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有終の美に泥を塗る、没個性「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト」レビュー

僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト 人気記事
(C)2024「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE」製作委員会 (C)堀越耕平/集英社
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この記事を書いた人
笠希々

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評価 ★★☆☆☆(28点) 全110分

『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE』スペシャルPV/8月2日(金)公開『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』

あらすじ 突如として謎の巨大要塞が現れ、街や人々を飲み込んでしまう。そして出久たちの前に、見た目はオールマイトにそっくりだが真逆の信念を持つ敵・ダークマイトが立ちはだかる。引用- Wikipedia

有終の美に泥を塗る、没個性

本作品は僕のヒーローアカデミアの映画作品。
僕のヒーローアカデミアとしては4作品目の作品となる。
監督は岡村天斎、制作はボンズ

複数個性

冒頭から「僕のヒーローアカデミア」らしく、
また制作のボンズらしい戦闘シーンを魅せてくれる。
時系列的には6期の後だ、ヴィランによる攻撃で街は崩壊し、
多くの住民が避難している。
最終決戦に至る前の緊張感のある状況の最中だ。

そんな中で主人公である緑谷出久や彼のクラスメイトたちは
各地にはびこるヴィランに対処しているという状況だ。
だからこそ、冒頭から盛り上がる戦闘シーンを魅せてくれる。

先代達の個性も使いこなせるようになった緑谷出久が
複数の個性を使い、組み合わせながら戦う戦闘シーンは
予想外の動きをうんでおり、それをアニメーションで彩ることで
迫力のある構図でしっかりと見せてくれる。

ただフルパワーを使って殴るだけじゃない、
複雑な個性の絡み合う戦闘シーンは
最終章寸前を迎えた僕のヒーローアカデミアらしい戦闘シーンだ。

そんな中で新たなる敵が現れるというところから物語が始まる。

ダークマイト

最近のジャンプアニメは鬼滅の刃や呪術廻戦など、
本編の続編や前日譚などを映画にすることでヒットしている作品が多い。
しかし、僕のヒーローアカデミアはその2作品よりも前に
連載が始まりアニメ化した作品だ。

ワンピースやBLEACH、NARUTOなどがやっていたように
僕のヒーローアカデミアという作品の映画も
「オリジナルの敵」や「オリジナルのヒロイン」がでてきて
彼らが起こす騒動を解決し、本編に一切影響がなく終わるパターンだ。

4作品目を迎えるこの作品でもその流れ自体は変わらない。
今作ではかつてのオールマイトそっくりな見た目をしている
「ダークマイト」が現れ、突如として主人公たちがいる街を
謎の光でお追い込み、住民や主人公たちをとある場所に閉じ込めてしまう。

非常に分かりやすい作品である一方で、かなり没個性な作品だ。
敵であるダークマイトも自らの目的をペラペラペラ喋ってくれる、
オールマイトとオールフォーワンの戦いを見たダークマイトは
「次」を託されたのは自分だと思い込み、彼の後継者になろうとしている。

そのために必要なのが今作のオリジナルヒロインだ。
彼女は適合した人のみではあるが他者の個性を変質し強化することができる。
そんなヒロインを操り、マフィアだったダークマイト達御一行は
強化されている状況だ。

ただ、この強化されているという状況も一定時間だけのようで、
しかもヒロインの力を使ってるのにすぎない。
他者の力を使って自分が強くなったと思っているだけの小物だ。

彼自身に何の魅力もなく、確かにヒロインの力を使って
戦うシーンでは緑谷出久たちを圧倒してはいるのだが、
どうにも過去作と比べると小物感が凄まじい。

テンポ

ダークマイトだけならともかく、
ダークマイトの手下として7人くらいの部下がいる。
正直、7人は多すぎる。
この7人はメインキャラと戦闘をさせるためだけのキャラであり、
物語的には必要がないキャラも多い、ただの当て馬だ。

僕のヒーローアカデミアは長期連載している作品だけあって
キャラクター数も非常に多い。
学園モノという要素もあるせいでクラスメイトも多く、
今回は「プロヒーロー」たちも中盤以降は参戦するため、
彼らが活躍する場面を最低1回は用意しないといけない。

そんなノルマをクリアするためだけのキャラだ。
バラバラに敵の空間に取り込まれたメインキャラたちが
道中で敵に出会いながらバトルを繰り返す、
そのせいで場面転換も以上に多く、戦闘中でも
「一方その頃」と場面転換してしまうためテンポが以上に悪い。

敵の数を減らせば90分にまとめられるアニメを
敵の数を増やすことで110分にしている印象だ。
戦闘シーンのクォリティ自体は高いものの、
そこまで長いシーンはないため、
技を出して終わりみたいなシーンも多い。

メインキャラたちがピンチになるとプロヒーローが
助けに来たりと、王道の展開ではあるものの、
このテンポの悪さが作品の薄味感を余計に強めている印象だ。

終盤は「此処は俺に任せて先にいけ!」という
使い古された展開を繰り返しており、
最近のジャンプアニメ映画というよりは20年くらい前の
ジャンプアニメ映画をみているかのようだ。

使いこなせてない

今作のオリジナルキャラをストーリーの中で使いこなせてない感じが強い。
例えば敵の一人は自分を中心とする一定の空間で
個性を使えなくする能力を持っている。とんでもない能力だ。

そんな敵を機転を利かせて緑谷出久は倒すのだが、別に殺しはしない。
しかし、そんな便利な能力を持っている敵を
ダークマイトは処刑してしまう(苦笑)

彼の理想はオールマイトだ。
オールマイトは強かった、オールマイトは失敗しなかった、
オールマイトは負けなかった、だからこそ平和の象徴たりえた。

そんなオールマイトに心酔しているダークマイトは
失敗を許さず、負けを許さないからこその処刑であることはわかるのだが、
キャラクターを使いこなせないからこそ処刑している感じも強く、
サクサクとやられて退場してしまうキャラがあまりにも多い。

キャラによっては5分もかからずにやられてしまう。
なんともあっさりした作品だ。

ヒロイン

ダークマイト自体もたしかに強いのだが、
終盤で緑谷出久、爆豪勝己、轟焦凍の3人との戦闘のすえにやられる。
彼の力はまがい物だ、ヒロインの力を使ってるに過ぎない。
だが、そんなヒロインの力が暴走してしまう。

その結果、なんかよくわからない巨大化け物になる。
このあたりもジャンプアニメ映画っぽい印象ではある、
確かにそんな化け物との戦闘シーンは迫力たっぷりに描かれているのだが、
この作品、ヒロインの存在感がかなり薄い。

彼女は自らの個性に悩まされながらも、執事がもつ個性があるからこそ
ここまで生きてきたのだが、ダークマイトに利用されてしまっている。
執事は彼女を助けようと必死になり、そんな彼の物語自体は
悪くはないのだが、結果的に「僕のヒーローアカデミア」という
作品のキャラクターたちとの関わり合いがかなり薄くなってしまった

執事と緑谷出久とは会話をし交流をしているのだが、
ヒロインとはほぼ会話がない。
だからこそ、最終的にヒロインが助かって執事と
ハッピーエンドになっても緑谷出久たちは完全に傍観者かつ蚊帳の外だ。

今作オリジナルキャラクターを増やしすぎた結果、
一人ひとりが薄味になってしまい、
今作のメインヴィランであるダークマイトも、
今作のメインヒロインも薄味になってしまっているような作品だった。

総評:個性の消えたアニオリ映画

全体的に見て恐ろしいほど薄味な作品だ。
今までのヒロアカ映画は欠点こそあれど、
きちんとその作品ごとの魅力を感じる作品が多かった。

1作目ではヴィランこそB級な感じはあったものの、
原作やアニメでは描かれなかった「オールマイト」と「緑谷出久」の
共闘というファンが見たかったシーンをきちんと見せてくれた上に
印象が残る作品だった。

2作品目はある種の禁じ手だ。
主人公である緑谷出久の師の敵だった「オールフォーワン」と
同じような個性を持つヴィランを生徒たちだけで倒す。
そんなワクワクする展開と最後の個性を譲渡する展開は
ご都合主義感はあれど、映画だからこその特別感のある作品だった。

3作品目は今作と同じようにキャラの多さに振り回されてる部分もあり、
個人的にはあまり好きではない作品ではあるものの、
個性を持つ人類を滅ぼそうとしている敵の個性や、
映画オリジナルキャラの成長と変化がきちんと描けていた。

しかし、今作はどうだろうか。
1作目のようなB級感のある敵キャラで、
2作品目のような映画だからこその特別感はなく、
3作品目のように映画オリキャラが魅力的というわけでもない。

宮野真守さん演ずる執事なキャラクターは
色々と属性的に刺さりそうな人はいるかも知れないが、
彼とオリジナルヒロインとのラブコメはどうでもよく、
主人公たちと同様に蚊帳の外になってしまった。

この作品だからこその面白さ、過去3作品にはない面白さというのがない。
過去の3作品にあった欠点をそのまま集めただけの
没個性な作品になってしまっている印象が残る作品だった。

個人的な感想:せっかく…

原作が最終話を迎え完結し、アニメも最終章に突入している。
僕のヒーローアカデミアという作品が盛り上がりに盛り上がっている状況だ、
そんな中でこんな没個性な作品が生まれてしまったことは残念でならない。

僕のヒーローアカデミアという作品が大好きで、
キャラクターたちが映画のスクリーンで暴れまわってるだけでいい、
そんな無条件でヒロアカを楽しめる人には問題ない作品かもしれないが、
それ以外の人には色々と厳しい作品だ。

結局、描くべき部分が多かったのだろう。
メインキャラクターをもれなく活躍させ、ダークマイトというキャラや
今作のオリジナルキャラを活躍させたい、ついでにプロヒーローもだしたい、
そうなると110分ではこうなることは目に見えていたのかもしれない。

ラストの戦闘シーンは確かにアニメーション的にはすごいのだが、
すごすぎて逆に何やっているかわからないぐらいのものになっている(苦笑)
セリフもなくBGMが流れる中での激しい戦闘シーンは
作画をみせたい!アニメーションを見せたい!という制作側の気持ちが
伝わってくる部分はあるのだが、
どこか自己満足で終わってしまっているようにも感じてしまう作品だった

ヒロアカの映画も、この作品がもしかしたらラストかもしれない。
時系列的にこの後は最終章になり、その間で
オリジナルのエピソードは挟みづらく、
やれたとしても後日譚的な映画になるかもしれない。

果たしてこの作品がラストになるのか、もう1本あるのか。
それは現段階ではわからないものの、
これでラストになってしまったらヒロアカの映画は
有終の美を飾れなかったことになってしまうだけに残念なところだ。

できればもう1作、NARUTOのように原作の最終話の後の
話がオリジナル映画で描かれることを期待したい。

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