評価 ★☆☆☆☆(45点) 全12話
https://www.youtube.com/watch?v=0hMz1J6EWWc
あらすじ 全知全能と言われる謎の神様「ミタマ」を崇拝する教団の教祖の息子として生まれた卜部征人引用- Wikipedia
君は完璧で究極の低予算
原作は月刊ヒーローズで連載中の漫画作品。
監督は稲葉友紀、制作はstudioぱれっと
筋肉
1話冒頭から非常にむさ苦しい。
新興宗教団体の教祖の息子として生まれてしまった主人公は
父により「儀式」と称して海の中に沈められる。
その新興宗教団体のむさくるしさはやばい(笑)
神ではなく筋肉を進行しているのでは?と思うほど
皆が皆、マッチョでハゲだ。
そんな集団に儀式として海に沈められた主人公は
目を覚ますと「異世界」に転移しているというところから物語が始まる。
いわゆる異世界転移ものだが怒涛の展開で物語が始まり、
主人公もみている側もわからぬまま、
主人公は股間のレバーを握られている。
1話冒頭から情報量が非常に多く、
その処理にみている側が追われてしまう。
主人公も状況把握能力は高く、
流行りのなろう系のような状況だと理解したはいいものの、
この世界には「魔法」も「ステータス」も「レベル」も「ギルド」もない。
どちらかといえば本当の中性ヨーロッパ的な時代にタイムスリップしたような
感覚に近いものがある。
作画
しかしながら1話から作画の低予算ぶりを感じてしまう。
妙に画面の輝度がくらく、みているパソコンのモニターの設定が
おかしくなったのでは?と感じるほど暗い色合いが使われている。
それだけならまだしも、キャラクターが喋っている構図が
アニメというよりは「アドベンチャーゲーム」のようになってしまっている。
背景の絵の上にキャラクターを重ねて一人だけ画面に表示し、
口以外は一切動かないような会話のシーンだったりが非常に多い。
極力作画枚数を減らす試みが多く、演出面でもそれを感じる。
例えば主人公が村の仕事を手伝う中で果物を狩るのだが、
その狩っていることを表すために、
画面のズームと引きを細かく繰り返したり、
物凄く簡易な「ドット絵」を使って通常の作画の枚数を減らしている。
異様にアップとカットも多く、1枚絵と1枚絵を繋げながら
シーンを構成しているような感覚だ。
わかりやすいのは「害獣」の描写だ。
異世界におけるモンスターのようなものなのだが、
この「害獣」はフルCGで描かれており、
人間の作画や背景から明らかに浮いている存在になっている。
最近は低予算な作品でモンスターを描写する際にCGを
使っている作品も多いが、この作品も類に漏れずだ。
CGのクォリティも低く、戦闘シーンのようなものすら
ドット絵でごまかしたりもする。
ヒロインの一人が狐のようなペットをかっているのだが、
このペットですらフルCGで描かれており、
普通の作画の中に異質なフルCGで描かれた動物が混じっているという
違和感がとんでもなく生まれている。
作画の枚数を極力増やさないような演出が多々見られており、
1話からこの作品は大丈夫なのだろうか?と
不安になってしまう作品だ。
ちなみに2話でわかるが「OP映像」も「OP映像」ではなく、
本編のシーンを流用したもので構成している。
OP映像を新規で描く余裕すらないレベルの
恐ろしいまでの低予算だ。
序盤こそそんな不安に感じる作画なのだが、4話で覚醒する。
あきらかに「実写」の写真かなにかを加工しただけの
農作業中のシーンだ。本来は実写の農作業中の人間の顔が
映っているのだろう、だが、この作品はそんな人間の顔に
無理やり作中のキャラの顔をあてこんでいる(笑)
低予算の中での苦肉の策が、
この作品だからこその不思議な、シュールともいえる
魅力に繋がっている部分がある。
神
主人公は元の世界では「神」や「宗教」といった
概念に振り回されてきた。
そんな概念に嫌気が差している中で訪れたこの異世界には
「神」の概念そのものが存在しない。
生活に必要な知識や管理は「皇国」が行っており、
そんな「皇国」には「終生」という制度が存在する。
国の人員を整理するための制度であり、
一定の年齢以上の国民を強制的に自殺させることによって国を管理している。
後期高齢者が増えすぎた日本を皮肉るような制度とも言える。
中世ヨーロッパ的な時代で、レベルも魔法も神も存在しない世界だからこそ、
「管理」は必要なのだろう。
リアリズム、現実的な考えによる管理社会だ。
「なろう系」な異世界はゲーム的な物が多いが、
この作品はきちんと異世界の文化や設定を練っており、
その世界に訪れた別世界の主人公が、そんな異世界の文化に抗おうとする。
作画のレベルこそ低いものの、シンプルに先が気になる展開だ。
「終生」を強制される世界で、自分に良くしてくれて、
仲良くしてくれた友達のような存在が無理やり「終生」を強いられる。
よそ者だからこそ、異端ともいえる存在だからこそ、
凝り固まった異世界の人間の考えを否定する。
しかし、主人公に否定を貫き通すだけの力はない。
魔法もレベルも、チートも存在しない、そんな世界で
主人公の通りを貫き通すだけの力はない。
だが、彼には否定していたはずの「神」に祈る。
今際の際の祈りが通じた結果、「神」がこの異世界に舞い降り、
奇跡を見せてくれる。
ミタマ
主人公が呼んだ「ミタマ」という神さまは前の世界の神だ。
前の世界で主人公の父親が作り上げた新興宗教、
そんな新興宗教が信じていた「神」そのものだ。
実在しなかったと思っていた神が存在し、
しかも主人公に力を貸してくれる。
だが「神」の力はイコール、信者の多さだ。
信者が多ければ多いほど強い力を発揮できるが、
神という概念そのものがない異世界では信者は居ない。
そもそも主人公すら信者ではない(笑)
神の存在を目の前にしても彼は神を否定している。
彼は前世では逃げ続けていた。
父親を拒むわけでも受け入れるわけでもなく、
流されるまま生きてきた結果、「死」を迎えた。
だが、この世界では違う。
そんな自分が嫌だからこそ、前世のようにはしたくないからこそ、
彼は異世界において「神」と「宗教」を作り出そうとしている。
神の奇跡を実際に見たからこそ、自分に良くしてくれた村の人を守るために、
彼は拒んでいた「父」と同じようなことを異世界で成そうとしている。
神を否定しつつも神を利用する。
この「矛盾」をはらんでいるのが主人公であり、
そこが主人公の魅力でもある。
神も宗教的概念もない世界で、
神と宗教を広めるにはどうすればいいのか?
作画は悪いものの、シンプルにストーリーがきになってくる。
信心
人が神を信じ、宗教というものに没入するのは何なのか。
それは「奇跡」の存在だ。
自分しか知らないような悩みを見透かされ、その悩みを解決し、
ときには現代医学では治らないような病を直し、人の命すら蘇らせる。
その「奇跡」をみせることで「神の存在」を信じ、宗教に没入する
信心が生まれる。
この流れをこの作品は丁寧に描いている。
「ミタマ」の力を信者に見せ、ときに「詐欺的」なテクニックで、
ときには前世の知識を利用し、人の心を主人公が掌握することによって
信心のない異世界人に信心を産む。
最初はミタマ様の可愛らしさで信者になった村人しか居なかったが、
話が進めば進むほど徐々に信者は増えていく。
ときには「敵」だったはずのキャラクターですら信者に仕立て上げる。
「皇国」に自らのすべてを捧げ、終生を手伝ってきた騎士は
ミタマ様に蘇らせてもらうが、その際に男性から女性に変化してしまう(笑)
彼、いや彼女にとっては信じるのが「神」か「皇国」の違いでしか無い。
この世界に「神」は存在しない。
だが、その神のかわりに説明不可能な技術や力を提供しているのが
「皇帝」だ。
皇帝とはなんなのか、皇帝が提供する力とはなんなのか。
真実
この作品は異様にストーリー展開が早い。
余計な日常パートなどなく、
メインストーリーだけを淡々と進めつつ、
そこにバカバカしいギャグや下ネタをいれている。
だからこそ中盤であっさりと「真実」が明かされる。
この国を管理していた「皇帝」の真実、そして主人公の「真実」だ。
ネタバレしてしまえば、この作品は正確には異世界転移ではない。
主人公が死ぬ直前に願いを「ミタマ」が叶えてくれたに過ぎない。
「神も宗教も存在しない世界に生まれ帰らせてみろよ」
異世界ではなく遠い、遠い地球の「未来」に移動したに過ぎない。
この世界に存在する「皇帝」も人が作り出した
ある種の偽りの神だ。
そんな偽りの神はあっさりと滅びる。
旧世代の人類が人類を管理するために生み出したシステムが
崩壊した世界で、主人公は「神」と「宗教」を
維持することができるのか。
中盤で真実が明かされるものの物語の方向性はあまり変わらない。
主人公たち以外にも神を名乗り、新興宗教団体を作り上げるものも
現れる中で、他の宗教団体をも取り込もうと動き出す。
アルコーン
アルコーンという存在は機械の神から力を与えられた存在だ。
人類を統括するためにそれぞれが活動していたものの、
偽りの神は主人公たちに酔って倒され、彼らも自由になる。
己の欲望を叶えようとするもの、忠義がなくなりしもの、
それぞれがそれぞれの考えで動き出す。
「ダキニ」はアルコーンとして人類から愛を奪っていた存在だ。
「皇帝」が人工的に子供を作り出していた世界で、
人間が持つ「愛」と「生殖本能」は邪魔だ。
だからこそ彼女は自らの能力を使い人類から愛を奪っていった。
偽りの神がいなくなったからこそ、彼女は人類への愛という名の
「エロス」を取り戻そうとしている(笑)
シリアスにやればいくらでもシリアスになりそうなところを、
この作品はギャグとシモネタで覆い隠しており、
セクシーシーンもあるものの作画の悪さのせいであまり機能していない。
声優さんたちも実力派のベテラン声優が何故か多く出演しており、
そんな彼女たちの「セクシー」な声の数々は
セクシーではあるものの、同時に強烈なギャグにもなっている。
作画が悪いからこそ、この怒涛のテンポで描かれるストーリーだからこそ、
不思議な面白さが生まれている作品だ。
きちんと世界観が作り込まれた作品だからこそ、
この絶妙なバランスの要素が面白さに変わり、
キャラの魅力やストーリーの面白さに繋がっている。
へんに「普通のクォリティの作画」よりも良かったかもしれない。
そう感じるほど、この作画のクォリティの悪さや、
「ドット絵」を多用しまくる演出の数々、
1枚絵でカメラワークや演出で作画枚数をごまかすやり方が、
この作品らしい面白さになっている。
愛も性行為も音楽も、この世界、いや、遠い未来の地球では失われている。
そんな中で主人公は技術を、愛を、音楽を普及していく。
宗教
下ネタやギャグが多く、作画も酷いが
この作品は「宗教」というものをきちんと描いている。
宗教、特に新興宗教は「詐欺」と考える人も多いだろう、
だが、同時に「救済」でもある。
今自分が置かれている現状、科学や努力ではどうしようもない現状を
「神」という概念に頼る。
それによって「精神的な平穏」が訪れることもある。
その代償に金銭を求められることもあるが、
本人が納得してるのであればそれは「救済」の代価だ。
この世界の住人は娯楽らしい娯楽もなく、愛すらなかった。
しかし、宗教という概念と神という概念が広まれば広まるほど、
そこに執着していくものも現れる。
この世界の家族の形は歪だ。
ある程度以上の年齢になると血の繋がりもない両親の子供になる。
血の繋がりはなくとも家族だ。家族のはずだった。
しかし、そんな家族よりも、この国の住人は「終生」を選び、
「普通」とちがければあっさりと追い出す。
そんな思いをした子どもたちが「アルコーン」の一人によって
擬似的な家族として囲われる。
子どもたちにとってアルコーンは神だ、彼女の教えを守れば
家族としての形を守ることができる。
家族に裏切れた子どもたちにとっての救いであり宗教だ。
見方をかえれば「アルコーン」に騙されているにすぎない。
だが、子どもたちにとっては騙されているなんて考えは抱かず、
彼女の教えを守ることにより精神的な平穏のほうが重要だ。
「詐欺」なのか「救済」なのか。
それは立場や見方によって違う、それが宗教でもある。
利用価値を失った子供はアルコーンにあっさり捨てられる。
「家族」に裏切られ「家族」をもとめた子供は、また家族に捨てられる。
そんな子供の一人を利用できるとみなや、主人公は
子どもたちを取り込もうとする。
主人公たちのほうが状況としてはマシかもしれない。
詐欺からの救済ともいえるかもしれないが、
主人公たちの宗教に鞍替えしただけとも言える。
主人公も村の人達を守るためとはいえ、
多くの嘘をつき、多くの人を取り込んできた。
結果的に村の人達は幸せにはなっているが、
そんな村の人達の幸せが神の力になるからこそだ。
利用し利用される。
それは宗教に限らず、この世界でも変わらない。
主人公は「宗教」を、「信者」を、ときに「神」をも利用し、
自分の正義をなそうとしている。
ただ、アルコーンの一人との戦いが本格的に始まりそうなところで
ストーリーは俺たちの宗教はこれからだ!でおわってしまっており、
続きが気になるところで終わっている。
この予算の規模感で2期があるかどうかはわからないが、
2期があるならば期待したいところだ。
総評:作画予算がない!?ならばドット絵だ!
全体的にみて作品の制作予算はかなり少ないんだろうなと感じる作品だ。
OPの映像は本編のシーンを使い回すしかないほど余裕がなく、
シーンのところどころで謎のドット絵をさしこむことで
通常の作画枚数を極力減らす努力をし、
モンスターなどの作画コストがかかりそうなものはCGにする。
なるべく作画コストがかからないように、作画枚数が増えないようにする。
この制作側の苦肉の策が作品から感じてしまう。
通常ならこの低クォリティの作画は欠点でしか無いのだが、
この作品の場合は一周回って「個性」に仕上げてる部分もある。
特に4話のシーンはあまりにも斬新だ。
明らかにフリー素材か何かの農作業をしている実写の写真を
アニメ風に加工し、その写真の「顔」の部分だけ
アニメのキャラの顔にする。
わかりやすくいえば「コラージュ」、フリー素材とキャラの顔を
合成した映像を見せられる(笑)
明らかにキャラの顔が浮き上がっており違和感しか無い。
だが、それをアニメの1シーンとして押し通しており、
この強引な「絵作り」の数々が妙な笑いに繋がっている。
そんなシュールな作画で描かれるストーリーは真面目だ。
神や宗教といったものを嫌悪した主人公が、
異世界で異世界人に神や宗教の概念を広める。
この矛盾が主人公の魅力になっており、
ギャグや下ネタは多いものの真面目に宗教というものを描いている。
世界観がしっかりしているからこそ見れる部分もある。
中盤であっさりとこの世界の真実が明らかになることで、
シンプルに物語の先が気になる展開を生んでおり、
1クールでは話が中途半端なところで終わっているものの、
きちんとした面白さのある作品だ。
放送中に何度か万策尽きて放送が延期になっており、
作画のクォリティが「あえて」の演出ではなく、
「ガチ」な演出な部分が面白い作品だ。
本当にスケジュールも予算も足りずに苦肉の策で色々やっており、
その色々を楽しめてしまう。
わかりやすくいえば偶然の産物のような作品かもしれない。
この作品で普通の作画で描かれても、
ここまで惹き込まれなかったかもしれない。
作画が悪いからこそ、作画枚数を誤魔化してるからこそ、
この作品らしい面白さが生まれている作品だった。
個人的な感想:有名声優ばかり
これだけ作画が悪く、明らかに予算は少ないのに
声優はやたらめったら豪華だ。
榎木淳弥、鬼頭明里、-花澤香菜、上坂すみれ、緒方恵美、悠木碧、
高橋李依、小松未可子、小清水亜美etc…
声優だけ見れば鬼滅の刃か呪術廻戦でも始まりそうなメンツだ(笑)
そんな豪華声優陣が演じているのに作画がボロボロというのも
ギャップが生まれており、セクシーなシーンで声優さんたちが
セクシーな演技をしてるのに、作画がアレなせいでギャグにしかみえない。
制作側としては本当に苦肉な作であることが伝わるのも
この作品の面白いところだ。
なんとか作品を仕上げようと、なんとか作画枚数が少ない中でも
面白いもの仕上げようとしている「愛」を感じる。
だからこそ、この作品は面白かったのかもしれない。
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