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「HUMAN LOST 人間失格」レビュー

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評価 ★★☆☆☆(27点) 全110分

恥の多い作品「HUMAN LOST 人間失格」アニメレビュー

あらすじ 「昭和111年、僕は人間を失格しました。」。引用- Wikipedia

太宰治が生きてたら一言物申すレベル

本作品は劇場オリジナルアニメ作品。
監督は木崎文智、制作はポリゴン・ピクチュアズ

死なない世界観


引用元:©2019 HUMAN LOST Project

この作品の世界観は面白い。
遺伝子操作やナノマシン技術の進歩により、人間はゲガや病気では死ななくなった。
平均寿命は120歳、最高寿命は180歳という未来の日本だ。

例え主人公が薬に溺れ心臓麻痺で死んでいても、
すぐに外部から体内のナノマシンを操り蘇生される。
怪我や病気がなくなった分、自らをわざと傷つける行為に溺れるものもいたり、
ナノマシンで脳内物質さえいじられるため幸福に感じ、労働時間が1日19時間、
帰宅ラッシュは午前4時ととんでもない社会になっている。

格差もかなり広がっており、富裕層はインサイドに住み、
120歳まで生きると人間合格者とみなされ,、とんでもなく高額な年金までもらえる。
体を管理された社会ではあるものの、寿命が飛躍的に伸びた日本というのは面白い。
この設定だけでいろいろな話を作れそうだと感じるほどの舞台だ。

ロスト


引用元:©2019 HUMAN LOST Project

そんな管理された国ではあるものの長寿を実現している日本はある事を隠している。
それがロスト現象だ。それは突然訪れる現象であり、
体内のナノマシンがネットワークから外れ暴走することで
治療ではなく体を変異させてしまう。
つまりは化け物になる。

原因の断定はできていないものの、自我さえ失ったロストを
討伐する組織や意図的にロストさせようと企てるものも存在する。
そんな中で主人公の友人がロストになり、主人公を傷つける。
すると主人公もロストになってしまうものの、
なぜか主人公だけが自我を維持し、さらには人間の姿に戻れてしまう。

ロストを乗り越えた主人公はロストに苦しむ日本としては必要な存在だ。
彼の肉体、ロストを乗り越えたデータを取り込めばロストに怯えることもなく、
さらに寿命を伸ばすことができるかもしれない。
一方で主人公を追い込み、この社会保障システムそのものを壊そうとする者もいる。
自らを信じてくれるヒロインや、自らを追い込む敵との間で主人公は苦悶する。

心臓を捧げよ


引用元:©2019 HUMAN LOST Project

序盤から中盤までの世界観の説明やストーリーは悪くないものの、
どこかで観た感じが否めない要素が多い。
例えば主人公がロストになるには体が傷つかなければならないが、
進撃の巨人を彷彿とさせる要素だ。

ロストを操ることのできる敵も進撃の巨人でも似たようなキャラが居たりと
進撃の巨人がいちいちちらつく。
管理された社会もPSYCHO-PASSを彷彿とさせるものがあり、
終盤ででくる主人公の武器はエヴァのロンギヌスの槍のようだ(苦笑)

世界観は面白いのにストーリーで出てくる要素が
色々な作品から拝借したものでしかなく、オリジナル性がない。
せっかく長寿を実現した社会とそのシステムが抱える問題点という
オリジナル性のある舞台があるのにストーリーにオリジナル性がない。

フルCG


引用元:©2019 HUMAN LOST Project

映像本作品はフルCGで作られており、ポリゴン・ピクチュアズが手かげている。
ロストの歪なモンスターデザイン、近未来的な装備による戦闘シーン、
ロスト化した主人公の戦闘シーンの激しさは迫力満点だ。

CGの場合、軽さが出てしまうことが欠点の1つだが、
この作品は音の圧でそれを感じさせない。
やや音量が大きすぎると感じるほどの効果音のおかげで
きちんと重みのある戦闘シーンになっており、映像面のクォリティは申し分ない。

どこかで観たことのある展開の多いストーリーではあるものの、
この映像があるからそこ見れる部分が大きく、
このCGのクォリティは素直に評価したいところだ。

思い出したっ


引用元:©2019 HUMAN LOST Project

中盤を過ぎるとややストーリーについていけなくなる。
主人公の感情表現が極端なのもあるが、
いきなり自分が実は幼い頃にロストになった父親を殺していたことを思い出す。
唐突に思い出した!と叫んだ時は前世の記憶が目覚めたのか?と思ったくらいだ。

主人公が感情的になり苛立ちや爆発した気持ちを地面を殴ったりして表現して、
それをヒロインが抱きしめて一緒に泣いたりしてるのだが、
いまいち観てる側が彼らの感情の変化に追いつけない。
ヒロインと主人公もいきなりいい仲になっており、
唐突に下の名前でヒロインを呼び出した時はどうしたのかと思ったくらいだ。

キャラクターが少ないのにキャラクターの感情の描写がやや雑で、
主人公が何を考えているのかがいまいち掴みづらい。

デビルマン


引用元:©2019 HUMAN LOST Project

主人公を救うためにヒロインは終盤で自ら犠牲になるのだが、
それでも主人公は長寿のために彼女の肉体を取り込んだ老人たちを守ろうとする。

本来は自分の父親が化け物になり家族を殺したり、
友人が化け物になったり、好きになった女の子が長寿のために犠牲になったりと、
敵と同じようにこの「システム」自体や日本という国、世界に
絶望してもおかしくないような状況だ。
作品で言えば「デビルマン」のような絶望的な状況とも言える。

だが、それでも主人公はヒロインが思い描いた明るい未来のために
システムを守ろうとする。ちょっと感情が追いつかない展開だ。
「俺の運命は俺が決める!」と主人公が勢い立って言い放つものの、
見てる側はご勝手にとしか言いようがない。

結局、ヒロインが犠牲になっても長寿になれたわけでもなくヒロインは無駄死にだ。
敵の計画は止めたものの、主人公は友人をなくし、知り合いをなくし、
好きな人もなくし、自分だけが生き残ってしまう。

恥の多い生涯を送ってきました


引用元:©2019 HUMAN LOST Project

エピローグになる半年経過する。
結局、長寿を守るためのシステムは残り以前よりも増えているロスト現象と、
283体のロストを主人公が狩るところで物語が終わる。
その際に変身する前に彼はこういう

「恥の多い生涯を送ってきました」

とってつけたような人間失格からの引用セリフであり、
結局は俺たちの戦いはこれからだみたいな感じで終わってしまう。
なんだか「エピソード0」的な前日談のようにも見えてしまう作品だ。

そもそも、この作品は映画の冒頭で「原案 人間失格」と強調してくる。
だがどこか原案なんだ?と思うような作品に成り下がっている。
登場人物の名前や、関係性や立ち位置は原案どおりか似ている部分はあるものの、
内容はディストピアなSFアクションストーリーだ。

中途半端に「人間失格」から登場人物やセリフを引用する意味がよくわからず、
いろいろな作品を彷彿とさせる要素を組む込みつつ、
魅力のある舞台と迫力のあるCGでそれをごまかしているだけの作品だった。

総評:人間失格っているか?


引用元:©2019 HUMAN LOST Project

全体的に見て太宰治や人気失格にこだわった理由がまるでわからない。
これが太宰治や人間失格とは無関係のディストピアなSF作品ならば
もう少しスムーズにストーリーを飲み込める部分も多いのに、
変に人間失格要素を絡めることでわかりづらくしてしまっている。

キャラクターの掘り下げも本来はもっと丁寧にやるべきなのだろう。
2時間という尺の中で描ききることができず、
主人公もヒロインも敵もいまいちしっくりとこないキャラクターになっており、
ふわふわーっとしたままストーリーが進み、ふわっと終わる。

「長寿を実現したが管理された未来の日本」という舞台設定は非常に面白く、
CGのクォリティもかなり高い。
だが、それを2時間というストーリーの中で活かしきれなかった感じだ。
本来はもっと描写すべきキャラクターや掘り下げるべき設定を掘り下げずに
勢い任せにストーリーを進めてしまっている感じが否めない。

結局、この作品を見たあとに残るのは「映像がすごかったな」というくらいであり、
深そうで面白くなりそうなストーリーが2時間、
面白くなりきらないまま描かれる、そんな作品だった。

個人的な感想:期待はしていなかったが…


引用元:©2019 HUMAN LOST Project

映画を予約する段階で私一人しかおらず、いざ劇場に行くと私を含め4人。
前回はフラグタイムを見に行ったがどっこいどっこいな集客人数であり、
制作費を考えれば圧倒的にこの作品のほうがやばいことは分かる。

非常に大作に見える作品だ、だが大作ではない。だからこそ観客が増えない。
宮野真守、花澤香菜、櫻井孝宏と有名声優ばかりであり、
スーパーバイザー(笑)には本広克行、脚本は冲方丁と
ビッグネームばかりが並んでいる。
本来は大ヒットしそうな要因は多くあるのにヒットしない。
側だけは派手だが、中身が伴ってないのが伝わってるのかもしれない。

世界観は悪くなかっただけに2クールや4クールのTVアニメで
じっくりと描けば面白くなった作品かもしれない。
2時間という尺では色々と描ききれずに中途半端で
ふわふわになってしまった作品だった。

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出演声優 宮野真守, 花澤香菜, 櫻井孝弘

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  1. 人類失格 より:

    はじめまして笠さん。

    最近youtube経由で本レビューブログを知った者です。

    私はポリピク作品が好きで太宰ファンでもあるんですが、最近のポリピクの傾向から言ってこの作品を見る前からかなり不安がありました。不安は的中して、やっぱりただ世界観と映像がすごいだけの中身の無い作品で残念でした。この手の名作リヴァイブ作品は冲方さんが関わると特にダメな気がします。
    ポリピクはシドニアの騎士やBLAME!など、強い原作が付いてると良いモノを生み出すのですが、亜人やゴジラなど迷走したりなかなか打率を残せない印象です。
    特に本作は人間失格の要素が一番いらないんじゃないかという本末転倒なものになっており、強みである映像以外の全てが微妙でした。もっと面白いものに出来たんじゃないかと思うと本当にもったいないです。

    さて、笠さんに折り入ってお願いがあります。
    2018年に私の中で衝撃を受けた快作、プラネット・ウィズをレビューしていただけないでしょうか?
    笠さんがあの作品をどう評価するのかどうしても気になります。
    かつてレビュー候補から除外した作品だということは承知しております。しかし、1クールの呪縛に真っ正面から挑んだプラネット・ウィズを笠さんに見てもらいたいのです。

    もしよろしければご検討ください。

    では

  2. 匿名 より:

    鑑賞お疲れさまです。
    ほぼ同キャスト・スタッフが集まった劇場アニメ版「GODZILLA」3部作がアレだったのでこの作品も同じ感じだろうだなと思いましたが、ここまでとは。