増えており、映像の立体感というのが3期で更に強まっている。

それを如実に感じるのが1話で出てきた無限城のシーンだ。
もう気持ち悪いくらいに無限城が描かれており、
最終話の「草原」のシーンなど、TVアニメでは鬼滅の刃くらいでしか
描けない!と断言できるほどのえぐいほどのクォリティで描かれている。

遊郭編に比べると「派手さ」という意味ではやや薄い部分がある。
柱の霞柱と恋柱の技の問題もあるが、
特に霞柱はそのなのとおり「霞」を出しながら戦う感じで、
あまり派手さはない。

だが、恋柱はかなり独特だ。
彼女だけ「女児アニメ」のようなノリだ(笑)
まるでロープか新体操のリボンのように刀をたなびかせながら戦う姿、
そして彼女が戦うときだけどこぞの魔法少女のような曲がかかり、
バックには月まで描かれている。

月に変わってお仕置きよ!とまではいわないものの、
恋柱だけ演出をかえており、彼女の強烈な強さとの
ギャップが戦闘シーンを盛り上げていた。

CG

3期で感じたのはCGのえぐさだ。
無限列車編では触手の描き方がザ・Ufotable!という感じで描かれており、
2期では戦闘シーンでグリグリとCGを見せつけられたが、
3期ではそれが気持ち悪いほどてんこ盛りになっている。

今回の鬼の一人は「魚」や「タコ」などを出してくるのだが、
その魚のクォリティがえぐい。
気持ち悪いほどに「ぷるぷる」としたリアルな魚をCGで描くことで
不気味さがましており、それが大量に向かってきて
刀鍛冶の里の人々を襲っている。

戦闘シーンでそんなCGのクォリティの高さを感じさせ、
さりげないシーンでもこだわりがエグい。
すでに倒された魚の「眼」の描き方や、
恋柱の回想でちらっと映るだけの庭の金魚でさえ、
普通のTVアニメではありえないクォリティで描かれている。

カメラワークもそうだが、ところどころ
TVアニメというよりは劇場アニメとして作っている感じが強く、
刀鍛冶の里編放送前に遊郭編の総集編+刀鍛冶の里1話で
映画をやっていたことを考えると、
同じことをやるんだろうなと邪推してしまう部分もある。

無念を晴らせ

テンポ感はかなり悪いもののストーリー自体は悪くない。
3期で特に感じたことだが
「鬼滅の刃」という作品は登場人物が「無念を晴らす」作品だ。

炭治郎は家族の仇である無惨を倒す、
家族の無念を晴らすために戦っており、
そんな旅の道中で様々な人と出会い、新たな無念もそこに生まれている。

無限列車編では「煉獄杏寿郎」が亡くなり、
遊郭編で「宇髄天元」が死亡こそしなかったものの戦えなくなった。
「守れなかった」という無念が彼の中にはある。
そんな彼が刀鍛冶の里では多くのものを守り切っている。

二人の柱、刀鍛冶の里のものたち、仲間、禰豆子。
今回、メインキャラクターに「犠牲者」は居ない。
炭治郎の成長と変化、己の無念を晴らしながら戦う姿はまさに主人公だ。

炭治郎だけでなく、多くのものが無念を抱えている。
鬼たちもまたそれぞれの「無念」を抱え戦っている。
鬼滅の刃はそんな作品なんだなと実感させられる3期だった。

総評:最高の映像と残念なテンポ感

全体的にみて映像のクォリティは更に上がっている印象だ。
2期以上に劇場アニメとして公開することを意識したような
カメラワークの数々は、立体感を感じさせる戦闘シーンを産んでおり、
Ufotableらしいエフェクトの数々が戦闘を盛り上げ、
そこにクォリティが更に上がったCGが加わることで
えげつないほどの作画になっている。

ただ同時にストーリーのテンポ感はかなり悪い。
2期までと比べると、1章に出てくるキャラクターが多いせいもあって
彼らの掘り下げや過去回想を挟まなくてはならず、
それが細切れに挟まれることで作品全体のテンポが悪くなっている。

そこにさらに敵の面倒臭さも加わっている。
逃げ回る敵というのが形は違えど同時に現れてしまったことで、
なかなか決着がつかず「正攻法」で相対するシーンが
中盤以降は減ってしまっているせいで、
2期のような戦闘シーンの盛り上がりが生まれていない。

1クールという縛りがあるからこそ仕方ない部分もあり、
原作があるからこそ大胆なカットや改変はできないという
制限もあるからかもしれないが、
3期は回想の多さやテンポの悪さという鬼滅の刃という
作品自体が持つ欠点が目立ってしまった印象だった。

それでも作画のクォリティは本当に素晴らしく、
描かれているストーリー自体は王道のものだ。
すでに4期の制作も決定しており、
完結までこのままアニメ化されることを期待したい。

個人的な感想:恋柱・甘露寺蜜璃

彼女だけ本当にノリが違うのが笑ってしまった。
花澤香菜さんの演技のせいもあるのかもしれないが、
どこぞの魔法少女やプリキュアなんじゃないか?と思うような
曲と演出の数々、戦い方そのものが女児アニメに見えて仕方ない。

4期では更に多くの柱が出てくるだけに、
彼らがどんな活躍をするのか、楽しみなところだ。
もちろん、そのまえにまた特別劇場版が上映されるだろうが…

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