評価 ★★★★☆(67点) 全100分
あらすじ 「イケブクロ・ディビジョン」「ヨコハマ・ディビジョン」「シブヤ・ディビジョン」「シンジュク・ディビジョン」「オオサカ・ディビジョン」「ナゴヤ・ディビジョン」の6チームに所属する総勢18人のキャラクターが、熱いラップバトルを繰り広げる。引用- Wikipedia
この作品には12万円の価値がある
本作品はヒプノシスマイクの劇場アニメ作品。
制作はポリゴン・ピクチュアズ。
TVアニメ版から制作会社も監督も変更になった形だ。
インタラクティブ
この作品ではファイナルディビジョンラップバトルが描かれる。
TVアニメでは1stと3rdが描かれ、
なぜか2ndは描かれなかったものの、そこからのファイナルだ。
勝者には真正ヒプノシスマイクが与えられ、
女尊男卑なこの世界を変えられる可能性もあるアイテムだ。
そんな激やばなアイテムをめぐってラップバトルが
繰り広げられる。
TVアニメや原作を知っている方ならご存じの通り、
ヒプノシスマイクを使って彼らはラップバトルを展開し、
ディビジョンバトルを戦ってきた。
TVアニメの場合は勝敗が決まっていたものの、
本来のヒプノシスマイクはCDによって投票でき、
各ディビジョンを応援し、
ファンがディビジョンバトルの結果を決めることができた。
そんなヒプノシスマイクという作品の要素の1つでもある
「投票」という要素をこの作品は組み込んでいる。
ディビジョンバトルに参加するのは6チームだ。
ファーストバトルでは各チーム同士が戦い、
セカンドバトルでは3チームが曲を披露し、
そしてラストではそこまで勝ち進んだチームが
中央区という現在の優勝者のような存在に挑むことができる。
この勝ち負け、勝敗を決めるのは映画を見ている観客だ(笑)
事前のアプリをダウンロードし、試合が行われるごとに
その映画館で見ている人が投票し、
その投票数に応じて結果が決まる方式だ。
非常に斬新な試みだ。
これが「全国」の映画館で行われているというのが面白く、
私が見たのは横浜駅の映画館だったのだが、
そこでの勝率は「横浜ディビジョン」が現在100%になっている(笑)
そういった地域制もあり、映画館によって、
その上映回によって勝敗が変わり、
どのディビジョンが優勝するかは投票の結果次第だ。
ただ映画を見るのではなく、その映画の作品の1つになれる。
インタラクティブ、いわゆる体験型の作品の面白さをこの作品では味わえる。
もっとも、私が行った横浜の映画館など
特定のディビジョンが圧倒的に有利な映画館などもあり、
このあたりは事前に調べたほうが楽しめる部分はあるかもしれない。
特に特定のディビジョンやキャラのファンの場合は
事前に調べないと厳しいものがある。
ファーストバトルでは6チーム全員でるが、
セカンドでは3チームに、ラストでは1チームだ。
最初のバトルで負けたチームの出番は極端に少なくなる。
この手のファンが多い作品の場合、キャラクターを平等に出そうとして
作品自体が崩壊することがよくあるが、この作品は
そういった手法とは真逆のやり方をしている(笑)
勝てば最後まで出るが、負けると途中から一切でなくなる。
ラストの15分くらいでは全チームが再び出る展開になるものの、
まるでお正月の例の番組のごとく、「映る価値なし」と
言わんばかりに消えるのは大胆な手法だ。
CG
ヒプノシスマイクは1期、2期ともにA-1Pictures制作だったが、
映画ではポリゴン・ピクチュアズ制作になっており
フルCGのアニメになっている。
フルCGということで不安に感じる人も多いかもしれないが、
この作品のクォリティは非常に高い。
一人ひとりのキャラクターのモデリングがしっかりしており、
フルCG作品特有のゆらつきもほとんど感じず、
セルルックスタイルなアニメ調のCGが自然に馴染んでおり、
キャラクターたちの魅力をこれでもかと引き出してる印象だ。
特にキャラの顔がアップになると余計に感じるが、
イケメンなキャラクターたちの顔がシンプルにいい(笑)
モデリングの時点での一人ひとりのキャラへのこだわりを
しっかりと感じる顔の描き方、服の皺まで
考えられて描きこまれている。
特にそれがライブシーンになるとより映える。
ステージ上でのライティングすら意識した演出が
フルCGだからこその表現の数々になっており、
シンプルにキャラの顔の良さを感じさせるモデリングの
クォリティの高さには驚かされる。
ラップバトル
この柵本の本筋、本編とも言えるのがラップバトル部分だ(笑)
ヒプノシスマイクという催眠効果のあるマイクだからこそ、
普通のラップバトルではありえないものが見えたりでてきたりする、
それがディビジョンラップバトルの面白さもである。
まず戦いの前にマイクがそれぞれのキャラに合わせて変化する。
ビジュアル系のバンドが使うようなマイクに変身したり、
様々な形になるのも面白いのだが、それにあわせて
キャラごとに「守護霊」のような存在がでてくる。
巨大なドクロがでてきたり、ドラゴンが召喚されたり、
招き猫がでてきたり、巨大なスピーカーがでてきたり、
キャラごとの特徴を感じさせる謎の守護霊に関しては一切説明がない。
そういうものなのだ(笑)
そんな守護霊がなにをするかといえば音を出し、
相手の守護霊とぶつかるだけだ。特になにか技を出すわけではない。
それなのに出る。さすがはヒプノシスマイクだ、
こちらの理解を超えてくる。
私は1期のレビューでヒプノシスマイクは
コロコロコミック原作のホビーアニメと同じと称したが、
そのノリだ、ベイブレードで台風を起こすように、
この作品はラップでドラゴンを召喚する。
そんなヒプノシスマイクらしいラップバトルは
見ているだけでシンプルに楽しい、
それぞれのディビジョンごと、キャラらしいリリックに乗せて、
そんなリリックが文字となって相手にぶつかる(笑)
ただたんに歌詞を字幕表示するのではなく、
歌詞そのものもこの作品らしい演出と映像表現に落とし込み、
まるでパチンコのようなきらびやかな装飾で彩られた
「大技!」という文字が相手にぶつかったりしながら
ダメージを与えていく。
こういった映像表現が素晴らしく、
フルCGにしたからこそのド派手な演出や
キャラクター描写がヒプノシスマイクという作品を
素晴らしい映画にしあげている。
投票
ラップバトルの勝敗自体は映像的な勝ち負けの表現はなく、
その判断をするのは見ている人たちだ。
ラップバトルがおわって投票時間が10秒しか無く、
かなり慌ただしい感じはある(苦笑)
特にサードバトルに関しては私の左斜め前に座っていた
お姉様は明らかに投票が間に合っていなかった。
今から見る人はスマホは常に手にしていよう。
そんな投票結果によって勝敗が決る。
勝敗によってセリフや描写、キャラごとの掛け合いが違い、
そのために何度も見たくなる仕掛けが非常にうまい。
本来ならばアニメや漫画で描かれたストーリーを変えることはできず、
もしこういう展開だったら?というifはファンによる妄想でしかない。
しかし、この作品はそんな妄想を叶えてくれる。
自分の推しが勝って勝利を掴む、それを誰しもが味わえる。
夢のような作品と言えるかもしれない。
ただそのために1回2500円というやや高額な鑑賞料金にくわえ、
自分の推しが勝つかどうかは投票結果次第故に
同じ映画館で見た人たちの投票も左右されるがゆえに
なかなか自分の推しが勝つ展開が見れないのは厳しい所かもしれない。
ストーリー
ただ、今作に関していえばストーリー性という意味ではかなり薄い。
映画の冒頭で世界観の説明がされ、各ディビジョンが大会に挑む前の
日常が描かれることで、ヒプノシスマイクという作品を知らなくとも
なんとなくはキャラクターと各ディビジョンがどんな感じなのかというのを
理解できるようにかなり丁寧な描写になっているのは好感がもてる。
OPに入るとそれぞれのキャラクターを一人ひとりしっかりと映し、
キャラクターの名前もしっかりと表示される。
初見でもわかりやすい導入だ。
しかし、その冒頭をすぎるとひたすらにラップラップラップだ(笑)
ほぼライブ映画に近いノリがあり、
キャラクターたちの掛け合いなどはあるものの、
基本的にはバトルがどんどんと進行し、最後に優勝したチームが
ウィニングライブならぬラストライブを行う。
そして最後にはみんなで歌って終わりだ。
公式によると48通りのルートと7つの結末がある!と
謳っているものの、勝利するチームによって見れるイベントや
シーンなどに差はあれど大まかなストーリーの流れに関しては
そこまで差はないのだろう。
私が1回しか鑑賞せず、横浜ディビジョンの勝利ルートを見ただけだが、
他ルートのエンディングのネタバレを見る限り、
ノベルゲーで言えば共通ルート部分は大きな変化はないが、
個別ルートで多少の変化があるくらいだ。
展開自体もある程度パターン化している印象もある。
しかし、シンプルかつストレートなストーリーではあるものの、
ラストディビジョンバトルにふさわしいものになっている。
この世界では争いをし続ける人類に対し、
ヒプノシスマイクという催眠効果のあるマイクを使い、
武器のかわりにそれを用いた争いが描かれてきた。
確かに武力というものはなくなったが、
かわりにヒプノシスマイクで犯罪を犯すものもでてきている。
真正ヒプノシスマイクを使えば洗脳すらできる。
ディビジョンラップバトルに勝てば、それを手にすることができる。
だが、それもまた暴力による支配だ。
ヒプノシスマイクによって武力による争いはなくなった、
しかし、ヒプノシスマイクによって別の暴力は未だに存在する。
ここで真正ヒプノシスマイクを使っても、暴力は変わらない。
争いあった者たちを手を取り、真正ヒプノシスマイクも、
武力をも使わない世界を目指す。
すっきりとしたラストはシンプルではあるものの、
ヒプノシスマイクというストーリーのエンディングに
ふさわしいものになっていた。
総評:1本の映画で7つの結末が見れる!?
全体的に見て日本初のインタラクティブアニメ映画というのを
余すこと無く味わせてくれた作品だ。
本来ならCDを購入し投票する所、映画館でリアルタイムに
見ている人たちの投票が結果につながる。
映画をただ見るのではなく、ヒプノシスマイクという
作品の中に見ている側も入り込んで参加しているような
そんな感覚を味わせてくれる作品だ。
本来ならばアニメや漫画ならば決められたストーリーが有り、
キャラクターの勝ち負けは決まっており帰ることはできない。
しかし、この作品は違う。ファンによって、見る人の意思が
介入することで結果を変えることができる。
ある意味、ヲタクの妄想が現実になったような作品だ。
1期や2期とちがいフルCGになったことで
映像表現も格段にあがっており、ヒプノシスマイクという
コンテンツとフルCGの相性も抜群だ。
ド派手なラップバトルの演出、キャラクターの描写、
コレがフルCGという表現とマッチしている。
ストーリー的にはシンプルではあるものの、
ヒプノシスマイクという作品の世界観の結末にふさわしい
エンディングになっており、シンプルに
「楽しかった」という感覚を味わえる作品だ。
ヒプノシスマイクをあまり知らないという人でも、
ぜひ、この日本初のインタラクティブ映画を味わってほしい。
2500円の価値はあるはずだ。
個人的な感想:中央区
個人的には少人数の回に足を運んでみたいと思わせてくれる作品だった。
私が鑑賞した場所は「横浜ディビジョン」の勝率が100%という
特殊な所であり、実際に40人ほどのお客さんのうち、
半分以上の方が青いサイリウムを振り回していた。
そうとはしらずに見てしまった結果、
私の投票した通りの展開にはならず、組織票に負けた結果だ(笑)
逆にもう1度見るならば、誰もいない平日の朝の上映会などに
足を運べば10人以下で見ることも可能だろう。
そうなれば自らの1票の重みがまし、よりインタラクティブを味わえる。
そういう体験がしてみたいと思わせてくれる力強さが
この作品にはある。
個人的には中央区が勝つ展開を見たいと思ったのだが、
そのためには日比谷に行く必要性がありそうだ(苦笑)
そういう映画館自体を選択する面白さを
味わえる作品はなかなかなき。
ヒプノシスマイクに興味がある人もない人も、
映画館だからこそ味わえるよさがあるこの作品を
ぜひ味わっていただきたい。
「映画 ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」に似てるアニメレビュー
