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こんな酷い拷問見た事ない!「姫様“拷問”の時間です 」レビュー

姫様“拷問”の時間です 日常
©春原ロビンソン・ひらけい/集英社・国王軍第三騎士団 
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評価 ★★★★☆(68点) 全12話

TVアニメ『姫様“拷問”の時間です』第1弾PV│2024年1月放送決定

あらすじ 7世代前から続く、国王軍と魔王軍との水面下での争いがなおも収まらない中、魔王軍によって囚われた国王軍の姫は、軍の秘密を話すように“拷問”を受けることになる。引用- Wikipedia

こんな酷い拷問見た事ない!

原作は少年ジャンプ+で連載中の漫画作品。
監督は金森陽子、制作はPINE JAM

姫騎士

この作品の主人公はお姫様で騎士な女の子だ。
この世界では魔物と人間が長い間争っており、
そんな時代だからこそ姫たる彼女も戦う力を秘めている。

彼女のかっこいい戦闘シーンを1話冒頭で見せつけたかと思えば、
姫はあっさりと自らの遺志を持つ剣とともに魔王軍に捕まってしまうところから
物語が始まる。

古今東西、姫騎士というものは「拷問」される存在なのは
皆様ご周知のとおりだ(笑)
数多の姫騎士が数々の拷問を受け、時に耐え忍び、時に陥落する。
この作品の姫騎士も「拷問」を受けることになる。

彼女は力強い遺志を持っている女性だ。
姫として、騎士として、多くの民の上に立つ存在として
育てられた彼女はどんな苦痛にも屈しない。
それが「苦痛」ならば。

甘美な誘惑

彼女の前に差し出されたのは「分厚い焼き立てトースト」だ(笑)
ただのトーストではない、分厚いトーストだ。
しかも焼き立てのいい香りを漂わせ、バターもたっぷり載っている。
舌の味蕾を思わず刺激する、それだけではない視覚からも刺激してくる。

トーストが避けるパリパリな音、
「これは絶対うまいやつ」と革新できるほどのトーストを前にする姫様。
耐えられるわけがない(笑)
ちなみにビーフシチューを食べた後のお皿までついてくる。
これ以上の拷問はないと革新できるほどの悲惨な光景だ。

あっさりと重要な情報を喋ってしまうものの、
そんな情報が特に役には立たない。
姫が重要かつ魔王軍にとって有益な情報を話すまで
彼女への「拷問」という名の甘美な誘惑は続いていく。

苦痛よりも、快楽のほうが耐え難い。
鞭よりも飴のほうが人間にとっては我慢出来ないものだ。
人間はあっさりと堕落してしまう、
だからこそ自分を律しようと虚勢を張っている。

姫であり、騎士団長として主人公は子供の頃から
虚勢を張り続けてきた。
だが、魔王軍に捕まってしまったからこそ、そんな他人の目線がない。
姫として騎士団長としてのプライドはあるからこそ耐えようとするものの、
甘美な誘惑に彼女は堕ち続けてしまう。

王族であるからこそ、彼女は庶民の生活に憧れがある。
城から見ていた景色、王族である自分が味わえない光景や食べ物。
王族だからこそ縛られていたものが魔王軍では解放できてしまう。
だからこそ焼き立てのトーストや「たこ焼き」で
あっさりと陥落してしまう(笑)

焼き立てのたこ焼きの匂いに、
深夜のこってりラーメンに、誰が耐えられるだろうか。
1話の段階から、テンプレートと言うべきものができており、
話の始まりのフリから話の終わりのオチまで型にはまっている。

姫様が最初は拷問に耐えようとするが、甘い拷問のすえに
情報を喋ってしまうものの、そんな情報は魔王軍にとって
余り役に立たず、拷問は続いていく。
1話の段階でテンプレートをきちんと見せることで、
どんな作品なのかをわかりやすく伝えている。

可愛らしいキャラクターデザインときちんとした作画で、
姫様の愛らしい表情をコミカルに描きつつ、
出てくる料理の作画も思わずよだれが出てきそうなほどだ。

遊び

1話では主に拷問の内容は「食事」だが、
2話では拷問の内容が変わってくる。今度は「遊び」だ。
目の前で二人の拷問官が楽しそうにゲームをする、
ただそれだけだ。しかし、姫様は陥落してしまう。

彼女には友達と言える人物は居ない。
姫として厳しく育てられたからこそ、姫という立場だからこそ、
彼女に対等に接してくれる人物はおらず、
それゆえに友だちと遊ぶという普通のことをしたことがない。

だからこそ、目の前でゲームをされるだけで立派な拷問だ。
自身が憧れた友達との遊びが目の前にはある。
今は剣以外の目線は気にする必要がない。
敵なはずの拷問官に彼女は徐々に心を許してしまう。

甘えを知らず育った彼女にとって
魔王軍の拷問の数々は人生で味わったことがないものばかりだ。
だからこそ心を許し、陥落してしまう。

姫という立場の主人公をうまく生かした甘美な誘惑を
コミカルに描きつつ、徐々に姫様が心をひらいていく流れを
丁寧に積み重ねている。
話自体はパターン化しているものの、
パターン化しているからこその安定感がある。

そのパターン化した中で話が進めば進むほどキャラが増えてくる。
主人公の友だちになってくれる拷問官、
甘えさせてくれる拷問官、
魔王の娘など可愛すぎて見ている側が秘密を
暴露してしまいそうになるほどだ。

可愛い幼女が目の前で「プチプチ」を潰してくる、
こんなむごたらしい拷問は初めてだ。見ているだけで
何もかも暴露してしまいたくなる(笑)

姫様を助けに来る騎士なども現れるのだが、
なんやかんやあって救出作戦が失敗する。
ただひたすら、主人公である姫は拷問と言う名の
甘美な誘惑に負けていく日々だ。

友情

そんな日々が続くからこそ、主人公と拷問官たちに友情が生まれている。
人間と魔族、敵同士のはずなのに、命さえ奪い合ったなかなのに、
彼女たちには立派な友情が芽生えている。

そもそも、人間と魔族がどうして争っているのかという
根本的な部分が描かれていないのは気になるところだ。
あくまで日常コメディ作品であり、深く突っ込むのは野暮なのかもしれないが、
主人公と魔族たちが普通に仲良くしている光景を見てしまうと、
なぜ人間と魔族が争っているのかという疑問は自然と生まれてしまう。

話の展開自体がテンプレ的だからこそ、安定感はあるものの、
同時に中盤を過ぎる頃になるとマンネリ感もやや生まれてくる。

ただ、そのマンネリ感も主人公である姫も感じている。
そのマンネリ、自分自身が情報を引き出すために捕まっている状況、
この状況に彼女はすっかりと甘えている。

もし、魔王の城から脱出したとしても待ち構えているのは
以前と同じような姫として、騎士としての生活だ。
虚勢を張り続ける生活が本来の自分の居場所だとしても、
今の、この場所の居心地の良さを彼女は実感してしまっている。

いろいろな情報を喋り続けても、魔王が人間に対して
なにかするわけではないからこそ、安心して拷問に堕ち続ける日々に
彼女は甘えている。
魔王の配下や娘たちと仲良くなってしまったからこそ、
もう彼女は剣を振るえなくなっているのかもしれない。

そんな彼女の友人とも言える拷問官たちの日常が描かれることもある。
唐突に出張に行った拷問官のビジネスホテルでの
日常がお届けされたときは一体何事かとも思ううえに、
Cパートでは孤独のグルメのようなことまでし始めてしまう。

更に、終盤にはただ
海でチャンバラをしてるだけで拷問になっていたりもするが、
突っ込んだら負けだ(笑)

娘を溺愛する魔王の日常なども描かれることも有り、
主人公だけでなく、魔王や拷問官などもきちんと掘り下げられるからこそ、
全てのキャラクターにしっかりと愛着を持ててしまう。

本音

主人公である姫は過去に友に裏切られた経験がある。
だからこそ友達も作らずに、自身の使命のために戦ってきた。
しかし、魔王軍に捕まったことで本当の友達ができている。
たとえ本当は敵同士の関係でも、彼女たちの友情は本物だ。

だからこそ釈放されるチャンスがあっても、
スマートフォンを使いたい放題でも、
彼女が自らの意思で魔王軍から逃げ出すことはない。

この場所なら自分らしい自分で居られる、
虚勢を張ることも我慢することもしなくて良い。
そんな油断のせいで「寝言」ですら重要な情報を
吐きまくる様になってしまう始末だ(笑)

そんな寝言は本年だ。
「いつも美味しいご飯をありがとう、一緒にいるととっても楽しい」

 

姫であり騎士だったときには味わえなかった幸せがここにはある。
例え終盤で魔王軍が急に幼児化しても、
彼女は逃げず、むしろ幼児化した魔王軍たちを愛でる始末だ。
最終話では唐突に異世界転移して終わる、もうめちゃくちゃだ(笑)

総評:堕落という名の日常

全体的に見て完成されたテンプレートを元に綴られる
偉大なる堕落という名の日常が描かれている作品だ。
魔族と人間、なぜ争ってるかはわからないが長年争い続けており、
人間であり、姫であり、騎士である主人公が捕虜になり、
拷問を受ける。

しかし、そんな拷問は甘い甘い誘惑だ。
美味しそうなものを目の前に置かれたり、
目の前で楽しそうにゲームをしたり。
普通の人にとっては重要な情報を喋るような拷問ではない。
だが、姫であり、騎士である主人公だからこそ屈してしまう。

彼女は子供の頃から姫として、騎士として育てられそう振る舞ってきた。
しかし、それは虚勢を張っていることと同じだ。
本当は年頃の普通の女の子のように過ごしたいという思いがある、
だからこそ、厚焼トーストを見せられるだけで喋ってしまう。

基本的にこのテンプレートを崩すことはなく、
話を追うごとにキャラクターが増えていきながら、
徐々に主人公が彼女たちに心を開いて生き、
この捕虜生活を楽しみ、素のままの自分で居られる今の場所の
居心地の良さに甘えてしまうように鳴っていく。

テンプレであるがゆえにマンネリを感じる部分はあるものの、
魅力的で可愛らしいキャラクターが多いからこそ、
そんなマンネリを日常として楽しむことができ、
徐々に仲良くなっていくキャラ同士の関係性もたまらない。

1話の段階から完成された日常ギャグアニメであり、
最終話まで安定したクォリティを保っている作品だ。
2期も決定しており、期待したいところだ。

個人的な感想:魔王城でおやすみ

作品のスタイル的に魔王城でおやすみとにている部分はあるのだが、
魔王城でおやすみが安眠なら、この作品は拷問という名の甘い鞭だ。
似てはいるのだが、違う。
両方の作品をみて比較してみるのも良いかもしれない。

個人的には中盤でマンネリを感じ始めたのだが、
それを感じたのは一瞬で、そのマンネリ感すらも
この作品の魅力に鳴っているとすら感じる作品だった。
ずっとみていられる、これこそ日常アニメなのかもしれない。

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