評価 ★★☆☆☆(26点) 全12話
あらすじ 正義感の強い大学生・中田正義はある夜、酔っ払いに絡まれていた美貌の外国人・リチャードを助ける引用- Wikipedia
磨き方を間違えた
原作は小説な本作品。
監督は岩崎太郎、制作は朱夏。
出会い
画像引用元:宝石商リチャード氏の謎鑑定 1話より
©辻村七子/集英社・宝石商リチャード氏の謎鑑定製作委員会
1話冒頭、わかりやすい出会いが描かれる。
金髪碧眼の見目麗しい「リチャード」と
正義感あふれる「正義」、二人はひょんなことしたことから出会い、
亡くなった祖母の「宝石」を鑑定してもらうところから物語が始まる。
ただ、話としては非常に淡々と進み、その中での会話にも違和感がある。
例えば1話の中盤、主人公はとある女子大生と出会う。
お互い初対面であり、別に大学の前でもない。
そんな状況でこんな会話が繰り広げられる。
「お礼がまだでしたね。教育学部2年 谷本晶子です」
「経済学部2年 中田正義です」
名前だけなら分かるものの、なぜが大学名は言わずに学部をつけて
自己紹介する会話は違和感がすごい。
やや癖のあるキャラクターデザインと地味な内容と相まって、
1話は人を選ぶ印象を受ける部分が強く、ツッコミどころも多い。
特に1話は「正義」の祖母が昔「スリ」であり、
「正義」が持ち込んだ宝石は祖母が盗んだものだ。
持ち主に返そうとしたものの警察に捕まり返せなかったが、
持ち主は本来は望まぬ婚約者から贈られたものであり、
返す必要はなかったという話だ。
そもそも捕まった時点で指輪が押収されていないのも謎であり、
「いい話」風に見せてはいるものの、
祖母がスリだったという事実は変わらず、
話の雰囲気だけは「いい話」なのだが、よくよく考えると納得しづらい。
「正義」はなぜか自身の母親を下の名前で読んでおり、
作品全体の違和感が序盤は強く出ている。
宝石と人をめぐるストーリー
画像引用元:宝石商リチャード氏の謎鑑定 1話より
©辻村七子/集英社・宝石商リチャード氏の謎鑑定製作委員会
この作品の構図はシンプルだ。
宝石商である「リチャード」の元に毎話のように持ち込まれる宝石、
そんな宝石と人をめぐるドラマが基本的に1話完結で描かれる。
この構図は宝石だけでなく色々な作品で見られる構図だ。
料理、美術品など80年代の漫画からあるストーリーの作り方だ。
そんな中でこの作品は「宝石」を主軸に扱っている。
「謎鑑定」とはあるものの、依頼者自身の謎や
依頼自体の謎はあるにはあるもののミステリー要素は薄く、
「宝石」の意味と、その宝石を持ち込んだ依頼人の人生ドラマが
主軸となっている。
単純な人生ドラマではなく、かなり社会問題などに食い込んだ部分もあり
同性愛、差別などのテーマを重く扱っているものの、
それが必ずしも「解決」するわけでもない。
各話に出てくるキャラクターも、
原作ではもう少し深いキャラ描写があるのかもしれないが、
1話30分の尺にまとめるために話がやや駆け足で進んでしまうため、
1話1話の話がやや軽くなってしまっている印象だ。
調べると原作からカットしていたり、変な改変をしている部分が多く
そのせいで話の印象、特にキャラクターの印象が悪くなってしまい、
毎話、見てる側の感情が揺れ動く前に終わってしまい、
めんどくさい客ばかりだな…という印象しか残らない。
正義
画像引用元:宝石商リチャード氏の謎鑑定 4話より
©辻村七子/集英社・宝石商リチャード氏の謎鑑定製作委員会
この「正義」というキャラクターは名前の通り
正義感あふれるキャラであるものの、こういった正義感あふれる
キャラクターにありがちな「うざさ」も同時に内包している。
宝石商でバイトしてるのに言葉遣いや礼節がなっておらず、
そもそも、いくら個人の宝石商といっても
「私服」でバイトするような場所ではないはずだ。
せめて襟付きの服を着てくれと思うほどラフすぎる。
服装にしろ態度にしろ言動にしろ、モヤッとする部分が多いキャラであり
一言で言えば「余計な一言や行動」が多いキャラであり、
初対面の客のプライベートにガンガン突っ込んでいくような感じで、
好みが分かれるキャラクターだ。
この余計な一言の多くは原作には無いセリフのようで、
「正義」というキャラクターが変に誇張されている。
4話で一応、リチャードに注意されるものの5話でも別に変わらない。
なんのための4話だったのかと嘆かざる得ない。
5話など久しぶりにあった先輩が
「宝石店を探してる」というだけで勝手に結婚すると思い込み、
しかも、なぜか新婚で住むための「物件情報」を正義自信が
勝手に探し出すという意味不明な行動までしている。
おせっかいの極みだ。
そもそもリチャードが正義を雇った理由も曖昧であり、
彼の存在や必要性を感じなくなってしまう。
彼が語る薄っぺらい正義感に辟易してしまう。
序盤から中盤までの1話1話の話の薄さやキャラの印象の悪さ、
話の地味さも相まって中盤までこの作品に良い印象はもてない。
BL
画像引用元:宝石商リチャード氏の謎鑑定 10話より
©辻村七子/集英社・宝石商リチャード氏の謎鑑定製作委員会
原作はBL,どちかといえばブロマンス的な要素の強い作品のようだが、
アニメではその要素はだいぶ抑えられている。
しかしながら、抑えているはずなのに中途半端にその要素がある。
例えば「正義」は無駄に「リチャード」の外見を褒める台詞があり、
ギャグ的なセリフなのか、それともBL的なセリフとしてか判断しかねる。
制作側が原作にはあるBL要素を取っ払ってより多くの人に
受け入れやすいアニメにしようとしているのはわかるものの、
その抽出が中途半端すぎて、中途半端にそういった要素を
匂わせるセリフやシーンが残っており、違和感がある。
逆に原作通りにしたほうがそういった要素が
好きな人にも好まれ、逆に嫌いな人は見ないと
割り切った作品になったのでは?と思うほどBL的な要素の
扱いが中途半端だ。
そのせいで「正義」と「リチャード」の関係性の描写も
中途半端になってしまっており、毎話の話も弱くなっている。
脚本の改変といい、キャラ描写の改変といい、
原作の取り扱い方がヘタと感じてしまう部分が多々ある。
リチャード
画像引用元:宝石商リチャード氏の謎鑑定 1話より
©辻村七子/集英社・宝石商リチャード氏の謎鑑定製作委員会
中盤からは謎多き「リチャード」の過去の話が断片的に描かれる。
序盤から中盤まで感じていた話の薄さがなくなり、
「リチャード」というキャラクターが掘り下げられることで、
ある意味、この作品がやりたいことがしっかりと見えてくる。
彼は孤独だ。自らの外見を幼い頃から無駄に称賛され、
その外見意外の部分を認めてくれる人が現れたかと思いきや、
家族や遺産の問題が発生し、認めてくれる人も居なくなり、
彼はどこにいても自らを「異邦人」、外国の人と感じている。
つまりは孤独だ。
そんな彼はある日、ふと姿を消してしまう。
当然「正義」は戸惑い、そんな戸惑いの中で彼の助けになりたいと思う。
この二人の関係性をこの作品は描写したかったんだと感じるのが
中盤からの展開だ。
積み重ねが足りない
画像引用元:宝石商リチャード氏の謎鑑定 10話より
©辻村七子/集英社・宝石商リチャード氏の謎鑑定製作委員会
本来はもう少し二人の関係性をややBL的な要素はありつつ
しっかりと掘り下げてから中盤からの展開を迎えれば
話の盛り上がりとして悪くないのだが、
BL的要素を排除し、全体的なキャラ描写を薄くしたせいで
色々と唐突な展開に感じてしまう。
簡単に言えばストーリーにおける積み重ねが足りず、
きちんとした過程を描けていない。終盤では一気にBL要素も強まり、
これまでアニメでは極力描かないようにしてきた部分が
急に強まるため違和感が生まれてしまっている。
無鉄砲なまでの正義感を振るう「正義」のおせっかいとも言える行動や
言動が孤独だった「リチャード」を救う。
この部分だけ見れば非常に良い展開なのに、
その良さをこの作品は見せ切れていない。
リチャードが抱えていた問題も意外とあっさりと解決していまい、
ほぼ10話が最終話だ。
親問題
画像引用元:宝石商リチャード氏の謎鑑定 12話より
©辻村七子/集英社・宝石商リチャード氏の謎鑑定製作委員会
終盤は唐突に「正義」の実の父親問題が出てくる。
複雑そうな過程であることは序盤から察することはできたが、
終盤でいきなり実の父親が出てきて、その問題も最終話のみで解決する。
これまでの話の雰囲気と違い、
やや「サイコホラー」じみた雰囲気が漂っており、
本来はもっと「正義」というキャラクターに好感が持てていれば
クズすぎる実の父親との問題に同情もできたかもしれないが、
この空気の読めない感じが実の親だなと感じてしまう部分もある。
話をまとめるために積み重ねを無視するという展開が
最終話でも続いてしまい、もっと全体的に丁寧な尺で
1話1話しっかりと描いてほしかったと感じる作品だった。
総評:職人さえ違えば…
画像引用元:宝石商リチャード氏の謎鑑定 1話より
©辻村七子/集英社・宝石商リチャード氏の謎鑑定製作委員会
全体的に見て色々と惜しい作品だ。
この作品でやりたいことや見せたいこと、
1話1話のストーリー自体は決して悪くないと感じるものの
1話「30分」という尺で描くために細かい描写を省き、
妙な方向にキャラクターを誇張してしまった結果、微妙になっている。
「リチャード」演じる櫻井孝宏さんの演技と声もあいまって、
彼のキャラクターの良さもあり、1話1話のエピソードも決して
悪くないと感じる部分があるからこそ最後まで見れたものの、
悪くない部分があるだけにもう少し丁寧に描いてほしかったという
歯がゆさを常に感じてしまう。
同性愛や差別、虐待をする親など難しい問題も扱っているものの、
その問題の難しさの割には解決があっさりしてしまっており、
本来はもっと深く描けばもっと魅力的な話や
キャラクターの描写に繋がるのに、それをせずに
30分にまとめるためのストーリー構成を優先してしまっている。
序盤のエピソードを少し削り、1エピソード2話構成でやれば
作品全体の印象も変わったかもしれないだけに、
残念な作品だった。
個人的な感想:題材は好きだった
画像引用元:宝石商リチャード氏の謎鑑定 5話より
©辻村七子/集英社・宝石商リチャード氏の謎鑑定製作委員会
宝石を絡めた人生ドラマ、リチャードと正義の過去や家庭環境。
この作品にある要素は面白そうで、原作の魅力を端々で
感じるものの、それを活かしきれてないもどかしさのほうが
勝ってしまう作品だった。
どっちかといえば実写ドラマ向きの作品だったかもしれないが
そうなると「リチャード」は誰がやるのか…
ディーンフジオカあたりだろうか(笑)
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