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原作者に土下座しろ「惑星のさみだれ」レビュー

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惑星のさみだれ SF
惑星のさみだれ 画像引用元:©水上悟志・少年画報社/ある時代の指輪の騎士団
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評価 ☆☆☆☆☆(2点) 全24話

7月8日放送開始!「惑星のさみだれ」プロモーション映像

あらすじ 雨宮夕日は、ある朝、言葉を喋るトカゲから世界を救う騎士の1人として選ばれたことを告げられる引用- Wikipedia

原作者に土下座しろ

本作品はプラネット・ウィズなどで有名な水上悟志による漫画作品。
監督は中西伸彰、製作はNAZ

シュール

1話冒頭からかなりシュールだ。
ヒロインが一軒家の屋根の上で何かを考えている、
そんな家の中では起きたばかりの主人公が
いつのまにかベッドの上にいたトカゲを見つめ合っている。
そんなシーンから始まる。

この作品の制作はNAZだ。
あの「俺が好きなのは妹だけど妹じゃない」を手掛けた
制作会社であり、作画の悪さはお墨付きだ。
1話冒頭から作画が一切動かない。
無駄にカメラを動かしながら動いている風の演出で
1枚絵を回転させているだけでアニメーションと呼べるものではない。

そんなシュールな状況の中でトカゲが喋りだす。
トカゲいわく彼は「騎士」であり姫を守るために
主人公が必要らしく、地球滅亡の危機らしい。
とてつもなくシュールな状況をシュールな作画で彩っており、
ギャグアニメなのかな?と思うほどだ。

トカゲは普通の人には見えないのだが、常に彼につきまとっている。
騎士に選ばれたことで特別な超能力のような力を使えるようになっているが、
主人公は己の過去にうけた教育ゆえにやる気がない。

そんなやる気の無さが作画にもBGMにも現れている。
作画のクォリティもそうだが、BGMの古臭さもとんでもない。
原作が2005年の作品であり、10年以上も前の作品だからこそ
キャラデザの古さを感じさせる部分などはあるのだが、
それ以上に作画の雰囲気やBGMの古臭さが、
この作品の古臭さを後押ししてしまっている。

そんな主人公が急に謎の生物に襲われる。
するとヒロインである「さみだれ」が現れ彼を救ってくれる。
物語の設定的に戦闘シーンはかなり多いのだが、
NAZではそんな戦闘シーンを盛り上げることは出来ない。
1話冒頭と同じく戦闘シーンも作画枚数を極力減らしながら、
動いている風の演出を足すことでなんとか戦闘シーンを描いている。

「さみだれ」は騎士が守る姫らしく、残りの騎士を探さないといけない。
騎士は契約することで「願い」を叶えてもらえるようで、
その願いのために騎士は戦うことになるという感じだ。

1話から唐突な展開が多く、唐突にトカゲが現れ、
唐突に敵があらわれ、唐突にヒロインが現れる。
脈絡なく唐突な展開が唐突な展開で繋がれてストーリーが紡がれている印象だ。

地球は巨大なハンマーによって破壊される寸前であり、
それを止めるために戦わなければならない。
状況は理解できるものの、それが全く頭に入ってこない。
原作からこうなのかは判断しかねる部分があるが、
おそらくはアニメのストーリー構成も悪い。

唐突に現れた主人公であるさみだれは
「忠誠を誓え!」と雨宮に迫り、雨宮はそんな勢いに飲まれ
あっさりと承諾してしまう。ちょっと意味不明だ。
本来は主人公の熱に飲まれた雨宮という1話の見せ場なのに、
その表情をきちんと描けていないからこそ見ている側も納得できない。

世界

主人公であるさみだれは世界そのものを手に入れたいと思っている。
そんな世界を手に入れる前に誰かに地球を壊されたくはない。
そんな思いで彼女は戦っている。

雨宮もまた世界に絶望している。
両親はすでに死に、祖父には虐待のような教育をされたせいで
この世界を恨んでいる。
そんな雨宮の事情が序盤に描かれるものの、
作画の悪さも合っていまいち頭に入ってこない。

定期的に唐突に敵である泥人形が現れて雨宮を襲うのだが、
戦闘シーンのアニメーションは一切改善されない。
主人公が「走って逃げる」シーンですらアップで
同じ作画をループしてるだけで、攻撃されるシーンは1枚絵だ。

主人公と祖父の関係性、そこで果たされる唯一の願い。
もっと丁寧に描けば盛り上がるストーリーなのだが、
原作から細かい部分を省いているせいなのか、
その盛り上がりを作れていない。

騎士たちは地球を守るために選ばれている、
だが主人公と雨宮の目的は主人公の手による地球の破壊だ。
騎士たちは仲間でありながら、二人の本当の使命は明かさせない。

さみだれは「アニマ」の力によって生きている。
地球に降りかかる寸前のハンマー、それを止めるための
戦いが終われば、そんなアニマも消え、
さみだれの命も奪われる。
だからこそ、彼女は地球と無理心中しようとしている。

そんなシチュエーションを作りたいのはわかるが、
作画と演出、BGMの古さ、ストーリー構成の悪さのせいで
原作が持つ面白さをまるで発揮できていない。

作画

1話から作画は悪いが、話を追うごとに更に悪くなる。
その極めつけとも言えるのが「犬」だ。
騎士の一人が子供の頃のエピソードを話すシーンなのだが、
当時飼っていた犬を散歩するシーンが有る。
それが↑だ(笑)

人間のキャラクターの描写も凄まじく悪いが、
犬の骨格のほうにおもわず目が言ってしまうほど違和感でしか無い。
ちなみにBDでは修正されているようだが、これである。

犬なのにサルのような見た目だ。
これは静止画だからこそまだマシにみえるのだが、
実際にアニメーションとしてみてみると、
犬の歩き方が本当に不自然で笑ってしまう。

5話ではメインキャラの一人が主人公をかばって死ぬのだが、
そんなシリアスなシーンなのに戦闘シーンがひどすぎて
シリアスな空気を出せていない。
凄まじい作画の悪さだ。

作画が悪いだけならまだいいのだが、
カット割りも悪く、変な間が生まれてしまってるがゆえに、
戦闘シーンが本当におかしなことになっている。

作画ミスも酷く、例えば5話で主人公の服が
カットが掛かる前はワイシャツにTシャツというスタイルだったのだが、
カットがかかりアップになるとジャージのようなものを着ている、
するとまたカットがかかると元の服に戻っている(苦笑)
こういう細かい作画ミスをあげだしたらキリがない。

騎士

騎士は全部で12人いるようで、
序盤で一人あっさり退場したかとおもえば、いきなり3人出てくる。
この作品は序盤から唐突な展開が多いが、
序盤を過ぎてもそれは変わらない。

各騎士も曲者が多く、戦闘狂であるがゆえに同じ騎士を襲う輩もいる。
そんな曲者な騎士同士の戦いや、泥人形との戦いなど
序盤から戦闘シーンは多いのに、そんな戦闘シーンがろくに描けていない。

話が進めば進むほど、どんどん雑に騎士が出てくる。
別の騎士が連れてきたり、ばったり道端で出会ったり、
本当に雑に騎士がでてくるがゆえに、物語の唐突感が凄まじく、
雑な作画で各騎士の戦いを描かれても、
それで印象が深まったり、各キャラに愛着が湧くわけでもない。

一応一人ひとりの掘り下げをやったりもするのだが、
これまたダラーっと描かれているため、
キャラの印象が深まるわけでもない。

アニマ

地球を壊すハンマーを召喚しているのは
魔法使いと言われている男だ。彼は未来からやってきた男だ。
物語の中盤になってくると色々な謎が明らかになってくるものの、
だからといって面白くなるわけでもない。

多くの仲間たちとの関わり合いや、死を経験する中で
「主人公」は悩んでいく。
自分では気づかない間に、多くの仲間たちを大切に思い、
そんな彼らが住む地球を破壊していいのかと。

そういう内容を描きたいのはわかるが、
キャラクター描写にしろ、シリアスなはずの戦闘シーンですらも、
ガタガタなため内容の面白さをストレートに感じられない。

基本的に主人公側が不利な中での戦闘であり、
本来なら死と隣り合わせの緊張感が合ってしかるべきなのだが、
作画どころか演出もダサいがゆえに盛り上がるものも盛り上がらない。
原作の漫画のコマをそのままアニメの絵として
落とし込んでいるんだろうなというシーンも多く、
制作側がアニメを作る気がないことを感じさせる。

特に12話の戦闘シーンの間抜けっぷりは凄まじい。
味方の一人がひたすら「ドリルキック」をするだけの
シーンが続いたかと思えば、仲間のピンチのときに、
技を出す際になぜか「アップ」になる。
このアップの作画の粗さたるや、おもわず笑ってしまうほどだ。

中盤になるとこれまた唐突に現れた主人公の中に眠っていたアニマが、
唐突に騎士の一人の力を底上げして、神獣の騎士にする。
展開としては納得できるが、唐突な展開は中盤以降も続く。
せっかく出てきた騎士たちも、戦闘の中であっさりとやられていく。

そんな仲間たちの弔い合戦のために全員が「喪服」を着て挑む。
作画が良ければかっこいいと思えたかもしれない、
だが、そんな「見せ場」でさえ作画が悪いせいで
ダサさが極まっている。

それぞれが死んだ仲間との思い出を思い出しながら
戦っているのだが、その回想シーンの作画がガタガタだ。
2クールという都合上か総集編も挟まれていたが、
思い出があまりにもガタガタで思い出になっていないのがこの作品だ。
振り返れば作画が崩れている。眼の前を向いても作画が崩れている。
常に前門の虎、後門の虎状態だ。

それぞれの事情や過去、そして今を描きながら
苦しい戦いを乗り越えていき、仲間の死を受け止めながら成長していく。
主人公である雨宮は祖父の教育ゆえに他者を信じず、
他者と仲良く成らずに生きてきた。

それゆえに世界を壊したいと思うようになってしまった。
だが、ヒロインと出会い、多くの仲間と出会い、
死を乗り越えて徐々に考えが変わっていく。
そういうストーリーを描きたいのはわかる。

しかし、ストーリー構成も悪く、演出も作画も悪いせいで、
ストーリーの面白さを素直に飲み込めない。
特に18話の少年の成長はストーリー的には面白い。
家庭環境故に地球を滅ぼしたいと願う少年は敵側についている。
だが、多くの人と関わり死を受け止めた彼の考えは変わり単身で敵に挑む。

そんな戦闘後に顔がギャグ漫画のごとく腫れ上がっている(苦笑)
ストーリー的には盛り上がってて良いシーンのはずなのに
絵面がギャグになってしまっている。もう台無しだ。

最終決戦

なんだかんだで最後の泥人形との戦いになる。
彼らが戦っている魔法使いの目的、過去などもさらっと描かれており、
ストーリー的には盛り上がりを感じる展開だ。
作画はガタガタだが。

本来は盛り上がる展開だ。
死を乗り越え、仲間たちが成長し、互いを信じ、
合体技で敵をやっつける。
そんな盛り上がる合体技ですらギザギザのエフェクトで誤魔化す。
終盤になっても戦闘シーンは本当に酷い。

魔法使いとのラストバトルもコレまた盛り上がらない。
1度位はきちんとした作画の戦闘シーンを見せてくれと思うのだが、
NAZには無理な話だ。

最終決戦でもアップを多用し、カメラを動かすだけで
ろくに作画枚数の無いアニメーションを演出で動かしてるふうに
見せているだけのアニメーションを見せられる。
作画が常にヘタれている、だからこそ、1アクション1アクションが
一切しまらず、痛くも痒くもなさそうな攻撃に見えてしまう。

魔王

魔法使いを倒した後に、さみだれは魔王となる。
この惑星を手に入れるために地球を壊す。
そんな野望を騎士たちが許すはずもない。

この作品で1番の盛り上がりどころだ。
死線をくぐり抜けてきた仲間と戦わなければならない。
そんな状況なのに作画は1番酷い(苦笑)
紙芝居な絵面、作画の使い回しを繰り返し、
なんとか戦闘シーンを作り上げている。

主人公である雨宮の心境にも変化が起きている。
この戦いを経て彼は変わっている。
もう彼の中に「地球を破壊したい」という思いはない、
それでも騎士団と戦っている。

それは何より、好きな人のためだ。
好きな人の思いを受け止め、好きな人を止める、
そんな役目は他の誰でもない、自分でありたい。
そういうストーリーにしたいのはわかるものの、
それがきちんとアニメとしての表現で「面白さ」として伝えられていない。

さみだれの野望は止められ、みんなが大人になって終わる。
「さみだれ」の病気問題もあっさりと解決してしまう。
本当に、本当に長い2クールだった。

総評:犬すらまともに描けないアニメ

全体的にひどすぎるアニメだ。
もはやこれをアニメと言って良いのかすらわからない。
それほど「作画」は常にガタガタであり、
戦闘シーンが多いのに戦闘シーンをろくにえがけていない。

いかに限られた予算で限られた作画枚数でアニメを作るか。
制作側が注力しているのはそこだけであり、
作品が面白くなるかどうかは関係ない!とでもいいたげなほど、
脚本周りも酷く、原作では本来はあるはずであろう細かいポイントを
削除し、メインストーリーだけを綴っている。

原作でもそういった部分はあるのかもしれないが、
唐突な展開が非常に多く、序盤は展開についていけず、
中盤からはようやく話についていける部分があるのだが、
決定的なシーンにおける会話の間などの取り方が最悪で、
本来は印象的なシーンのセリフの印象が残らなくなってしまっている。

作画の酷さは散々語ってきたが、本当に酷い。
犬すらもろくに描けないアニメは初めて見た。
BDでは一部修正されているようだが、修正の意味はほとんどなく、
事務的に作られたアニメという印象が拭えない作品だった。

基本的なストーリー、この作品でやりたいことは伝わる。
それだけに、アニメという表現でそれを一切表現しきれてない
もどかしさが常につきまとってしまう印象だ。

本当になんでこんな事になってしまったのか。
色々と大人の事情を勘ぐりたくなってしまう作品だった。

個人的な感想:プラネット・ウィズ

同作者のプラネット・ウィズは本当に素晴らしい作品だった。
1クールで2クール分の熱さと重みを感じる
ロボットアニメとして本当に面白かった。
それゆえに、なんでこの作品はこんな事になってしまったのか。

原作者自身がTwitterで裏事情を暴露しており、
2年ほど前に幹部スタッフとして招かれた有名アニメーターが、
オリジナル展開を盛り込もうとしたことがあったという。
その案は結果的になくなり、こうなったようだが、
これでオリジナル展開まであったらどうなってしまったのだろうか…

そういったゴタゴタも在り、2度ほどプロジェクトが破綻し、
こうなってしまったようだが、
プロジェクト自体をなかったコトにしたほうが良かったのかもしれない。

これが1クールならまだ耐えられたかもしれないが、
2クール、こんなガタガタの作画のアニメを見続けるのは
厳しいものが合った。
何度倍速再生に手を伸ばしそうになったことか…(苦笑)

本当に厳しい作品だった…

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