サスペンス

性癖爆盛お姉さん「怪異と乙女と神隠し」レビュー

3.0
怪異と乙女と神隠し サスペンス
©ぬじま・小学館/「怪異と乙女と神隠し」製作委員会
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この記事を書いた人
笠希々

オタク歴25年、アニメレビュー歴13年、
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評価 ★★★☆☆(57点) 全12話

TVアニメ『怪異と乙女と神隠し』PV第1弾:Mysterious Disappearances【2024年4月放送開始!】

あらすじ 小説家志望の書店員・緒川菫子はある日勤務先の書店で「逆万引き」の本を手にしたことから同僚の不思議な少年、化野蓮とともに様々な怪異な事件と関わることとなる。引用- Wikipedia

性癖爆盛お姉さん

原作はやわらかスピリッツで連載中の漫画作品。
監督は望月智充、制作はゼロジー

ホラー

1話冒頭から怪しげな雰囲気を漂わせている。
無機質な部屋で幼い少年と少女が共に暮す、
どこか恐怖を煽る曲が流れ、久しぶりに背筋を続々と感じさせる
ホラーが始まると感じさせてくれる。

そんな冒頭のシーンから本屋にシーンは移り変わる。
一人の少年と、長身かつ太眉で胸が大きな年上の女性、
「緒川 菫子」がこの作品の主人公の一人だ。
彼女の性癖もりもりな優秀なキャラクターデザインがs
刺さる人には刺さるだろう(笑)

小気味いい会話劇は耳心地が良く、
「化物語」とまではいかないものの、
セリフの応酬と激しいカットがただの会話劇を盛り上げる。
彼女は作家だ。

「忘れないために私はここに記しておこう、
これは私、緒川 菫子と口の減らない友人化野 蓮との
ささやかな友情と別れの記録だ」

アニメでありながら上質なライトノベルでも読んでるような感覚を
味合わせるセリフの応酬と、画面に映る性癖モリモリな
「緒川 菫子」のセクシーなシーンで会話劇を飽きさせない。

若いときに作家としてデビューしたものの、
才能が枯れた彼女は書店員として働いている。
そんな優秀なキャラクターデザインが劇的に変化する。

28歳、長身ムチムチなヒロインが「呪書」を読んでしまったがゆえに
「ロリ」へと変化する(笑)
どれだけ性癖を盛り込めば気が済むんだ!と突っ込みたくなる
キャラクターだ。

縮小

彼女は若返ったわけではない、縮んだ分の肉と血と骨、
ただ圧縮されただけだ。放っておけば死んでしまう。
呪われた書を手に入れ、呪いがかかった彼女、
普通の人には読んだだけで呪いは発動しない。

しかし、彼女は条件を満たしてしまっている。
深夜の月明かりの下で28歳以上の生娘であること。
そんな条件を彼女は満たしてしまっている(笑)
ホラーな作品ではあるものの、会話劇の中に
さらっとギャグを盛り込むことで会話の中でのメリハリが生まれている。

だが、この作品の芯にあるのはホラー、怪異だ。
呪いは人の思いから生まれるものだ。
誰かが悪い、若さがほしい、富がほしい、才能がほしい。
そんな人の欲望が「呪い」となる。

彼女もまた呪われている。
10代のときには「天才」と持て囃された作家だったのに、
20歳を超えるときにはそのメッキが剥がれてしまっている。
それでも彼女は書き続けたい。

若い姿のままならば、まだあのころに戻れるかもしれない。
そんな思いが彼女を若さに執着させる。
もう一人の主人公である「化野 蓮」も秘密がある。
なぜ、ただの少年にしか見えない彼が怪異や呪いに詳しいのか。
1話でそんな引きをうむことで、自然と先を気にならせてくれる。

怪異の世界に踏み込んだアラサーは、
多くの怪異と出会うことになる。
ショタな主人公、妹なロリ、アラサーなメインヒロイン。
素晴らしいキャラクターバランスだ(笑)

標識

怪異はどこにでも潜んでいる、街の古本屋に、学校に。
人の欲望がある場所に怪異はあらわれ、呪いは潜む。
主人公である「化野 蓮」は妹を元の場所に戻すために
怪異を探している。

怪異や呪いの痕跡は「標識」のように彼らには見える。
まるで人に害をなすものがそこにあるように、
怪異や呪いは危険性を周囲に指し示す。
人の欲望が他人を呪い、怪異がそこに潜む。

だが、人を呪うことは自分を呪うことだ。
そんなよく聞く格言もきちんと科学的に嘘の裏付けをしている。
本能を司る大脳辺縁系は「主語」を誓いできない、
他者への呪いは自分と他者を理解できず、自らの体を蝕む。

激しいアクションシーンや戦闘シーンなどはこの作品にはないものの、
小気味いい会話劇、台詞回しとカット割、
ときにセクシーシーンや血液表現といったスパイスを組み込むことで
飽きさせないストーリーを描いている。

怪異そのものについても、かなり考え込まれている。
化物語的なテイストはありつつも、京極夏彦的なテイストや、
民間伝承、ムー的なオカルトからネットロアまで、
古今東西のオカルトを取り込みつつ、
この作品らしいホラーに仕上げている。

日常を描きながら、そこに潜む怪異を描く。
そんな日常があるからこそ怪異の恐怖が際立たち、
恐怖が過ぎ去ればいつもの日常がかけがえのないものに感じる。

噂は怪異が生まれるきっかけにもなる。
日本や海外に多くある伝承、そんな伝承は人の噂話だ。
本当の原因は科学的に裏付けされた人為的なできごとにすぎない、
しかし、それを知らない人の恐怖が噂になり、怪談になり、恐怖を生む。

様々な怪異、妖怪、呪いは混じり合う。
それがときにピンチに繋がり、ときに怪異を倒すきっかけにもなる。
このあたりはホラー、怪異や妖怪などの知識がないと
ややついていけないほど様々な怪異がセリフの中で出てくるものの、
そういう知識があればあるほど「そうきたか!」と唸る部分もある。

「きさらぎ駅」の使い方でさえそうだ、
存在しない無人駅の噂、そんなネットロアでさえ
この作品は取り込んでいる。

そんな世界で「化野 蓮」は妹を帰そうとしている。
異界からやってきた兄妹、兄は人間ですらない体を
蝕みながら彼女を返すために怪異を探し続ける。
1クールの中で徐々に謎が明かされていく展開は
マンネリを産まず、中盤になっても先が気になる展開になっている

終盤になると「VTuber」という要素も出てきて、
引退したはずのVTuberが人の思いが宿って
「画霊」になってしまうなどという現代的なエピソードまである。
ファンや運営、中の人まで多くの人の思いが集まるからこそ、
それが怪異にもなる。

偶像崇拝的なVTuberという要素をオカルト的なニュアンスで
うまく噛み砕いたエピソードは印象的だ。

終盤

終盤、「化野 蓮」が求めていたものが手に入る。
多くの怪異を出会い、彼らが残したものを
「きさらぎ駅」で切符に帰ることで妹を送り返すことができる。
だが、それは同時に「化野 蓮」が犠牲になることでもある。

「忘れないために私はここに記しておこう、
これは私、緒川 菫子と口の減らない友人化野 蓮との
ささやかな友情と別れの記録だ」

1話のあのセリフが最終話でも再び彼女の口からこぼれ出る。
長いスランプのために彼女が書き上げた
「怪異と乙女と神隠し」、まさしくこの作品だ。

そのあたりの伏線回収は素晴らしいものの、
終盤はやや話を強引に畳んでいるような感覚だ。
唐突に現れる猫の王だったり、おっさんの存在もよくわからず、
そんな中で最終話で強引に話を畳んでいる。

このあたりはアニオリ展開のようで1クールで
物語をたたむための展開だ。
それを如実に感じるほど唐突な展開も多く、
序盤から中盤はしっかりと楽しめてただけに、最後だけ
はしごを外されたような感覚になってしまう作品だった。

ただラストの展開は旧展開ではあるものの納得できる部分がある。
人の欲望、思いや願いから怪異は生まれる。
だからこそのあのラストと考えると納得できる作品だった

総評:現代的怪異物語

全体的に見てホラーという要素とギャグと日常、
そしてセクシーな要素がしっかりとマッチしている作品だ。
特に主人公の一人ともいえる「緒川 菫子」の
性癖詰め合わせセットのようなキャラデザや設定は
刺さる人には強烈に刺さるほどインパクトが有る。

ストーリー的にも現代における怪異というものを描いている。
古来から伝え聞かれる民間伝承や、ネットロア、
それが噂という形で人の間に流行り、怪異はその中で変質しつづける。
人の欲望がある限り怪異は日常の直ぐ側に潜んでいる。

そんなホラーな要素をライトに仕上げつつも、
血液表現などもしっかりとある。
ガチなホラーではないものの、ホラーテイストなストーリーと
怪異というものを独自の解釈で描きつつ、
キャラクターの日常を描き、1クールでストーリーを占めている。

作画枚数こそ少なく、戦闘シーンと呼べるものもほとんどないが、
メリハリのきいたカット割によって、
小気味いい会話劇に序盤から中盤は浸れる。
ただ中盤以降は作画のクォリティが息切れしているシーンも目立ち、
そのあたりは残念なところだ。

ストーリーも1クールで終わらせるためにアニオリ展開にしており、
そのせいで唐突な展開も多い。
特にネコの王に関してはなんだったんだ…?と言いたくなる部分だ。

1クールで締められていることは本来は評価したいものの、
きちんと終わってるはずなのにどこか消化不良が残ってしまう。
その消化不良を無くしたければ原作を読んでねということなのかもしれないが、
やや惜しい作品だった。

個人的な感想:原作

個人的に1話のインパクトは素晴らしかったのだが、
そのインパクトも話が進むごとに薄れてしまいつつも、
怪談や都市伝説というものをこの作品における怪異に
うまく落としんでいる中盤までは楽しむことができた。

ただ終盤からは作画のクォリティもおち、
話も唐突な展開になってしまい、その唐突さに
ついていけずに終わってしまった作品だった。

ヒロインの性癖てんこ盛りなデザインや設定は素晴らしく、
印象に残った部分もあるがゆえに、
原作でアニメと違う展開を楽しみたいところだ。

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