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王道の裏に潜む人気作の芋煮会「怪獣8号」レビュー

3.0
怪獣8号 アクション
©防衛隊第3部隊 ©松本直也/集英社
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この記事を書いた人
笠希々

オタク歴25年、アニメレビュー歴13年、
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評価 ★★★☆☆(57点) 全12話

アニメ『怪獣8号』メインPV/2024年4月放送・配信開始

あらすじ 主人公 日比野カフカは、幼いころに住む町が怪獣の発生によって破壊される。その日、幼馴染の亜白ミナとともに、その町を見渡せる丘にいた二人は惨状を見ながら、「俺(私)、防衛隊員になる」と宣言、「二人で、怪獣を全滅させよう」と約束した。引用- Wikipedia

王道の裏に潜む人気作の芋煮会

原作は少年ジャンプ+で連載中の漫画作品。
監督は宮繁之、神谷友美、制作はProduction I.G

怪獣

この作品の世界にはタイトル通り「怪獣」が存在する。
ビルのような巨大な獣、何が目的でどこに現れるのかもわからない。
そんな「災害」のような怪獣に日本は襲われている。

しかし、そんな中でも日本人は落ち着いている。
まるで地震に慣れた日本人のように、この世界の日本人は
怪獣というものにすでに慣れてしまっている。
いつどこに現れてもおかしくはない、そんな怪獣を
「倒す」組織も当然存在する。

1話冒頭から迫力満載の作画で怪獣と防衛隊員の戦いが描かれる。
制作のProduction I.G特有の、どこか乾いた色彩の作画で
彩られる世界観は最近のはやりの作品のような「おしゃれ感」とは真逆だ。
淡々と粛々と描きつつも、大胆なアクションシーンで
カタルシスを感じる風潮が相変わらずだ。

そんな世界で生きる主人公は防衛隊の一員ではない。
彼の仕事は「怪獣のあとしまつ」だ。
巨大な怪獣を防衛隊が始末したあとの死体、
そんな死体を処理するのも仕事になっている。

怪獣の死体は危険がいっぱいだ、巨大であるがゆえに、
怪獣という存在が故に胃袋1つにしても危険で巨大だ。
そんな巨大な怪獣の死体が横たわる町並みは
何処か芸樹的ですらある。

主人公はうだつの上がらない「おじさん」だ。
子供の頃から怪獣を退治する防衛隊に憧れていたものの、
防衛隊にはいることはできず、怪獣の後始末をする
民間企業に就職している。

年下の幼馴染は防衛隊で大活躍しているのに、自分はただの後始末。
過去に諦めたはずの夢、そんな夢をどこか諦めきれていない。
だが、彼の夢がふたたび始まる。
防衛隊の採用基準が下がり、年齢制限がゆるくなる。
もう1度、防衛隊を目指せる。

だが、希望が見えた中で「怪獣」が再び現れる。
怪獣が現れた後の「余獣」、何の力もない男が
怪獣を目の前にして生きるために戦う姿は男だ。
しかし、彼は無力だ。何もすることはできない。

そんな彼の前に幼馴染が助けに現れる。
自身の無力感、何もできなかった歯がゆさを噛み締め、
もう1度、夢に挑戦しようとする。
だが、彼は唐突に「怪獣」に
なってしまうというところから物語が動き出す。

怪獣

怪獣になった主人公は体こそ小さいものの、
パワーは怪獣なみだ、ありえないほどの怪力、
変身してしまった姿に彼は戸惑ってしまう。
体中から謎の生物は飛び出るわ、怪獣になった姿を後輩や
一般人にも見られてしまう。

怪獣が現れると独特の反応のようなものも出るらしく、
彼はすぐに追われるハメになってしまう。
怪獣は人類にとっての敵、災害だ。即殺処分、討伐される運命だ。
防衛隊になりたかったのに、主人公は防衛隊の敵になってしまう。

彼もどうしてそうなってしまったのかはわからない。
謎の小型怪獣に襲われたことが原因ではあるものの、
どうして襲われたのか、どうして怪獣の姿になったのか、
見ている側にも主人公にもわからない。

非常に分かりやすい導入だ。
この手のファンタジーアクション作品において、
戦うべき敵の力や姿を手に入れて戦う作品は多い。
進撃の巨人などがまさにそうだ。

この作品はいい意味で言えば王道、悪い意味で言えば
テンプレート的な展開と導入ではあるものの、
そんな導入をきちんとした作画とテンポの良い展開でみせることで
自然に見ている側がこの作品の世界に入り込むことができる印象だ。

本来ならばシリアスな状況ではあるものの、
怪獣になった姿で「おしっこ」をしたりと、
シリアスの中でギャグもいれることでメリハリが生まれている。
そんなギャグからの戦闘シーンの迫力は素晴らしく、

ギャグやシリアスを積み重ねたなかでの
カタルシスの開放が戦闘シーンで生まれている印象だ。
だからこそ、テンプレート的ではあるものの、作品に引き込まれる

テンプレート的だからこそ、過去の作品の要素が多いからこそ
余計な説明というのもいらない。
地震をモチーフにしている怪獣に関しても
詳しく説明せずとも見ている側に伝わり、
「怪獣」という存在もわざわざ説明しなくてもいい。

色々な作品のごった煮感はあるものの、
過去作で似たような要素があるからこそ、
すんなりとそれを受け入れることができる。

怪獣になり、人類の敵になっても主人公は諦めない。
例え怪獣でも、その力が怪獣を倒すことに役に立つ。
力がなかった彼が力を手にし、その力の使い方を模索していく。
バレたら殺処分になるかもしれない、それでも彼は夢を諦めない。

まっすぐな主人公像が序盤で描かれている印象だ。

試験

ジャンプ漫画といえば試験だ、HUNTERHUNTER、NARUTO、
僕のヒーローアカデミア、ジャンプ漫画に試験はつきものだ。
この作品でも主人公は防衛隊にはいるために試験を受ける、
しかし、怪獣の力は大っぴらに使うことはできない。

力を使えば試験に受かることは簡単だ、
だが、それができないからこそ30代の体に
ムチを打ち、試験に挑んでいる。

そんな試験の中でメインキャラクターを登場させ、
主人公とともに試験に挑ませることで、
メインキャラクターの印象付けをしている。
お手本のようなストーリーとキャラクターの見せ方だ。

才能という意味では主人公は他のキャラに比べて足りていない。
しかし、彼には経験がある。
数え切れないほど「怪獣」を解体してきたからこそ、
彼には知識がある、力を使えないなら知識を使えばいい。
自分が1番目立つ戦闘ができなくとも、サポートをすることはできる。

食らいつくように努力をし、彼の人前から生まれる友情が
彼を助け、勝利を掴む。
努力、友情、勝利、ジャンプ三大原則に綺麗に則っている。

ようやく試験を乗り越えた、そんな試験の中で
「敵」が現れる展開も王道だ。

仲間のために

主人公は試験の最中に「キコル」という少女に出会っている。
彼女は負けん気が強く、少し前の表現で言えばツンデレなヒロインだ。
防衛隊として優れた才能を持つ彼女は怪獣に挑むものの、
怪獣には叶わない。そんな彼女のために主人公が動く。

本当は隠しておかないといけない力なのに、
彼には迷いなど一切ない。自分が殺処分される運命になってしまっても、
彼は誰かを守るために力を隠すことなどしない。

変身した主人公の姿はシンプルにかっこいい、
それなのに自分の怪獣としての姿を黙ってもらうために
キコルに土下座したりもする(笑)
シリアスとギャグ、そこからの戦闘によるメリハリが
中盤になってもしっかりと効いている。

戦闘シーン自体もあまり長く続くわけでもなく、
基本的に主人公が怪獣の姿に変身すればワンパンだ。
だからこそより爽快感なる展開になっており、

がっつりとした戦闘シーンを描かずに、
サクッとした戦闘シーンを描くことでメリハリを強め、
物語のテンポを上げている。
ダレることのないストーリーが飽きさせない。

入隊

中盤で無事に主人公は仮ではあるが入隊することになるものの、
怪獣であることには変わらない。
その事実を知るのは彼の後輩とキコルのみだ。
彼を怪しむものも現れ、今後どうなるのかを気にならせてくれる。

怪獣たちも、知能を持ち人間社会に潜むものも現れる。
彼らの目的はなんなのか、主人公を怪獣にした存在はなんなのか。
序盤できちんと主人公と世界観を掘り下げ、
試験編でキャラを増やしつつヒロインを出し、
敵の動向も描く。

本当にお手本のようなジャンプ作品だ。
そんな中で訪れる初任務、主人公にとって夢の架け橋だ。
怪獣の力を大っぴらに戦えない主人公は足手まといだ、
それでも自分にできることをやる。
泥臭い主人公の姿はまっすぐだ。

そんな彼と違い防衛隊はド派手な戦闘を繰り広げている。
怪獣はいるものの、この世界にはウルトラマンは居ない。
人類が人類の知恵を持って怪獣に挑まなければならない。

そんな人類の知恵の積み重ねによる装備を引き出す隊員たち。
特に隊長格は別格だ。
主人公の幼馴染は誰しもが憧れる防衛隊員であり、
彼女の「射撃」は巨大なレールガンのようであり、
他の隊長もド派手な戦闘を見せてくれる。

隊長たちに追いつきたい、並び立つ存在になりたい。
それは主人公だけではない。

成長

主人公だけでなく多くのものが成長していく。
主人公の後輩だった「レノ」は頭角を表していき、
同期たちもピンチの中で覚醒していく。
新人である彼らが自分らしい戦い方を、
自分にしかできないやり方で模索していく。

決して仲間に頼りっぱなしではない、
「チーム」として彼らは戦おうとしている。
人間一人では敵わない怪獣だからこそ、そこに人間の知恵や
友情によって打破するチャンスに繋がる。

だが、それでも敵わない敵が現れる。
そんな敵に主人公は「怪獣の姿」で挑む。
1クールの中盤の盛り上がりだ、
圧倒的な敵に対し、圧倒的な力で制する。

人間による泥臭い戦闘シーンから、
怪獣同士のカタルシスを開放するような迫力のある
戦闘シーンがたまらない。
ただ、展開としてピンチになってからの主人公登場という
パターンが序盤から続いているのはやや気になるところだ。

副隊長

終盤になると主人公よりも副隊長のほうが目立っている。
彼は怪獣になれるわけでも、
主人公の幼馴染のように巨大な怪獣に対する
攻撃手段を持ち合わせているわけではない。

しかし、副隊長格だからこその強さをしっかりと持ち合わせており、
刀による攻撃、スーツの限界を超えて力を使う姿は
主人公よりも主人公をしている。
キャラクターとして主人公より魅力的に見えてしまう。
キャラとして主人公を食ってしまうほどキャラ立ちしている。

だが、そんな副隊長でも怪獣に敵わない。
知恵を持って襲ってくる怪獣は脅威そのものだ。
隊長が現れても怪獣の脅威を完全に去ることができず、
大ピンチな状況だ。

そんな中でまた主人公が変身して活躍する。
ちょっと終盤になるとこのパターンがテンプレで
マンネリになってしまう、
どこか主人公をお膳立てするような展開にも見えてしまう。

例え自分が怪獣であることがバレても仲間を守りたい。
そんな主人公の真っ直ぐな考えは悪くないのだが、
ここまで似たようなシーンを何回か見せられているため
やや食傷気味だ。

戦闘シーンも人間と怪獣のバトルは
能力バトル的な面白さがあるものの、
主人公と怪獣の戦闘シーンも終盤はワンパターンに
なっているように感じる。

終盤

主人公の正体が仲間たちや防衛隊にもバレ、
彼をどうするかの審議が開かれる。
序盤こそ気にならなかったのだが終盤くらいになると、
マンネリ感もあわさって「様々な作品」が頭に浮かんでくる。

この終盤の展開も進撃の巨人で見たような展開であり、
作中でところどころエヴァオマージュのようなものすら感じる。
このあたりはスタジオカラーが怪獣デザインに協力しているため
制作も周知の上で作っているのはわかるものの、
欠点が目立ってくると、そのあたりもかなり気になってくる。

特に進撃の巨人はかなり露骨だ。
巨大な敵と戦う人類、主人公は敵の力を使える、
強い副隊長や寡黙な女隊長など進撃の巨人で見たと
言いたくなってしまう部分も多い。

そこにエヴァ的なシンクロ率という名の解放戦力だったり、
終盤には暴走シーンまである。
話が進めば進むほどオマージュ元が透けて見えてしまうのは
やや首を傾げてしまう部分だ。

私は面白ければ過去の作品の要素がある作品で
パクリとはいわない、呪術廻戦や鬼滅の刃でもそういった要素はある。
この作品もその2作品と同じだ、
多くの作品が生まれたことで要素をオマージュし、
オリジナルの設定に変えて自分の作品にしている作品は最近多い。

この作品もそういった意味では最近の作品らしい作品づくりではあるものの、
進撃の巨人の要素に関してはかなり露骨に感じてしまう。

終盤で過去の怪獣が回想シーンで出てきたりもするのだが、
怪獣8号と主人公が認識されるまでの、
怪獣1号から7号までの戦いのほうが見たくなってしまう。

見たくなってしまうという気持ちが生まれるのは
この作品に魅力があるということではあるものの、
1クールでは俺達の戦いはこれからだ!で終わっており、
今後の展開が気になる反面、不安も残る作品だった。

総評:まるでジャンプの教科書

全体的に見て王道なジャンプ原作らしいアニメであり、
アニメーションのクォリティはProductionIGらしい堅実なものだ。
ギャグやシリアスの切り替えを頻繁に行いながら、
爽快感あふれる戦闘シーンでカタルシスを開放させるような
ストーリー構成は序盤から中盤まで効果的に作用している。

ただ終盤からはマンネリを感じる部分もあり、
そのせいか過去の様々な作品の要素が顔を出し始めてしまう。
進撃の巨人やエヴァンゲリオンなどはかなり顕著で、
それが1度気になってしまうと色々と厳しい作品だ。

それでも魅力的なキャラと世界観があり、先が気になる部分がある。
1期は1クールしかなく、あくまで物語の序章だ。
ここから知恵のある怪獣の目的や主人公に寄生した怪獣の謎などが
明らかになっていくのだろう。

先が気になる反面で、不安になる要素も感じる1クールであり、
決定している2期でそのあたりがどうなるかが気になるところだ。

個人的な感想:序盤は..

1話は素直に楽しめており、中盤くらいまでは
ちょこちょこと引っかかる部分はあるものの、
王道の面白さを感じられた作品だった。

ただ終盤になると主人公よりも副隊長のほうが
キャラクターとして立ってしまっており、
描かれている本筋のストーリーよりも、
回想で描かれる過去の怪獣などのほうが気になってしまった。

1クールではなく2クールくらいでがっつりと描かれていれば
もう少しスッキリとした部分はあったかもしれないが、
1期の段階では素直に面白い!とも、かといってつまらないとも
言えない作品に仕上がっている作品だった。

2期は来年放送予定だが、原作の評判はあまり芳しくないだけに
アニメでそのあたりをどう見せるか、期待したいところだ。

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